オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 130 

『新規オープンにて、出演バンド大募集! スタッフも同時募集! 「新宿Cabby (カビー)」(担当:丈之助・じょうのすけ)』

ネットで見つけた。メールで連絡を取ると、タイミングが良かったのか、すぐに、今週末のオーディションライブに来るようにという返事が来た。

鏡と肩を並べて、田島は地下鉄新宿駅の通路を歩く。オーディションのための集合時間は夜の8時。メールで案内された地下鉄の出口に向かっていた。

外の光の来ないこの空間は昼も夜もなく、まわりは季節ではなく流行の広告に取り囲まれる。構内の電灯に照らされてやけにピカピカと光るところを行く足音が、なぜかペタペタと聞こえた。

コツコツとよく響いているのは、忙しそうに去って行くビジネスマンやOLの足音。まだ仕事中なのか、それとも仕事を終えて帰宅に急いでいるのか。

歩きながら何気なく行き交う人をウオッチングしていると、ニューヨークの地下鉄でライブをしていたときのことを思い出す。

―――ここで演ったら、人が集まるのか、それとも警備に捕まるのか。

「あそこだ。F6」

鏡が見つけた出口から地上に上がる。まわりはすっかり暗くなり、ビルのネオンと車のライトが必要以上に通りを照らす。

出口から、10分ほど歩くところのビルにライブハウスはあった。表エントランスから中に入る。

「『スクランプシャス(Scrumptious)』ね。俺は店長の丈之助」

入り口で、はつらつとした声に迎えられる。店長といってもサーフショップの店長ではないかと思えるようなマリンデザインの白いTシャツにジーンズ姿。浅黒い顔に白い歯がのぞく笑顔がますますビーチっぽい。

チェックを受け、「時間まで座ってて」とホールの方を指差される。フロアにはパイプ椅子が雑多に並べられていて、他のオーディション参加バンドもいくつか集まっていた。今日のライブは客なしのリハーサルなし。

「パッと見た感じ、キャパはオールスタンディングで150~200人ぐらいかな」

椅子に腰掛けると、鏡が小声でコメントした。まだ細かい内装の仕上げなどが残っているのか、ホールの隅には資材や工具などが残されている。

「機材も照明も新しいし、なかなか良いライブハウスだね」

目をキョロキョロさせながら、田島も小声で答える。ドリンク・バーも明るく広い。ライブ映像でも流すのか、壁には大きなスクリーンが掛けられていた。

待っていると、さらにいくつかのバンドが到着する。他のライブハウスのオーディションライブと比べて、バンドが多い。応募が多かったのか、集めたのか、一晩で終わるのだろうかと思うほどの数だ。

