オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 49 第二章・さやか(4) 

 長谷川の葬儀には、番組関係者、学校関係者、ファン、そしてメディアから多くの人が集まった。

 田島は、葬儀の手伝をしながらも泣きが収まらず、長谷川の家族も心配するほどだった。壊れた水道の蛇口から細々と水が流れるように、涙をこぼし続ける田島のそばには、鏡がずっと一緒にいた。

 人気オーディション番組『バンド甲子園』で優勝した高校生バンドのギターがデビュー目前に事故で亡くなり、悲しみに暮れるバンドのメンバー、という絵柄はメディアの格好の狙いとなり、長谷川の葬儀だというのに、マスコミのカメラがボーカルの田島を追っていた。

 そんな中、自らメディアの前に出て、出来るだけのコメントをしていたのが鏡だった。

 鏡は、今の田島はマスコミに対応することが出来ないから、自分が話をする、とはっきりと告げ、できるだけの取材を引き受けた。

 鏡も田島と同様、当事者の一人として事故を目撃していたから、レポーターたちからたずねられる興味本位の質問にも、ほとんど答えることが出来た。

 大体、ここは長谷川の葬儀の場なのだから、それなりの礼儀をわきまえて欲しい、とさえカメラに向かって訴えていた。それは放映ではカットされてしまったのだけれども。

「あのときの成ちゃんは大人だったね。今思い出しても、同じ高校生だったとは思えないくらい」

 さやかが当時を思い出す。長谷川の葬儀の前後は、高校にもマスコミの取材が殺到し、鏡と高校とですべてに対応した。田島はメディアに出られる状態ではなかった。

「成太郎はずっと俺を守ってくれていた。俺はただ泣くだけで使い物にならなかった」

 長谷川の葬儀がすんでからしばらくして、さやかが軽音楽部の部室に行くと、部室のカーペットの上に、田島がギターを抱え胡坐をかいて座っていた。

 田島の前にはラップトップのコンピュータが置かれ、そのコンピュータを挟んで鏡が向かいにやはり同じように座っていた。鏡の前にはスネア(ドラム)が置かれていた。

「それは何かの儀式のようでした」

 田島は自分のコンピュータに入っていた曲を、一度歌ってはデータを消去する、という作業をしていた。鏡はスティックを握り、田島の声をかき消さないよう、軽くリズムを打って演奏に合わせていた。

 田島は終始伏せ目がちで、時には笑みを浮かべ軽快に、時には涙を流しながら、歌っては消し、歌っては消しを繰り返していた。感情に揺れる田島に視線を向けながらも、鏡はただ合いの手を打つように淡々とリズムを刻んでいた。

 さやかはそんな二人を見守るように、二人から少し離れたところに腰掛け、休みなく歌い続ける田島の声に耳を傾けた。何百曲とある曲を、一度ずつとはいえ、歌ってから消すという作業には数日の時間がかかった。

「最後にコンピュータのスクリーンに残ったのは、『バンド甲子園』でやったときの曲目が入ったファイルでした」
「そのファイルに手をつけてからの祥吾と成ちゃんはすごく穏やかだったのに・・・」
「瞬に聞かせてやるつもりでやっていたんだよ。成太郎もそうだったと思う」

 田島はあくまでも変わらず、ファイルに入っていた曲目を歌っては消す、という作業を続けた。

 さやかは、田島と鏡が演奏する曲の一つ一つを聴きながら、長谷川を含めた三人が『バンド甲子園』でライブをやっていた頃の姿を思い出して切なかった。

 最後の最後に『バンド甲子園』で優勝したときの曲が残った。

「これで最後だ」と無表情でつぶやく田島に、鏡が小さく頷いた。その曲を演るのに二人は視線を合わせる必要はなかった。

 田島は静かにその最後に残った曲を弾き始めるが、何度もイントロを繰り返すばかりでなかなか歌い出さない。

 鏡が田島の顔を覗くと田島は目を閉じていて、その目じりにうっすらと涙を浮かべているのが見えた。

 やはりこの曲を演るのには、田島も思い入れがあるのだろう。鏡だってそうだ。この曲で自分たちはデビューし、夢を叶えるずだったのだから。

 傍で田島と鏡を見守っていたさやかは「この曲が聴けるのは今日で最後になる」と確信した。



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 えっと・・・もうちょいこんな感じで行きます。。。
 田島にはここで過去を清算してもらいます。

 引きずるものは何もなく、次のステージへと進んでもらいたいからです。
 しばしお付き合いを・・・(^^;)


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - 奏響  

Title - No title

けいさんおはようございます♪

あるんですよね…
ホントにショックが大き過ぎて
声が出なくなる事が…身近にいました。。。

辛かった思い出を振り返り
しっかり受け止める事もこれからの
人生にとても大事な過程だと思います。

田島君の新たな出発までに*^^*
2012.02.21 Tue 10:58
Edit | Reply |  

Name - fate  

Title - 重いです~

このターンは重いっすね。
いや、おちゃらけてる場合じゃないっつーか、これでも、真面目なんすけど。

一度歌って消す。
すごい。なんか厳粛な儀式、っての分かります。
そういう儀式、本当にありそうだし。(どこに?(--;)

これが唄じゃなかったら、文章だったら、読んで消去、絵だったら、眺めて破る。そんな感じでしょうか。
なんか、その場の空気に取り込まれて一緒に消去されそうな気分です~~~
2012.02.21 Tue 11:10
Edit | Reply |  

