オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 110 

“Wow! Shogo, do you know who she is?”

クリスに「知っているのか」と聞かれて、田島は普通に「知らない」と答える。

セントラルパークの路上でもらった小切手を換金するには、どうしたら良いのかを聞きたかっただけなのに、事情を説明して婦人の写真を見せたら、クリスが驚きの声を上げた。

“I’m sure, she is Emily Rowling. She is a billion seller author.”

その名まえを聞いて、田島も驚いた。エミリー・ローリング、日本でも超有名なファンタジー物語の作家だ。

彼女の三大著作の「ビリー・ポッター」、「 ネバー・エンディング・リバー」、「ザ・ロード・オブ・ザ・マウンテン」のいずれも映画化され、日本にも熱烈なファンが大勢いる。

「超セレブ、だったんだ、エミリー」

エミリーとツーショットで撮った写真をまじまじと見つめ、田島はクリスと共にしばし無言になる。

エミリーはここ数年良い作品が出せず、スランプに陥っているだの、うつ病で家に引きこもっているだのと、ゴシップだけが流れていたのだという。

“She looks very nice and happy in this photo.”

写真の中のエミリーは、公園を散歩中のご婦人、と違和感なく言える、自然で素敵な笑顔を見せていた。

「シー・ワズ・ジャスト・ア・ナイス・レディー」

田島はフェイスブックの写真の画面をクリックした。他のツーショットと同様、田島の歌に名前を提供してくれた人のアルバムの中に、エミリーの笑顔も加えられた。



「グッド・モーニング、エディー」
“G’Day, Shogo.”

エディーはもちろん、ニューヨークにいてもオージー・イングリッシュで喋る。

「アー・ユー・レディー?」
“Sure, I am.”

ギターの他に、テントやら、寝袋やらのキャンプ用品や、当面の食料や水や着替えなどをレンタカーに積む。エミリーからもらった金額を元に、二人でロード・トリップに出かけるのだ。

どのくらいの行程になるのかは分からない。アメリカの各地をまわって、見て、できるだけのことをやりたい。色々と試してみたい。

“Here we go.”

ニューヨークの摩天楼を背に、ハイウエイに入る。向こうの方へとまっすぐ伸びる空間に、迷いなく突っ込むように車を走らせる。

FMラジオのDJがアメリカン・トップ・40をカウントする。それに合わせて歌うエディーの音痴っぷりが、シドニーにいた時と全く変わらずで笑える。

“Don't laugh. I can’t sing American songs.”
「オーストラリアン・イズ・ベター?」
“I think…Shogo’s are the best.”
「マジで言ってるの、それ?」
“What?”
「アイ・セッド・サンキュー」

車のフロントガラスには、コットンボールのようなつぶつぶのひつじ雲が広がる。ひつじ雲の見える日は晴れる日。ロード・トリップのスタートは天気に恵まれることが約束された。



エミリーはその後新作を発表する。以前と変わらない深遠な世界観に、音楽を絡めたその壮大なファンタジーは、この偉大な作家に復活の日が来た、と高く評価された。

本の始まりには、この作品を「とあるバスカーに贈る」と綴られ、あとがきにはその理由となるショート・ストーリーが「公園での出来事」として添えられた。

クリスが田島のもとにその本を郵送し、知らせてくることになるのだが、それはまた別の話。



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「マスター、こいつ帰って来る気あると思います?」 (← 次回予告^^)


ご訪問、ありがとうございます^^

『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

田島くんったら。すごい人に、歌をプレゼントしてしまったのですね。
田島くんも羨ましいけど、そんなきっかけをもらって、新しい作品を作ってしまったエミリーさん、もっと羨ましいな~。

そうか、田島くんは、スランプをも解消してくれるのか!
でも、歌にはなにか、そんな大きな力があるんでしょうね。
田島くんの、アメージングな旅は続く・・・。

帰ってきませんよ、マスター(笑)
2013.05.06 Mon 07:30
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

> 田島くんったら。すごい人に、歌をプレゼントしてしまったのですね。

どうやら、そうみたいですね。
人は見かけによらない・・・お返しもすごかった。

> 田島くんも羨ましいけど、そんなきっかけをもらって、新しい作品を作ってしまったエミリーさん、もっと羨ましいな~。

何がきっかけになるのだか、わからないものです。
作家さんの脳内って、どうなっているんでしょ。
シナプスの、プス、でも、分けていただきたい(← イミフ -_-;)

> 帰ってきませんよ、マスター(笑)

だそうで、マスター、及び、日本でお待ちの皆様方。
えっと、田島のアメージング(?)な旅はもうちょい続きます。
ちょいです。かな。希望(汗)
2013.05.06 Mon 18:27
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

エミリー・ローリングwww

しかし、祥吾はすごい人にばかり出会いますね。
そんなラッキーな旅を続けながら、
彼はどこへ向かっていくんだろう…?

そんな早々に帰りゃしませんよね?
まだまだですよね?

いやー、私も会ってみたい!
バスキングやってみようかな!(歌えないのに!)
2013.05.08 Wed 00:14
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

毎度思うのですが、英語を掲載できるのはすごいですよね。って当たり前か。失礼しました。英語がサッパリな私にはうらやましい限りです。臨場感があっていいですよね。新連載始めました。またよろしかったら寄ってくださいませ。自動的にGH1899年がトップにならなくなるのでご了承くださいませ。
2013.05.08 Wed 06:50
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

ホントですね。お約束街道行ってるようです(?)
ラッキーな旅が続きます。
旅でトラブルがあるとガックリしてしまうので。
とか言って、そういうスリルのあるのが書けない作者(-_-;)

> そんな早々に帰りゃしませんよね?
> まだまだですよね?

