オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 39 第二章・マスターの恋(5) 

「田島君、旅行に出かけるときは、ただ行くんじゃなくて、行く目的をきちんと決めておいたほうが良いよ」
「え?」

 田島は、哀れみの同情さえ寄せるほど、マスターの失恋話の余韻に浸っていた。だから、話題が急に自分の旅行について振られて頭を切り替えるのに、少々時間がかかった。

「僕の放浪が長くなったのは、無計画なところにあったから」

 マスターの旅の始まりは「逃避」だった。訪れる国はどこでも良かった。ただ、仕事で行ったことのあるアメリカなどの先進国ではなく、行ったことのない中南米やアフリカにある小さな国などをまず訪れたのだという。

「最初に飛んだのが南米のウルグアイ」
「って、どこです?」
「南米のブラジルとアルゼンチンの国境にある小さな国」

 マスターは、とにかく葵さんの元から物理的に遠く遠く離れるために、そんな地球儀で日本の反対側にあるような小さな国を放浪の最初に選んだ。

「公用語がスペイン語で、結構忘れていたから大変だった。でも、地元の子どもたちとはサッカーで仲良くなれた」
「面白そうですね」

 失恋からの逃避がきっかけで、日本を飛び出したマスターだった。けれども、放浪に出ると、仕事を心配することもなく、ただの観光客として日々をのんびりと過ごした。

「ビーチがとっても綺麗でね。毎日眺めていたら、葵さんとのことがだんだん遠くになっていった」
「あんなに一途に思っていたのに?」
「うん。すごく不思議な感覚。これには僕も驚いたんだけどね。ビール飲む?」

 田島のグラスはとっくに空になっていた。「ありがとうございます」と、グラスをマスターに渡した。一連の失恋話を終えてホッとしたのか、マスターも飲むペースが少し速くなった。

「海外に来てまでメソメソしてられないですよね」
「田島君には言われたくないなあ」
「あ、すみません」

 二人で同時に笑い、ビールをあおる。マスターは放浪話を続けた。

 途中、行く方向を間違えたり、物を無くしたり、盗まれたりと、お決まりのようなトラブルに巻き込まれた話や、旅の途中で出会い、別れた地元の人たちとの交流の話など、マスターの放浪話にはおもしろいエピソードが尽きなかった。

「そのうち、お国もののアンティークを集めるのにはまっちゃってさ」

 それが今、このカフェにディスプレイされている諸々の物のことだと、田島にはすぐわかった。

 マスターは、気に入っては手に入れたアンティークの品々を、購入した先から日本の実家へ国際郵便で送っていた。それは、日本にいる両親への「無事にしている」との連絡代わりでもあった。

「僕から送られたものが家に届く度に、親は帰ってきたらリサイクル・ショップでもやるのか、って思っていたらしい」
「へえ。それで、どうやってこのカフェをオープンすることになったんですか?」
「その話も長いからまたいつかね」
「出し惜しみしないでくださいよ」
「いや、ホント長いからそれ」

 カフェを始める前は、エリート・サラリーマンだったり、好きな人に四回も振られたり、その後の傷心旅行で海外を放浪したりと、今夜はそんな話を聞いて、田島はマスターの人となりを知るのに興味深々となった。

「で、結局三年ぐらいふらふらと旅してから、実家のマンションに戻ってきたんだ」

 旅行後のカフェのオープンについての話は、今はしないと言ったばかり。それでは何の話をするのだろうかと、田島は聞き耳を立てた。

「僕が実家に戻って数日してから、葵さんが僕を訪ねてきたんだ。その時はただ単に、久しぶりの挨拶だけだったんだけどね。でも、そのとき会った葵さんを見て、僕はちょっとびっくりした」

 葵さんとの後日談。それもどうなったのだろうかと、田島は黙ってマスターの話を聞いた。

「葵さんは前よりも痩せて、というか、やつれていて顔色も悪くて。一体どうしちゃったんだろうかと親に聞いた」

 それでマスターは、葵さんが離婚して実家の家族のいるマンションに戻っているのを知った。

「旦那さんが会社の花形営業マンだったでしょ。仕事では花形でも、家庭では違ったらしい」

 妊娠しても流産してしまって、それで体調を崩して実家に戻り、そのまま離婚となった、という話をマスターは実家の親から聞いた。

「へえ。マスターが日本を留守にしている間、葵さんも大変だったんですね」
「で、僕、五回目に挑戦」
「え?」



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 皆様、前回は、私の拙い相談にご回答くださいまして、ありがとうございました。感謝!

 ご指南を参考に、今回、脳をフル稼動させ(これでも)、ちょい(ちょいです)頑張りました。

 劇的に上達するなどのことはないですが、これからも精進いたします。(ちょっとずつね^^)

 ストーリー的には・・・マスターの衝撃の五回目!?


