オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 122 

首にかけたマフラーをゆさゆさと揺らしながら、駅から走ってきた。はっはっと切れる息を整えながら、努めてゆっくりと「オープン」の札のかかったドアを開ける。

正月は日本で家族と過ごしたという田島からの事後報告と、今夜ライブをやるというマスターからのメールに、花園は会社の新年会をドタキャンしてカフェに駆けつけた。

「田島!」

名まえを呼ぶのも呼ばれるのも久しぶり。花園と田島は視線を合わせ、笑顔で「おう」と腕を組み合った。10ヶ月振りの再会。

「田島、ちょっと痩せたか? 顔がシャープな感じがするな」
「そうか? お前は相変わらずの羊男だな」
「何だよ、それ。せっかくの再会でいきなり羊かよ。毛が伸びたアンゴラウサギに言われたくないなあ。最近泣いたのいつよ?」

カウンターでマスターが、プッと吹き出す。

「二人とも、ホントはつい先週あたりまで、一緒にいたんじゃない?」

そう言って、花園にビールを出すマスターに、今度はとばっちりが向かう。

「マスターもさあ、いきなり今日、ライブだなんて。もう少し早く教えてよ。てか田島、帰ってきてるし」

花園はクイとビールをあおりながら、田島とマスターの二人に対して、交互に文句を言う。

「で、旅行どうだった?」
「あ、そうそう。花園、ちょっと待った」

田島はふと席を立ち、カウンター裏に入ったと思ったら、程なく一枚のCDを手に出てきた。それを花園に「はい」と渡してニコニコしている。

「これはユーチューブにアップしてない。旅に出て最初に作った曲」
「俺に?」
「そう。約束しただろ。お前に作るって」

それは大学三年のとき、花園が田島の家に行き、一晩語り明かしたときにした約束。もちろん忘れてはいない。

「覚えてるよ。随分と時間がかかったじゃないか」
「シドニーで作ったから、去年にはできていたんだけどね。直接、渡したかったからさ」

それを聞いた花園の目尻が、ぐっと下がった。旅から戻って、最初の手土産がこれかと、変わらぬ友情に感動して泣きそうになった。

「ありがとう、田島。すっげー、嬉しいよ」
「おっと、抱きつくな。三条さんに妬かれる」

会話のずれ具合も全く変わらぬこの友人に、せっかくの感動が勘違いだったかもしれないと引く。

「ったく。お前、相変わらずだよね」
「三条さんは、元気?」
「心配しなくても、俺らラブラブ」

聞かなきゃよかった、と今度は田島がプイと横に目を流す。

「今夜、これ歌ってくれる?」
「もちろん。これからのライブはオリジナルオンリーで行くから」
「すげーな。楽しみだよ」

程なくカフェは、週に一度のディナータイムとなり、地元の常連の客がそろそろとやってきた。

新年が始まってから、まだ2週目のディナータイムであるためか、客は少ない。マスターも、今回のライブの宣伝はしていなかった。

田島はライブのコーナーに立ち、ディナーを楽しむ客の邪魔にならないようにと、オーストラリアで星を見ながら作ったバラードから静かに始めた。

「これ、良いなあ」

天空のストーリーを綴る歌詞と、流れる星を表すようなメロディーに、客が耳を傾ける。

「これも良いなあ。ね、マスター」

花園はグラスを手に、テーブル席のほうに移動した。去年見ていたカバーのライブももちろん良かったが、やはりオリジナル曲の方が、田島らしくてずっと良い。

語りかけるように歌う田島が、豊かな表情を見せる。音楽に乗って流れてくる感情は、まっすぐで明るい。

曲から、歌詞から、10ヶ月の間、田島がどんな旅をしてきたのか、花園にはわかる。

「行って、良かったな」

花園はグラスを掲げ、田島に祝杯を贈った。



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10ヶ月ぶり? いやいや、1年6ヶ月ぶりです。私とは(-_-;)

二人が大学三年のときに、一晩語り明かしたというのは → こーんなに初期 → 『夢叶』(19話)→ 徹さん、待ってた甲斐あった。


ご訪問、ありがとうございます^^

『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - おなかぴーたろー  

Title - No title

おっ!戻ってきましたね!
お帰り!田島クン!

ひとつ前の記事で
自分も前のブログ始めた頃の記事を見てみると
「なんだか恥ずかしいような、こんな書き方をしていたのか」とか
自問自答することありますもん。
昔の出来事とか、アタマではその状況が浮かんでも
どーやって書いたらイイのか
聞き手にどのように伝わっているのか。とか
それも自分が成長する過程なんでしょうね。
・・でもオイラの場合、今でもあんま変わってないな~i-229
2013.07.14 Sun 08:14
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Name - けい  

Title - おなかぴーたろーさん

戻ってきました! ただいま! ぴーたろーさん! (田島祥吾より)

> ひとつ前の記事で

どんな形にしても、記録に残すのはとても良いことだと思います。
ぴーたろーさんの実録短編集(とあえて呼ばせてください)は、完成度が高くて^^
伝わりまくりであれ、ホントやばいっすよ。いや、良い意味で。

野球で言うならまさに豪速直球もの。時速160キロ超。バット折れる。
折れた破片がピッチャーに飛ぶ。片手でブンと払いのける。(←ここで何やってんでしょ)
ぴーたろーさんは、変わらないでください~^^
2013.07.14 Sun 10:47
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

