オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 83 

キャンプ・ツアーで、ひげにサングラスのティムと初めて会ったとき、ひげにめがねのトムと似ている、と思ったのは気のせいではなかったのだ。

それは、オーストラリアに来て初めて食べたチョコレート菓子のティム・トム、いや、ティム・タムのおいしさに感動したのと同じくらいの感動だった。

“Today, we have a special guest from Japan.”
「え? スペシャル・ゲスト? ジャパン?」

教室に入ると、ティムは田島を子どもたちに紹介してギターを渡した。

“Shogo, play it for those kids.”

ティムが田島の耳元でこそっと告げた。田島は子どもたちと一緒にディジュリドゥの吹き方を教わるつもりでいたのが、ティムに乗せられ、しっかりギターを弾かされ歌わされた。

教室の子どもたちの前で、キャンプファイヤーでやったティムとの再共演を果たし、子どもたちのディジュリドゥの演奏にも合わせてギターを弾いた。

田島のギターに合わせ、得意になってディジュリドゥを演奏する子どもたちを見ると、みんな表情が豊かでかわいい。

―――俺も吹き方を習いたかったんだけど・・・ま、いっか。

素直にこの時間を楽しむ子どもたちから、時間というのはこういう風に楽しむものなのだ、ということを学べたことのほうが何だか嬉しかった。

教室の後ろでは、子どもたちの歓声を聞きつけて覗きに来たトムも手拍子で参加していた。

子どもたちは、ティムと田島の演奏するディジュリドゥとギターのコラボに、まるで世界的な大スターでも迎えたかのように大喜び。

今日の子どもたちのためだけに行われた二人の演奏のまわりで、みんな歌ったり踊ったりで盛り上がり、この日の教室は終了した。

“Would you like to have dinner with us, Shogo?”

その日の夜は、トムから自宅の夕食に招待された。アーティストの奥さんに少し緊張気味に挨拶をして、作品をいただいたりもした。

それはティムとトムとの再会と共に、ショッピング・ストリートで買うお土産よりも、ずっと特別な思い出となった。





―――今日も良い天気。

ギターを抱え、週末休みの銀行の前に立つ。久々の路上だ。

シドニーに次ぐオーストラリア第二の都市、メルボルンは、平日も週末も関係なく多くの人が行き交う。

人寄せのためのアメリカンヒットを歌うのはもうやらない。

―――日本語でガンガンにいく。

メルボルンは、公園がたくさんあるきれいな街だ。公園でジョギングや散歩をしている人や、ピクニックをしている人などをたくさん見かける。緑の中でウエディングをしているのも見かけた。

メルボルンに着いてからの数日は、ツアーなどには出かけずに、公園に行ってのんびりしたり、カフェで今まで作った曲をまとめたり練ったりして過ごした。

できあがった新曲を路上でやる。日本語で歌っているのにも関わらず、それでもカフェでコーヒーが飲めるくらいの小銭は投げてもらえるのが嬉しい。

「サンキュー」

手にした小銭を握り、粋なカフェを探してマスターに報告のメールをする。

『田島君。僕もメルボルンは好きな街だよ。僕が行った頃と違って新しいお店がたくさんオープンしているみたいだね。

それよりも、オリジナルのほう、どうなってる? ユーチューブにはまだ一つしか上がっていないけど?』

―――やべえ。そういえば、シドニーでは一曲しかやってなかった。

その日のうちに、田島はエアーズロックのキャンプ・ツアーのときの写真と共に「The Sound of Wind」というタイトルの二曲目をアップした。

寝る前にシドニーのエディが、メルボルンでやるミュージック・フェスティバルの情報をフェイスブックで送ってきたのを見つけた。

―――エディ。この日に俺、メルボルンを出るんだよ。

オーストラリアは大きな国だ。たとえこの国に1年いたとしても、すべてを見ることはできないだろう。

まだ居たいという気持ちを大いに残しつつ、田島はメルボルンを発った。



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やぁ~っとぉ、オーストラリア編(?)終了です。長いっ ><
途中、自分でもどうなるこれ、って思ったくらい(--;)
変わらぬお付き合いをありがとうございました(感謝)

