オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 70 

田島はビーチの目の前にあるホテルに入り、ビストロでローストビーフとビールを注文した。

―――肉、厚・・・

運ばれたステーキは日本のものより格段にボリュームがある。ナイフとフォークを使うのに慣れるのはまだ時間がかかりそうだが、柔らかく焼きあがったローストの味は田島のすいた腹に至福の時を与える。

―――さすが本場のオージービーフ。

ビーフにかかっている薄茶色のソースは、いかにもホームメイドだ。滑らかなクリームのように舌の上でとろける。

同じ皿に載っているマッシュポテトやコーンなどの温野菜にもそのソースを絡ませ、肉と一緒に食べる。

―――うめぇ。

ビールを飲みながら夕食を堪能する。長期休暇でもない今の時期は、ビーチサイドにあるホテルのビストロといえども客は少ない。

一人で食事をするのに肩身の狭い思いをすることなく、目の前の皿を平らげると、建物の奥のほうから音楽が聞こえてきた。

―――ライブか?

何となく引かれるように田島は席を立ち、バーでもう一本ビールをたのんでから音楽が聞こえるほうへ進んで行った。

―――カントリーだ。

バンドはギター、ベース、ドラムス、キーボードにバンジョーとバイオリンという6人編成で、誰もが良く知るアメリカン・カントリーを演奏している。

田島もビールを片手に壁際に立ち、バンドのリズムに合わせるうちに、自分も知っている往年のヒットソングを一緒に歌い始めた。

“Hey, boy. Come and sit down”

しばらく立ち見で遠めにライブを見ていると、ポンポンと肩を叩かれた。Tシャツに半ズボンのラフな格好をした男が、ビールを片手にニコニコして自分のテーブルのほうへ来いと誘ってきた。

ビーチサンダルをペタペタと鳴らして先を行くそのオージーは、田島を前のほうのバンドに近いテーブル席へ案内した。

“Hey, what’s your name?”
「は?」
“Your name. Name!”
「オー。ショーゴ、ショーゴ」
“Shogo. Nice name.”
「あ、サンキュー」

男はテーブルにいる何人かに田島を紹介してくれて、にこやかに握手を交わした。みんなフレンドリーだ。

真夏でもないのに、それぞれTシャツにビーチサンダルという軽い服装だ。地元のなじみ客なのだろうか。バンドの演奏に陽気に拍手や声援を送っている。

「ヘイ、ワッチャネーム?」
“Edward.”
「え? 何?」
“Edward!”
「ん? エド?」
“Yeah, Eddie.”
「エディー!?」

―――こいつもエディーかよ。

エディーというと、昼間に水をかけられた垂れ耳のゴールデン・レトリバーを思い出してしまうが、このエディーは、アーモンド型の目はしていない。薄暗くて顔立ちが良くわからないが、思ったより若そうだ。

エディーも周りのみんなもバンドの演奏するカントリー・ミュージックにノリノリで、それに合わせて田島も一緒に歌った。

“Here you are, Shogo.”

エディーは田島が自分の横で歌うのが気に入って、「飲め、飲め」と何度もビールを勧めてくれる。

「サンキュー」

オーストラリアのビールは軽くて何杯でもいける。飲みながらエディーが歌うのを聞くが、笑ってしまうくらい下手くそだ。でも、誰もそんなことは気にしない。

バンドは始めは懐かしのクラッシック・カントリーをやっていたが、だんだんと最近のヒット曲をやり始めていた。

“Yeahhh!”
「イエーーイ!」

最近のカントリーは、ポップ調やロック調でノリが良い。田島はエディーたちと肩を組んでガンガンに歌った。

エディーがくれるビールを何本も飲み、酔っ払って陽気になった田島は英語がわからない曲も張ったりで歌う。

「おい、エディー、ユーアーグッド!」
“You’re awesome, Shogo!”
「はぁ?」

時々エディーの言う英語が分からなくても、そんなことを気にするより、みんなと飲んで歌って騒ぐ時間を楽しんだ。

そうしているうちに、バンドは自分たちのオリジナルはやらずに、カバーだけでステージを終えた。それでも来ていた客は何度もアンコールを送り、名残を惜しんだ。

“Shogo. We have to get out.”

エディーがドアのほうを指差す。ライブが終わった後も、みんなと余韻を楽しむようにその場に居座っていたが、いい加減、出て行かなくてはいけない時間になったらしい。

追い出されるようにホテルを出たのは深夜。それぞれ家路につく。みんな歩いて帰るところを見ると、やはり、地元の住民だったようだ。

―――オージーはみんな、月曜から飲んだくれるのか。

田島もかなり飲んだくせに、自分の事は棚に上げる。

“Shogo, nice to see you. Have a good trip in Australia!”
「え? ああ、サンキュー、エディー」

あんなに仲良く一緒に騒いだエディーも、外に出た途端に軽く「バイ」と言って行ってしまった。

辺りは波の音が弱く聞こえる以外はしんと静まり返っている。夜中なのだから、それが当たり前だ。

狐につままれたような、エディーにつままれたような、なんだか夢のようなパーティータイムを過ごしたような、そんな何ともいえない余韻だけが残った。

―――どうしよう・・・

エディーと別れたあと、田島は月明かりもないまっ暗闇の深夜のビーチに、一人取り残された。



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田島、夜中にそんなところで、どうするん?


