オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 118 

お洒落なクリスマス・リースのかかるドアを開け、店内に入る。まず目を引くのが、2メートルはあろうかと思われる特大のクリスマスツリー。

トップスターを先端に冠し、ベルのオーナメントとリボンがバランス良く配置されている。イルミネーションに照らされるツリーの元には、プレゼントの箱が積み上げられていた。

“Hi, Shogo. Hi, Eddie. Would you like a drink?”
「ハイ、ジョニー」

さすがにジョニーは、田島のことを名まえで呼ぶ。ビールをもらって、カウンターに腰掛けた。

“Shogo, listen. My mum’s finally coming to New York.”
「ユア・マム? フロム・シドニー?」

今日、エディーは先ず、このことを田島に報告したかったのだろう。明るく乾杯し、嬉しそうにビールのボトルをあおる。

“I believe they are getting together again. I will be their best son.”
「グッド・ラック、エディー」

クリスマスを両親と過ごすのは子どものとき以来だ、とエディーは目を細めて店内のクリスマス・ディスプレイを見渡す。

トニーズ・カフェのクリスマス・ライブは、ファミリー・イベントだった。トニーとジョニーの家族をはじめ、二人の友人らしき人々が集まり、賑わっている。

向こうの方に見えるトニーは、赤白の三角帽子をかぶって、子どもたちと遊んでいた。顔中に白いひげを蓄えるトニーは、赤いジャケットを着ていなくても、子どもたちの注目をひきつける。

“Shogo, look at that lady.”
「ん? アギレラ・クリスティー! ジャネット・シンプソンも」
“Justin is over there.”
「うわ。セレブ揃い。すげー」

今日はサンタ顔のトニーの本業が、カリスマ・ボイストレーナーなのだということを、今更ながらに思い出す。

―――みんなトニーのピアノの横で、4コード・ソングを歌わされたのかなあ。

そして、ローストももらったのだろう。そんなことを思うと、せん越ながらも、すぐそこにいるヒットメーカーたちに、親近感を持ってしまう。

“Hi, young Johnny. Nice to see you again.”

ダン・ヘイレンのデイブが、田島を見つけて声をかけてくれる。このロックの大御所とは知り合いになれたようで嬉しい。

“Hey, Dave. Is he Tony’s new Johnny?”
“Oh, Kimmy.”

―――キミー? キンバリー! あの、グラミー賞歌手!

“Yes. This young Johnny is…Oh no. What’s your name?”
「ショーゴ、です」

グラミー賞受賞歌手の登場に緊張して、なぜか日本語で答えてしまう。隣でエディーも目を丸くして固まっていた。

“Tony can’t stop talking about you. He talks and talks.”
「はあ」
“Shogo, Kimmy is Tony’s sister.”
「えー、シスター!?」

そう言われて見ると、とちょこっと首を傾ける。笑うと似ているかも、などと思いながら、キミーのことをまじまじと見つめた。

デイブによると、自分の妹をグラミー賞歌手にしたのが、トニーのボイス・トレーナーとしてのキャリアの始まりだという。

その後トニーは、何人もの新人歌手のトレーニングを依頼された。特に気に入ると、男性を「ジョニー」、女性を「キミー」と呼び、いづれもトップ・テン・シンガーに育て上げた。

―――つまり、今ここは、元ジョニー、元キミーだらけ。

“Get Grammy Awards, Shogo.”
「ノー・ジョーキング、デイブ」

デイブもトニーからトレーニングを受けていた頃は、「ジョニー」だったと懐かしそうに笑う。

“Ladies and gentlemen!”

赤いとんがり帽子が板についたように似合うトニーが、ピアノに着き軽やかにイントロを弾き始めた。

“Thank you for coming to our Christmas Live.”
“This is ‘Tony and Johnny’. Here we go.”

「トニー・アンド・ジョニー」がオープニングを飾り、ライブが始まった。ライブと言っても、まずは子どもたちが登場し、クリスマス・キャロルを歌う。

お洒落にドレスアップした子どもたちのかわいいコーラスやダンスに、大人たちは目を細める。キミーも子どもたちのキャロルに混ざり、時には歌詞をリードしたりして、衰えぬ美声を披露した。

子どもたちのパフォーマンスが終わると、トニーはゲストを順番に呼び始めた。トニーのリードで、それぞれのヒット曲を披露していく。ダン・ヘイレンのデイブも、ソロでヒットした曲を歌った。

“This is amasing live, Shogo.”