色々な反省を残しつつ、次の国へ飛びます。ふ~、ほんとにやっと(滝汗)
え、次はどこかって? たぶん、ご想像の通りかと(^^;)


『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

田島君、ティムトム兄弟と楽しい貴重な時間を過ごせてよかったですね。
ティムに乗せられて、ディジュリドゥが吹けなかったのは残念だけど^^

そして、メルボルン。って、西のほうでしたっけ。
そういえばオーストラリアはシドニーとハミルトン島しか行ったことがなく。
もっと移動したかったなあ。
南の方にはいったい何があるんだろう。思えば広大な土地ですよね。

さあ、次は田島君、どこへ行くんでしょう。
え?私、全然わかりません。ヒントありました?
どこだって、田島君についていきますよ~。
2012.07.10 Tue 08:39
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

田島はオーストラリアで色々な人と出会い、良い思い出が出来ました(しかも絡み結構深め)
最後に寄ったメルボルンは、シドニーとはまた違う雰囲気のとても良い街ですよ。是非^^

さあ、次は田島はどこへ行くんでしょう。
ヒント→お隣です。けど、ニュージーランドではない。

どこだって、ついてきてくださいね~。
お願いします(^^;)
2012.07.10 Tue 11:08
Edit | Reply |  

Name - ヒロハル  

Title - No title

メール、フェイスブック、ユーチューブ、本当に便利な世の中になりましたよね。

どれだけ離れていても繋がっていられますし、
気軽に新しい友達もできますしね。

田島は世界を一周して、最後は髭面で日本へ到着するのでしょうか。
2012.07.11 Wed 10:35
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ヒロハルさん

コメントありがとうございます。

田島は最新のデバイスを持参して出かけています。(そこんとこ記述してないけど)
マスターが放浪していた頃とは様相が全く違うはずです。
ホント便利な世の中になりました^^

> 田島は世界を一周して、最後は髭面で日本へ到着するのでしょうか。

ぷぷぷ。髭面、ですか。ヒロハルさんのところの髭面のあの方と田島が重なってしまいましたっ。
えっと、日本に帰るのはまだ先で・・・(汗)
2012.07.11 Wed 11:43
Edit | Reply |  

Name - ソライエ  

Title - 分かった!

ちんたら3回読んでいたら
83が出て、82のコメント飛ばしてしまった。不覚です。

次はお隣?パプアニューギニア?
民族音楽をカラダにしみ込ませて新しい音楽の境地を開くんだ。
きっとそうに違いない。

って。。。違うな

ニューヨークか
オリンピックに合わせてロンドンどっちか!
大きな意味で言ったらお隣だもん。
2012.07.11 Wed 13:52
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 分かった!

ソライエさん、三回読みでコメントありがとうございます。

次はお隣からスタートです。ここではネタバレなしよーん。
と言えるネタも無いのだけれども(--;)

民族音楽は良いネタですね。田島、勉強しなね。ははは(汗)

世界は広いですね。みんな大きな意味でお隣っちゃあお隣っ^^
2012.07.11 Wed 14:47
Edit | Reply |  

Name - fate  

Title - こういう風に!

次々起こる突発的な事態や、奇跡のような出会いが日常に普通に溶けていて、人々は普通にそれを感動して。
確かに落ち込んだりクサッたりもするんだろうけど、それでも、ずっと楽に、テンション高く生きているのが南国の特徴だなぁ、と。
厳密にはそれほど常夏っぽい訳じゃないけど、明らかに日本とは空気の色が一段違っていて、何もかもがダイナミックで呼吸が楽だった。