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - 西幻響子  

Title - No title

わ~い、一番乗り♪

おわ~っ! マスター、五回目あったんですか!
そんなの、フェイントだぁ~っ。

ああでも、葵さん、お気の毒。
これじゃあマスター、だまってられないですよね。
葵さん、マスターみたいな人と結婚したら絶対幸せになれると思うけどなあ。

カフェ開店までの話にも、色々おもしろそうなことが絡んでいそうですねぇ。まあ、その話はまた今度ってことで ^^

※前回の「お話の小説を書く」のことですけど、ああいうのってやはり会話にのせて書くのが一番読む人の頭に入りやすいみたいです。その点、けいさんのは会話が中心で進んでいたので、だからわかりやすかったのだと思いますよ~。
2012.01.06 Fri 01:44
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

ええええ!
葵さん、てっきり幸せに暮らしてるとおもったのにーー。
マスターと同調しちゃって、びっくりです。

いままで、いい感じで傷をいやしてきたマスターに、これは吉なのか、それとも・・・。
行っちゃいましたね、5回目!マスター、懲りない!
でも、それでこそマスターだ!w

マスターの放浪の話を、それをじっと聞く田島くんの情景が、すーーーっと入って来て、とても楽しかったです。
しかも最後に、そんな「!」を用意してるとは。

まだまだ、話を聞かせてくださいよ~。
マスター、コークハイお願いねー。あ、ちょっとトイレ。
2012.01.06 Fri 08:21
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 西幻響子さん

コメント、一番乗りですよ~ん♪

あったんです。
フェイントだぁ~っ。とのご指摘を受けつつ、マスターは突き進むのです・・・

なかなか、恋愛とか、結婚とかって、難しいですね。
恋愛物に長編が多い理由がちょっと理解できるこの頃・・・

カフェ開店話は、ちょっと妄想し始めたらむっちゃ話が長くなりそうになったんで、即ボツになりました(笑)

> ※

西幻さんのお心遣い、とても嬉しかったです。物書きは本当に奥が深く、また、すばらしく楽しいものだと改めて感じ入りました。これからも精進いたします。ありがとうございます。
2012.01.06 Fri 08:29
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

そのリアクション、ありがとうございます^^

マスター、懲りない男、で行きます。それでこそマスターなのです!w

> マスターの放浪の話を、それをじっと聞く田島くんの情景が、すーーーっと入って来て、とても楽しかったです。

ありがとうございます。楽しんでいただけて良かったです^^

「!」で固まる田島の横、limeさんの席キープです。

マスター、limeさん、コークハイだって。中ジョッキね^^
2012.01.06 Fri 09:30
Edit | Reply |  

Name - ヒロハル  

Title - No title

旅行の話で引っ張っといて、さらりと五回目を出すとは・・・・・・。
マスター、策士だね。
いや、けいさんがか? 笑。

どうなったんでしょう。五回目。
2012.01.06 Fri 13:05
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ヒロハルさん

コメントありがとうございます。

ははは。引っ張りましたぁ?
マスターが策士です(笑)

五回目は次回に^^
2012.01.06 Fri 15:04
Edit | Reply |  

Name - 奏響  

Title - No title

けいさんこんばんは♪

マスターの傷心放浪旅も
葵さんの様子見てたら
そりゃほっとけないですよ!!!

5回目に挑む気持ち応援したいんだけど
カフェやってるってことは。o○あぅあぅ><;

続編楽しみです*^^*
2012.01.06 Fri 20:37
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 奏響さん

コメントありがとうございます♪

ですよね。。。

懲りないマスターの5回目を応援してあげてください^^
カフェやってるってことは・・・です(笑)

続編が続く・・・(腹痛が痛い?)
2012.01.06 Fri 21:24
Edit | Reply |  

Name - おなかぴーたろー  

Title - こんにちは~

カフェやっているってことがポイントのようですね!
5回目・・気になる。
このマスターはいろんな事を経験してますね~i-179
2012.01.08 Sun 12:46
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こんにちは~

おなかぴーたろーさん、コメントありがとうございます~。

> カフェやっているってことがポイントのようですね!

しっかり働かなくてはいけない、ということではあります。

> このマスターはいろんな事を経験してますね~i-179

はい。経験者は語る、です(笑)

5回目、もうすぐ披露です^^
2012.01.08 Sun 13:59
Edit | Reply |  

Name - fate  

Title - 実は…

最新記事を先に拝読していましました。
そして、一個ハナシが抜けているのは承知しながらも、えええええ~~~~っ、と1人で叫んでおったのだ…

で、西幻さんのコメントを見て「んんんっ?」とか思って、お名前を確かめ、びっくりした~、最初の一行、fateかと思ったわ~
とか呟きながら、けいさんのコメント欄で一番乗りを果たすことが最近のトレンドになっているのだな、とか妙な感慨を抱いたのであった…

あああ、どうでもイイコトを…
ということで(?)次へこのまま行きます…

(なんとなくテンションの低いfateくん。何故かは分からんが、少しは静かになって周囲が迷惑から解放されていることだろう…)
2012.01.09 Mon 18:19
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 実は…

fateさん、何だかとってもお久しぶりのような気がしますよ。
ほんの数日なのにね(笑)

雄叫びいや、雌叫び(ん?)をありがとうございます。
次回のfateさんのトレンドを楽しみにしていますね。

テンションの低いfateくん、はちょっとらしくないなぁ~。
いつものように、高めで行ってくださいな。
それで元気もらっていますから^^
2012.01.09 Mon 20:46
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

ふうむ。
旅は逃避にもつながる!!
私は旅が嫌いなので分からない心境だじぇ。。。

しかし、私が旅をしたがらないのもある意味逃避近いような。。。
それを考えると、旅をすること、その場所に居続けること。
どちらも永遠に課せられた放浪みたいなものですねえ。。。

居続けること。
旅をすること。
どちらも戦いですね。
2016.04.30 Sat 23:02
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

なんと。LandMさん、旅嫌いなのですか?
ふふ。嫌いなものを避けるという単純なものです。
避けられるのであれば、方法は何でも良いんですよね。
旅に出ても良いし、そうする必要がなければそれに越したことはない。
旅って、費用かかりますし(急に現実的になった・・・><)

おお。旅に出ても、その場に居続けても、永遠に課せられた放浪・・・
なるほど。どっちもありですね。
2016.05.01 Sun 11:49
Edit | Reply |  

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