オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 77 

ウルル(エアーズ・ロック)の頂上にはそれを示すプレートがある。

“We made it, Shogo.”
「ウエルダン、ロジャー」

ロジャーと田島はハイタッチとガッツポーズで頂上まで到達したことを祝った。

ウルルの頂上から見る眺めは360度パノラマの絶景。とにかく最高だ。

眼下に赤茶色のまっ平らな地面が、遥か遠くの地平線まで広がっている。見えるのはただそれだけ。

昨日訪れたカタジュタ(オルガス)の奇岩群がかろうじて向こうの方に薄く見えるが、それ以外は全く何もない。視界を遮るものはなく、ただ果てしなく空間が広がるのみだ。

「すごいね、ロジャー」
“This is fantastic, Shogo.”

田島は地平線に向かって立ち、大きく息を吸って吐いた。ここに登り立つということは、間違いなく一生に一度のこと。今のこの時を堪能する。

地平線より向こうにあるものが何かを見たくて目を細めた時、ふとティムの教えてくれた、アボリジニの言葉を思い出した。

『すべてのことに耳を傾ける』

―――見る、じゃない。

そっと目を閉じて、風を探る。360度方向から風が向かってくるのを感じる。

じっとしていると、風の流れが帯のように腕に足に絡まり、体をなでるように通っていくのがわかる。

自分が風の中にいるはずなのに、まるで風が自分の中に入り込んで一体化するような錯覚に陥る。

“Shogo?”

目を開けると、隣で不思議キャラでも見つけたような目をしたロジャーが田島を見ていた。

「風がすごく気持ち良いよ、ロジャー」
“What? English, Shogo.”

風の中に手を差し出す。水の中で水圧を感じるのと同じように、確かな風圧を感じ、風に触れていると実感する。

その時、ピュ―っという音と共に突風が体に当たり、思わず一歩下がった。何かを与えられたような気がして掌を見た。

“Can you hear their voice?”
「え? ノー、ロジャー」

首を傾げてますます心配そうな表情のロジャーに、田島は笑って首を振った。天の声など、もちろん聞こえない。それは、神話やファンタジーの物語の中だけのことだ。

“Did you catch any?”

あえて言うなら、風の音をキャッチしたかもしれない、それをロジャーに伝える。

“You’re so lucky, Shogo.”

ここで風の音を聴き、流れを感じることが、とても自然で心地良かった。

風以外の音にも耳を傾ける。

人の声、足音、カメラのシャッターの音、「ウオー」という誰かの叫び・・・

「ん? 誰だここで勘違いセカチューしてるのは?」

振り返ると頂上のプレートの上に人が乗っている。

―――日本人じゃない。

いや、そこが問題なのではなく、プレートの上に乗って何やら騒いでいるのが問題なのだ。

ロジャーが横で「何だあれは」とため息をつく。

“Get off, boy! Will you?”

ロジャーが声をかける。見て見ぬ振りはできない性分らしい。若者は「ソーリー」と軽く言ってプレートからピョンと飛び降りた。

“Time to go, Shogo?”
「オーケー」

本当は、せっかく登った頂上にいつまでもいたかったけれども、そうもいかない。少しの名残惜しさを残してこの場を後にする。

下りは足に負担がかかるため、登りとはまた違った意味の大変さもあったが、意外にスムーズに降りることが出来た。

鎖の部分は上から見下ろすとさすがに急斜面であることを再度確認させられる。登り同様、鎖から手を離さずに、ゆっくりと降りる。

“We did it.”
「イエーイ」

バスに戻ると、ティムとウルル山麓めぐり組みが和やかにランチを摂っていた。

“How was it?”

ティムが笑顔で迎えてくれる。

“It’s absolutely wonderful!”