早々には帰りゃしねぇ~が(江戸っ子?)
日本でお待ちのあの方々のために、そろそろ、なんて思っていたのですが。
どうしようか、エディー。って、エディーに相談(^^;)

> いやー、私も会ってみたい!
> バスキングやってみようかな!(歌えないのに!)

毎回会ってくださっていますよ。
歌無しでも、ポータブルキーボードとかで、乱入してください^^
2013.05.08 Wed 17:16
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

いやいや、当たり前ではないですよぉ(^^;)
けど、今さら例えば、トニーが日本語ぺらぺらのおっちゃんになるのも・・・
うーん。ずーっと思案中(汗)
応援していただき、嬉しいです^^

おっと、新連載が・・・。
なかなか付いていけずにすみません。
また、寄らせていただきます^^
2013.05.08 Wed 17:30
Edit | Reply |  

Name - rurubu1001  

Title - No title

すごーい!

何という出会いが待ってたんですか!!すごい大物さんに歌っていたなんて。

>彼女の三大著作の「ビリー・ポッター」、「 ネバー・エンディング・リバー」、「ザ・ロード・オブ・ザ・マウンテン」

著作名に吹きました!
あはは、けいさんナイスなネーミングすぎですよ^^
2013.08.28 Wed 22:08
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - rurubu1001さん

コメントありがとうございます。

エミリーは大物作家さんでした。
知らないと緊張感なく何でもできちゃいますよね、の典型。

著作名はこれぞパクリ、かな(^^;)
コンセプトとしては、ビリポタと川と山、でした。
ベタですね~。ベタ、実は好き。

rurubuさんの、ぷ、を誘えたでしょうか。
そっちが嬉しかったり^^
2013.08.28 Wed 23:11
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - 今度はビリー・ポッター

次々に有名人をモデルにした人物が登場しますね。
ちょっとびっくりしたり、にやっとしたりで楽しませてもらっております。

そっかー、田島くんたちはまだアマチュアだったのですね。
そりゃあ、プロになるってなんの世界でもそう簡単なことではありませんよね。
プロになれるひとはほんの一握り。その中で成功する人はまたほんの一握り。
今、スターと呼ばれている存在や、ベストセラー作家などは「神に選ばれし特別な人間」なのでしょうね。

ハリー・ポッターは一作目だけ読みました。けっこう設定にはわくわくしたのですが、一冊で飽きました。
私はひねくれ者ですので、ベストセラーというだけで偏見を持ってしまう。そのせいかもしれませんね。
2013.10.23 Wed 00:20
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 今度はビリー・ポッター

あかねさん、コメントありがとうございます。

私もちょいにやけながらこのパクリ(?)を楽しんでしまいました。
本家のハリポタは実家に一冊だけあります。
あとは映画で楽しみました。
作者の頭の中、どうなっているんだろう、とおののいたのと、
こりゃあ、私にはファンタジーは無理、という思いを決定付けた物語であります。

田島にはまだまだアメリカで過ごす時間があって。
エディーが良い相棒化します。
あかねさんもご一緒に、ロードを楽しんでいただけると嬉しいです^^
2013.10.23 Wed 10:00
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - いや~

この名前のもじりが面白すぎます。
来るぞ来るぞ、と思ってかまえたのに、やっぱり笑っちゃいました(*^_^*)
田島君が音楽を通して繋げていく、人と人との緩やかで優しいつながり。
それを見るとホッとします。
これからその緩やかなつながりが、ほどけることなく、少しずつ多く、太くなっていくんだろうなと想像するだけで楽しいですよね。
しかし、一番気になるのは「ネバーエンディングリバー」・・・どんな川なんだ!水の中にやっぱり龍は泳いでいるのか!(*^_^*)

ほんと、帰るのかしら?と思ってしまいますが、ま、まだまだいっぱい心の貯金を増やすのもいいかも(*^_^*)
2013.10.27 Sun 13:01
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: いや~

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

この名前のもじりが気に入っていただけて嬉しいです^^
ネバーエンディングリバーはどこまで行っちゃう川なんでしょうかね。
龍、泳いでいますよきっと。長そう?

> 田島君が音楽を通して繋げていく、人と人との緩やかで優しいつながり。
> それを見るとホッとします。
> これからその緩やかなつながりが、ほどけることなく、少しずつ多く、太くなっていくんだろうなと想像するだけで楽しいですよね。
> ほんと、帰るのかしら?と思ってしまいますが、ま、まだまだいっぱい心の貯金を増やすのもいいかも(*^_^*)

田島はホント出会いに恵まれています。
それが記憶の中の思い出と共に、Facebookというツールが加えられて、思い出のデジタル化が今風?
心の貯金、良い言葉ですね。これをどれだけ蓄えることができるか、ですかね。
これを持つ人は、太いんでしょうねぇ。これ、減らないし。

日本には帰りますが、まだまだ先。
大海さんが田島とこの先のロードを楽しんでいただけますように^^
2013.10.27 Sun 16:56
Edit | Reply |  

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