オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 127 

鏡は調子良く、徳利を空けていく。

「瞬は、祥吾と俺とでやる、って言った。高一の時」

一瞬にして時間が戻る。まだ髪も短かった。歌も演奏も下手くそだった。そして、いつも三人で先を見ていた。

「瞬と祥吾と俺だ」
「けど、成ちゃん」
「あ、女将さん、ぬる燗、もうひとつ」

田島は言いかけて、黙る。鏡の言いたいことがわかるからだ。同じところに立っていた。同じ道を歩んでいた。

思い出が痛いほどに胸を突く。鏡はそれを守ってきた。田島もやっと鏡に追いつこうとしていた。

「祥吾、飲めよ」
「飲んでるよ。成ちゃん、強いね」
「アニキたちに、酒の方も鍛えられたから」

田島もよく飲む方だが、鏡の飲みっぷりの方が田島をしのぐ。そして、鏡のしっかりとした喋りは、飲み始めから全く変わらない。

「瞬が言ったこと、覚えているか。祥吾」
「全部覚えているよ」
「じゃあ、話は早い。いちいち言わなくても」
「わかってる」

鏡の口元が緩み、何か作戦会議のようなものが、うまく行っているかのようにほくそ笑む。

「ああ、これでやっと、俺も本筋の道に戻れる」

そう言って鏡は両腕を上げ、安心したように大きく伸びをした。

「祥吾、俺はずっと待っていたんだぞ」

田島は小さく「うん」と頷いた。心のどこかでそれを信じていた。だからこうして会いに来た。

「寄り道が長すぎて、待ちくたびれた。お前、どんだけやめてた?」

とことん鏡に見透かされて固まる。無駄な抵抗とは知りながらも、一応、言い訳を試みる。

「ちょっとだよ」
「そのちょっとに時間かけすぎ。俺はスタンバイ、オーケー。お前みたいにリハビリは要らない」

長谷川のアコースティックギターを、何ヶ月も弾いていたことを指しているのだろう。言われることが、これでもかというほどに当たりすぎて、苦笑する以外にない。

「よし。じゃあ、これからどうするか、家に帰ってじっくりと話そう」
「家? 成ちゃんち?」
「今日はうちに泊まり。でしょ」

そういえば、今夜の宿泊のことなど、田島は全く考えていなかった。だいたい今日の予定としては、鏡と会って話をしてそれで帰る、ぐらいにしか思っていなかった。それが田島。

「そんなんで、よく外国で無事に生きて来れたな」

あきれる鏡から、田島は目をそらす。鏡と組むことが正解だと、改めて頭に植え付けられる。

「うちに来て、鈴(すず)ちゃん、俺の奥さんと子どもに会ってよ」
「成ちゃんの、奥さんと子ども!?」

これが高校時代と比べて、一番の違いかもしれない。田島は、鏡の腕の筋肉と刺青を見たときよりも驚く。

「奥さんは、鈴子(すずこ)。ひとつだけ年上。息子は功太郎(こうたろう)で、2歳半。娘は風(ふう)ちゃん。まだ生まれたばっかり。かわいいよ」
「へえ、成ちゃんに、年上の奥さんと子どもが二人かあ。いつ結婚したの?」
「二十歳のとき。祥吾に結婚式の招待状出したのに、何の返事もなかった」

口をとがらせて、鏡は今日、何度目かの文句を言う。田島は耳が痛くて、小さくなるばかり。

二十歳の頃の田島は、大学に受かり、一人暮らしを始めていて、実家にはほとんど帰らなかった。実家では、田島宛の郵便物を袋に入れてとっておいたが、田島は中を見もせずに袋ごと捨てていた。

鏡の結婚については、ニューヨークでナタリーと会ったときに、少し聞いたのを思い出す。

「ナタリー!」

その名まえを聞くと、鏡の顔がくしゃくしゃになった。

「あいつに会ったのか。あの細マッチョ。アメリカも意外と狭い国だなあ」

ナタリーの話でひとしきり盛り上がるが、遅くならないうちに帰ろうと席を立つ。鏡が「いいから、いいから」と田島の分も払って、二人は小料理屋を後にした。

鏡の家まで歩いて行く。かなりの距離を歩くから、酔い覚ましに良いのだという。吐く息が白くなるほど、ひんやりとした冬の夜空の下を、二人は肩を並べて歩く。

「成ちゃん、家族がいて、京都の暮らしがあるのに、俺と一緒にやって良いのか?」
「祥吾、おじちゃんが良い? それとも、お兄ちゃんが良い?」

野暮なことを聞いた、と田島は鼻をすすってごまかし、上を向く。

「どっちでも、何でも良いよ」
「じゃあ、名前にすっか」

向こうに見える山あいに、満月が浮かんでいる。なぜだろう。しんと冷たい夜の空気が澄んでいるからか、その月が普段より大きく明るく見えた。



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アニキ仕込みの成ちゃんの飲みっぷり、いかがでしょう。
てか、成ちゃん、若いのにすでに4人家族。奥さん年上^^