登山で疲れてお腹がすいた。ロジャーも田島もティムの焼いた焦げ肉のBBQランチにがっついた。



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ウルル誌上登山、ネタばれ満載でした(^^;)
これでもう良いや、と思わずに、機会がありましたら是非^^


『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

ネタバレなんか、関係なく、とても楽しめました。
ショーゴが風を感じるあたり、繊細なのにダイナミックで素敵です。
なんだか、いろんな音も聞こえてきました。(幻聴?)
でも、セカチューしちゃ、だめよね^^

ティムの焼きすぎ肉も、今日ばかりはごちそうですね。

さて、田島君、このあとのご予定は?

私はねぇ・・・風邪引いちゃいましたよ。><
う~ん、のどが痛い。
今日は、早いけど、おやすみなさい~!




2012.05.23 Wed 22:57
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Name - おなかぴーたろー  

Title - フリーホールもダメ・・

二度目のこんばんは~i-179

頂上、無事、到達ですね
見渡す限りの地平線かぁ~。
行ってみたいな~i-228
オーストラリア!

そーいえば、コアラが絶滅動物の指定に
されたらしいですね
少し前の報道でやってました。
2012.05.23 Wed 23:08
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

ショーゴと風を読み取っていただき、とっても嬉しいです^^
セカチューはやばいけど、幻聴は良いかもですよ(←どこに根拠が?)

すきっ腹には何でもうまいんですよね。
オージーのBBQは焦げるまで焼くのが流儀みたいです(?)

田島のこのあとの予定は・・・
limeさん、滝汗級にするどい質問。。。

実は、このキャンプツアーは2泊3日あり、もうちょい続く(汗)
旅ログからの脱却を模索中です(物書きの修行修行 --;)

> 私はねぇ・・・風邪引いちゃいましたよ。><
> う~ん、のどが痛い。
> 今日は、早いけど、おやすみなさい~!

limeさん、ゆっくり休んで、お大事になさってくださいね~
あと1話、とにかく楽しみにしています。
終わった後、抜け殻とかにならないでね^^
2012.05.24 Thu 11:15
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Name - けい  

Title - Re: フリーホールもダメ・・

ははは。おなかぴ-たろーさん、二度目のコメントありがとうございますぅ~i-179

頂上、無事、到達しました。
大変なところをクリアしてきたので、感慨もひとしおです。

見渡す限りの地平線と、青い海と、まぶしい空と、サザンクロスと、可愛い動物と、他にもいっぱい・・・を見に、オーストラリアにお越しくださいね~。

でも、一番は陽気でフレンドリーな人々です。
お泊りは良ければうちでi-228

> そーいえば、コアラが絶滅動物の指定に
> されたらしいですね
> 少し前の報道でやってました。

え。知りませんでした。
コアラは(も)保護されているので、大丈夫でしょう(?希望)
2012.05.24 Thu 11:30
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Name - ソライエ  

Title - 360度

最近360度、見渡せる所に行ってないな。
すがすがしいんだろうな。


さて、田島君。次はなにをする?
2012.05.26 Sat 17:06
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Name - けい  

Title - Re: 360度

ソライエさん、コメントありがとうございます。

> 最近360度、見渡せる所に行ってないな。
> すがすがしいんだろうな。

私も。すがすがしい気分に浸りたい・・・(^^;)

さて、田島は次は・・・
うーん・・・特別なことはしない・・・(汗)

けど、この旅自体がかなり特別(と言い訳 --:)
2012.05.26 Sat 19:16
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - 行ってみたいな

あまり関係はないのですが、私は阪神タイガースファンです。
何年も前に阪神に在籍していたウィリアムス投手がオーストラリア人で、ファンだったのですよねぇ。
オーストラリアって野球も強いですよね。

オーストラリアに行って、すでに引退しているはずのジェフ・ウィリアムスに会いたいと、けいさんの描写を読ませていただいていると夢見てしまいます。

星空とシーフードとワイン……ビールも肉も嫌いでも目にも口にもおいしいものがありますものね。
毎回思いますよ、田島くん、いいなぁ、青春してるね。
2013.05.16 Thu 12:20
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 行ってみたいな

あかねさん、コメントありがとうございます。

そうか。スポーツとリンクして、ファンのあの選手の国に行ってみたいっていうの、ありますよねー。
野球は、横浜出身なのでベイスターズです(きよし、何とかしてくれ)

オーストラリアには、是非お越しください。良いとこです^^
スポーツ一般に力入っています。
おいしい食べ物も、たくさんあります(食い物でつる?)

