オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 114 

アメリカを巡るこの旅に、期限はない。けれども、そろそろロサンゼルスを出ようとエディーと話し、支度を整える。

今日出発すると言ったら、ナタリーは怒るだろうか。バックパックを背に、足音を忍ばせ、エディーとキッチンに向かう。

「おはよう、ナタリー」

イタリアン・エスプレッソの香りがキッチンに漂う。アルミ製で直火式のエスプレッソメーカーは、モダンなデザインで日本製だという。

「あれ、ショーゴ、もう出かけるの?」

バスケットに盛られたベーグルが、キッチンの白いカウンターに出されている。それをつまむナタリーは、まだ少し眠そうな目を向ける。

「マットは?」
「オフィスに行った」
「今週末は休みじゃなかったっけ」
「ショーゴの話をまとめるからって。載るの水曜日だって」
「へえ、早いなあ」

「どれもおいしいよ」とバスケットごとポンとベーグルを渡され、エディーと顔を見合わせる。

「ナタリー、えっと」
“Thank you for having us, Natalie.”
“What?”
“We are heading off to LasVegas.”
“Now?”

ナタリーの目が大きく放たれ、青い瞳が田島とエディーとの間をクルクルと回る。

「ごめん、急で。ぶっとばさないで」
“Haha. That’s okay, Shogo. Eat bagels first.”

「まあまあ、そんなに急ぐことはない」と、ナタリーは田島とエディーに荷物を置くよう促し、エスプレッソを淹れる準備を始めた。

「ロスからラスベガスまでは、車で5時間ぐらいで行けるから、昼過ぎでも大丈夫」

そう言って、少しだけ引き止める。

“And also, Matt said...."

ナタリーは、エディーが撮った田島のバスキングのビデオがいくつか欲しい、というマットからの伝言を伝え、ダイニングテーブルにあるUSBを指差した。

「あとさあ、ショーゴ、まだ私に歌ってくれていないし」

そういえばそうだった、と気付くと同時に、「ごめん」と苦笑する。

エディーはバックパックからコンピュータを取り出し、田島はギターを取り出して、ナタリーのリクエストに答えようといそいそと行動する。

「だから、急がなくて良いんだって」

ナタリーは出来上がったエスプレッソをダイニングテーブルに置き、エディーにベーグルのバスケットを持ってくるように頼んだ。

ダイニングの大きな窓から、今日も爽やかな朝の光が差し込む。白い窓枠の向こうに広がる青い空が、絵画のように朝の光景を飾る。

エディーも田島もテーブルに着き、淹れてもらったエスプレッソの白いカップに手を伸ばす。ナタリーからクリームチーズの塗られたベーグルを「はい」と渡され、それをストレートに口に運んだ。

“This is so yummy.”
“That’s good.”

口をモグモグとさせている間、静かでのんびりとした時間が流れる。ナタリーが次のベーグルにクリームチーズを塗るのをただ目で追う、それだけの時間。そんなひと時も良いなあ、と思ったりする。

「そうだ」

ベーグルをつまみながら、田島はニューヨークで訊きそびれたことを思い出した。

「ナタリー、本名何?」
「フェルナンド」
「フェ・・・?」

ナタリーの即答に、訊いた田島の方がリアクションに困り、眉を下げる。

「王子様みたいで、かっこいいでしょ。けど、アメリカンっぽくないのよね」

アメリカンというより・・・、という言葉と感情をベーグルと共にグッと飲み込んだ。 

「けど、ショーゴ」
「ナタリーって、良い名まえだよね」

それを聞いて嬉しそうに微笑むナタリーは、どこから見てもキュートな美人さんだ。

「じゃあ、ナタリー・バージョンは、特別アレンジで行こうか」

そう気合を入れて、田島はエスプレッソの最後の一滴をすすった。



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二人の友情は、名まえやジェンダーで変わることはない。よね。
ロスを後にします。

前回『夢叶』113話で、22222アクセスを突破しました。毎回のご訪問に感謝いたします m(__)m
22222踏んだ方、どなたでしょうかね。いえ、キリ番企画とかないんですけど(てか、できないし -_-;)


ご訪問、ありがとうございます^^

『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

ナタリーと過ごした時間も、田島くんには大切な時間でしたね^^

でも、別れの朝は、ちょっと寂しい。
ナタリーがあっさりしてる分、ちょっと寂しい。
ベーグルが美味しそうなのに、切ない。
そう、「急がなくていいじゃない」って、言ってしまうよね。
ナタリーとの写真も、思い出の一ページとしてフェイスブックに載るかな。
マット、歌ってもらえなかったね。

・・・あれ? 男の人にも歌って上げるんでしたっけ (素朴な疑問)