ご訪問、ありがとうございます^^

『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。

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Comment

Name - lime  

Title - No title

成ちゃん、二十歳で結婚かあ。
早いなあ^^
家族がいると、夢を追うのを躊躇しそうだけど、成ちゃん、勇気がありますね。田島くんとなら、未来が見えてるのかな。

もうこうなったら田島くんも突き進むしかないですよね。
本心を思い出さなきゃあね。
これからが本当の冒険の旅なのかも^^
2013.08.06 Tue 07:40
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがというございます。

成ちゃん、二十歳で結婚ですう。
こればっかりはご縁で^^

> 家族がいると、夢を追うのを躊躇しそうだけど、成ちゃん、勇気がありますね。田島くんとなら、未来が見えてるのかな。

田島のYouTubeを見つけた時から、覚悟して準備していた模様です。
成ちゃんの時間も流れ始めました。

もうこうなったら田島ガンガンに突き進むしかないです。

> これからが本当の冒険の旅なのかも^^

青春アドベンチャーになりますかね。行き着く先はっ。
これが問題やで・・・(-_-;)
2013.08.06 Tue 16:47
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

成ちゃん……。
妻子持ちか……(一気にテンション↓)。

おばちゃんの妄想はあっけなく砕かれた…あああ ort...

世界規模で繋がっていく感じがステキです。
広くて、ここちいいです。

そして、時を経て、より堅固になっていく
祥吾たちの繋がり。

3ピースバンド、好きなんです。
どんな音になるかな、今から楽しみです。

トーキョーはやっと盛夏って感じです。
暑いっす(涙)。

2013.08.06 Tue 22:43
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

あれれ。お姉さま。砕かれないで。
成ちゃんの上腕二等筋にぶらさがるためにテンションキープしてくだされ~

二人ともティーンからちょっとだけ大人になりました。
成ちゃんはジャンルが変わるけど、問題ないでしょう。

これからどんな音を出すのか。
むむ。これ、毎回大変なんですよ(冬の滝汗 -_-;)

おお、ジャパンは気候も天気も今年は色々みたいですね。
こちらは順調に寒く。電気代も順調に高騰中(><)
ご自愛ください。
2013.08.07 Wed 16:20
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

確かに結婚は個人的に早くてもいいよなあ・・・とおもうのですが。
まあ、それでも最近は経済状況諸々の関係で早く結婚できないのがネックですよね。愛があれば大丈夫さ~~!!ってわけにはいかないですからね。
2013.08.10 Sat 13:18
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

結婚のタイミングは色々ですね。
確かに、愛だけでは・・・お金だけでも・・・
いろいろあっての結婚ですかね。
うまく言えない・・・
2013.08.10 Sat 17:10
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - No title

こうやってメンバーを固めて、クライマックスへと進んでいくわけですね。
先にちょびっとネタバレを読んでしまったのもありますが、このストーリィはきっとハッピィなはず、と思うと安心して進んでいけます。

成ちゃんってなんとなく、若くして結婚した男性のイメージぴったりですよね。
外見的にはちょっとヤンキー入ってるかも?
ヤンキーというより硬派のほうですね。

京都で伝統を守っている、仕事も趣味もそっち方面。
周囲の人々もそんな感じの成ちゃんが、祥吾くんたちに再び新たなる風を吹き込んでくれそうな?
2014.05.11 Sun 10:36
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - あかねさん

コメントありがとうございます。

そうなんです。やっと成ちゃんのもとに戻ってくることができました。
最終章なので、(あの場面も含み^^)あとはラストまで進むのみです^^

> 成ちゃんってなんとなく、若くして結婚した男性のイメージぴったりですよね。

はは。ありがとうございます。パパなんです実は。
家族のために、仕事頑張っています。職人しています。
腕に龍の刺青入っちゃってますからね。頼れる奴系です^^

成ちゃんと組むことでサウンドが良い方向に変わります。
本当に一歩一歩なのですが、変化しながら進んで行きますので、この先もどうぞよろしくお願いします^^
2014.05.11 Sun 12:11
Edit | Reply |  

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