オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 76 

―――ロジャー、うるせえ。

田島は目が覚めてしまった。隣で寝るロジャーのいびきでよく眠れなかったのだ。まだ辺りは薄暗く、少しでも音を遮るためにスワッグを頭までかぶった。

“Tim…stop it.”

ロジャーも起きたのだろうか。ティムのいびきに文句を言っているのに、ちょっと笑ってしまう。

ウルルのサンライズを鑑賞した後、朝食の時ティムが皆に「夕べ、いびきが一番うるさかったのは誰だ?」と白々しく訊く。

“Tim!”
“No! It wasn’t me! Shogo!”
「は? 何で俺なんだよ。ロジャー!!」
“What!? TIM!!!”

結局ティムが一番うるさかった、ということで話は収まったが、「お陰でウルルのサンライズに寝坊しないで済んだでしょ」と、あくまでティムはポジティブだ。

―――ロジャーも凄かったけど・・・

それはあまり大きく言わないことにした。

朝食後、いよいよウルル(エアーズ・ロック)へと移動する。

ウルル見学には、二つのオプションがある。一つは登頂、もう一つは遊歩道に沿ってウォーキングを楽しむ山麓めぐり。

ウルルはオーストラリアの原住民であるアボリジニの人々の聖地であるので、登頂を目指す場合は彼らの想いを尊重し、意義を考える必要がある。

バスを降りる前に、ティムが彼らの言葉を代弁するように語る。

彼らは観光客がウルルに登ることを望んでいない。彼らにとって、ウルルが存在する本当の意義は、「すべてのことに耳を傾けること」であって、登ることではない。

そのことを充分に理解し、田島は登頂を目指すことに改めて気を引き締める。

「ロジャー、アー・ユー・レディ?」
“Yeah, Shogo. Here we go!”

ウルルの登山は気楽なウオーキング気分で行ってはいけない。登り始めてすぐにその大変さを悟る。

登山道の始めの三分の一には鎖が付いていて、それを伝っていく。その鎖をしっかりと掴んで行かなければならないほど、傾斜が急だからだ。

―――これ、すっげー角度・・・

鎖をぎゅっと握り、むき出しで滑りやすい岩肌を登っていく。それだけでも大変なのに、さらにその登りを妨げるように、横風がビュービューと吹きっさらしの岩山を駆け抜けていく。

「帽子が!」
“Don’t worry.”

前を行く誰かの帽子が、お約束のように風に飛ばされて崖の下に落ちていく。追ってはいけない。自分が崖の下に落ちてしまう可能性があるからだ。

ロジャーも田島も、時々「大丈夫か」と声を掛け合う以外は、「はあ、はあ」と息を切らしながら、ただひたすらに登っていく。

途中で景色を写真に収めようなどという余裕は全くない。鎖から手を離してカメラを抱えることなど、自殺行為に等しい。

傾斜が急で足場が悪く、すぐ脇に崖があって危険。さらには風にあおられ、吹きさらされながら登って行く。その行程は、マラソンコースを全力疾走するより全然きついかもしれない。

それでも一歩一歩前に進みながら、かなり登っただろうか。途中、鎖の切れるところまでやってきた。その先にちょっとした休憩所があり、一息つける。

「マジ、きっつい!」

どかっと腰を下ろして、水をどくどくと飲む。ここで大体高さとしては3分の2、距離にして3分の1は登ったことになる。

“Are you okay, Shogo?”
「イエス。アー・ユー、ロジャー?」
“Yeah, I think I survived.”

まさかのきつさに、二人とも真夏でもないのに汗だくになっていた。頂上まではまだ道のりがある。少し休んだら、先を行く。

「カモン、ロジャー」
“OK, Shogo. Here we go again.”

ここからは鎖がなくなる。急斜面がずっと続くわけではなく、時々平坦な道もある。それでもまだまだ急な登り下りの坂道や、崖沿いの細い道、などがしばらく続く。

けれども、それを慎重に過ぎて行けば、頂上まではあと少し。道もだんだんとなだらかになってくる。

そうして出発から1時間ほどたち、ロジャーも田島もいいかげんに「疲れた」と思う頃、ついにウルル(エアーズ・ロック)の頂上に到着した。



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旅ログ続きます(--;)
ウルル(エアーズ・ロック)の登頂はすっごく大変なんです。でも、とても良いところです。
ここ数日、妄想がウルルに行きっぱなしです。仕事とのギャップがぁ・・・ ><


『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

ウルル登頂って、そんなに過酷な登山なんですねぇ。
観光バスで、スイ~~とか一瞬思ってしまった私はなんて日本人。

けいさんも、登ったんですね。
登った先にある感動をあじわったんですね~。
素敵。

私は、登山とかアウトドアは、体力的にまったくダメなんですが(日光に長時間当たると倒れてしまう奴でした)、なぜか、大学時代、友人に引きずられてワンダーフォーゲル部に入ってしまい・・・。それはそれは過酷な日々を・・・。

でも同じ過酷な登山でも、ウルルを田島くんと登るのなら、やってみたいな。
登った時には、どんな景色が見えるんでしょうねえ。
2012.05.19 Sat 10:35
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

ウルル登頂は・・・もうこれ以上のネタバレは控えます。
すでにかなりのネタバレ(^^;)
次回も・・・(汗)

何と、limeさんがワンゲル部? 体育会系じゃないですか? 
手には絵筆、背にはリュック・・・つながらないなぁ~(困惑)

limeさんのウルル登頂には、前に田島、後ろにロジャーでがっちり固めましょう。ついでにサポート隊として、ティムと、エディーもシドニーから呼びましょうか。万全です。いや、おおげさか^^

登った時の景色は次回に^^(予告)
2012.05.19 Sat 12:42
Edit | Reply |  

Name - おなかぴーたろー  

Title - No title

うわー。

ムキ出しで滑り易い岩肌
鎖が付いてる程、キケンなところなんでしょうね~
ジェットコースターのカタカタ登っていくのですら
ダメな高所恐怖症の自分には、絶対・・ムリ!

でも頂上の景色はイイんでしょうなー。



2012.05.23 Wed 18:52
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - おなかぴーたろーさん

コメントありがとうございます。

ウルルは実は世界でも有数の危険な観光地。
命を賭けて観光する。いや、それはちと大げさ(^^;)

けど、それだけの気合で行く価値はあるし、
頂上からの景色は・・・次回です^^

ぴーたろ-さん、ウルルはカタカタとか言わないので、大丈夫ですよ。
手を引いてあげましょう。田島とロジャーとで^^
2012.05.23 Wed 20:23
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - 

そういえば、エアーズロックは見るだけで登ったことはないですね。
・・・というか登ることができるのですね。。。
それは大変そうですねえ。。。
あまり登山などは苦手なので、見るだけでいっぱいでしたけど。
大きい岩だなあ・・・ということは今でも心に残っております。
2016.07.02 Sat 12:22
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

私が登ったのはもうずーーっと昔になってしまいました。
頂上までではなく、作中の鎖のところまでなんですけどね。
きつかったです。
でも、良いところでした。
LandMさんは見たということは、エリアまでは行かれたのかな。
また是非^^
2016.07.02 Sat 14:09
Edit | Reply |  

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