オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 136 

「今から六本木に行って、DJ借りてくるから」

リハーサルに来るなり、「ちょうど良かった」と出かけようとしていた丈之助から言われる。

「今日、ライブハウスの取材入るんだ。ごめん、言うの忘れてた」
「取材?」
「『スマッシュ・ミュージック』。知ってるだろ」
「ああ、それって」

結構有名な音楽情報雑誌だ。田島も高校時代に読んでいた。そこにライブハウス紹介のコラムがある。

ライブハウスがピックアップするアーティスト、ということでスクランプシャスも一緒に取材されるのだという。

「じゃ、ちょっと留守番宜しく」

丈之助が出かけてから程なく、今日のスクランプシャスの対バンというか、一緒にやるイリュージョンのパフォーマーがリハーサルに入ってきた。

イリュージョニストというよりも、ヘビメタかビジュアル系ミュージシャンかと間違うようなメイクと黒っぽい出で立ち。底が厚くて重そうな、いかついブーツが目を引く。

丈之助から頼まれていたのか、照明のノリさんが対応した。

「あの人、普段からあんな感じなのかな」

思ったことを、すぐに口にするのが湊人。人指し指を立てて「しっ」と小声をかぶせるのが鏡。それを見て「プッ」と笑うのが田島。

「スクランプシャス、今のうちに、メシ食いに行ってきな」

笑顔のノリさんに言われる。マジックの種明かしでも見られるかもしれないと実は思ったのだけれども、知らない方が楽しめるだろうと、その場を後にした。

ライブ前の夕食なんて、そんな豪華なものを食べるわけでもなく、鏡の好きなサブウェイでロールサンドにかぶりつく。

「DJはわかるけど、イリュージョンて」
「おもしろそうじゃん」

湊人は首を傾げるが、鏡はワクワクしている。田島は三人並んで座った窓側のカウンターから、ぼーっと外の人が歩く様を見ていた。

気付くと、一人の若い女性が、外から田島たちの方を指差して、ニコニコと手を振っている。

「あー、さやか。お前、そんなとこで。どこ行くんだよ。え、あ、聞こえないか。えっと」

田島は、掌を広げて外のさやかに向け、妙なパントマイムでも披露するような素早い振りで、「待って」のジェスチャーをした。食べかけのロールサンドを喉に押し込み、ドリンクを掴んで席を立つ。

さやかを目にした鏡も「おっ」と急いで田島に続く。湊人も二人を追いかけて慌てて店を出た。

「サブウェイで晩御飯なんて、ライブ前にそれで足りるの?」
「さやか、どこ行くの? まだ仕事?」
「祥吾たちのライブに行くのよ」
「え、そうなの。まだ時間早いけど」
「取材。聞いてるよね。こちらが『スマッシュ・ミュージック』の津々井茜(つついあかね)さん。えっと、祥吾と成ちゃんと、あ、湊人くんね。よろしく」

さやかから紹介され、「はじめまして」と挨拶をするその小柄な女性は、髪を夏らしくまとめ、蝶の刺繍の入った白いブラウスを素敵に着こなしている。

少し大きめな皮カバンの中には、資料や録音機などの仕事道具が入っているのだろう。田島も「よろしくお願いします」と頭を下げた。

「さやかは、何で? 会社、雑誌社だったっけ?」

それぞれに歩き始め、カビーに向かいながら、話を続ける。

「違う違う。茜さんにお願いして、写真撮りについて来たの。茜さんとは仕事でちょっと知り合いでね」
「私が記事になるようなライブハウスを探しているって話したら、さやかさんが新宿カビーのことを教えてくれたんですよ」
「そうか、取材はさやかの根回しだったんだ」
「なに、根回し、って。スクランプシャスって言ったのは、カビーの方だからね」

程なく五人がカビーに到着すると、ちょうどDJ機材が搬入されているところだった。

「丈さん、戻るの早かったね」
「ジョノ、『スマッシュ・ミュージック』の人、来たよ」
「ああ、どうぞどうぞ。丈之助です」

丈之助たちは「今日は宜しくお願いします」とお互いの名刺を交換すると、ドリンクバーのカウンターに腰掛け、早速話を始めた。田島たちは、DJの搬入を手伝おうと、エントランスからホールに進んだ。

「純! 純じゃねえか、お前。大きくなっ・・・てか、派手になったなあ」

田島よりも先に、鏡が声を上げてステージ横に駆け寄った。そこにはDJ機材のセットアップをしていた、瞬の弟の長谷川純がいたからだ。

金髪のような、オレンジ色のような髪がまず目に入る。髪の色は、搬入を手伝ってくれている黒尽くめのイリュージョニストよりも目立つであろう。

タイトなグレーのシングレットに銀のペンダントと黒のヘッドフォンを首に掛ける。黒のスーパースリムがスマートでスタイリッシュだ。DJなのか、アーティストなのか、一見迷う。

