オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 82 

バスで寝ている間に終着のアリス・スプリングスの街に着いた時には、すでに夜も遅い時間になっていた。

“Tim, you are a great guide.”
“Thank you so much for everything.”

誰もが口々にティムにお礼を言い、別れを惜しんだ。ティムは一人一人とハグをしてから、笑顔で「また来て」と言って手を振る。

“Shogo, you are my best buddy.”
「ユー・トゥー、ロジャー」

田島とロジャーはぎゅっと手を組み、肩をポンポンと軽くたたきあって笑顔で別れた。ロジャーは明日の飛行機でアリス・スプリングスを発つのだ。

“Face booking, Shogo.”
「オーケー、ロジャー。フェイスブックね」

田島はバックパッカーに戻り、3日振りにシャワーを浴び、3日振りにベッドで眠った。

次の日はロジャーのいびきに起こされることもなく、午前中ゆっくりと寝坊して、午後から街のメイン・ストリートに出かけた。ファースト・フードで遅い朝食兼昼食をとり、通りの店を幾つか覗く。

この街の通りはシドニーほど大きくはない。こじんまりとしてはいるが、多くの観光客が訪れる所だけあって、所々にあるオブジェや植木などできれいに整備されている。

―――お土産ショップはどこも一緒だ。

ショッピング街のおわりの方は歩く人も少なく、今日は平日であるせいか、店も開いているのか、閉まっているのか分からないほどに静かだ。

向こうの角にこの通りの最後の店らしきレンガの建物が見えた。‘OPEN’の看板が出ているし、時間もあったので入ってみた。

―――アート・ギャラリーだ。

「イラシャイマセ」
「あ、トム!」

シドニーからの飛行機で席が隣同士になったトムだ。

“Oh! I can remember you.”
「ショーゴ」
“Yes! Shogo! ドゾヨロシクagain.”

トムはカウンターから出てきて、田島と握手で再会を喜ぶ。そういえば、トムはアートギャラリーのオーナーをしていると言っていた。田島はすぐに思い出した。

「イズ・ユア・ジャパニーズ・ベター・ナウ?」
“My Japanese? Haha, need more practise, Shogo.”

そんなことを軽く話しながら、せっかくだからと何か作品を買っていこうと店を見てまわる。ギャラリーには、アボリジニの作家の絵画や民芸品が並び、ほとんどが販売されていた。

―――高い・・・

額に入っているような作品には数百ドルの値がついていて、もちろん手が出せない。オーストラリアのお土産として人気のあるブーメラン一つにしても、意外に良い値段だった。

田島は持って行くのにかさばらないようなものと思って、額に入っていない、一枚の小さなペイントの絵を選んでレジに持っていった。

“Shogo, you’ve picked the best one.”
「え? ベスト?」
“This is my wife’s work.”
「ワイフ? ワイフがいるんだ」
“My wife is an Aboriginal artist. This is one of hers.”

それからトムは、店に展示されている作品を自分の奥さんの作品も含めて、田島に紹介してくれた。

トムはつい先日、シドニーのステイト・ギャラリーで行われたアボリジナル・アートの展示会にこのギャラリーからの作品を出品したのだという。それでシドニーに行き、その帰りの飛行機で田島と一緒になったのだと話した。

“Do you have a bit more time today?”

ふとトムから、今日もう少し時間があるかと聞かれた。特に何の用事もなかった田島は「イエス」と答えるしかない。

何があるのかと聞くと、夕方の四時からこのギャラリーの奥の部屋でディジュリドゥ教室をやるから参加しないか、と誘われた。

「オフ・コース、トム」

キャンプ・ツアーでガイドのティムからディジュリドゥの吹き方を少し教わった。でも、そのときはほんの触っただけぐらいの経験だったから、トムの誘いに田島は「もちろん」と返事をした。

メインストリートに戻って時間をつぶした後、四時少し前にまたトムのギャラリーに戻ってくると、先ほどの店の静けさはどこへというくらいの騒々しさ。

子どもたちのわいわい騒ぐ声が奥の部屋から聞こえてくる。ディジュリドゥ教室は、地元の小学生の子どもたちを対象に開かれたものだった。

「ティム!」
“Oh! Shogo.”

