オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 78 

“Everyone pick up the fire woods.”

暗くなる前に、キャンプ・ファイヤーのための木を拾ってくるように、とティムが全員に指示をする。みんな一応に「えー」と口では文句を言いつつも、楽しげに拾いに散らばった。

今日のディナーはBBQではなく、チキンカレー。なぜカレーなのかは深く追求せずに、みんなで作る。

余ったご飯で、明日の分のおにぎりも作った。これは日本人の女の子たちが喜んでやった。

夕食の後は、昨日と同様にキャンプファイヤーを囲む。食後のおやつにとティムがキャンプファイヤーの火でマシュマロを温めてくれる。

細木に刺したマシュマロを少しだけ火に当ててあぶり、ホット・マシュマロにして口に咥える。これが甘くておいしい。

“Oh, no. It’s melted”
“Ha ha. Don’t give it too much.”

燃やして溶かさないようにするのが結構難しく、みんな火遊びをする子どものように真剣にマシュマロを火にかざす。

マシュマロを味わう傍ら、「今日も、天空の人々がキャンプファイヤーをしているよ」と、テイムは夜空に無数に広がる美しい星々を指さす。

空には昨晩と同じように天の川が流れ、どれがサザンクロスかはもうティムに聞かなくても分かる。

“I’m going to tell you some stories.”

マシュマロがなくなったところで、ティムがこの地域に伝わるアボリジニ(オーストラリア原住民)の伝承神話について話し始めた。

「空を流れる天の川では、天空の人々が自らの食物(魚など)を捕まえている」と神話が伝える、と語る。

田島は日本で幼い頃、月の中に住むというウサギを探したときの気持ちを思い出した。天空にいるという人々を探すようにじっと夜空を見つめる。

アボリジニには文字文化がないため、絵を描いたり、物語を語ったり、歌を歌ったり、踊りを見せたりすることで祖先の教えを守り、伝統を受け継いできた。

というのを、今日キャンプ場に来る前に訪問したアボリジニのカルチャーセンターで学んだばかり。

ティムの解説によると、アボリジニは、自分たちは自然の一部であり、自然界のすべてのものと繋がっているという考えを持っているのだという。

この地球上の生物はみな一体で、自分たちも人間としてよりも、自然界に存在する一部としてこの大地に在る。

―――自分もこの大自然の一部、か。

田島は目の前の炎に目を向けながら、ウルルの頂上で流れる風の中に立った時のことを思い出した。

―――風に触れた。確かに。

突風が体を通り抜けていった時、それは体だけではなく、心の中をも通っていったと感じた。

すべての存在がいかに上手に共存していくかを探求し、自然との調和を維持していくことが、偉大なる祖先の大切な教えなのだ、とテイムが語る。

―――俺に何が出来る。

ウルルが存在し、自分が存在する。すべての存在は繋がり、お互いにふれあい、共に生きていく。それがどんな意味を持つのか。存在し、生きることとは?

―――今出来ることを、今やる。

それしか言えない。けれども、それが今自分のするべきことなのだとそう信じて、誓うように天空を見上げた。

ティムの言葉は、アボリジニの代弁と言うよりも、自然から、地球から、あるいはティム自身からのメッセージを載せているようにも聞こえる。

みんなの「へえ」という声に微笑み、ティムは何気にそばに置いていたディジュリドゥを手に取り紹介した。

“What is didgeridoo(ディジュリドゥ)?”
“Didgeridoo is a traditional musical instrument.”