最後のバンドが到着すると、ライブハウス店長の丈之助が前に立った。

「それじゃあ、始めます。まずは女の子たち。とりあえず、一曲やってください」

「え?」という顔をした五人の女の子たちが、丈之助から「トップね」と促される。あわただしくステージに上がると、演奏を始めた。

観客がいない代わりに、オーディションに来た者たちがライブを見守る。この中から、いくつのバンドがこの新規オープンのライブハウスに採用されるのだろうか。

他のライブハウスとは少し違う、オーディションという雰囲気に、何となく緊張感が漂う。ライトの中のシンと張り詰めたような空気を見つめ、黙って演奏に耳を傾ける。

「音源と今のサウンドが少し違うね。メンバー変わった?」

曲が終わった直後の丈之助のコメントに、女の子たちが不安げにお互いの顔を見合わせる。

「はい。最近ドラムとベースが変わりました」
「そう。悪くないよ。一ヵ月後くらいに入れとくから、新メンバーでもう少し練習してきてね」

ブッキングされたことに、女の子たちは今度は笑顔で顔を合わせた。

「言うの忘れたけど、今日はオーディションというより、サウンドの確認ね。音源とライブは違うこと多いから。ここにきてくれたみんなは、ブッキングが前提」

丈之助のその言葉に、緊張感がほぐれた。最初の女の子バンドは「後はメールで」と早々に帰された。

「レイディース・ファーストね」

メンバーに若い女の子がいるバンドから順に丈之助に呼ばれる。その後は高校生っぽい若いバンド。展開は早い。大体のバンドは一曲の演奏で簡単なコメントをもらう。

それは音についてだったり、演奏についてだったり、バンドのバランスについてだったり。一曲聴いただけでよくそこまでわかる、というほどに的確だった。

次のライブまでに、というアドバイスに、どのバンドも神妙に耳を傾ける。最後にブッキングの時期を言われ、詳しいことはメールで、と帰された。

「もう一曲やって。アップテンポなやつ」

そう言われたのは、一人で来ていたアコースティックの青年だ。

「詞がユニークで良いね。メロディーも良い。メールするよ」

二曲目の後の丈之助のコメントにその青年は「やった」と嬉しそうな顔をして帰って行った。

その後、プロ目指してます的な元気の良いバンドや、社会人のベテランバンドなどいくつかのバンドが続き、結局、田島たちが呼ばれたのは最後になった。

はじめは観客であった他のバンドたちは皆帰り、誰も残っていない。いるのはライブハウス店長の丈之助だけ。

「バンド名『スクランプシャス(Scrumptious)』。メンバー、二人ね」

最後になった理由は、バンド名がアルファベットの‘S’で始まるから、などとよくわからない説明を受ける。

「準備ができたらどうぞ」

椅子にもたれた丈之助は、少しだけ疲れた様子で手に持つペンをゆるく振った。



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『スクランプシャス(Scrumptious)』です。 よろしくです m(__)m


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『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。

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Comment

Name - lime  

Title - No title

おお!『スクランプシャス』! これがバンド名なんですね。よろしく!
どういう意味があるんでしょう。(無粋な質問?)

メンバーふたりのバンドって、珍しいのかな?
いや、二人で充分。3人分の気迫ですよ。

それにしても、オーディションじゃないとは言え、ちょっと緊張感が走りますね。最後に回されたのは、やっぱり何か理由がありそう。
この丈之助さん、どんな人なんでしょうね。興味津々です。
いい人でありますように。
2013.09.01 Sun 04:10
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

バンドをよろしくお願いします^^
『スクランプシャス』は形容詞で意味は、素敵なとか、魅力的な、とかです。
食べ物がとてもおいしかったときの、とてもおいしい、にも使われます。
英語では、
scrumptious : (of a person) very pleasing, very attractive, (of food) very tasty, delicious
'very' がポイントかな。

二人バンドといえば、ほら、ベストアルバムを何枚も出している、あの殿堂入りのビッグなバンドがいらっしゃるじゃないですか。
いやいや、あそこはモデルでもないし、比べてもいけませんて(汗)
あとは二人だとバンドというより、ユニットですかね。違いが微妙・・・

丈さんはですね・・・丈さんとだけ。
イミフ? いえ、ここいつも通りです^^
2013.09.01 Sun 10:41
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - バンド名が決まっている~

目に入ってくるのでついつい読んじゃったです(*^_^*)
そうか、バンド名も決まったのですね。
うんうん、とっても素敵な、いいですね。
二人のバンドで、ギター兼ヴォーカルと太鼓(あ、ドラム^^;)ってわけですね。
でもいつか、ギタリストとか、ベーシストとか出てくるのかなぁ?
取り敢えず、早く追いつかなくちゃ!

かの殿堂入りのバンド、9月半ばに聴きに行きますよ~(*^_^*)
I氏の声は、私の中では人間業でない部類のトップに入っています(クラシック以外で)。(ちなみに友人がファンで、私はおまけ)
そういえば、もともともっといたけれど2人になったバンドもありますね。わりと好きな瀬戸内海の某島出身のグループ……あんな感じで、メンバー補充なんてせずに、二人で頑張るのかな。
あれこれ楽しみだなぁ。
(うちの真のひ孫もロックですが、バンドはフルメンバーで5人です(^^)……いつかチャリティとかでセッションを??)

さ、仕事しなくちゃ。
ついついお邪魔しました!
2013.09.01 Sun 12:57
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: バンド名が決まっている~

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

もう、どこからでも読んでいただきたい^^
バンド名決まるのに2年以上かかりましたぁ~
これで良いかなとまだぐずぐずしていたり・・・
とりあえず、線物と小唄とお囃子です(?)