田島くん、次はどこに行くんでしょう。わくわく!
2013.06.02 Sun 10:10
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

ナタリー、良い子でしたねぇ(自分で言う)
別れが惜しいですね。でも、旅なんで。
けど、今の時代はフェイスブックというものがあって、
やはりこれが人の出会いを変えたと思います。
ナタリーは日本が好きだから、来てくれるんじゃないかな(←予告ではないです)

もちろん、男の人も、歌ってあげていますよ。いろんな人に。
この旅で結構アルバムが増えているはずです。

次は南部方面に行きます。
limeさん、地図見て予習するタイプ?
私、地図とにらめっこしてますよ。
行ったことないんで。わわ(><)
2013.06.02 Sun 12:06
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - こんにちは

=フェルナンド……。

……おー、ナタリー!

おおお。ナーターリーぃぃ…。

↑こんな文章でわかっていただけますでしょうか。
けっこうな衝撃w

でも、ショーゴの言うとおり、人種もジェンダーも、
個と個の間では関係ないです。
ナタリースペシャルバージョン、どんなだったのかな。

マットはインタビューをどう加工してくれるでしょうね。
楽しみですね^^
2013.06.03 Mon 15:54
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こんにちは

城村優歌さん、コメントありがとうございます。

ぷぷぷ。王子様みたいでかっこいいでしょ(どっかで聞いた?)
え、衝撃wでしたか。それとなくかもし出していた、つもり、でしたが(-_-;)

> でも、ショーゴの言うとおり、人種もジェンダーも、
> 個と個の間では関係ないです。

そうですね。ナタリーは、田島より年上ですが、それも関係ないです。

> ナタリースペシャルバージョン、どんなだったのかな。

聞きたかったですよねぇ。私も(^^;)

> マットはインタビューをどう加工してくれるでしょうね。

おっと、それを目にする前に、ロスを出てしまった(^^;)

オーストラリア一周も、ヨーロッパ巡りもしなかったのに、アメリカ周遊は続く、
と、自身で突っ込んでおく(汗)
2013.06.03 Mon 17:04
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

前回のコメントに通じるところがありますが。
彼は1人で生きることを決めた男なのかどうかというのはありますけどね。

結婚や恋。
そして、出会いとそこから通じる会話に情愛を感じる年齢だと思いますね。彼がどういう道を選ぶのかは興味がありますね。
2013.06.05 Wed 18:38
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

深い所を見ていただき、嬉しく思います。

> 彼は1人で生きることを決めた男なのかどうかというのはありますけどね。

あります。けど、まだ語れない・・・。う、もだえてます(><)

> 結婚や恋。
> そして、出会いとそこから通じる会話に情愛を感じる年齢だと思いますね。彼がどういう道を選ぶのかは興味がありますね。

はい。道を選んでいきます。
歩みはのろいのですが(作者が遅いせいで)、間違いはない、はず、だよね(汗)
田島の選ぶ道をLandMさんがまたどう思われるか、興味深いです。
まだ先のことになりそうですが、どうぞ宜しくお願いします^^
2013.06.05 Wed 19:34
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - 足の向くまま

読ませてもらっていると、あー、やっぱりいいなぁ、うらやましいなぁ、って思います。
若くて英語ができて、物おじしなくて、つらいことがいっぱいあった過去をたまには振り向いても、前向きに歩いている祥吾くん。
私もこの立場だったら世界中を旅して歩きたいです。

近頃の若者は海外に行きたがらないと言いますが、もったいないですよね。
日本女性は海外に行かないほうがいい、危険だから、という持論を説いておられる方もいますが、やっぱり若い男性のほうが行動はしやすいかもしれません。でもでも、女性だって行ったほうがいいですよね。

とにかくお金がないので旅行に行けなくなっている私は、JRでちょっとだけ遠くに行ってはじめて歩く街を歩いて、自分をなぐさめています。
2013.11.09 Sat 00:53
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 足の向くまま

あかねさん、足の向くままに^^ ありがとうございます。

私も、いいなぁ、うらやましいなぁ、って思いますょ(^^;)
田島と一緒にずっと旅したい気分です。
誌上はお金かからないところが良いですから。
だけど、そうするといつまでたっても帰れない(><)

近頃の若者は・・・そうなんですか。
でも、機会があったら是非にお勧めですね。
物の見方が変わると思うし、何よりも、そこに身を置くという経験自体が良い事であると思います。

そう、先立つものが・・・(-_-;)
というわけで、田島の旅についていくことでちょい旅行気分を(^^;)
うん、近場でも、初めて行く街はわくわくしますね。
それで十分楽しめたり^^
2013.11.09 Sat 09:40
Edit | Reply |  

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