ディジュリドゥは、アボリジニが昔、祭りや儀礼などで使ったといわれる伝統的な楽器である。一見、木筒のような木管楽器で、長さが1メートル以上ある。

表面には赤や黄色などの美しい色と独特な模様が施され、楽器と言うよりも美術品のようだ。尺八のように両手で支え、息を吹き出して音を出す。

その音色は、ほら貝を吹く音よりもかなり低く、大地に鳴り響くような重低音を奏でる。この一本の木管楽器は様々な音を表現することができる。

―――幻想的な音。空気に溶け込む・・・

田島は、花園がカフェでバイトをするきっかけになったのが、カフェにディスプレイされていたディジュリドゥだった、というエピソードを思い出した。

カフェにある実物も見せてもらっていたので、田島はディジュリドゥが何か、ということは知っていた。けれども、その音を聴き、演奏を目にするのは初めてだった。

“There you go. Try.”

ティムは少し曲を吹いたあと、隣にいたカナダ人のカップルに「吹いてみて」とディジュリドゥを渡した。

突然渡されても、もちろん音は響かない。「スフー」という間の抜けたような音にみんなが笑う。

ティムが音の出し方を教えてくれて、みんな順番に試してみた。何人かは結構上手く音を出せたが、やはり、ただの音を音楽にするのは難しい。

それでも、ティムのディジュリドゥ講座で少しでもアボリジニの伝統文化に触れ、学び楽しむには十分な経験だった。



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中途半端にうまく音が出せたロジャーが、最後までティムのディジュリドゥを独占し、音出しに没頭していた。

そんなロジャーはほっといて、キャンプファイヤーは続く(^^;)


『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - fate  

Title - 今出来ることを、今やる

↑ああ、これに尽きます。
久々に一番乗りで気分の良いfateくんでした(^^)

・・・の割にはたいしたことは言わんのだが(・・;

limeさん宅で、最終話を一気読みして、けっこうずーんときましたわ~
けいさんのコメントを見つけて「ほほう」と拝読してきたり。
何やってんの? fateくん(^^;

田島くん、フフフフ、まぁ、頑張り給え。(なんで上から目線?(ーー;)

でも、ファンなので応援してるよ~ん!!!
2012.05.28 Mon 11:13
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Name - lime  

Title - No title

あ、fateさんに先を越された~!(子供か)
今、fateさんに7個もコメ返してきたよ。ありがと!
(って、、なんの話)

やっぱり、キャンプはカレーですよ!(ちょっと甘口がいい)
そして、焼きマシュマロね!(焼かないと、おいしくないよね、あれ)

オーストラリアでも、カレーライスって、普通に食べられるんでしょうか。
ライスはやっぱり、インディカ米なのかな?
・・・いやいや、そんなことはいいのです。

ティムの話を聞きながら、田島君が心に感じたこと。
いいな~。田島君は、ぜったい骨太の、カッコいい男になるね。
花園君~、惚れるなよ~(違うか)

ディジュリドゥって、イメージ的に尺八なんだけど、あんな音ではないのかな?
きっと、その音を聴くと、アボリジニの歴史や想いも、ふわ~っと、かんじられるんでしょうね。
大地や風と一体化して、また大きくなった田島君。
次は、どこへいくのかな・・・。
2012.05.28 Mon 18:21
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 今出来ることを、今やる

fateさん、久々に一番乗りで気分の良いコメント、ありがとうございます(^^)
そして、表への復活ぅ! 嬉しいです。

> ↑ああ、これに尽きます。

そうなんです。これだけなのに、1エピソードを使ってしまった(><)
しかも・・・いや、何とかの遠吠えになるので潔くやめときます。
反省と課題。まだまだです(--;)

> limeさん宅で、最終話を一気読みして、けっこうずーんときましたわ~

連コメ見ましたよ。コメにもコメ返にも感動です。
お二人ともさすがです^^

私もいつか、いつかよ、fateさんからコメいっぱいもらえるよう、精進します(誓)
ちょっとづつだけどね。言っとくけど、いつかだからっ。けど、まっててねっ(^^;)

意味深なfateさんからの応援をうけて、田島、まぁ、頑張り給え。
上から目線、ぜんぜんOKです^^
ファン宣言、ありがとうございます!
2012.05.28 Mon 19:52
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Name - けい  

