オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 113 

田島に興味がある、話しを聞きたい。そう言って、マットは田島の返事を待つ。ギロリと向けられる赤外線ビームのような視線に、狙われた標的になったような気分になる。

―――アメリカでストリート・パフォーマンスをやっている奴なんて、他にいくらでもいるのに、何で俺?

ナタリーと知り合いだからか、などと思いつつも、狙われ気分を解放するために、「自分で良いなら」と答える。

“Great. Because, I need YOU to listen.”
「ユー? てか、ミー?」

「イエス」と言ったとたんに、マットの業務用スイッチが入ったようだ。「じゃあ早速」と、フルネームと年齢、出身という基本情報の確認から始まった。

マットは、田島の記事を、LAタイムス紙の自分の担当するコラムに載せ、バスキングの様子をムービーでオンラインにも載せたいのだという。

「ナタリー、これ、真剣取材?」
「ほらほらショーゴ、ちゃんと喋ってね」

テーブルには、ポータブル・レコーダーも置かれ、これにも記録されるのかと思うと、警察で取り調べでも受けるように感じる。疚(やま)しい点などこれっぽっちも無いにもかかわらず、妙に緊張する。

「えっと、何でアメリカなのかというと・・・」

ナタリーがほぼ同時通訳でマットに伝え、マットは目の前に出したiPadに書き込みをする。

「それを話すには、多分、アメリカに来る以前のことを言っといたほうが良くて・・・」

高校時代のこと、大学を卒業するまでのこと、旅行とニューヨークに住む姉のこと、などをかいつまんで話す。

「へえ、そうなんだ」

感嘆するナタリーと、「何々?」とナタリーから話を聞いてから「そうなんだ」と同じように声を上げるマットとの時間差がなんだか面白い。ある程度の過去話を知っているエディーが隣で「だよね」というように頷く。

「どうして名まえ入りの曲を歌うのか? どうして、と言われても。ナタリー、その質問、難しいよ」
「私が訊いてるんじゃじゃないから」
「そうだなあ。姉の誕生プレゼントで作ったのが、きっかけなんだけど」

自分のことを話すのが苦手な田島は、言葉を選んでゆっくりと答える。

「姉がすごく気に入ってくれて。後で歌詞を印刷して、それをフレームに入れて、部屋に飾ってくれたんだよね。それで俺も嬉しくなったりして」
「ショーゴ、それ、めちゃくちゃ良い話だよ」

声を上げるナタリーに、「早く教えて」とマットがせかす。ナタリーの通訳を聞いて、マットとエディーが同時に「へえ」と相槌を打つ。

「身内の受けが良かったから、他でもやってみよう、って流れなだけ」

「それほど大きな理由はない」と付け加えたのも、ナタリーは伝えてくれただろうか。それはわからないまま、マットのiPadにメモする指がパタパタと速まる。

「歌が終わると、サンキューって言われるけど、俺の方が名まえを使わせてくれて、聴いてくれてサンキューって感じ」

これが時事のニュースならば、こうして目の前でタイプされたものがストレートにメディアに送られて、瞬時に世界中に流れるのだろう。通信テクノロジーの発達には目を見張る。

「今まで歌った中で印象に残った人は?」
「たくさんいるよ。ていうか、ほぼ全員。みんなそれぞれに良かった」
「例えば?」
「うーん。爆笑する人、号泣する人、ブレイク・ダンスを始める人、あ、ロスではきのう、プロポーズされた」
「なにそれ! 聞いてないよ」
“What? Natalie?”
“He’s got proposed, yesterday.”
“Wow. Congratulations.”
「ちょっと待って。マット、違うから」

話が瞬時に違う方向に行きそうになるのを、必死に修正しようとする。横でエディーが、昨日のその場面を思い出して、クックと肩を揺らした。

「ナタリー、ジョークだったんだからって、マットに言ってね」
“No. I don’t think it was a joke.”
「あれは、ジョークでしょ、エディー。ったくもう」

言わなきゃ良かった、と後悔する田島を、ワイワイとみんなでいじる。

“How was Emily Rowling?”
「エミリー? 何で知ってんの?」
“Facebook.”