昨日、感動のお別れをしたティムとハグで感動の再会。たったの一日離れていたただけなのに、まるで何年も会っていなかったかのように、今までどうしていたかを訊ねあう二人。

ディジュリドゥを何本か抱えたティムは、この教室の講師としてやってきたのだった。

“Hey, Tim. How did you know Shogo?”

トムがティムに、どうして田島と知り合いなのかと聞くと、ティムは田島がキャンプ・ツアーに参加したのだ、と事情を説明する。

またティムがトムに、どうして田島と知り合いなのかと聞くと、トムはシドニーからの飛行機で一緒になった、と説明する。

その二人の様子を見て、田島が遠慮がちに声をかける。

「あの、エクスキューズ・ミー? アー・ユー?」
“Tom is my brother.”
“Tim is my brother.”
「は? ブラザー!?」



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二人はブラザーでした^^ ちなみに、双子ではないです。


『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

えええ。ティムとトムが兄弟だったとは。(似てるのかな?)

ふらっと入ってみて、よかったですね。いや、これも必然?
感動のお別れの後のティムとの再会が、ちょっと面白いww

ここでもういちどディジュリドゥを吹くんですね。
田島君の旅は、どこでどんな輪をつなげるか分からなくって、おもしろいです。

2012.07.08 Sun 09:38
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

ティムとトムは兄弟でした。似ているようです。

> ふらっと入ってみて、よかったですね。いや、これも必然?

いや、時間があっただけのことで。
ふらふらしているときに色々と発見することって、良くありますよね^^

> 感動のお別れの後のティムとの再会が、ちょっと面白いww

ははは。ティムはまた会いたい、と思わせるとても良いガイドでした。
ツアーの良し悪しはガイドにも寄ったりすることがあると思います(←なぜかここマジ解説?)

> ここでもういちどディジュリドゥを吹くんですね。

はい。田島はディジュリドゥの吹き方を学ぶ気満々なのですが・・・?

> 田島君の旅は、どこでどんな輪をつなげるか分からなくって、おもしろいです。

おお。キャラの輪、良いですねぇ。つなげちゃいましょうか^^
2012.07.08 Sun 10:52
Edit | Reply |  

Name - おなかぴーたろー  

Title - No title

ブーメランって
人気のお土産の一つなんですね!
広大な土地ならでは。だからなのかな。
ディジュリドゥは、お土産でも人気なのかな?
でも、こちらも結構値が張りそう・・
って、コメントそこ!?みたいなi-229

ブラザーだったとは・・
って、本文コメントは一行かぃ。
2012.07.09 Mon 10:26
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - おなかぴーたろーさん

コメントありがとうございます。

私はお土産ブーメランを4つ持っています。
1.1メートル位の大きな奴(これだけ横浜の実家に)。2.飛ばすとちゃんと戻ってくる本物の奴。3.三つ又のやつ。4.ミニチュアの飾り物の奴。 すべて頂き物です。ちなみに、コレクターではありません(^^;)

ディジュリドゥは、ボディに施されたアートワークが美しいのですよ。基本、楽器、なので、結構値は張りますが、いかがでしょう^^

はい、仲の良いブラザーでしたっ^^
2012.07.09 Mon 12:26
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - 

ブーメラン。。。
やはり高いのでしょうかね。あちらでは。
特に田島くんぐらいの人だと手が伸びない。。。
お金がないって大変だなあ。。。
まあ、私もお金がないですけどね。。。
2016.07.23 Sat 11:55
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

ブーメラン、高いんですよ。商売してますよ。
Ausは物価高いです。特に旅行はホント高い。

私もお金ないよ~(><)
田島も節約してます(^^;)
2016.07.23 Sat 20:01
Edit | Reply |  

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