オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 90 

ミナとのベトナムの旅は、ツーリストバスで東海岸をのんびりと移動することにした。南のホーチミン・シティーから首都のハノイまで、山口から青森までの本州を縦断するぐらいの距離を北上する。

「うわあ、きれい!」

ここを訪れる者は、誰も思わずそう口にする。南シナ海に面するリゾート地、ナチャンのビーチは、旅行ガイドブックの情報から想像していたよりもずっと美しかった。白い砂浜、青い海、優しい風に、連日の旅の疲れなど、どこかに吹き飛ぶほどに癒される。

「カームオン(cám ơn)(ありがとう)!」

パラパラと送られる拍手に応え、田島はギターケースを閉じ、路上の場を後にする。いつもの通り、小銭を握って昼食の場所を探しに歩き出した。

「ショーゴさん。カッコ良かったですよ」

振り返るとミナが満面の笑みを見せていた。

「ミナちゃん。見てたんだ」
「はい。途中から」
「アイランドツアーは?」
「やっぱり予約していないとダメでした」

田島よりずっと旅慣れしていそうなミナが、アトラクションを入れそびれるなんて、めずらしい。

「明日で予約しました。今日は買い物デーにします」

ミナは行く先々で、積極的に一人で行動している。田島とは街から街への移動は一緒にするが、観光などは一人で行きたいところに行く。

見るからに華奢で小柄な体つき。かばってあげたくなるような弱々しい外見からは、想像もつかないほどに行動力があり、しっかりしている。

「ショーゴさん、ここ良さそうですよ」

ミナの後についてその店に入り、すっかり昼食の定番となったベトナム麺のフォーを注文する。

「今日はボー(牛)にしますか、ガー(鳥)にしますか、それともカー(魚)にしますか」

たとえベースのスープが何であっても、トッピングに何を選ぶかで味が変わってくる。それがまたお好み次第で楽しい。

「さっぱり味に、これは欠かせないですよね」

そう言って、ミナはまるで通(つう)のように、半分に切られたグリーン・ライムを搾った。

「ショーゴさん、今日歌っていたのは、新曲ですか」
「うん。カンボジアでの思い出の曲」
「ああ、イセカイの歌ですね。どこかに行っちゃうっていう」
「え、そうなの?」

田島がクックと声を抑えて笑い出したのを見て、ミナは不満げにふくれて言い返した。

「ジョークですよ。私、ちゃんと歌詞わかります。私は日本語を一生懸命に勉強しました。ショーゴさんの歌、ちゃんと聴いていました」
「ごめんごめん。そうじゃなくて。イセカイもの、面白いかもなって。作ってみようかな」

そういえば・・・田島はふと気になった。

―――ミナちゃんとは、カオサンからずっと一緒に旅をしているわけだけれども・・・

ミナにとって、この旅は何なのだろう。ただの観光旅行なのか、それとも何か目的があるのか。

「ミナちゃん、ベトナムの次はどこに行くの? ラオス? ミャンマー?」
「ベトナムで旅行は終わりです。ハノイまで行ったら、そのあとはソウルに帰ります。予定通りです」

あっさりした返事だった。田島はミナが、自分と同じように長期旅行をしていると思っていたのだけれども、その予想は外れた。はじめから1ヶ月程度の予定で来ていたらしい。

「ソウルではどうするの? またマッサージの仕事に戻るの?」
「はい。前にいたサロンに行きます。一生懸命に働いて、将来は自分のサロンを持ちたいです」
「それは夢があって良いね」
「お客さんに、最高の癒しを提供したいです」
「ミナちゃん、そういう話を俺にすると、必ず叶うって知ってる?」
「え?」
「ミナちゃんの夢の話は、俺が聞いた。だから、きっと叶うよ」
「そうなんですか? うーん、ショーゴさんが言うと怪しい」
「なんで?」

カクッと肩を落とす田島を見て、ミナはクスクスと笑った。カンボジアで田島にイセカイ話の印象がついてしまったようだ。

「韓国に日本人がたくさん来ますから、それで日本語を勉強しました。観光でもビジネスでも、韓国でのんびりしていってもらいたいです」
「へえ、それで日本語を」

ミナの日本語はとても流暢で、正直うまいと思う。けれども、ヘタに「日本語が上手だ」などと言ってしまうと、「上から目線でものを言うな」と怒られそうなので言わないでいる。

「ショーゴさんは、将来、歌手になりたいですか?」
「歌手?」

ミナの質問に、田島はふと詰まった。その問いに答えるために、予想される選択肢を探る。

「うーん、歌はずっと続けるよ。あと、作ることも」
「そうですか。ショーゴさんは、クリエイティブな人ですね」
「ミナちゃん、ホント褒め上手」

旅の途中の今は、まだ明確な答えは見えない。ただ、自分を信じて前に向かうだけ。今、できることは限られているけれど、昨日よりも一歩前へ、そのぐらいはできる。

「ショーゴさんが日本で歌手になったら、教えてくださいね」
「それは・・・」
「ツアーでソウルに来てください。私、癒しの出張サービスに行きます」
「ツアーねぇ」
「ショーゴさんはカッコ良いから、韓国でもきっと大ヒットですよ」
「そういう話は・・・」