Name - ヒロハル  

Title - No title

ああ・・・・・・悲しいですね。

仲間の死で、田島たちの音楽人生は本当に終わってしまったんでしょうね。

二度とやりたくなくなったって不思議じゃないですもん。
2012.02.21 Tue 14:17
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

田島くんにとって、瞬くんは自分の音楽、そして青春の一部だったんでしょうね。
その一部が欠けてしまっては、永遠に完成された音楽は作れない・・・と。
瞬君の存在の大きさが分かります。

一曲ずつ歌って消す。
こてはものすごくエネルギーの要る消去作業だと思います。

それは完全消去なのか、それとも自分の中へ焼きつけていたのか。
田島君にしか分からないですよね。

そっか、ここでこうやって過去の重荷をおろしていくんですね。
本当に旅立っちゃうのか~><
2012.02.21 Tue 19:31
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 奏響さん

コメントありがとうございます♪

あるんですよ… 出なくなっちゃうんですよ。
いや、私ではなく田島が・・・

> 辛かった思い出を振り返り
> しっかり受け止める事もこれからの
> 人生にとても大事な過程だと思います。

そうですね。田島は今まで止まっていたので、
動き始め、すべてを受け入れ、先に進もうとしています。

新たな出発の準備を始めています *^^*
2012.02.21 Tue 21:15
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 重いです~

fateさん、コメントありがとうございます。

次回の方が、もっと重いよぉ~(←ちょい予告・ホラーではない)

ホント、そんな儀式がありそうですね(ホラーではない・No2)

そんな感じですね。そう考えると、よくありそうですね(?)

ちなみに田島はこのあとご存知の通り、燃やし物をして、さやかに怒られました。。。

fateさんは消去されてはいけないですよ~~~
2012.02.21 Tue 21:31
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ヒロハルさん

コメントありがとうございます。

ここは悲しいです。もう、ガックリ、の場面です。

高校生当時の田島は今よりも弱くて、一人では何も出来ない奴でした。

時がたち、ちょっとは成長しないとね。
2012.02.21 Tue 21:43
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

田島にとって瞬は、一部でもあり、ある意味全てでもあり、
説明できないほどの存在でした。
・・・てか、私がその、説明できない人(^^;)

消去作業は時間をかけてやります
田島の思いは田島にしか分からないですね。
だから、自分で決めて、自分でどうにかしないといけないわけです。

旅立つ前に、荷物をおろしていきます。
かわいい子には旅をさせましょう^^
2012.02.21 Tue 22:10
Edit | Reply |  

Name - おなかぴーたろー  

Title - こんばんは~

長谷川の死はよほどツラかったのでしょう
ショックが大きすぎて、この頃は何も出来ない
そんな状況が伝わってきます
歌っては消し、歌っては消し・・
そんなことの繰り返しで
自分自身を慰めていたのかもしれないですね。
2012.02.23 Thu 21:07
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こんばんは~

おなかぴーたろーさん、コメントありがとうございます。

田島はこの時はまだ、自分のせいで瞬が死んだと後悔していたので、
ショックで辛くてずっと泣いていました。

瞬を失って、夢破れて、
どうしたら良いのかわからず悶々としていた時期です。

ぴーたろーさんも、成ちゃんと一緒に
田島を慰めてあげてください。。。
2012.02.24 Fri 08:14
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - 再会

大学生の青年が、今よりさらに若いころ。
もっともっと「青春」してて、つらいこともあったのですよね。
さやかさんは気性が激しいみたいだけど、そういうのもいいなぁ。
すごくドラマティックです。

ショックで声が出ないというか、うちの猫はあるとき、ストレスでまともに声が出なくなりました。
猫の話で恐縮ですが(^^

立ち直るには時間のかかる出来事ですものね。
田島くん、私も応援してるよぉ。
2013.02.23 Sat 11:46
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 再会

あかねさん、コメントありがとうございます。

ジャンル「青春」です^^
色々とわけのある奴が主人公です(^^;)

立ち直り時間がかかり、先に進むのも遅い。
作者の描くのも遅い・・・(-_-;)

あかねさんからの応援をいただき、嬉しいですよぉ^^

え、猫ちゃんがストレスで・・・
ミャーと言えずにどうなったのでしょうか。
今は大丈夫なんですよね。

猫も人も同じなんですねぇ・・・
2013.02.23 Sat 17:09
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - 

ううむ。重い話ですね。
確かに人を想うということを教えてくれる話ですね。
所謂、追悼・・・という言葉が当てはまるのでしょうけど。
人が人の死を受け入れるというのは結構時間がかかるものなんでしょうね。
私は職業柄、そういうのがないものなので、あれなのですが。
人の死の大切さを教えてくれますね。
2016.05.14 Sat 16:13
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

このさやかと思い出を語るシーンは自分のお気に入りの一つです。
この時田島はまだ多感なティーンだったので、いろいろと大変だったようです。
(↑と、私も他人事・・・ ^^;)

LandMさんは、想像なのですが、支える方の側なんですよね。
そのサイドですとまた見方が変わってくると思います。
私もちらりとそちら側に関わっているので何となく。

いつも丁寧に読んでくださって感謝です。
2016.05.14 Sat 17:59
Edit | Reply |  

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