田島はライブの方から目を離さずに、「そうだね」とエディーに返した。今日ここに集まったゲストたちは、トニーのピアノのもとで歌うというつながりを持っている。それだけで、みんなトニーのファミリーなのだ。

自分もそうなのか。はっきりとは分からない。アメリカでデビューしているわけではないし、トニーと出会ってからまだ間もない。ただ、今この場にいることの不思議とつながりに想いが巡る。

“When’s your turn, Shogo?”
「アイ・ドント・ノウ」

―――そういえば俺、どこのタイミングで呼ばれるんだろう。まさか、スターたちの間じゃないよね。

ちょうどそう思ったところで、トニーがピアノを休めた。

“Hey, Johnny. Where are you? “

目を細めて、田島のことを探す。デイブがすかさず、あそこだとカウンターを指さすと、みんなの視線が一斉に田島の方に向いた。

トニーが誰かのことをジョニーと呼ぶ時、それがどういう意味なのか、このファミリーはみんな知っている。

“There he is. Come here. Your time now.”

来た、とエディーに背中を押され、足早にトニーの方に向かう。その間に、トニーは会場に田島のことを紹介した。

“Ladies and gentlemen. This is Shogo, my latest Johnny.”
「え、トニー、俺のこと・・・うわっ」

名まえを呼ばれたことに意表を突かれたのと、ピアノのまわりに置かれたコードにひっかかったのとで、田島はドタッとマイクの前でつんのめった。



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ああ、みんなに注目される中での登場が (^^;)
田島はトニーの秘蔵っ子?


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Comment

Name - 城村優歌  

Title - No title

うわおー。これは、どんなオーディションよりもテンパるw
セレブ揃い、なんて呑気に感心している場合じゃなかったw
最初に歌っておかないと、
キンちゃんのクリスマスソングの後は、さすがに歌えないっしょ~^^

と、キャーキャー言いながら読みました。

ニューヨークのクリスマスってだけで、
何か特別でゴージャスな雰囲気しますが、
祥吾は幸せですね。
でも、その幸せも自分で掴んだんだから、祥吾、偉い!
おばちゃん感激!

コケたところで、掴みはバッチリ!
思うまま歌ってね~♪
2013.06.27 Thu 08:43
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

キャーキャー言いながら、読んでくださり、嬉しいです^^

> ニューヨークのクリスマスってだけで、
> 何か特別でゴージャスな雰囲気しますが、
> 祥吾は幸せですね。

城村ママに褒められて、田島はホント幸せ者です。
ニューヨークのクリスマス、超楽しそうですね。
あれやこれやでワクワクなんだろうなぁ。

> コケたところで、掴みはバッチリ!
> 思うまま歌ってね~♪

もちろん、お約束でコケてもらいましたよ。
はは、って顔して始めます。
でもやっぱり、トニーがさすがで、田島の良いところをぐいぐいと引き出すのです。
あぁ、もう少しトニーに面倒を見てもらいたかった。けどぉ~・・・続く。
2013.06.27 Thu 18:01
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

なんか、田島くんの驚きと緊張が、じわじわ伝わってきます。
なんですか、この、続々と集まるすごいメンバー。
トニーがもうすでに、只者ではなかったのですね。

いやいやいや、田島くんが、只者ではないのですよね。
田島くんの才能が、じわじわ花開いていく~。
才能を見出すのは、才能ある人たちなのですよね。

さあ、こけちゃってるけど(笑)立つんだジョー! いや、ジョニー。
君のオンステージだよ^^
2013.06.27 Thu 19:32
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

いやいやいや、トニーが只のおっさん、ではなかったのです。
見る人が見れば分かる、というか、メジャーリーグで言うところのスカウトのような(?)

というか、本物ジョニーがラスベガスでポカしたのが、元々のきっかけなわけで。
けれども、これも一つの偶然のような必然かもで(←またわけわからなく・・・)

> さあ、こけちゃってるけど(笑)立つんだジョー! いや、ジョニー。

ぷぷぷ。ちゃんとやれよ、ですね。
一応、ちゃんとやります。
そうでないと、トニーにキー上げられる(笑)
2013.06.27 Thu 21:22
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

確かにアメリカのクリスマスは日本とまた異質でしょうね。
日本のように小規模じゃないでしょうかね。
セレブとか来るというのはまた日本と違って雰囲気もちがうでしょうし、緊張もするでしょうね。
2013.06.29 Sat 20:09
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

> 確かにアメリカのクリスマスは日本とまた異質でしょうね。

でしょうねぇ・・・(←知らなかったり -_-;)
お国柄で色々あって良いですよね。

ここにいるセレブはみんなトニーつながりです^^
緊張したり、ドキドキしたり?
2013.06.29 Sat 20:28
Edit | Reply |  

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