相変わらず、リアクションに困る田島だった。

「私がショーゴさんに言うことは、本当になるのです。よね」

そう言って、いたずらっぽく笑うミナの方が、田島より一枚も二枚も上手なのかもしれない。



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しっかり者のミナちゃんに、ちょい押され気味の田島(^^;)


『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - LandM  

Title - No title

なかなか海外ツアーまでなるのは・・・・。
まあ、ごく一部ですからね。
英語圏内ならともかく。
こういう会話は夢があっていいですけどね。
2012.12.04 Tue 08:51
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

夢のある会話を持つことぐらいはいいかな(^^;)
実行するのは大変な作業ですが、
まずは想いの中でワクワクするところから。
そこから何かが始まると良いな、なんちて^^

田島のワクワクは・・・(てんてんてん)
2012.12.04 Tue 16:46
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

うっかり、「癒しの出張サービス」に
反応してしまったオヤジです(汗)。

今、ほんとに、日本語を上手に話す外国の方が多いですね。
自国語以外の言語を習得すると、
世界が倍以上に広がるそうですが、
英語もおぼつかない私には、眩しい限りです。
もちろん、憩さんも、まぶしいっ!

ショーゴの夢叶パワーは、
ショーゴが自分自身を信じる力の強さかな、と思いました。

フォー、おいしいですよね。
私、大好きなんです~。
でも、お腹にたまるのよね~^^

2012.12.04 Tue 23:04
Edit | Reply |  

Name - おなかぴーたろー  

Title - No title

毎回、思うんですけど
田島クンの行く所、行く所
自分でも旅行に行っている気分になりますi-179
今度はどこに連れて行ってくれるのかなi-228

けいさん。英語のみならず
ベトナム語までも!
バイリンガルだ!
ボー(牛)、ガー(鳥)、カー(魚)
・・知りませんでした。

どーでもイイですけど
ちなみにフランス語で
魚は「ポワソン」って言うんですよ~。
どーでもイイかi-235チョイ自慢でした!
スゴーイって褒めてi-175褒めてi-175
2012.12.05 Wed 00:13
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

フォー、食べたくなりました。
実は、食べたことがない><
のんびり昼食で、田島くんとフォー。

くっ。うらやましいぜ、ミナちゃん。(妬)

相変わらず、自分の将来の話には積極的になれない田島くんですね。
考えたくないのか、それとも今、ここで話題にしたくないだけで、ちゃんと考えてるのか。
まだまだ、読者にも心をすっきりと見せない田島くん^^

いつか、ばーーーーっと、語る日が来るのでしょうか。

(だれに語るのか・・・が、一番知りたい^^)
2012.12.05 Wed 09:34
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

> うっかり、「癒しの出張サービス」に
> 反応してしまったオヤジです(汗)。

あはは。良いビジネスにでもなりますかね。
てか、城村さんのオヤジ疑惑に反応する(汗)

> 今、ほんとに、日本語を上手に話す外国の方が多いですね。

ホント、敬語とか完璧な方に出会ったりすると、やばいと思いますね(^^;)

> 自国語以外の言語を習得すると、
> 世界が倍以上に広がるそうですが、

そうですね。言語学習は、生活文化の学習も含まれますから、そこから学ぶことは多いです。
ミスタードーナッツは辞書に無い単語だから、その意味(すなわち味)を習得するには、みたいな(?)(←ちょい違う?)

一方で、日本語だけで世界を渡れたらなー、と思ったりすることもあるのですが、
けど、その日本語すらおぼつかなかったりする(--;)
城村さんの文章もめっちゃ眩しいっ!

> ショーゴの夢叶パワーは、
> ショーゴが自分自身を信じる力の強さかな、と思いました。

ありがとうございます。
田島は自分を頼るしかないみたいです。
いつもそばにいてくれた瞬や徹さんが今いないんでね。成長しろよ、で。

おお、フォー、好きですか。
おコメの麺なので、お腹には優しいかと^^
2012.12.05 Wed 16:13
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - おなかぴーたろーさん

コメントありがとうございます。

それでは、ぴーたろーさんをイセカイへ・・・ってちがーうi-179
今度はね、実はね、言わないよぉ~んi-228

食で学ぶ外国語、実は密かな効果が。あるかもマジで。
> ボー(牛)、ガー(鳥)、カー(魚)
調べました^^

いやいや、どーでもイくなんかないですよ。
言語の数だけ魚の名前があるのですよね。
フィッシュに、ポワソンに・・・後が続かず(-_-)
けど、どんだけあるんでしょう。うーん、深い。

