オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 101 

ナタリーの後姿を見送った後、田島は地下鉄入り口の階段を降りて、改札に向かった。

「で、地下鉄を乗り間違えた?」

ダイニング・テーブルを挟んで、向かいに座る祥子が、足を組み直す。

「そうじゃなくて、電車が来なくて」

おかしい、と思った頃に、路線のどこかで車両故障があった、との構内アナウンスが入った。ホームにいた誰もが、ブーイングをしながら改札を出て行く。

田島も降りてきた階段を上がり、再び地上に出たのは良いが、方向が全くわからない。道を聞こうにも、通りは酔っ払いだらけで話にならない。

「あっち」と教えてくれた親切そうな人の案内はでたらめで、田島は道に迷ってしまった。単純に。単純なものほど、解決しがたい。

―――落ち着け。アべニューがこっちで、ストリートがこっち。

歩き出して、自分のいる通りのナンバーを確認する。その数字をたどれば、セントラルパークに行けるはず。そこまで行ければ、とやっと現状を把握する。

「とにかく、やばい」

田島は走り出した。

「それで、ミッドナイト・マラソンして帰ってきたんだ。タクシーで帰ってくれば良かったのに」
「10ドルも持っていなかった」

あきれる姉と弟の間に、心配からの安堵とひたすら反省との二重の沈黙が流れる。それを破るように、ガチャリとドアの開く音がして、クリスが帰ってきた。

祥子は素早く立ち上がり、「ハイ、クリス」とドアまで迎えに出た。「まだ起きていたのか」とあきれるクリスの声が聞こえる。

電車が止まってしまい、タクシーで帰ってきた、と田島の話を裏付けるようなクリスの説明も聞こえてくる。

“Shogo. You’re still there too?”

ダイニングにしおらしく座っていた田島を見つけて、クリスは不思議そうに声をかけた。田島は、いたずらをとがめられた子どものような、薄い笑みを返すしかなかった。



ニューヨーク滞在3日目以降・・・

自由の女神のキーホルダーのついた家のカギを持ち、iPhoneにはパスポートのコピーを保存し、このアパートメントの住所と、緊急連絡先として、祥子とクリスの名まえと携帯番号、それらを入力。

紛失したとき用に、ハードコピーをギターケースの内ポケットに。それと、ニューヨーク・シティーの地図と地下鉄の路線図を携帯。

それらをフル装備して、田島は連日の路上に出かけている。最近は慣れてきて地図を見なくても移動ができるようになったし、お気に入りのカフェも見つけた。

演奏の場所は、タイムズスクエア、ユニオンスクエア、ワシントンスクエアなどの周辺。セントラルパーク、バッテリーパークなどの公園。

サウスストリート・シーポート周辺、アポロシアター周辺など、観光も兼ねてどこにでも出かけた。

ミュージックホールやライブカフェなどを訪れ、ニューヨークのミュージックシーンにも触れた。

路上をしながら、新曲の作成も順調に進んだ。クリスが「いつでも使って良い」と言ってくれた、『スタジオ』と呼ばれる部屋で、自分のコンピュータを広げて作業する。

「奏(かな)さんの名まえもクレジットしないと」

ベトナム以来、詩を送ってくれる奏とメールで連絡を取りながら、出来上がった曲をユーチューブの有料プログラムのほうにアップする。このパターンで、田島の曲が増えていった。

田島はユーチューブに曲をアップするごとに、コンピュータにピース・スマイルのシールを貼っている。それを一目見るだけで、今までにどのくらい出来上がっているのかが瞬時にわかる。

スマイル・シールの数がこの旅の成果でもあるようで、だんだんと増えていくのを見るのは嬉しくもあり、それがモチベーションにもつながる。

「祥吾、バスキングも大分慣れてきたんじゃない?」

『スタジオ』のドアは常に開かれている。いつの間にか部屋に入ってきた祥子は、田島のコンピュータに手を伸ばし、シールの増え具合を確認する。

「うん、調子良いよ。今日は地下鉄の通路でやってきた」
「MUNY (Music Under New York:地下鉄構内で演奏するための登録許可)ないのに?」
「構内じゃないから」
「それでもセキュリティーに言われるでしょう」
「その前に撤収する」

