オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夢叶 53 第二章・卒業(1) 

 田島のラストライブが終わってから、ほんの数日後の金曜日、田島と花園が四年間通った神奈川国立大学の卒業式があった。

 卒業式は大学講堂で執り行われた。伝統あるこの大学の敷地内にある建物のほとんどは、新しくモダンに建て替えられている。けれども、講堂だけは常に補修修理が施され、神奈川県の重要文化財にも指定される歴史建造物として保存されていた。

 入学式や卒業式のような伝統的な儀式や特別なセレモニーなどが行われる時だけ、正面の重厚な扉が学生一般に開かれる。

「泣くな」

 隣に座っている田島の鼻をすする音が聞こえ、花園がからかう。田島は受け取ったばかりの卒業証書を開いて、さっきからずっと見つめていた。

「学長の話と首席のスピーチに感動した」
「聞いてねえクセに」
「ここ、寒くね?」
「寒くねえ」

 ごまかそうとするなんて今更、と花園はおかしくてまた笑いそうになった。

 夕刻の卒業謝恩会は横浜にある大学らしく、みなとみらいにあるインターコンチネンタルホテルで行われた。

 学部主催の公式パーティーだったので、飲みすぎず、羽目をはずさず、ゼミの仲間たちと本当に最後の別れを惜しんだ。



 大学の卒業式が終わった翌日、田島は長谷川の実家を訪ねていた。大学合格のときは、電話で報告しただけだったので、長谷川の家まで来るのは高校卒業以来五年振りだった。

 長谷川の家は閑静な住宅街にあり、IT関連企業に勤める父親が部長職に就いたときにリフォームしたという、白い壁のモダンな造りをしている。

 玄関でインターホンのボタンを押すと、ピンポーンと心地よいチャイムが鳴った。

「祥吾君、まあ・・・。さ、上がって」

 ドアを開け迎えに出た長谷川の母親は、玄関口に立つ田島を目にするとじわっと涙を浮かべた。

 あらかじめ家を訪ねることは、電話で連絡を入れていた。リビングには土曜日で会社が休みの父親も田島の到着を待っていた。

「祥吾君、大学卒業おめでとう」
「おばさん、おじさん、ずっとご無沙汰してすみませんでした」
「私たちよりも、瞬のほうがきっと寂しがっていたわ」
「卒業証書、見てもらえますか?」
「もちろん。そこに座って」

 田島はリビングのコーヒーテーブルの上に、昨日受け取ったばかりの大学の卒業証書と、花園ら友人たちと撮った写真などを並べて、長谷川の両親に見せた。

 そして、大学では四年間友人たちと楽しく過ごしたこと、ビジネスを学ぶのが意外に面白かったこと、三年の終わりから大学近くのカフェでライブをやっていたこと、就職はしないで海外に旅行に出ること、などを話した。

「海外見聞に出かけるのも良いことだね」
「見聞、なんていうわけでもないんですけど」
「今の若い人の間で流行っているみたいね。この間テレビでやってた」
「瞬の分もいろいろ見てきてよ」
「あ、瞬は・・・」

 そういえばと、大事なことを突然思い出したかのように、三人とも顔を見合わせて失笑する。

 田島は、リビングの隣にある和室に案内された。立派な仏壇の前に正座して手を合わせると、まずは大学を無事に卒業したことを報告する。

「瞬・・・久しぶり」

 田島は、仏壇の上にある長谷川の遺影を見上げた。それは、高校の卒業式で級友として長谷川の卒業証書を受け取ったときに、田島が抱えていたものだ。

 田島は長谷川のギターを持参していた。足を崩して胡坐をかいて座り、ギターを抱えてピックをつまむ。

「やっとこの曲をまた歌えるようになった。聞いてくれ」

 長谷川の前で、田島はゆっくりと『バンド甲子園』で優勝したときの曲を弾き始めた。



にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
にほんブログ村   ワンクリックの応援ありがとうございます。 Thanks in advance!

人気ブログランキングへ  Thanks again for the click!




 やっと卒業までこぎつけた・・・(--;)

 瞬と5年ぶりのご対面。言葉ではなく魂で交信する二人?
 宇宙人レベル? いやいや、そういう系(どういう系?)ではないですから・・・(^^;)


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
関連記事
スポンサーサイト

Comment

Name - lime  

Title - No title

田島くん、瞬君の家族との付き合いも、ちゃんと続けていたんですね。
なんて優しい子。
瞬君のご両親にとっては、田島君は、瞬君の思い出をいっぱい持ってる、かけがえのない子なんですもんね。
泣いちゃうよね、会いに来てくれたら。

遺影の前で、あの曲を弾く。
いいシーンです。
きっと喜んでるね、瞬君。
この歌は宝物だね。
2012.03.09 Fri 18:36
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