そっかー、とため息をするしかない。アルバムの中のワン・ショットであっても、やはり見る人が見ればすぐに分かるものなのだ。

マットの話によると、エミリーは最近「長いトンネルを抜け出した」とTweetして、それがファンの間で「とうとう再び描き始めたのか」と話題になっているのだという。

“I think it is because of YOU.”
「ミー? アイ・ドント・ノウ」

マットはそれ以上、田島にエミリーのことは訊かなかった。フェイスブックの写真の件も、いつか誰かが見つけるだろうからと、記事にはしないと言う。

「そのかわりに」とマットは、取引でも持ちかけるようにウインクした。直後、田島はマットからの質問の嵐にさらされた。



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田島、喋らされすぎて、疲れた。帰って爆睡。
作者も、一話アップするのに、激烈に疲れた。おやつみ(u.u)


ご訪問、ありがとうございます^^

『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様の一日が平和でありますように。

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Comment

Name - lime  

Title - No title

おつかれさま^^
ライブ感覚があって、今回もワクワクです。

田島くん、聞かれまくってますねえ。
やっぱり、彼のことを知りたくなるほど、いいオーラをもってるんですね。
愛され体質なのです。男性からも。
誰にも言わなくても、田島くんが起こした奇跡は、じわじわとメディアに浸透していってるのだね^^
エミリーのことも、いつか伝説になりそう。
このあと、まだまだ質問は続くのですね!
田島くん、がんばれ!
2013.05.26 Sun 10:04
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

インタビューの状況を起こすというのは、
なかなか力のいる作業だったと思います。
でも、読ませていただいているほうは、
くすくす笑っちゃうくらい楽しかったですよ~。
ナタリーを挟んだ時間差の様子も、ならではですね!
エミリー・ローリングのFBも、マットの取材も、
このネット時代ならではの絡み方で、
これから、ますます楽しみです^^
2013.05.26 Sun 10:19
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

おつかれました。いつもなんですけどね(^^;)

田島はマットの真剣取材で聞かれまくりました。
やっぱり喋りが苦手で、スマップの仲居君のようにはいきませんね。
ナタリーが間に入ってくれて良かったです。

お、田島、いつの間に愛されキャラに?
limeさんに愛されてもらいなさい。ふふ。
(おっと、この発言、引っかからないですよね。って何に?)
2013.05.26 Sun 11:53
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

いやいや、インタビューだけでなく、もう、話の中のすべての状況を起こすのに力入りますよぉ(-_-;)
くすくすと楽しんでいただけたならば、良かったです^^

ナタリーがいてくれたお陰で、英語で喋らずにすみました。
リアルでは、ITの発達の恩恵をありがたく受けさせていただいています。
けど、フェイスブックもツイッターもまだやっていない。
まだ、ね。そのうちに。いつのことか(^^;)
2013.05.26 Sun 12:17
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

そういえば、彼にそういう相手は見つかるのですかね。
いい加減そういう年齢でもあるような気がしますけど。
夢を追うと同時にそういう相手も見つかっていくものだと思いますけどね。
2013.05.26 Sun 19:07
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

きゃー、LandMさん。鋭い突っ込み(タジタジ・オロオロ)
そういう相手って、見つかるのかなぁ~
彼女の一人もいて良い年齢だよねぇ~
野郎とばっかりつるんでどうするん~

このお話に足りないものの筆頭です。
けどぉ、私ぃ、恋愛物描けないの(><)
うぅ。どこかで、頑張る。
みんなが忘れた頃に・・・(-_-;)
2013.05.26 Sun 20:44
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

あ、カウンター。

2222・・・5だった。 惜しい。
2013.05.30 Thu 07:04
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

カウンターを気にしてくださって、ありがとうございます。

> 2222・・・5だった。 惜しい。

惜し~い! 夕べ寝る前にチェックしたときは、22217でした。

limeさんのご訪問にはいつも感謝しています^^
2013.05.30 Thu 17:56
Edit | Reply |  

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