Title - limeさん

limeちゃん、おこらない、おこらない^^
いやぁ、お二人ともコメとコメ返さすがです。

まあ、こちらでカレーでも、マシュマロでもつまんでお休みくださいな^^

オーストラリアでは、カレーは普通に食べられます。
本場インドの辛いやつも、お好みで。タイのグリーンカレーとかも人気。
ご飯もお好みで色々です。コシヒカリとかササニシキとかは日本食屋で。
実は何でも手に入るのです。納豆とか、お豆腐とかも、何でも。

> いいな~。田島君は、ぜったい骨太の、カッコいい男になるね。
> 花園君~、惚れるなよ~(違うか)

おお。骨太ですか。ありがとうございます。田島、頼りにしてるよ^^
徹さんは、奈美さんに惚れているので、大丈夫です(何が大丈夫?)

ディジュリドゥの音は、尺八よりもずっと低いんです。地鳴りみたいな太い音です。
見た目も尺八より太くて長いです。

> 大地や風と一体化して、また大きくなった田島君。
> 次は、どこへいくのかな・・・。

なかなか次へ行けずに悶々と模索中です。
limeさんのように、お話をコンパクトにまとめる、これが最近の課題みたいです。

うーん。物書きの深さと自筆の浅さに悶え中(--;)
2012.05.28 Mon 20:28
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Name - 城村優歌  

Title - こんにちは

更新楽しみにしてました~♪

ウルルのてっぺんで風に触れる。
想像しかできないですけど、心が震えました。
それがたとえ、田島くんの回想の中でだとしても、
まるで自分までその地点に立ったような…。
素敵な描写です^^

アボリジニの文化、楽器…と、興味深い内容が盛りだくさんで素敵です。
空間がでかいんですよねー。
これは絶対、日本にいちゃ書けないものだなーと、
心底うらやましいですよ、憩さん~^^
2012.05.30 Wed 14:59
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こんにちは

城村優歌さん、コメントありがとうございます。

褒めすぎですぅ~~。嬉しくて、どっかに行っちゃいますぅ~~♪

実は、私はウルルのてっぺんまでは行ったことがないのです。
鎖のところまでなんです。
なので、田島には行ってもらいました(ちょい裏話)

空間の広々とした感じは日本と違う所だと思います。
みんなここに来れば、今あるちっぽけな悩みなんてどこかに飛んでいってしまうのに、って感じです。

日本にいなくちゃ書けないものもあるので、
それはそれでうらやましいですよ~^^

また田島を追いかけにいらしてくださいね^^
2012.05.30 Wed 17:45
Edit | Reply |  

Name - ソライエ  

Title - No title

田島くん、充電中ですね。
いろんな風、光、食、音に潜む気を受け入れ中ですね。
オーストラリアって大地の国って感じがします。
大地からの気を取り入れて
田島くん、次はどこへいく?
2012.05.30 Wed 19:44
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ソライエさん

コメントありがとうございます。

はい、色々なことから刺激を受けて、吸収していって欲しいですね。
たくさん学んで、どんなことをどんな風にフィードバックするのか。
えっと、ははは(←笑ってごまかす・汗)

オーストラリアの大地は広いです。まわりきれません(^^;)
大地からの気を取り入れて、ちょっとだけ大きくなって、
えっと、次わあ・・・(--;)
2012.05.30 Wed 21:36
Edit | Reply |  

Name - おなかぴーたろー  

Title - No title


外で作るカレーはものすごく美味しいですよね
作ってる時もみんなが協力しあって作って
食べる時の輪になって食べる「ひととき。」

家で一人食べるレトルトカレーは
すごくむなしいですけど・・

そうそう。マシュマロ!
BBQの必需品!
でも、気をつけないとすぐ黒くなって燃えちゃうし。
2012.05.31 Thu 10:09
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - おなかぴーたろーさん

コメントありがとうございます。

キャンプのカレーは何であんなに美味しいのでしょうかね。

> 作ってる時もみんなが協力しあって作って
> 食べる時の輪になって食べる「ひととき。」

最高です^^

> 家で一人食べるレトルトカレーは
> すごくむなしいですけど・・

ははは。誰かにそばにいて欲しい・・・(*^^*)
それか、HRをガンガンにかけるとか?