『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

またまた、エディ。
あ、このエディは人間だった^^
エディに園がありますねえ。
でも、なんとも自由気ままで楽しそう。

自然と田島君、人を呼んじゃう体質なのか、それともこの土地だからなのか。どっちもだね、きっと。
とにかく楽しい1日を過ごせてよかったね。
でも、どうすんだ?ビーチに一人きり・・・。
また、なにか出会いがあるかもね。

ここ最近、仕事で猛烈にストレスがたまってるので、ふっと田島君が羨ましくなります。
ああ、どこかに逃避したい~~。
2012.04.13 Fri 17:08
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

エディーと仲良しになりました。
エディーが人懐っこくてね。どっちのエディーも^^

観光地めぐりも楽しいですが、こうして人と出逢うのも良いですね。
田島は結構誰とでも上手くいけるタイプ。かな。

> でも、どうすんだ?ビーチに一人きり・・・。
> また、なにか出会いがあるかもね。

ホント、どうすんの? 次回に(^^;)

limeさん、お仕事お忙しいのですか?
私もこれから忙しくなる予定で・・・(--;)
そうなる前に、バナーとかをつくったりしたわけで・・・

田島はビーチにいても、私はビーチとは全く離れたところに・・・
なんでだぁ~~。妄想で我慢します・・・
2012.04.13 Fri 18:53
Edit | Reply |  

Name - おなかぴーたろー  

Title - エディとエドワード

肉・・美味しそう!
読んでたら食べたくなってきた!

エドワード・・ってお名前の方々って
総じてエディってアダ名みたいに言うのかな。
それとも、
「エドワードって言ってんのに・・もぅ、エディでイイよ。」って
ことなのかな。

田島クン・・知らない異国の地で夜中一人歩きはあぶないよ!
って、けいさんの国だから大丈夫かi-229
2012.04.13 Fri 21:30
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: エディとエドワード

おなかぴーたろーさん、コメントありがとうございます。

本場はおいしいですよぉ~^^
厚みは2センチ近くあります。けど、食べちゃうっ^^

みんなエドワードのことをエディって呼んでいます。
アレクサンダーはアレックス、サミュエルはサム、トーマスはトム、ベンジャミンはベン、ベンはベニー・・・
おなかぴーたろーさんは? ぴーたー? どうでしょ?

田島の知らない異国の地で夜中一人歩きはあぶないですねぇ~
翌朝、海にぷかり・・・とか・・・
いやいや、そしたら、お話終わっちゃいますから(--;)
2012.04.13 Fri 22:06
Edit | Reply |  

Name - ソライエ  

Title - ローストビーフ

全く、内容と関係ないコメントです(苦笑)
ローストビーフ大好き!
オトナになってから好きになった。
それも30越えてから。。。
ホースラディッシュ+クレソン。。
なんて素晴らしい組み合わせだ!
ローストラリアに行ったときは食べなかった。
ねえ、ねえ、やっぱりオイシイ?
2012.04.15 Sun 06:41
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: ローストビーフ

ソライエさん、コメントありがとうございます。
めっちゃ関係あります^^

ローストはすばらしいです。
ビーフ、ラム、チキン、どれも激ウマですよ。
上にかかるソースがまた、堪らないっす。。。

ローストラリア! ナイスなタイピングです^^
本場にオイシイのを食べに来なきゃ。
きっと幸せになれますよ^^
2012.04.15 Sun 10:17
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - 青春してますね

ビッグマックを食べて眠くなって、バスの中で熟睡してしまって降りたところが綺麗な海。海と犬と音楽と。
映画みたいだなぁ。
私もこんな経験、してみたいです。
いえ、私だと映画のシーンにはなりませんが。

オージービーフとビールと音楽ってのもいいですね。
実は私は肉もビールも嫌いなのですが、この空気の中でライヴを聴きながら、だったらおいしいだろうと思えます。

田島くんったらこのあと、野宿? それとも……?
こんな経験でまた素敵な曲を書いて下さいね、と無責任にも言っておきます。

2013.04.04 Thu 11:29
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 青春してますね

あかねさん、コメントありがとうございます。

お約束な展開となりました(^^;)
でも、旅行をする時って、どこに行っても映画みたいな体験ができそうな・・・(?)
みんなムービー・スターだよー。

なんと、あかねさん、お肉もビールも・・・
じゃあ、オージーワインとシーフードで。お勧めです^^

> 田島くんったらこのあと、野宿? それとも……?
> こんな経験でまた素敵な曲を書いて下さいね、と無責任にも言っておきます。

このあとはですねぇ・・・あかねさん、するどいなぁ・・・
このあとも、田島の曲作りを応援してあげてくださいね^^
2013.04.13 Sat 17:42
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - 

私もね。アメリカのお肉は信頼しきれない部分があって、どちらかというとオーストラリアの肉に手が伸びますね。安くてボリュームもありますからね。結構おいしそう。。。と思いながら見ております。う~~む、若い頃のように肉をがつがつ食べたいなあ。。。ハンバーガーやハンバーグ・・・食べると太るしなあ。。。
2016.06.11 Sat 09:55
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

Ausではアメリカ肉はほとんど見ませんね。
マクドナルドもAusビーフ^^

ステーキは最高です。
うまいステーキは健康にも良いと思います。
Ausものを是非^^
2016.06.11 Sat 19:05
Edit | Reply |  

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