それでも。
そこはやはり憧れの大地でしかなかった。
その風景に溶けて、そこで死んでいく幻想は、幻想に過ぎなくって。

そういうことをフツーに思い起こさせます。
魂の国で、いつかそんなことを語れるだろうか。

日本にいると息苦しくて窒息死しそうだけど、でも、棲息可能な土地はここしかなくて、やはり土に還るためにはここで朽ちていくしかないのだろう。
神の国。
ニッポンで。

はぁ・・・
しみじみしてしまうわ~(^^;
2012.07.12 Thu 06:31
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こういう風に!

fateさん、コメントありがとうございます。

やっとオーストラリア編(?何か違和感が抜けない?)終わっちゃいました(むむ。表現が変)

普通の日常をゆるりと描いていきたいな、というのが希望なのですが、実は普通なんて無いんですよね、なんて思ったりしています。すべての奇跡が重なって普通を起こしているのかな。みたいな。(よくわからん><)

誰でもテンション高いときもあれば、落ち込んだりクサッたりするときもありますよね。人間だもの^^
そうやって過ごした日々が何かを残してくれると良いな。

オーストラリアも良い国だけど、ジャパンも良い国。ビーチとか桜とか、体を二分して良いとこ取りして暮らしたい。fateさん、語り合いましょう^^
2012.07.12 Thu 11:26
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - こんにちは~

遅ればせながら…田島くんに会いに来ました~(^O^)/

ディジュリドゥというのが、どういう音なのか興味があって、
You Tubeで聴いてみました。
アボリジニの演奏は、なにかこう……大地の呻きのような、
トランスに入っちゃうような、不思議な感じがしました。
これを、オーストラリアの広い大地の上で聴くとどんなだろうと思います。
オーストラリア、ほんとに魅力的ですね。

昔、高校時代に豪州から来た交換留学生が
家で暮らしていたんですが、彼女はメルボルンの出身でした。
日本語がとても上手になって、今はもう結婚して、
日本語の先生をしていると思います。
なので、メルボルンはとても興味のある街で、
そこが舞台となると、また心躍るなぁと思ったら、田島くん!

すぐに出るのね……と、ちょっと残念(笑)。
しかも、ニュージーじゃないのね……。

でも田島くんの、そういう飄々としたところが好きです^^
それに、やっぱり音楽という言語は強いなぁ。
日本語で歌って、すっきりしたんじゃないかなぁって思いました。

さて、どこに行くのかなぁ。次が楽しみ~^^


2012.07.12 Thu 15:24
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こんにちは~

城村優歌さん、コメントありがとうございます。

ディジュリドゥの音は私には文章化できませんでした(><)
のめりこむと、どっかに行っちゃいそうな雰囲気があるかも(^^;)
祭礼にも使われていたというのに納得。
ホンとにね、地面から響いてくるのですよ。
それでトランス(?)

おお、オージーをホストされたことがあるのですか。
貴重な経験談をありがとうございます。

メルボルンでは、ちょいのんびりしただけとなりました。
メルも堪能したかったし、他の町にも行きたかったのですが、ほら、キリがないしね。ははは。

> それに、やっぱり音楽という言語は強いなぁ。
> 日本語で歌って、すっきりしたんじゃないかなぁって思いました。

そうですね。すっきりしたと思います。
何もかもを受け入れてくれる音楽と人の許容の広さにいつも感動です。

そんなことをやっていく田島に、いつでも会いにいらしてくださいね~(^O^)/
2012.07.12 Thu 16:50
Edit | Reply |  

Name - おなかぴーたろー  

Title - No title

お隣・・南米かな。アフリカかな。
いや、南極って事もある
(って、そもそも南極に行けるのかな?)

ま。次回に期待しましょう!