「ったく。捕まらないようにね」と祥子は笑みをもらす。

「それで、今日のバスキングで、祥吾は何を聴いてきた?」

田島は祥子の言うことが一瞬わからなかった。

地下鉄通路のバスキングは、人が結構集まり、拍手もたくさんもらった。自分の歌とパフォーマンスを楽しんでくれている様子が身近に感じられ、路上の醍醐味を満喫できた。

「俺が聴いてきたこと?」



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今回も、ちょい練習を入れました(-_-;)
なかなか・・・頑張ります。。。


ご訪問、ありがとうございます^^

『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

田島くん、不運続きだったけど、お金持ってないってのは、やっぱり無謀ですよね。
お姉さんが心配するのも無理ない。
でも、それ以上は絞られなかったみたいですね^^
(もうちょっといじめても良かったかも)爆

少しずつ土地勘もできて、路上にも慣れてきて、作品も増えつつある田島くん。
着々と、前へ進んでますね^^
いい子。

でも、お姉さんからは謎かけが??
2013.02.09 Sat 15:48
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

そうですね。絞りがかなり甘かったですね。
色々考えていたのですが、攻めが・・・
Sではない作者(^^;)

ニューヨークでやるべきことをやっている、という感じですかね。
アネキからの謎かけでまたうーんと考えます。それが次回^^
2013.02.09 Sat 20:20
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

金がないと日本みたいに融通が利かないですからね。
言葉の問題もありますしね。
なかなか路頭に迷ったり、最悪は・・・。
おおう。
ということになりかねないですからね。

強制送還?

ってなりますもんね。

私ごとながら、
うちのブログで11万ヒット超えました。
いつもコメントと訪問ありがとうございます!!
2013.02.11 Mon 17:31
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。
日本ではなんてこと無いのに、外国では面倒なことが良くありますよね。慣れないと言うか。

おおう(!)と(?)の両方は良くあり、
強制送還、は無いです。まだ(?)

> うちのブログで11万ヒット超えました。

おおう!! おめでとうございます!!
続けられているからこそ、そうなるのでしょうね。
素晴らしいです(拍手)
2013.02.11 Mon 19:45
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

ニューヨークのミッドナイト・マラソンも、
男子だからですよねえ。
いや、男性でも海外だと、怖い目にあったりしないかな。
祥子さんの心配、いかばかりか。
日本くらいですよね、夜10時くらいでも、
塾帰りの小中学生がコンビニ前で、たむろってるの。

路上は、どこも厳しいのか~。
MUNYなどというものがあるのですねー。
東京は、路上しにくくなりましたね。
かわりにYouTubeがあるからトントンかなぁ。
がんばれ、ショーゴ♪
2013.02.12 Tue 21:27
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

男性も、海外で散々な目にあっていますよ~
笑える旅のエピソードなら良いのですけれども・・・
街の流れに沿っていれば、大抵の街では楽しく過ごせるはずですよね。

オーストラリアでは、子供たちは夜は家族と過ごすので、
塾に通う日本の子どもたちとは様相がずいぶん違いますね。

Music Under New York(MUNY)とは・・・
ニューヨーク市都市交通局による、オーディションに合格し合法的に許可を得たミュージシャンが地下鉄構内で演奏できる、というプログラムだそうです。私も調べました(^^;)

オーディションを受けて、審査に合格している、というだけあって、皆さん実力者揃い。YouTubeしてみてください。なかなか面白いです^^

ショーゴは申し込みの時期(毎年1月から3月の間)をはずしているので、現在、無許可のもぐりでやっています。大丈夫か(--;)
2013.02.12 Tue 22:33
Edit | Reply |  

Name - ポール・ブリッツ  

Title - No title

よかった。てっきり祥吾くん受けのBLな展開が待っているのかと(゜゜☆\(^^;コラ

まあそれは冗談ですが、ニューヨークの夜のマラソン……たしかに命がいくつあっても足りん(^^;)

怒られるのも当然ですね(^^)
2013.09.15 Sun 18:54
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ポール・ブリッツさん

コメントありがとうございます。

ぷぷぷ。このお話もボーイズ登場率のほうが高いです。
そして女の子が出てきても田島とあんまり絡まない。
だって、恋愛物描くの苦手なの・・・(-_-;)

私が描けるサスペンスは深夜のシティーマラソンでランナー刺される、程度で・・・(描けてないじゃん)
いやいや、刺されたらお話し終わっちゃいますぅ~~(><)
2013.09.15 Sun 21:03
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - 100越えた!