まだまだこれからも、田島の青春にお付き合いくださいね^^
2013.05.16 Thu 18:15
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Name - 大海彩洋  

Title - さすが

圧巻な登頂記?でした。
オーストラリアの旅、ウルル、行ったことはないのですが、まさにその場の風が感じられるような気がしました。きっとこれはけいさんご自身がウルルに登られた時のままの、けいさんが実際に感じられたことなんだろうな、だから説得力があるんだろうな、確かに極上の旅行記だと思う反面、ただ旅行記よりもこうして小説になっていると、伝え方・感じ方がまた深くなっているような気がします。
田島くんが風を感じながら一歩前へ進んでいく様子、その感情の起伏が景色や登頂という行動をもとに動いていく、そこにいる人々の何気ない言葉も彼の中の何かを動かしていく、とても素敵な物語の流れを感じました。
風の谷もいいなぁ。行ってみたいです。これって、地中ではウルルと繋がっているんですよね。地球ってすごいなぁ。
以前、アメリカのフォーコーナーズに行ったとき、「わぁ、地球だ!」と思ったのですが、きっと同じように地球を感じるんだろうな。
そう言えば以前、一度オーストラリア旅行計画を立てた時、新型インフルエンザ騒ぎで海外渡航自粛みたいなことがあって、ついでに逆流性食道炎のピークの時で、多分飛行機で吐く!とおもって断念したことが……
う~ん、いつか行きたいです。昨日、後輩が「明日から夏休み頂きます! オーストラリアに行くんです!」と嬉しそうでした。悔しい……
石好きの私としては、1枚岩、見ておきたいのですが……

何にしても、田島くんの中に沢山の引き出しと思いが充ちていく過程、この先も楽しみです。
2013.09.28 Sat 09:46
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Name - けい  

Title - Re: さすが

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

ウルルは登山というか、登岩?
そうだそうだ。石LOVEの大海さん、来なくては! マスト・シー(must see)です!

私が行ったのは、もう何年も前のことで(汗)
そして、実際私が行ったのは、鎖のところまでで(汗2)
頂上までは行ったことがなく(汗3)
妄想って・・・(汗4)

旅行記と小説の違いを書き分けたいとの願いもむなしく、ほぼ旅行記になってしまったシーンなのですが、大海さんからそう言っていただくと学びもたくさんあり励みになります!

> 田島くんが風を感じながら一歩前へ進んでいく様子、その感情の起伏が景色や登頂という行動をもとに動いていく、そこにいる人々の何気ない言葉も彼の中の何かを動かしていく、とても素敵な物語の流れを感じました。

うわあ、ありがとうございます! とっても嬉しいです。
田島の感情との絡みはまだまだ表現が甘いですが、精進を続けます。

風の谷もお勧めできる良いところですよ。ここだけでなく、オーストラリアは海岸にも内陸にも奇岩郡のあるところがたくさんあって、ほんの数日の滞在では見回るのは難しいですよぉ~^^ 飛行機移動です。地球です! 次回のお休みに^^有給でも^^

> 何にしても、田島くんの中に沢山の引き出しと思いが充ちていく過程、この先も楽しみです。

まさにこの旅行の意味はそこのところで。
ですが、先が申し訳ないくらいに長くて・・・
一緒に田島の旅行に付き合っていただけると超嬉しいです^^
2013.09.28 Sat 18:30
Edit | Reply |  

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