オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 135 

8月は夏のイベントがどんどん入り、ライブハウス・新宿カビーも7月とは打って変わって、連日の人の出入りが賑やかとなっていた。

ずっと募集していたスタッフの方も、丈之助がバンドのオーディションと平行して面接を行い、大体揃った。

照明にはベテランのノリさんと、アシスタントのマサ君。ドリンクバーは、六本木のクラブでもバーテンをしているというヤッさんと、バイトのツッちゃん、それから湊人の三人でシフトを組む。

丈之助はブッキング担当の他に、PAに入っていたが、未だアシスタントを探しているという。

「湊人、良かったな、バンドに入れてもらえて」
「お、ヤッチン。今日入ってんだ」

湊人は、バーテンのヤッさんと仲が良い。けれども、みんなと違って湊人はヤッさんのことを、「ヤッチン」と呼ぶ。

ヤッさんだけではない。湊人はノリさんを「ノリちゃん」、マサ君を「マサヤン」、ツッちゃんを「ツッチー」と、自分だけが使うニックネームを勝手に作っている。

田島のこともすぐに「祥吾」と呼ぶようになり、鏡のことはもちろん、「成ちゃん」だ。丈之助に至っては、「ジョノ」と呼んでいる。なぜか照明のノリさんも、湊人のつけたのが気に入ったのか、丈之助のことを「ジョノ」と呼ぶ。

「丈さん、営業でもしてるのかなあ。だとしたら、頑張ってんなあ」

丈之助が、今日のイベントのプランナーとステージ脇でミーティングをしているのを見て、田島が呟いた。

三人体制になったスクランプシャスは、カビーで行われる自分たちの出ないイベントにも顔を出しているうちに声がかかるようになり、いくつかのイベントに参加させてもらえるようになっていた。

今日のイベントも、ロック系のバンドが集まる中、二番目に出演することになっている。

「今日のロック・ナイトはここ、新宿・カビーからお届けします! トップバッターは・・・」

最近のスクランプシャスは、イベントつながりで他のライブハウスでも演るようになり、行動範囲が広がってきた。他でやるのも良いのだが、他でやるとチケットノルマをかぶらなくてはいけないこともある。

特に今月は、カビーの一押しバンドになっていることもあって、自然にノルマの心配のないカビーでやらせてもらう回数の方が多くなる。

丈之助が以前言っていたギャラの発生など、もちろんないのだけれど、ライブの回数と経験だけは重ねられる。それがラッキーだった。

「サンキュー!」

客のノリも良く、ライブも上手く行った。拍手に送られ、次のバンドにステージを譲る。自分たちが終わった後は、イベントの慣例のようにホールの観客に混じり、他バンドを盛り上げる。

「田島さん!」

不意に後ろから背中をポンポンと叩かれ、名まえを呼ばれる。振り返ると、ショートボブで小顔の女の子が、田島に向かってニコニコしていた。

「花園安美(はなぞのやすみ)です。兄がいつもお世話になっています」

すぐに思い出した。大学2年の頃、花園が大怪我で病院に入院していたときに病室で何度か会って、話をしたこともある。花園に似て、細身で華奢なかわいらしい妹だ。

「安美ちゃん! 覚えてるよ。大きくなったねー。まだ小学生じゃなかったっけ?」
「今年、高校一年です」
「へえー、マジ?」
「え、花園君の妹さん?」

鏡も振り返った。湊人も耳を傾ける。

「鏡さん。兄から聞いています。あ、この子は、友だちの奏(かな)です」

安美がそばにいた友達を紹介した。ストレートのロングヘアの似合う、女の子にしてはスラリと背の高い子だ。

「葦埜御堂奏(あしのみどうかな)です。あの、今日のライブ、凄く良かったです」
「ん? ちょっと待って。音が大きくて・・・」

せっかくだから、お茶でもしながら話そうと、田島たちはライブハウスから外に出た。表通りを少し行くと、田島たちも時々行くファミレスがあって、五人でそこに入った。

「奏ちゃんの苗字、何だっけ?」
「葦埜御堂です」
「へえ、珍しい名まえだよね」
「はい。親戚はみんな、つながっているみたいです」
「鏡も結構つながってるよ」
「奏ちゃんも京都なの?」
「いえ、うちは山の方みたいです」

注文したドリンクが来るまで、苗字の話題でしばし盛り上がる。そういえば、よくありそうな苗字なのは、田島だけだということで話が落ち着く。

「奏は、田島さんの大ファンなんですよ。あ、あたしももちろん、ファンですけど」
「そうなんだ。何か嬉しいなあ」
「去年、祥吾さんのユーチューブをずっと見ていました。私の詞を歌ってくださって、ありがとうございます」
「え? ユーチューブ? 詞? え? 奏・・・ちゃんて」
「はい」

思わず息を飲み込む田島は、瞬きの仕方を忘れたかのように、大きく目を開いて固まった。安美が奏の横で、口を押さえてクスクスと笑い始める。

「祥吾さんからのメール、凄く嬉しかったです。サイトもチェックしました」
「まさか。そう、なの?」

目を細めて微笑む奏に、田島はフリフリと人差し指を向けた。

「あー! 奏ちゃん! いや、さん、いや、ちゃん! いや、ちょっと待って、高校生なの?」
「はい」
「待って待って。安美ちゃん、今年高一、って言ったよね。てことはさ、奏ちゃんも去年までは、中学生!?」
「はい」
「えーっ! ちょ、えーっ!」

