オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 41 第二章・良い出逢い(1) 

「それって、元々の性格もあると思うんですけど、あいつはオーストラリアでワーホリしたときの経験がすごく大きい、って言うんですよね」

 花園は、大学を休学して出かけたワーホリの一年で、日本にいてはできないような経験をたくさんして、忘れられない思い出もできたと田島に語った。

「俺もそれがどんな経験だったのか、具体的に聞こうとするんですけど、あいつ、大事なところは話してくれないんですよ。その場にいなくちゃわからない、とか言って」

 マスターも花園からワーホリ時代の話をよく聞いていたので、その経験が花園にとってどれだけのものだったか、ある程度は知っている。

「それで田島君も、その場、っていうのを体験したくなったんだ」
「そんな感じですかね」

 花園はワーホリから帰ってきてから間もなく、マスターのカフェでバイトを始めた。

 カフェにオーストラリア原住民のアボリジニの使う楽器のひとつがディスプレイされていて、それが気に入ったと花園はバイトを申し込んできた。

 マスターは簡単な面接をして、週に一回、ディナー・タイムのある曜日だけ、ということでバイトに入れた。

 当時のカフェは、バイトの募集はしていなかったし、必要もなかった。けれども、マスターは花園と少し話をする中で、ワーホリの経験に裏打ちされたような花園の自立心の高いところが気に入って、雇ってみるかという気になったのだった。

「花園君はワーホリに行かなくても、じゅうぶん良い学生になれたと思うよ。でも、ワーホリの経験がさらに花園君を大きくしたっていうのは、何となくわかるな」

 マスターは、花園以前にも、何人かの大学生のバイトを雇ったことがあった。飲食店業を営む経営者としてバイトを雇う側の目から見ても、花園は他の学生とは物の見方、考え方が全く違っていた。

「もし今僕が起業でもしたら、花園君を共同経営者レベルで引っ張るかもしれない。判断力がピカ一だからね」

 マスターは、花園がカフェでバイトをしていた頃の事を思い出すように言う。

「それか、花園君自身が会社を興しそうだよね」
「俺もそれ、あいつが去年就職活動してたときに言ったんですよ。でも、起業には全く興味ないって」
「花園君らしいね」
「ま、あいつには海外留学っていう道もあるし。四月から就職する会社の課長さんのことをすごく良い人だって、その人について行きたい、ってことみたいですよ、今は」

 その会社の課長さんとは、花園が二年前、カフェの他にバイトをしていた居酒屋で大きな喧嘩が起きた時、それに巻き込まれて大怪我をした花園を助けた人のことだ。

 マスターも、花園が入院していた病院に見舞いに行ったところで、何度か顔を合わせたことがあった。

「僕は花園君からの話しか聞いたことないけど、すごく行動力のある人みたいだよね。その人についていくなら、花園君もエリートにでもなりそうだね」

 マスターは、花園が大学を卒業し、マスターの元から離れていってしまうのを少し寂しく思うようにそう言った。

「安心して、マスター。マスターのことも、尊敬してるって言ってましたよ」
「そりゃ、僕は面倒見の良いアニキだから当然でしょう」

 マスターが自信有りげにそう言うのに、田島は声を上げて笑った。花園とマスターの兄弟とも言えるほどの仲の良さに、羨ましいとさえ思う。

「花園って、すごく良い出会いを持ってるんですよね。マスターとか、課長さんとか、三条さんもそうだし」
「そうだね。僕にとっても花園君と出会えたのはすごく良いことだった。田島君とも出会えたし」

 マスターもしみじみと言って、田島に目を向ける。田島は「俺?」と意外そうな目をして小さく笑った。

「まあ、俺のことはどうでも良いとして、花園にそういう出会いがあるってことは、あいつ自身がすごい奴だからで、周りが寄ってくるってタイプだと思うんですよ」

マスターも「確かに」と共感する。

「そんな花園君と出会った田島君も、僕はすごいヤツだと思うよ」
「え?」
「花園君にとっても、田島君と出会えたことが、すごく良かったんだよね」

 マスターは思い出すように続けた。

「花園君、すごく嬉しそうに言ってたよ。『田島が絶対にやる。あいつはすげー』って。あの日、ほら、田島君が真っ赤なウサギ目でうちに来たの日の朝、開店前にそこでトースト食べながら」

 そう言ってマスターはカウンターのまさに今、田島が座っている席を指差した。

「なんだ、あのときにはもう俺のこと聞いてたんだ」
「そうそう。情報交換早いから僕たち」

 田島が花園の前で大泣きしたのは、まだほんの去年のこと。思えばあの晩、花園が田島の事を泣くまで問い詰め、過去を引きずる田島の心を解放してくれたからこそ、今の田島があるようなものだ。

 そう思うと、田島にとって花園という友人の存在が、やはりとても大きなものであると改めて認識するのだった。

「田島君と花園君とで、お互いに呼び合ったんじゃない?」

 今までこの二人をずっと見てきたマスターが、確信するように言った。



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 いや、何か、進展がなくてすみません。
 田島と徹さんとの関係をちょっと言っときたいかな、なんて思ってしまって・・・(本人のいないところで)