ぴーたろーさんっi-235
スゴーイッi-175スゴーイッi-175

深海魚のように深い話題をありがとうございます。
魚は僕らを~待って~いる。おー。なのです(「おさかな天国」)(最後にイミフ・汗)
2012.12.05 Wed 16:35
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

私も、フォー、食べたくなりました。
みんなで会食したいですね。
二次会は二人っきりにしてあげ・・・られるか(すみません、limeさん。確約までは・・・汗)

さて、田島の今の進行状況は・・・

僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る  
(「道程」高村光太郎)

な感じで。今日を行く(生く)こと、そんな日々を送っている。らしいです。
歩みがのろくて・・・大体、作者がのろいんで・・・(^^;)

> いつか、ばーーーーっと、語る日が来るのでしょうか。
> (だれに語るのか・・・が、一番知りたい^^)

ばー、かどうかはわかりませんが、いつかきっと語りますよ。
誰に語るのか。それはもちろん、limeさんに向かってでしょう。
いつかわからないくらいのいつか^^
2012.12.05 Wed 17:22
Edit | Reply |  

Name - rurubu1001  

Title - No title

変なお話かもですが。

私、「夢叶」(ちなみに私は「ムト」ってよんでました)に随分ひきこまれてて、それってなぜかなあ?ってずっと思ってたんですけど、私いま夢がないんだ!ってことに気づきました(笑)。

だから、夢をもってキラキラしてる人たちにすごくひかれるし、夢を失いかけて、もう一度つかもうとする田島くんの力強さにとてもわくわくしてるんだなあって。

この物語が読み終えるころ、私も夢が見つかるといいなあ。すごい個人的な思い入れもあって読んでしまってますが、そのことに気づかせてくれたことに感謝^^

っていうかアジア、面白そう!私も本場のフォーを食べたい!アンコールワットも行きたくなりました。本当に空気というか時間が違うんでしょうね~。
2013.08.22 Thu 23:48
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - rurubu1001さん

コメントありがとうございます。

いえいえ。全然変ではないです。
夢がないというのは、気付いていない、ということだったりして。
rurubuさんが今一生懸命にやっていることが、将来の夢に続くことだったら良いなあ。
「ムト」は新な案ですね。一票^^

物語を読んでいただけるのは、とっても嬉しいです^^
どうか終わるまでお付き合いいただけますように(汗)

アジアね、行ったことないのです。
本当の所はどうなんでしょうね。
妄想とは自由なもので・・・(^^;)
いつか書いたことを確かめに行ってみたいですね。
2013.08.23 Fri 22:52
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - またまた

沢山の出会い物語、ですね。
田島くんの気持ちが外へと向かっていく感じ、そして本来なら孤独な旅のはずが、出会いが全てを埋めていって、そしてさらにネットで繋がっている安心感。
とても落ち着いた気持ちで読める極上の旅行記です。
アンコールワットの現実、その他の部分で香っている香辛料のにおい、じゃなくて町の熱気や喧噪。登場人物一人一人の背景も豊かで、やっぱり自分も一緒に旅をしているような気持ちになります。
そんな中で、曲がYou Tubeで認められていく。わくわくしますね!

アンコールワット、ずいぶん昔に行きました。
早稲田の有名な教授のチームが修復に来ていました。
うちの父が話をしたようですが、石が脆くて直しても直しても崩れるのだとか、仰っておられました。
本当にずっと修復を続けていかなければならないんですよね。
そして終わったと思ったら、始めに直したところがまた崩れていく……終わりがないけれど、それでも修復していくんですね。結果よりもその道のり。
素敵な旅が続きますように。
2013.10.07 Mon 01:04
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: またまた

大海彩洋さん、またまたでも、いつでも、コメ嬉しいです^^

旅行は出会いと別れを繰り返して思い出となる、というのが、
フェイスブックその他の登場で様相が変わったと思います。
写真も旅行記もすべてデジタル化され、瞬時に伝達できる。
便利な良いとこ取りだけしたい。なんちて。

私自身はアジアの国にはどこにも行ったことがないので、
友人の話や妄想のみでお話は進むのですが、
ググッて調べていたときは、私も旅していましたね。
実際に行かなくても意外と楽しめて。お勧めしたりして。
でも、においや温度はやはり、行かなくてはですね(^^;)

おお。アンコールワット修復の貴重なお話をありがとうございます。
うん、ググッていたときに、日本のチームも大いに貢献していると出てきました。さすがジャパン。

日本でも姫路城や清水寺や他にもたくさんの修復工事がなされていますね。
作るのは案外簡単。壊すのは超簡単。
でも、キープして維持するのは大変で凄いことなのだなあと。
そしてそれは建物や文化遺産だけの話ではなく・・・ね。

まだまだ、えっと、まーだ(汗)続く旅によろしくお付き合いいただけれなと。。。
2013.10.07 Mon 16:19
Edit | Reply |  

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