10ヶ月。長いようで、短いようで、やっぱり長い。
久々の友との再会。感動です。
花園くんは、ちっとも変わっていないように感じます(笑)
田島くんの成長ばかり見てきたからですよね、花園くんごめん。
でも、二人の仲の良さは、相変わらずでうれしいです。
なになに、三条さんと、まだラブラブなのか!(なぜ怒る、w)
いや、いいことです。(ほんとですってば)
(でも、田島くんに彼女ができたら拗ねるかも・笑)

花園くん、最高のプレゼントもらいましたね。
そう、田島くんは、相変わらずいいやつなのです、うん。

今夜はたっぷり田島くんの美声に酔いましょうね^^
てか、私も聴きたい。
2013.07.14 Sun 15:12
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメント、ありがとうございます。

長いですよぉぅ(←含・いろんな意味)
10ヶ月と1年半の時間計算、左から右へと横に流れていきました^^

ぷぷぷ。徹さんだって、社会人となり、もまれてきましたよ。
なにせ、あのクマが上司の課長さんですから。
新年会をドタキャンした徹さんを待ち受ける明日はっ。ふっふっふ。
(詳しくは秘密と怒涛のあちらのお話へ。ってなぜかここで宣伝 ^^;)

いや、宣伝はどうでも良くて・・・
旅行のお土産、良いものが渡せました。
田島に彼女ができたときのlimeさんの拗ね拗ねを見たいなあ(←企画スタートか?)

じゃあ、limeさんもテーブルに。
レモンライムのフィズでもいかがでしょう。
てか、私も聴きたい。
2013.07.14 Sun 16:23
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Name - LandM  

Title - No title

一年経過するだけで人は変わりますからね。
いや、現実的に外見も変わりますからね。
外見を見れば、どのような現実と事実を過ごしてきたかが分かりますからね。そういった意味では外見だけでわかることもかまり多いですからね。
2013.07.15 Mon 11:29
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

そうですね。変わらないと言われる人もいるかもしれませんが(若いとか)、見えないところで変わっているはずですよね。変わらないわけがない。

特に内面の変化は隠しようなく表に出ますよね。
いろんな意味で注意注意(^^;)
2013.07.15 Mon 22:04
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Name - 城村優歌  

Title - No title

あだ (>o< );;;
おばちゃん、実家帰ってる間に、成田到着!

そして、すぐに旧交を温めて。
やっぱ祥吾友だち甲斐ある!
そして、すぐにライブ!
やっぱ祥吾は歌ってないとね!

きっとピアノの音も違っていたでしょう。
どれだけ成長したか、花園くんには
よくわかったでしょうね。

帰国した祥吾の恋バナは、これからあるんでしょうか。
期待しております^^
2013.07.16 Tue 23:16
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Name - けい  

Title - 城村優歌さん

わわ(><) ご実家でしたか・・・
お気持ちは成田まで^^

田島と徹さんは親友で心友で。
お互いに知り合えて良かった、そんな間柄です。
いいなあ、友情。作者うらやむ。

ライブやりますよ。
お正月が終われば、ナタリーと同じニート状態だし(-_-;)

恋バナっすか。期待っすかぁー(冬の滝汗)
こればっかりはねぇ~(沈ぃ~ん)
どよ、田島(本人に振る)
2013.07.17 Wed 11:05
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Name - rurubu1001  

Title - No title

おお!帰国早々ライブとは!!

羊男さんと一緒に嬉しくなってしまいます^^

本当にあの時から待ってたかいがあったよねー。ううう。
私はあそこで涙したので思いは一緒かもしれません。
しかもオリジナルなんて!!
徹さん、そりゃあ、嬉しすぎますよ!!

良かったー。本当に><
田島くん、大きくなって帰ってきましたね!
2013.09.15 Sun 01:04
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Name - けい  

Title - rurubu1001さん

コメントありがとうございます。

マスターとは連絡とっていたのに、徹さんとは事後で(^^;)
羊とうさぎのキャラ当ては自分としては気に入っていて・・・(クマも含めて^^)

おお、rurubuさん、あのときのことを覚えてくださっていたとは。
約束を覚えてくれていると嬉しいですよね。
書き方が拙くて、違う意味で、ううう。

田島もちょっとは成長して帰ってきましたよ。
でなくちゃ、行った意味が、ね^^
2013.09.15 Sun 10:00
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Name - あかね  

Title - 帰ってきたんですね

第四章に入りました。
いつも思うんですけど、けいさんの書かれる若い男の子は純ですよね。中年や老年の男性でも、純真で心の綺麗なひとが多いみたい。これはやはり著者の心が反映されているのでしょうか。

私はミュージシャンってものには偏見いっぱいですので、女好き遊び人かバイセクシャルか、なんて奴ばっかり出てくるのですが、うーん、やっぱり偏りすぎだなぁ、なんて思ってます。

最近、最愛キャラ」というバトンをやらせてもらったのですけど、けいさんだとどのキャラが最愛ですか? あのバトン、けいさんにもやってみてほしいなぁ、なんて思っています。
2014.03.01 Sat 14:55
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 帰ってきたんですね

あかねさん、最終章にようこそ^^
最終とは言いつつも、またまた長い展開になっておりますが(-_-;)

純、すか。ありがとうございます。
作者、純なもので。おっと、投げ物注意(><)
ま、世の中色々ありますから、お話の中くらいは、ね、っていうことで(^^;)

今のミュージシャンの人たちは・・・どうなんですかね。
全く分かりませんね。いや、昔のことも・・・(^^;)

最愛キャラバトン、拝見させていただいていますよ。
面白そうですね。5まで行くところがあかねさんらしいです。

うーん、最愛はですねえ・・・
みんな最愛っちゃ最愛なんですよねぇ。
あかねさんならわかってもらえるでしょうか(^^;)
2014.03.01 Sat 19:18
Edit | Reply |  

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