何だか満足(*^_^*)
もうちょっとで追いつくかな。でも追いついたらもったいない感じがするなぁ。
お姉ちゃんのエピソード、グッときました。
ミナちゃんとかお姉ちゃん、ナタリー、けいさんの書かれる女性はみんな魅力的ですね。田島くんってほんと、恵まれてますね。
でもそれは彼が好かれる性格だからなんですね。多分、ちゃんと家族に愛されていて、そんな中で育っていて、素直な心、そして人を傷つけない感性とか、そういうのが自然に人に伝わるんですね。
アメリカで色んな人に囲まれて、また成長していくのが見れそうで楽しみです。
目の不自由な姉と恋をする弟という設定がうちにもあります。実は田島くんと共演してもらいたい真の曾孫の真の時代の、竹流の方の子孫です。何だか、あれこれと共通点があって……やっぱりいつか共演してほしい!

日本のいいところ(見せたいところ)10個にチャレンジ。
津軽三味線(一番に出すのか、私^^;)、佐渡ワカメの入った味噌汁、水のおいしい地方で炊いたご飯(何も足さない、何も引かない)、京都の強烈に暑い夏と強烈に寒い冬を町家で過ごす、明石海峡大橋(世界一のつり橋、という名前の付くもの)、山奥の温泉、原爆ドーム、デパ地下、日本に残る巨石案内(って、個人的すぎる^^;)、新幹線。
でも、食べ物だけでも10個は越えるなぁ……

色んな会話、周囲の景色、そういうものがすごく自然で素敵です。
こんな風に物語が紡げたらいいなぁ。
見習いたいと思いました(*^_^*)
2013.10.14 Mon 20:29
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 100越えた!

大海彩洋さん、やた、100越え^^ 感謝です^^

こちらはマイペースの亀更新なので、大海さんのペースでお時間のあるときに^^

田島はヘタレなヤツなので、周りにしっかり者が集まる傾向にあるようです(-_-;)
家族の設定については考えたのですが、アネキのこともあり、話が長くなりそうなので、たぶん表には出てこないでしょう。育った環境について思ってくださるなんて、嬉しいですね。あのお二人のバックグラウンドをお描きになった大海さんならではの視点、ありがとうございます^^

おおお。その設定はちょい近いっ! 
ニアミスか共演か。ドキドキ・・・!!

> 日本のいいところ(見せたいところ)10個にチャレンジ。
> 津軽三味線(一番に出すのか、私^^;)、佐渡ワカメの入った味噌汁、水のおいしい地方で炊いたご飯(何も足さない、何も引かない)、京都の強烈に暑い夏と強烈に寒い冬を町家で過ごす、明石海峡大橋(世界一のつり橋、という名前の付くもの)、山奥の温泉、原爆ドーム、デパ地下、日本に残る巨石案内(って、個人的すぎる^^;)、新幹線。
> でも、食べ物だけでも10個は越えるなぁ……

うほー^^ これは超嬉しいです! うんうん X(かける) 10
わかめの味噌汁、どんだけ食していないか、ってまず食い気(-_-;)
ジャパンはホント良いところだー。ナタリーを10年留めただけある。
オーストラリアにも、石(岩)を見にいらしてくださいねー^^

見習うだなんて、照れるなあ・・・じゃなくて、とととんでもございません。
私も大海さんの文の流れに毎度うっとりで、
こんな風に物語が紡げたらいいなぁ、と思っております。

って、他の人がここ見たら、お前らキモイんだよ、と突っ込まれそうなシーンですね。
タイプは違うのかもしれませんが、共感する部分がいくらか重なっているのかもと勝手に解釈。
三味線と和太鼓、とかね^^
2013.10.14 Mon 23:02
Edit | Reply |  

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