おお。かの殿堂入りのビッグバンドに行くんですか。良いなあ。
私も好きです。I氏もそうですが、M氏とも是非お話をさせていただきたい。
聞きたい事があるのです。

メンバーの入れ替わりはドラマですよね。
変わらずずっといけるところはすごいですが、
変わってパワーアップしていくところもすごいです。
田島たちは一度消滅してからの復活組みかな。

おお。ひ孫さんが! 是非一緒にセッションしましょう!
時系列には目をつぶろう(^^;)

またお仕事の途中にでもお越しください。
いえいえ、お仕事のほうも(を)頑張ってください!
2013.09.01 Sun 16:04
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

うーん、なんだか丈さん、大物な雰囲気。

こんなふうにしてブッキングしていくのも、珍しいですよね。
でも、オーナーとして、実際に音聴いてみないと、
というのはわかります。

ライヴハウスのあの雰囲気、大好き^^

ふたりがどんな音を弾き出すか、楽しみです!

スクランプシャス……成ちゃん、食べたい!
…スマソ(;^_^A
2013.09.01 Sun 23:59
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

ふふ。丈さんのことも城村さんに気に入ってもらえると良いなあ。
ライブハウス「カビー」は新規オープンなので、バンドもスタッフもゼロからです。
なので、ちょっと手をかけるブッキングにしてみました。
なので、ってこともないか。

むかーし、ライブハウス、東京の某階段を降りるところに行っていた。
ググッたらまだあった。うれし(思い出に浸る)

> ふたりがどんな音を弾き出すか、楽しみです!

私も楽しみです^^

> スクランプシャス……成ちゃん、食べたい!
> …スマソ(;^_^A

城村さん^^ぷぷ。まだ見るだけね。
その前に、ぶら下がらないと^^
2013.09.02 Mon 19:12
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

ライブハウスの臨場感が伝わってきますね。
こういうところにはまったく行ったことがないので、、音の確認とかも読んでいてかなり新鮮でした。こういう風にするんですね。。。
2013.09.05 Thu 07:02
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

ふふふ。LandMさん、私がむかーしむかーしあるところのライブハウスに見に行っていたのは、むかーしの話で、つぶれて無くなっちゃったりしています。
それ以来、行っていませんから。
今のライブハウス事情はその頃とは全然違うと思いますが、妄想から成るお話ということでお許しを~(-_-;)
2013.09.05 Thu 17:11
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - No title

こちらを読破しなくっちゃ、ということで、戻ってきました。
私が先日、書かせてもらった田島祥吾くんは、およそこの時期のつもりだったんですけど、私の解釈はこれでいいんだろうかと、どきどきものだったのです。

この時期、オーディションのような、テストというかおためしというか、のようなことをしているのですね。
デビューはもうちょっと先……いやいや、最後まで読んでのお楽しみにしておきましょう。

スクランプシャス。
puですよね。
私には耳になじみのない単語でしたが、しっかり覚えておきます。
そっかー、ふたりといえばあのバンド。
三人というとアルフィを思い出す、そんな世代の私です。
2014.07.15 Tue 11:14
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - 追伸

三人だとポリスも思い出します。
ふたり……今だとポルノグラフィティもですね。
なんにしても、ふたりだとサポートメンバーはいりますよね。
田島くんたちだと不要なのでしょうか。
2014.07.15 Tue 11:16
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - あかねさん

コメントありがとうございます。

こちらは長いので、ごゆっくりと^^

> 私が先日、書かせてもらった田島祥吾くんは、およそこの時期のつもりだったんですけど、私の解釈はこれでいいんだろうかと、どきどきものだったのです。

も、全然OKです。そうかなあと思っていました。

成ちゃんと一緒に、ライブハウス活動です。下積みしないとね。
なので、デビューはちょっとどころか、まだまだです(><)

スクランプシャス(Scrumptious)は、すてきな、とか、おいしい、という意味です。
どうぞよろしく^^

二人だとちょっと足りない感じですかね。
ふふ。あのバンドとアルフィですか。
世代超えていますよ~^^
2014.07.15 Tue 19:17
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 追伸

お。追伸まで。ありがとうございます。

ポリス、大好きでした^^ バラードのあれは名曲だ。
ポルノさんが出たときは、名まえの斬新さにびっくり。

メンバーについては、これから徐々に出てきます。
申し訳ないくらいに、徐々になのですが・・・(-_-;)

田島は未完成なやつですから、周りから助けられながら、少しづつ進んでいきます。
この先もどうぞよろしくお願いします^^

2014.07.15 Tue 19:32
Edit | Reply |  

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