オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 104 

「・・・どう、ジョニー?」と誘われて、田島は固まっていた。

“You have fantastic voice. It’s so beautiful. Tone is clear. Sounds very relaxing. Perfect voice to me.”

大げさなくらいに褒められ、遠慮がちに「サンキュー」と返す。ここ、“トニーズ・カフェ”で、田島はセントラルパークで出会ったトニーの弾くピアノの横で歌わされていた。

“TONY’S”とオリジナルロゴの入った黒いTシャツを着たトニーは、白いひげを顔中に蓄え、一見かなり年を取っているように見えるが、話すと若々しい。

ピアニストとは思えない、クマのような大きな体にごつい指で豪快に鍵盤を叩き、自身も軽快に歌う。

「じゃ、次はこれ」と、エレキギターを渡され、田島はマイクの前に立つよう促された。

「トゥモロウ?」

マイクを通して確認する。

“Yes, tomorrow.”

「心配ない」と、トニーは田島の肩をポンポンとたたいて「ニッ」と笑う。「本当に?」と念を押す田島に、

“Of course, Johnny.”

と言って、さらに目を細める。

―――ジョニーかよ。

ため息をつく間もなく、トニーがイントロを弾き始めた。ジャーニー(Journey)の「ドント・ストップ・ビリービン(”Don’t Stop Believin”)」から始まる「4コード・ソング(”4 Chord Songs”)」である。

4コード・ソングでは、C・G・Am・Fの4コードだけを使って、ヒット曲のメドレーを歌う。たった4つのコードしか使っていないのに、これが絶妙にどの曲にもマッチする。

“Shout here! Johnny!’
「アイ・キャント、トニー!」
“You can do it, come on!”

ピアノをガンガンに弾きながら、トニーが大声で指示を出す。

―――まだ本当にやるとは、言ってないんだけど。

声に出さずに心の中でぼやきながらも、トニーの力強いピアノのボリュームに負けじと、マイクにかぶりつくように必死についていく。

6月から8月にかけて、セントラルパークでは多くのフリーコンサートが行われる。祥子の所属する、ニューヨーク・フィルハーモニックも7月に大きなフリーコンサートを行い、多くの観客を集めた。

特に毎週日曜日に、ラムジーフィールド(Rumsey Field)で行われる、サマーステージと呼ばれるフリーコンサートは人気で、セントラルパークの夏の風物詩にもなっている。

そのサマーステージに出演の決まっていたトニーは、ここ数日、セントラルパークでバスキングをする田島を見て、「決めた」のだという。

“Johnny has to stay in Las Vegas.”

トニーの相棒である本物のジョニーは、夏季休暇で遊びに行ったラスベガスのカジノでお金を使い果たした上に借金を作ってしまい、それを返すためにカジノに残って働かなくてはならないのだという。

田島は、トニーから明日のサマーステージに一緒に出て欲しいと誘われ、半ば引きずられるように、セントラルパーク近くのトニーのライブカフェに連れ込まれていた。

“Hey, what’s that noise, Tony?”

トニーと田島のセッションを遮るように、黒のサングラスをかけ、白いシャツにジーンズのラフな格好をした男性が店に入ってきた。

―――えっ?

サングラスをはずしてにこやかな笑顔で近づいてくる、その有名ハードロック・バンドのベテラン・ボーカリストに、田島の目は釘付けになった。

“What’s up, Dave?”

トニーは演奏の手を止めて、その男性に向かって親しげに声をかける。

―――ダン・ヘイレンのデイブ・リーだ。トニーと知り合いなのか。

“Hey, Tony, you lost Johnny in Vegas?”
“Haha. No problem.”

明日は自分が歌おうか、と売り込むように言ってくる相手に、トニーは、「ジョニーならここにいる」と田島の背中をポンと押し出した。

“What’s your name?”
「ショー・・・」
“Johnny.”

「は?」と振り返る田島の手を取って、その全米に何曲ものヒットを出しているハードロックの大御所は握手をすると同時に、田島の目をじっと見つめてきた。

その大きなブラウン・アイは、日本のテレビでMTVを見たときの映像よりもずっと近く、田島の視線を捕らえた。

「ずいぶん、若いジョニーだなあ」と、その人物に着ている服の裏側まで見透かされるように眺められて、田島は少し緊張する。

“Dave, this young Johnny has incredible voice.”
“Lucky you, Tony. So, I’ll see you tomorrow.”

セレブのデイブは「頑張れよ」と田島の肩をポンポンと軽くたたき、トニーと同じ「ニッ」という笑顔を見せ、「バイ」と店を後にした。今のは一体何だったのだろうかと、ただ呆然とするほどにほんの短い滞在だった。

“Dave likes you.”
「ハウ・ドゥー・ユー・ノウ?」
“Because I know.”

そう言うとトニーは、首をかしげる田島が肩をびくつかせて驚くほどのパワーでピアノを叩き始めた。それからトニーは、ほぼノンストップで4つのコードを弾き続け、田島はとにかく歌わされた。

ああ歌え、こう歌え、とトニーのリクエストは、色々とうるさかったが、一通り済むと、「間違いない。これで良し」と上機嫌で今夜のライブカフェの開店準備を始めた。

「ヘイ、トニー?」
“You’re too good, Johnny. You should proud of your voice.”

