オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

シェアハウス物語 22  捨て主(ぬし) 

 前夜は雨音の中で眠りについたけれど、朝は鳩の声に目が覚めた。 紅の部屋は、窓が西側に面しているので、朝は眩しいほどに明るいという光は入ってこない。 宇宙はセットした目覚ましが鳴る30分も前に目が覚めた。夕べのあれこれが気になって、少し早目にベッドに入ったせいかもしれない。身を起こしてさっと着替える。 音を立てずに部屋のドアを開けそっと部屋から出ると、向かいに黄金のドアが見えた。黄金の部屋は東に面...
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とある飲み屋での一コマ(scriviamo! 2017)  

ブログで親しくさせていただいています「scribo ergo sum」の八少女 夕さんの企画「scriviamo! 2017」に参加しました。「scriviamo!」というのはイタリア語で「一緒に書きましょう」という意味だそうです。私は今年で三度目の参加です。企画期間中、夕さんのブログ上で参加者の書かれる作品または記事と夕さんとの楽しい交流が見られます。詳しくはこちらへ → 「scriviamo! 2017」それから!夕さんは今年、2017年1月の初め...
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シェアハウス物語 21 黄金の部屋にて(3)  

「大丈夫」「よかっ……」「とは簡単に言えないけど、そうであってほしいと思う」 それだけですべてを察することはできないものの、宇宙もムーカイも神妙な顔つきになった。「名まえはメアリー・アン(Mary Ann)。二十一歳。フィリピンから来たんだって」「二十歳過ぎてたんだあの子」 宇宙が目を丸くする。顔を見た時、日本人ではないとわかったけれど、歳や国籍までは分からなかった。細く華奢な体つきから、高校生くらいかと思...
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シェアハウス物語 20 黄金の部屋にて(2)  

「あの……」 ペタリ、という足音と共に女の子が振り返った。宇宙を見ると、傷ついた小鳥のように首をすくめる。玄関灯のほのかな明かりに照らされたその顔が目に入ったとき、宇宙は息を呑んだ。 赤黒い顔。特に目の周り。鼻血も切れた唇も痛々しい。一体この子に何が。すぐに言葉を出した。「どうしたの?」 けれども、同時に女の子が体をひるがえした。「待って」 上腕を掴むと、女の子が小さなうめき声を上げてよろめいた。す...
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シェアハウス物語 19 黄金の部屋にて(1)  

 宇宙は、天気予報を確認しないで出かけてしまったことを悔やんでいた。朝出かけるときは、青空が見えていたからだ。夕方六限の講義の途中から聞こえてきたザーという雨音に気付き、少しだけ何かに裏切られたような気持ちになる。「コンビニで傘買えば?」 こんな時はそうするのが当たり前だというように提案する桧山は、コンビニの世話になる必要はない。桧山はオンキャンパスの学生寮に住んでいて、傘を持たずに雨の中を歩いた...
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