田島、良い子でしょう。なんちて(^^;)
瞬の両親にもだけど、やはり瞬に挨拶をしないとね。

> 遺影の前で、あの曲を弾く。
> いいシーンです。

おお。何だかlimeさんに褒められたような気分^^

> きっと喜んでるね、瞬君。
> この歌は宝物だね。

青春時代の宝物ですね。
良いなぁ、田島、そんなものが残されていて・・・
いやこれ、お話、お話・・・(^^;)
2012.03.09 Fri 20:18
Edit | Reply |  

Name - ヒロハル  

Title - No title

「俺は前に進みだすぜ」という田島の決意ですね。
きっと瞬も喜んでいるはず。

長い道のりでしたね。
2012.03.09 Fri 21:18
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ヒロハルさん

コメントありがとうございます。

> 「俺は前に進みだすぜ」という田島の決意ですね。
> きっと瞬も喜んでいるはず。

お陰さまで、やっと前に進めるまで来ました。
そうなれた、ということを瞬に報告しました。

> 長い道のりでしたね。

いや、ホント、長かったですぅ~~(^^;)
2012.03.09 Fri 21:59
Edit | Reply |  

Name - fate  

Title - いやいや、そういう系(どういう系?)ではないですから・・・(^^;)

↑ふふふふ。
なんか、突っ込みたかったけど、いろいろマズイので、今は静かにしときます(--;

>「俺は前に進みだすぜ」という田島の決意ですね。

↑さすが、ヒロハルさん。
一言でズバリと切り捨てて…あ、じゃなくって、ズバリと言い当ててますね。
それがすべてですなぁ、きっと!!!

>「やっとこの曲をまた歌えるようになった。聞いてくれ」

↑聞こえていますともさ。
だって、宇宙と交信して…あわわ。
いやいやいや。ほら、魂って波動をキャッチするから、きっと、こう、細胞レベルで…
いや、だから、はい。
きっと天国まで旋律は届きます。
想いは旋律に乗りますから。
(あああ、危なかった…)


2012.03.10 Sat 10:10
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: いやいや、そういう系(どういう系?)ではないですから・・・(^^;)

fateさん、コメントありがとうございます。

ははは。このお話はあくまでもクサ青春系で行きますよ。
ミステリーやサスペンスのようなトリックはなく、ホラーでもないでーす。

過去話はちょい暗かったので、これからは太陽の下に出ます。

> だって、宇宙と交信して…あわわ。
> いやいやいや。ほら、魂って波動をキャッチするから、きっと、こう、細胞レベルで…

瞬と祥吾で、応答せよ、ですかね。そういう旅に行くのか(^^;)
SFでもファンタジーでもなく、あくまでも、クサ~く王道行きます。。。

> きっと天国まで旋律は届きます。
> 想いは旋律に乗りますから。
> (あああ、危なかった…)

ははは。まとめをありがとうございます。
田島の想いは瞬に理解してもらえたでしょう。
(どんな想いなのかは複雑すぎて不明)(--;)
2012.03.10 Sat 12:01
Edit | Reply |  

Name - おなかぴーたろー  

Title - こんばんは~

長谷川クンの家に寄って
親御さんに卒業証書を見せるあたりは
グッと来ますね!
遺影の前で
田島クンは想いを込めて
歌ったんでしょうね。
2012.03.12 Mon 20:03
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こんばんは~

おなかぴーたろーさん、コメントありがとうございます。

高校ぐらいまでの付き合いって、案外家族ぐるみじゃないかな? どうなのかな?
瞬と田島の場合もかなり近い付き合いだったので、お互いの家族も知っていました。

瞬は大学に行きたがっていたけど、行けなかった。
それで瞬の代わりに田島がご両親に卒業証書を見せた、という場面です。

だから何が何でも卒業しなくてはならなかった訳です。
義理堅いでしょ。(ヤのつくキャラではない)

> 遺影の前で
> 田島クンは想いを込めて
> 歌ったんでしょうね。

どんな想いを込めたんでしょうねぇ~
5年分なので、詳細については不明(^^;)
2012.03.12 Mon 21:23
Edit | Reply |  

Name - LandM(才条 蓮)  

Title - No title

そういえば、大学の卒業式には出てないですね。
あまり興味もなかったので。
あまり感触とかはないですね。
大学は。
高校まではまだあったんですけどね、、、。。。
2012.06.17 Sun 21:49
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandM(才条 蓮)さん

コメントありがとうございます。

> そういえば、大学の卒業式には出てないですね。

ほう。そうなんですか。
私も式自体はあまり覚えていませんが、
はいからさんの格好をしたのは覚えています^^
2012.06.18 Mon 00:09
Edit | Reply |  

Add your comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。