> そうそう。マシュマロ!
> BBQの必需品!
> でも、気をつけないとすぐ黒くなって燃えちゃうし。

マシュマロの炎の色って、不思議なんですよね。
食べるより、そっちで遊んでしまう、私は大人(キリリ)
2012.05.31 Thu 12:47
Edit | Reply |  

Name - -  

Title - 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012.06.01 Fri 01:18
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 鍵コメさん

コメントありがとうございます。

メッセージを送らせていただきました^^
2012.06.01 Fri 19:25
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

そういえば、オーストラリアに行ったときはバーベキューが大方ですね。
ホームパーティが多いのがアメリカやオーストラリアの特徴ですね。
たくさん食べれて幸せでしたね。
2012.08.04 Sat 18:17
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

お、LandMさん、オーストラリアに行った・来たことがあるのですか。
はい。オージーはバーベキューが大好きです。

パーティーもしょっちゅうやっています。
おいしくて、ついたくさん食べてしまいます^^
2012.08.04 Sat 20:20
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - ディジュリドゥと言えば

この間、熊本城で見ました(多分あれがそうに違いない)。なぜか、イベントでオーストラリア人の女性が尺八、日本人の男性がこのオーストラリアの楽器、そしてもう一人、日本人の男性がヴォイスパーカッションをしていました。
面白かったです。何というのか、交流の仕方が錯綜していて、これこそ交流なのかもと。

こういう風に異文化に触れながら自分の立っている土台を確認していく作業、大事ですよね。ここから田島君がまた前に一歩進んでいく、殻から抜け出していく、その姿が思い描かれて、頼もしく感じられます。
文字がないと言えば、ケルト文明も、日本ではアイヌも同じで、伝承によって本当に大事なことは伝えられていくんですよね。覚えられる以上の情報って、人間の中で消化しきれないのかなあと思ったりもします。
でもこうしてみたら、全然タイプは違うけれど、うちの真がインディアンの村で経験したのと田島君のこの経験と、結構近いものがあって、ひとりでニタニタしています(^^)

あ、もう少し読み進んでから感想をと思ったのに、感動して引っかかってしまった(*^_^*)
2013.10.04 Fri 17:21
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: ディジュリドゥと言えば

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

そうなんですかっ^^ めずらしいパフォーマンスですね。楽しそう。
メルボルンにはブルースと三味線でペアを組んで活動されている方がいらして。
ビートがね、凄く良いんです。大海さん、ご存知かなあ。

> こういう風に異文化に触れながら自分の立っている土台を確認していく作業、大事ですよね。ここから田島君がまた前に一歩進んでいく、殻から抜け出していく、その姿が思い描かれて、頼もしく感じられます。

ありがとうございます^^ 海外に出ると誰でも、それがほんの二泊三日の短期旅行であっても、日本だとか、自分だとかを思うんですよね。日本良いぞ。オーストラリアも良いぞ。という立場にいます(←えっと、私が)

> 文字がないと言えば、ケルト文明も、日本ではアイヌも同じで、伝承によって本当に大事なことは伝えられていくんですよね。覚えられる以上の情報って、人間の中で消化しきれないのかなあと思ったりもします。

そうですね。覚えているから身にしみこんで本物になるのだと思います。
オーストラリアのアボリジニのそれは、ドリームタイムと呼ばれています。

ヤバイヤバイ。私真君のそこの場面までまだまだ行き着いていないのですよね。
その場面に着いたら、ニタニタ返しだっ^^

お時間のあるときにまたお越しください^^
2013.10.04 Fri 19:32
Edit | Reply |  

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