オーストラリア編終了ですか・・
長かった気がしますけど
実は、滞在期間は一週間もいないのでは!
それなら、オーストラリアの首都を
未だに間違える自分がいても
おかしくないわけだ・・i-229
うん。うん。
2012.07.13 Fri 01:03
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - おなかぴーたろーさん

コメントありがとうございます。

お隣の・・・南極、っていうのは穴場でしたっ!
それ、気に入った。飛ぶ路線変えよか。いやいや(^^;)

オーストラリアの首都は、キャンベラなんですけど、ここも良いとこなんですよ。
いや、終わった終わった。。。
そういえば、グレートバリアリーフ方面にも行ってない・・・
いや、ほわたんだって。もぉ・・・i-229

でもね、お話よりもリアルが一番ですよ。是非お越しください^^
2012.07.13 Fri 10:02
Edit | Reply |  

Name - rurubu1001  

Title - No title

実はお書きになって一周年経っていたんですね。お疲れ様です!^^

私は一気に読んでしまってちょっともったいないことをしてしまったかも…。

オーストラリア編、終了なんですね~。
最後の最後に2人兄弟だったんだ??ってビックリしました。素晴らしいオチ(笑)。

日本人の女の子たちにばれた時も田島くんの対応もなんかカッコ良かった!あんなに苦しんでいたからことちょっとまたぐっときてしまいました。

次の国はどこだろう。旅編わくわくです♪
2013.08.21 Wed 15:37
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - rurubu1001さん

コメントありがとうございます。

まだまだ書き始めたばかりの初心者です(^^;)
主人公とともに成長、しているかなあ(?)
一気でも何でも、読んでいただけるのはすごく嬉しいです^^

> 最後の最後に2人兄弟だったんだ??ってビックリしました。素晴らしいオチ(笑)。

はは。世間は狭いのです。

> 日本人の女の子たちにばれた時も田島くんの対応もなんかカッコ良かった!あんなに苦しんでいたからことちょっとまたぐっときてしまいました。

あー、と指差される前に退散できて良かったです(^^;)

> 次の国はどこだろう。旅編わくわくです♪

まーだまーだ旅は続きますが、えっと、長くて(汗)
お付き合いいただければと。
2013.08.21 Wed 16:03
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - 兄弟!

ティムとトム、語感も似ていると思ったら、兄弟!という興奮も冷めやらぬうちに、オーストラリア旅行、終わりですね。
名残惜しいけれど、少しずつ場所を変えながら続く田島くんの旅には、これからまだまだ出会いがあると思うので、過去ではなく先を見ていこうっと。
田島くんの色々な感動や心の動き、その中で曲が新しく作られていったり、あるいは心の引き出しに仕舞っていったりする過程が、けいさんのシンプルだけど動きのある文章の中で綺麗に生かされていて、とてもスムーズに読めるお話で、ほっとします。
まだまだ旅の先は長そうですが、日本に戻った時の田島くんのこころの成長が楽しみだなぁ。
さて、次はアジアですか。先に進みますね(^^)
2013.10.05 Sat 06:43
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 兄弟!

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

ティムとトムは兄弟でした、
という典型的なベタな展開でこれからも進んで行きます(-_-;)

田島は今は前だけを見ています。
進むのは本当に遅いのですが、一歩一歩。
ゆっくりと重ねていくので、お陰で旅の長いこと・・・

どんなものが心の引き出しに仕舞っていかれるのか、
微妙なところもあるのですが(そして何がどう微妙なのか、説明できん><)、
大海さんにお楽しみいただけることを願って・・・

作者、直球しか投げられませんが、これからもよろしくお願いします(^^;)
2013.10.05 Sat 13:33
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - 

オーストラリア篇は終了ですね~~。
ちょっと寂しい。。。
しかし、また他のところへ行く!!
それが田島くん。
その姿に本気で憧れますし、惚れますね。。。
(*´ω`*)
2016.07.30 Sat 12:43
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

わっ。ここまで。嬉しいです。
長かったけど、次へ。

これは嬉しいお言葉をありがとうございます。
ファン獲得?(ちゃうっ><)い
旅はまだまだ続くのですが、LandMさんが最後まで田島と一緒に旅してくださると嬉しいです。
2016.07.31 Sun 15:36
Edit | Reply |  

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