トニーはお土産にとローストビーフを田島に持たせ、「これ食べて、ゆっくり寝て、明日ね」と店から送り出した。

「ジョニーかよ。まだ本当にやるとは、言ってないんだけど」

店を振り返り、閉められたドアに向かってそんな言葉を投げようにも、田島の頭には、トニーの「ニッ」の笑顔しか思い浮かばなかった。



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Comment

Name - 城村優歌  

Title - 突っ込む以上に

やばいやばいやばい。
ツボ突かれまくってます。
デイヴ・リー、と言われて、
デイヴィッド・リー・ロスを思い出した私。
ヴァン・ヘイレン全盛期が青春時代でしたから。
jump! ですよぉ~(悶絶)。
デイヴ・リー・ロスはソロになっても聴いてたもん~。

don't stop beleivin'のピアノのイントロ!
鳥肌立ちますよー!
サビは合唱でしょー!
明日は何を歌うのかな。
ジャーニー演るんだったら、ぜひ Any Way You Want It を!
だって祥吾、エレキギターでしょー!
アンプラグドではない祥吾の魅力を堪能したい~!

どんな曲でもいいので、わくわくして待ってまするよー!
2013.03.18 Mon 08:24
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Name - lime  

Title - No title

おお、田島くん、まるで巻き込まれるように、大きなステージに立たされちゃいましたね。
まだ、しっくりきてない感じの彼が、いいですね。
洋楽に疎い私は、ダン・ヘイレンも、名を聞いたことがある・・・程度にしか知らなくて、申し訳ないのですが。
でも、田島くんの戸惑いは、びんびん伝わって来ます。
臆するな、青年! 翔ぶんだ、青年!

そういえば、昨夜、うちの息子もライブを終えて帰ってきました。
観客の反応がとてもよく、たくさん焼いたCDがすべて無くなったと、嬉しそうに言っていました。
スマホに続々と届くファンからの感想を、「ほら」といって得意げに見せてくれたり。
いいなあ、そういう世界も。
ちょっと羨ましくなりました。
2013.03.18 Mon 08:45
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 突っ込む以上に

城村優歌さん、コメントありがとうございます。

以上来たー。はい。
そのバンドとそのお方が、ズバリばればれのモデルでした。
おっさんになっても、髪が短くても、お茶目さは変わらず^^
再結成で、皆さんお元気そうにしてましたね。

ジャーニーはねぇ、Youtubeしてるときりがない(^^;)
田島がやるのは、リハーサル(?)通りで。

えっと、明日なんだけど、実の明日がいつになるやら~(-_-;)
あしたわーどーおーっちだ。じゃん。。。

待っていてくださいね^^
2013.03.18 Mon 17:14
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

はい、白ひげに連れ込まれてしまいました(^^;)
ステージでのライブは高校以来なので、どうなるか。

> 臆するな、青年! 翔ぶんだ、青年!

そうだ、青年! 行け行け、青年! 
limeさんがついているぞ! えっと、いちお、私も。。。

おおお。limeさんの息子さん、CD完売ですか。
すごいですねえ。ジャンルは何でしょう?
ファンからの感想って、嬉しいんでしょうね。

limeさんも、ブログの感想のところを、ほれほれって見せなきゃ^^
2013.03.18 Mon 17:30
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

ジョニーと言う名前に意味があるのか、
あるいは単なる愛称なのか。
その辺は、話の流れから考えると前の人がジョニーだったのか・・・ということも考えますけど、まあ、ジョニーという名前自体よくある名前ですから、意味がないのかもしれませんけど。
2013.03.31 Sun 12:43
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

ジョニーはジョンの愛称です。
ちなみに、トニーは、アンソニーの愛称です。

ベンはベニー、ケンはケニー、アンはアニー。
けいさんの、ニーニー講座でした(^^;)

前の、というか、トニーの相棒の本物のジョニーはカジノで文無しとなり、ニューヨークに帰って来られないのでした。賭け事はいけませんね。

そんなことで、田島はトニーに掘り出された模様?
2013.03.31 Sun 14:50
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - きゃああ

ダン・ヘイレンのディヴ・リーなんて書かれていたら反応してしまいますよぉ。
彼らのデビューアルバムから三枚ほど、あ、もちろん、本家のほうですが、まだLPレコードだったころ、買って聴きまくりました。
最近、CDを借りて改めて聴いています。あのころはレンタルなんかなかったなぁ。

今年、ヴァン・ヘイレンは来日したんですよね。知人がライヴに行った写真を見せてくれて、え? ディヴ、ものすごーく変わったって、驚きました。
たしかオールバックで、きんきらしたスーツを着ていましたよ。
あのTバック革パンツとか……あれって若気の至りだったのでしょうか。
そうそう、初来日コンサートには私も行ったのです。

って、ストーリィからははずれてしまってすみません。
最近はまた古めのロックに再はまりしていまして、ヴァン・ヘイレン、エアロスミス、アズテックカメラ、ポイズン、ユーライアヒープなんかをよく聴いています。

ディヴのいたころのヴァン・ヘイレンと、スティヴン・タイラー(エアロスミスも来日して、スティヴンはあちこちに出没していたようです)の歌が特に好きなもので、過剰反応してしまいました。
2013.10.07 Mon 19:30
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: きゃああ

あかねさん、もう、どこの誰がモデルかって、バレバレですよね。
私もヴァン・ヘイレン大好きで、復活は大歓迎。

お茶目なディヴも大好きですし、エディーのタッピングをMTVではじめて見たときは、なにぃ~と感動したものです。復活はYoutubeで知りました。相変わらずのサービス精神に笑った。
スティーヴンじいさん(ごめん)と共に、いつまでも頑張って欲しいです。
あ、スティーヴンは、大阪ではじけちゃったみたいですね^^

次回のあかねさんの過剰反応を楽しみにしています^^
2013.10.07 Mon 22:31
Edit | Reply |  

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