オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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三つの乾杯 6 再会の祝い(2) 

「遥はどこの音大に行ったの?」 とりあえず、差しさわりのない話題から。学歴ぐらいは、こちらから尋ねても良いだろう。心の中は汗をかきまくっていたけれども、表面は努めて落ち着きを払う。「音大じゃなくて、国立大学の教育学部で音楽教育を専攻したの」「へえ」「両親とも教員だし、あんなこともあったし。教師にでもならなくちゃ、とんでもない親不幸だと思ってね」 あんなこと……「じゃあ、オーケストラ団員にならなかった...
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三つの乾杯 5 再会の祝い(1) 

「乾杯」「奇跡の再会に乾杯!」 二人はタイムテーブル通りに、一回目のライブ演奏を終えた。二回目の演奏を控えているため、アルコールではなくコーラとオレンジジュースで乾杯する。「相変わらずロマンチストね」「だって、二十年だよ。感傷に浸っても許される」 平日のホテルレストランは、客も少なくゆったりとしている。楽器の演奏者がラウンジの片隅で食事休憩をとっていても、特に違和感は無い。 バイオリニストとピアニ...
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三つの乾杯 4 定年退職の祝い(2) 

 濃厚なパンプキンスープは、ほんのりとした甘さが味わい深く、それだけで満足してしまうくらいにおいしい。「進藤様にはホームメイド・ローストビーフ、奥様にはクリームソースのラムステーキでございます」 続けて運ばれるメインミール。担当のソムリエから説明を聞かないと、大樹も明美もどちらがビーフでどちらがラムなのかもわからない。「なんか緊張するなあ。明美さんにプロポーズした時よりも緊張するなあ」 不慣れなナ...
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三つの乾杯 3 定年退職の祝い(1) 

「乾杯!」「大樹さん、改めまして、長年のお勤めお疲れさまでした」「明美さん、今更だけど、いろいろありがとう」 向かい合う二人は、まるで双子のように同じように目を細めると、同時にグラスを口にした。「おいしい! このシャンペン」「子どもたちに感謝だね」 そしてまた、同じように目じりにしわを寄せた。この似たもの夫婦を見る者に、幸せのおすそ分けもできるくらいの笑顔で向き合う。 二人のテーブルには、愛らしい...
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三つの乾杯 2 二十歳の祝い(2) 

「大体、アニキたちが知ってたってのもむかつくんだよ。いいから吐けよ。知ってること全部、今すぐここで吐け!」 恐らく、今の里桜のイライラ・レベルは100のうちの100超え。計量器の針を振り切る勢い。ラウンジレストランで騒ぎ立てない代わりに、声を震わせる。 確かに兄妹には、母親がいない、という事情があるにはある。男系家族であると言える。けれども、父親の育て方に決して間違いはない。 それならば、自分たち...
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