 恋の次は友情、っていう(っていうのか?)、青春物の王道ということでお許しを~

 (徹さんがカフェと居酒屋でバイトしていた頃のお話は、『秘密の花園』の方で)


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

いいな~~。
マスターと花園君の信頼関係も、田島君と花園君の友情も。
人生で、こういう関係になれる人がいるって、幸せですよね。

しかし、ここで花園君の印象が、またぐぐぐっと変わりました。
とっても空気を読む、いい子だとは思っていましたが、花園君、もしかしたら大物!
でも、そうですよねえ。
こうやって、人間関係を深く築ける人って、ぜったい有能な仕事人になる!
(仕事人って、殺し屋か)

友情~~。いいですねえ。
また酒が進みそうです。
ねえ、マスター、カクテルは作れる??
2012.01.12 Thu 08:22
Edit | Reply |  

Name - 西幻響子  

Title - No title

そりゃ、マスターは寂しいでしょうねぇ。
私がマスターだったら絶対寂くなると思いますもん。
花園くんのあの頼もしさ、さすがのマスターもかってるんですね。

田島くんが影響されて海外にいきたくなるのもわかる!
花園くんは田島君をほどよくリスペクトしてるんでしょうね~。
そういう関係ってすごくいい。お互いに成長しあってるかんじが。

田島くんはまだ若いんだし、色々と回り道・寄り道をしてもいいと思う。それでさまざまな体験をすれば、それがこれからの曲作りとかに生かされると思うし。

花園くんが卒業後いきなり起業しないで、会社に就職するのもとてもバッチグーな選択だと思う。やはり一度は社会というものを経験することが必要なのではないかと。

(・・・と、今回は真面目モードの西幻でした ^^ヾ)
2012.01.12 Thu 09:19
Edit | Reply |  

Name - fate  

Title - No title

おおおおおうっ
いいなぁ、いいなぁ!

この人間関係、底でいろんな絆が見えて素敵。
見えない部分でつながっている! あ、なんか金子みすずの詩みたいだ。
見えぬものでもあるんだよ? って。

男女でも友情ってあるし、恋人同士でも夫婦でも、こうやって、手をつないで同じ方向を見ているって姿が、良い。
繋がっている、という。
あ、これ、あかねさん宅のリレー小説みたい。
西幻さん、すごい! あれをよくぞまとめ上げました! 感動ものですよ、本気で。
どうやって収拾つけるんだろう?
うわ~、fateじゃなくて良かった…と実は思ってました(^^;

友情って生涯で、一番強い絆のような気がします。
そして、小説世界を綴る者同士のつながりってのも、なかなか良いモノだなぁ、とここ数カ月、しみじみしているfateでした。

こういう人間関係をさり気なく描けるけいさんは、ほんとにあったかいはあとをお持ちなんだろうと思います(^^)
2012.01.12 Thu 11:28
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

いいでしょう(笑)
こういう人間関係、実際にありそうって思います。

徹さんは、空気も読めるし、いい子だし、もしかしなくても大物です!
だから、田島の話より徹さんの話(『秘密の花園』)を先に描きました(笑)

徹さんの、必殺仕事人のお話は、『怒涛の一週間』の方で。
壮大なる殺し屋サスペンス、ではないです。(が、しっかり宣伝・笑)

友情~~。もうちょい進みます。

> ねえ、マスター、カクテルは作れる??

lime姉貴には何だって作っちゃいますよ。
ウォッカでも、ドライジンでも。ね、マスター^^

けど、ここ、カフェなのに、コーヒーとかティーとかの話が全くないんですけど・・・
時間帯が悪いのか・・・
2012.01.12 Thu 12:31
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 西幻響子さん

コメントありがとうございます。

徹さんとマスターは義兄弟ですから、大丈夫です。
社会人になっても、ちょくちょくカフェに顔出しに来ますよ。

田島と徹さんはお互いに影響し合っている良い関係です。
二人とも良い感じに成長しています。かな。
そう描いていけるように頑張ります(笑)

> 田島くんはまだ若いんだし、色々と回り道・寄り道をしてもいいと思う。それでさまざまな体験をすれば、それがこれからの曲作りとかに生かされると思うし。

そうそう。これなんです。高校時代は焦って挫折していますから。
西幻さん、よくわかっていらっしゃる(感謝)

> 花園くんが卒業後いきなり起業しないで、会社に就職するのもとてもバッチグーな選択だと思う。やはり一度は社会というものを経験することが必要なのではないかと。

そうそう、これも、よくぞ(感謝No.2)

> (・・・と、今回は真面目モードの西幻でした ^^ヾ)

え、いつもは不真面目なの? いや、前言撤回。 すいませぇんっ!!!
(またもや天然炸裂。けど、気付いたので、お許しを~~)
2012.01.12 Thu 12:48
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - fateさん

コメントありがとうございます。

いいでしょっ!

