オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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怒涛の一週間 15 金曜日(1) 

「佐藤課長代理」

 そんなフルの肩書きで呼ばれて振り返ると、後藤が眉間を寄せた申し訳なさそうな表情で立っていた。

「代理、昨日はすみませんでした」
「遅刻しないで来られたか。良かったな」
「もちろんです。CDで起こされましたから」

 あのプレーヤーは、エンドレスにセットされていたらしい。あんなのが一晩中ガンガンにかかっていたなんて、近所迷惑な奴だ。それにしても、すっげー酒臭いぞこいつ。

「ま、スコッチ飲んで忘れろ」
「あ、あれ、今朝で無くなりました。うまかったっす」

 ―――夕べあれだけ飲んで酔っ払っていたというのに、今朝迎え酒か。今日仕事大丈夫なのか。

「代理、あの、飲み代とかCD代とか、いくらでしたか」
「給料の3か月分」
「え?!」
「いいから、今日も仕事をびしっとしてくれ」

 来月の部長の飲み会は、後藤に行ってもらおう。良い考えだ。

 今日は金曜日。明日やっと休める。そう思うと、せっかくの週末に仕事を持ち帰ることのないようにと、手につくところから片付けていった。

 後で後藤にとびきり濃いコーヒーを入れてやろう。今日は相田さんが定休でいない日だから。

 失恋で飲んだくれるなんて、どこかの誰かみたいだ。そう思うとふっと口元が緩んだ。

 プルルル・・・ 

 クマ部長からの内線だ。

「佐藤です」
「代理、社長が到着した」

 ―――は? 社長?

 今週は部長の言葉に驚かされっぱなしだ。

「すぐに来てくれ」

 とにかく急いで上の階のミーティングルームに行くと、長谷川専務をはじめ、各部長、本部役員が揃っていた。俺は専務と部長の間に座らされ、社長に紹介された。

 俺は軽く頭を下げながらも、普段はめったに会うことの出来ない社長のことを、上目遣いでチラ見していた。

 社長は、うちの会社だけの社長ではない。いろいろな分野でいろいろな会社を経営していて、そのグループ企業をまとめる代表取締役だ。

 うちの会社は、いくつかのグループのうちのIT関連を受け持っているだけで、会社に社長が常駐しているわけではなかった。普段は、東京の商社本館にいるはずだが。

 ―――何で突然社長が現れて、何で俺が役員も揃った中に呼び出されるんだ?

 それは素朴な疑問だった。俺は先週まで、タダの平社員だったのだから。

 社長とは専務から紹介されて握手をしただけで、すぐにミーティングが始まった。内容は、火曜日の飲み会の時に専務と部長とで話をしていた、うちの会社の国際事業部立ち上げについてだった。

 俺が課長に頼まれて例の大手メーカーを取ったプログラムをグレードアップし、それを足がかりに会社として世界展開を狙う、というプロジェクトについてだった。すでに企画は進んでいるらしく、確認事項が続いていた。

 専務とクマ部長が、社長や役員からの質問に答え、議題は問題なく進んでいるようだったが、俺には良くわからない話だった。

「佐藤課長代理は、英語のほうはどうですか?」

 急に社長に振られて、現実に戻された。夕べの号泣酔っ払い男の介抱で疲れていた俺は、難しい話の中でボーっとしていたのだ。

「えっと、英語ですか。まあ、嫌いではないですが」
「じゃあ、宜しく頼みますね」

 ―――やばい、何が宜しくなんだ?

 俺は、ミーティングで話されていた内容について、全く理解していなかった。理解しようにも、疲れて脳ミソが働かず、俺のわずかばかりに残っていた集中力は、とにかく目を開いておくことだけに使われた。



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