目の前でニコッとしている高校生二人を指差し、田島は、酸欠でも起こすのではないかと思うほどに、一人で鼻息を荒くする。

今にも席から飛び上がりそうな田島を、「落ち着け」と鏡と湊人が爆笑しながら両脇から押さえ込んだ。



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ナマ奏ちゃんとのご対面に、田島大興奮。ぷぷ。
さん、ではなくて、ちゃん、だったょ(^^;)


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皆様が素敵な一日を過ごせますように。

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Comment

Name - lime  

Title - No title

わあ。なんと、こんなに早くご対面が叶うとは。
そして、年上の女性かなと思ったら、なんと高校1年生。

うん・・・あるよね。ネット上では、そんなこと。
こんな文章書く子が、こんなに幼い~~?とか、その逆とか(笑)

田島君のこのびっくりは、どんなふうなびっくりなのでしょう。
でもちょっと安心しました。
これなら、速攻恋仲になったりは、しないな、と(どこまで焼き餅やきやねん)

ところで、愛称名人、湊人くんは、もう正式バンドメンバーに入ったのでしょうか。
愛称つけてもらえると、嬉しいよね^^
2013.10.03 Thu 18:36
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Name - 城村優歌  

Title - No title

そっかぁ、高校生かぁ…。
おばちゃん若いその才能に嫉妬するww

しかも、珍しい名前。
苗字に漢字4文字もあると、
テストの時、人より時間かかって損っていう話です。
画数多いし…って、おばちゃんそんなとこ心配。

だんだん人が揃ってきましたね。
繋がっていく、楽しさ♪~(^^v
でも、きっと、まだまだですよね。

ジョノはツボでした。
ボノみたい! U2好きやったわ~^^
2013.10.04 Fri 00:17
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

夏休みに新宿まで高校生が足を伸ばしに来ました(^^;)
田島は年上だと思っていたんです。
英語できるし(奏ちゃんは英語詞も書いていた)
の、びっくりです。

ネットのなせる業、ちょっと使ってみました。
リアルでありますよね。男性か女性かというところからして。
さあ、limeさんはどんな子かなあ。まだまだ謎ですよっ。

速攻恋仲、っすか。もう、焼き餅やきやねんから。
もちの匂いの香るところ、再び華麗にスル~~

愛称名人、ぷぷぷ。湊人は、まだ仮入部?
ちゃんと大学卒業したらきっと正式バンドメンバーに入れてもらえるんだったりしてね。
本人と成ちゃんはメンバーのつもり^^

limeさんの愛称は・・・湊人、ほらほら・・・
2013.10.04 Fri 02:00
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

ははは。高校生に怖気づいてはいけません。
人間、若さだけが全てではありません。なんちて。

奏ちゃん家のご先祖は、山の方のご出身みたいですよ。
へえ、テストで苦労したんだ、奏ちゃん・・・
って、フィクションです(^^;)

> だんだん人が揃ってきましたね。
> 繋がっていく、楽しさ♪~(^^v
> でも、きっと、まだまだですよね。

はい、揃って、繋がってきました。
繋げるのは、大変ですね。でも、楽しいです^^
そうなんです。まだなんです。
重要な再会(さあ、どこから)と、新キャラ(まだ出る)をお楽しみに。予告^^

ふふ。城村さんのツボ発見(?)。ボノかあ。なつかし。
ジョノ・ボノ・・・怪しいユニットになる(?)
2013.10.04 Fri 02:46
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

年齢と道徳。
その辺を考えるようになってくると歳をとったと感じます。
時間は才能を超えて。
練達な文章を作れるようになる。
それとの兼ね合いがどうなるか。。。
ということになりますね。
2013.10.05 Sat 23:27
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

> 年齢と道徳。
> その辺を考えるようになってくると歳をとったと感じます。
> 時間は才能を超えて。
> 練達な文章を作れるようになる。
> それとの兼ね合いがどうなるか。。。
> ということになりますね。

そうですね。年齢と道徳は重ねているけれど、練達な文章を作ることについては・・・はは。
歳をとること上等。そこから見る眺めも違うのだ。なんちて。
才能は無いので、時間をかけます(^^;)
奏ちゃんの文はセンス良いです。
2013.10.06 Sun 15:22
Edit | Reply |  

Name - rurubu1001  

Title - No title

まさか奏ちゃん、高校生だったとは!しかも去年まで中学生って…。
驚きました!!
田島くんとの恋の予感を期待してたので…高校生どうでしょうか、田島くん??

でも、ネットならではですよね?面白いなあ^^

個人的にはジョノさんが大ヒット!ツボです!!
湊くん(というか、けいさん?)名前考えるのうますぎですよ!
私も名付けてもらいたい^^
2013.10.07 Mon 21:42
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - rurubu1001さん

コメントありがとうございます。

え、田島に高校生を与えて良いんですかっ。
って、いきなりすみません・・・
そういえば、田島、彼女いない暦・・・やめときましょ(><)
成ちゃんからスピード婚の秘訣を、ってこらペシッ(><)

ジョノはじょうのすけのジョノなんですが、ははは、どうもです(^^;)
って、湊人がつけた・・・のではないのですよ。ふふふ。

え、rurubuさんもですか。湊人につけさせてホントに良いの? 知らないよ~
じゃあ、ruruちゃん、ruruちん、ruruっち、ruruりん、
ルンルン、ルール、ruru、rurururu・・・(湊人、調子こく)
2013.10.07 Mon 22:50
Edit | Reply |  

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