> 見えない部分でつながっている! あ、なんか金子みすずの詩みたいだ。

おぉ、なんと詩的な。金子みすずを引き出すfateさんが素敵^^

あかねさん宅のリレー小説、私も拝見させていただきました。感動ものでしたね。
fateさんも是非。

> そして、小説世界を綴る者同士のつながりってのも、なかなか良いモノだなぁ、とここ数カ月、しみじみしているfateでした。

同感。良いモノですよねぇ。私もしみじみ感じておりまする。。。

> こういう人間関係をさり気なく描けるけいさんは、ほんとにあったかいはあとをお持ちなんだろうと思います(^^)

やた。fateさんにまた褒められた。ありがとうございます。
褒められて伸びるわたちっ♪
2012.01.12 Thu 13:07
Edit | Reply |  

Name - ヒロハル  

Title - No title

マスターにしても、花園君にしても、行動力のある人って本当にすごいなと思います。

私は慎重で臆病なタイプなので、どうしても先のことばかり考えて
なかなか踏み出せないんですよね。

花園君にとっても課長さんのように、
誰かとの出会いがきっかけで人生が変わっちゃうこともあるんですよね。
私は今のところ、人生が変わるような人には出会えていません。

これからも会えるかどうか疑問です。
2012.01.12 Thu 13:14
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ヒロハルさん

コメントありがとうございます。

田島もなかなか一歩が踏み出せなくて、徹さんに説教されて泣きました。
ヒロハルさんと田島はつながっていたのか。徹さんを投入しましょうか(笑)

人生が変わるような人は、周りにたくさんいらっしゃると思いますよ。
気付いてない振りしてないで。ほらほら。

> これからも会えるかどうか疑問です。

何をおっしゃる。4月に会える予定でしょう。人生変わりますから^^
2012.01.12 Thu 15:42
Edit | Reply |  

Name - ansheen  

Title - No title

あけましておめでとうございます!
ジュネーブの深夜食堂は、全員がまだ帰省から戻っていないので
発信を開始していませんが、(遅くなりましたが)ご挨拶に伺いました!
そしたら、すごい話が進んでいて、ビックリ(笑)。
マスターの話も意外でしたし、花園君、良い男になりそうですね。
続きを楽しみにしています!

では、改めて、
今年もどうぞ宜しくお願いいたします!
2012.01.12 Thu 16:09
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ansheenさん

あけましておめでとうございます!

皆様帰省していらしたのですか。再開をお待ちしていますね。
お土産の持ち寄りとかありそう?

『夢叶』もどんどん(多分?)お話が進んでいきます。
田島の成長を見守ってあげてください(遅いんだけど・・・汗)

こちらこそ、今年もどうぞ宜しくお願いいたします!
2012.01.12 Thu 17:04
Edit | Reply |  

Name - 奏響  

Title - No title

けいさんこんばんは♪

田島君と花園君の良い刺激を受け合える
友情ってイイですね。
卒業後の分岐点からどう進んでいくのか
楽しみです☆
2012.01.13 Fri 23:10
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 奏響さん

コメントありがとうございます♪

田島と徹さんはうまく刺激し合っているみたいです。

卒業後は物理的には離れますが(田島が旅に出るので)
でも、気持ちはつながったままで行きます。(ちょいネタバレ)

二人の友情をこれからも見守ってあげてくださいね☆
2012.01.14 Sat 06:01
Edit | Reply |  

Name - おなかぴーたろー  

Title - こんばんは~

友情・・
私生活でも、いつまでも大切にしていきたいです!

田島クンの夢は
少しずつ近づいて行ってるんでしょうね~
2012.01.15 Sun 00:50
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こんばんは~

おなかぴーたろーさん、コメントありがとうございます。

> 友情・・
> 私生活でも、いつまでも大切にしていきたいです!

本当ですね。
このブログ上でのご縁も、本当に不思議なものですが、大切にしていきたいです。

> 田島クンの夢は
> 少しずつ近づいて行ってるんでしょうね~

はい。少しずつですが、動いています。
遅いんですけど、これからも見てやってあげてください^^
2012.01.15 Sun 16:47
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

いや、そういうところが魅力なんだと思います。
なんていうんですかね。
私も同じなんですよ。
その空気、やり取りがすごい好きなんですよ。
情緒的で、なんでもない風景。
そう言う雰囲気が好きなんですよね。
この作品は。

・・・最近はなかなか読めずすいません。
仕事がね・・・忙しいのとトラブル続きでですね。。。
余力が・・ないんですよ。。。

それはそうと。
GH1900年前半部終わりました。
今まで読んで頂き誠にありがとうございます!!
2012.04.14 Sat 17:45
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

おお、それは・・・
お褒めいただいている、と思って良いのでしょうか。
ありがとうございます^^(有頂天)

私も仕事忙しくて、余力などなく、あっぷっぷ、です(^^;)
マイペースで行きます。

トラブルは大変ですね。
どこかで休息を取ってくださいね。

> それはそうと。
> GH1900年前半部終わりました。
> 今まで読んで頂き誠にありがとうございます!!

おっと、それは素晴らしいですね。
読みきりに行きます!
2012.04.14 Sat 20:27
Edit | Reply |  

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