純は機材を運ぶ手を止め、目つきだけをギロリと鏡に向けてきた。

「成太郎さん、何年ぶりですかね。祥吾さんも。お久しぶりです」

表情を変えない無愛想な態度に、鏡が少し戸惑った。鏡も中学生の頃の人懐っこかった純しか知らない。

けれども、成長した純は、その鋭い目つき、顔のつくり、背丈も伸び、兄の瞬とそっくりなのだ。だから鏡も一目で純とわかったのだろう。

兄と似ているから雰囲気を変えようとわざと髪を染め、瞬とは違う派手な格好をしている。そう想像する鏡と田島も同じ気持ちなのだろうか。口をつぐみ、黙っている。

「純、ていうの、DJ? 祥吾と成ちゃんの知り合いなんだ」

湊人が重くなりかけていた空気に割って入った。



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ブログ「茜いろの森」のあかねさんにご登場いただいています。
丈さんと名刺交換。 詳細は次回に^^

純! 覚えていらっしゃるでしょうか。
初登場は → 『夢叶』(66話


ご訪問、ありがとうございます^^

『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - あかね  

Title - きゃああ再び

さりげなーく登場してますね。
お読み下さる方の中には○○○を知ってらっしゃる方もおられるかもしれませんが、偶然だろうと……なのかなぁ?

チョウチョ柄、好きです。
小柄というところだけが○○○に似ています。

このあともう一度、登場するのですね。
なんだか夢に見そう……田島くんに……する○○○。
いいえ、変なことはしませんよぉ、と、先走ってすみません(^^;
次回も楽しみに、わくわくどきどきでお待ちしています。

30話ほどすっ飛ばしてますので、落ち着いてその分も読んでおきますね。
2013.10.08 Tue 00:28
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Name - lime  

Title - わあ。

今回はびっくりの登場人物がいっぱいですね。

茜さん、ここにいらっしゃいましたか^^
いいですね、なんだか音楽関係のつながりで。
なんか、バーチャルで田島くんと話ができる感じで、おもしろそう。
いつの日か、フォレストのメンバーとすれ違ったりしても、おもしろいですよね。

そして。なんと純くんもここに?
派手にしちゃったのね、頭。
でも、その気持ち、わかるかも。お兄ちゃんにそんなに似てるなら。
純くんは、瞬くんのこと、今はどんなふうに思ってるんでしょうね。
その辺のことも、きっとじわじわ、わかりますよね。

すれ違うだけなのか、それともどんと絡んでいくのか。
気になる気になる・・・。
2013.10.08 Tue 01:14
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

そういえば、DJはDJでとても大切ですよね。
アナウンスやその場の音楽。
雰囲気というのはそれだけで商売できるものなんですけどね。
なかなかそういうのが活かされないのが日本ではありますよね。
DJというカテゴリーではなくても、
普通にレストランとかでもいてもいい職業なんですけどね。
2013.10.08 Tue 06:51
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

友情出演、quianさん。ごぶさたで恐縮です。
いいなぁ、祥吾や成ちゃんやジョノと会えるなんて!


後で絶対に聴けることはわかってるんだけれど、
なかなか彼らの音に辿りつけないこのじりじり感を、
なんとコメントしようか。

「次のダンジョンに入る前の村で、出会った村人に話かける。
という状態に似ている」的な。

湊人、絶妙キャラクターですね。
さてさて、どんどん人が集まってきました。
イリュージョンは単なる対バン…前座かな?
じりじり待っております。
今はただ楽しみです。
2013.10.08 Tue 15:01
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Name - けい  

Title - Re: きゃああ再び

あかねさん、コメントありがとうございます。

さりげなさ過ぎて申し訳ないのですが、
チョウチョ柄をフェミニンに纏っての登場です(良かったお好きで)
次回の方が大事^^

あ、あかねさん、田島に何を・・・
いえ、先走りはもうすでに。なぬ。
夢見るあかねさんに失礼の無いようにね、湊人 (←なぜこいつ?)

更新は数日後なので、余裕でお越しください。
ご登場ありがとうございます^^
2013.10.08 Tue 15:54
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: わあ。

limeさん、コメントありがとうございます。

必然で色々かぶっちゃいました(^^;)
あかねさんにはお願いしました。
フォレストシンガーズは大先輩ですね。

なんと純もこのタイミングで来ちゃいました。
多分ね、親戚とかから、背が伸びるたびに
似てきたね~、とか言われていたんですよ。

> 純くんは、瞬くんのこと、今はどんなふうに思ってるんでしょうね。
> その辺のことも、きっとじわじわ、わかりますよね。
> すれ違うだけなのか、それともどんと絡んでいくのか。
> 気になる気になる・・・。

えっと、じわじわです(-_-;)
limeさんの側を華麗に素通りする空気を感じつつ、お待ちください(^^;)

limeさんも、白くて薄い方と猪くんを同伴で、是非ライブにお越しください^^
双子ちゃんでも、あの黒くて背の高いイケメンでも^^
2013.10.08 Tue 16:19
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Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

イベントのDJで思い出されるのは、なぜかビーチ(-_-;)
レストラン! 超感動のアイデアです!
有線の代わりにDJ! これですね! いける!
需要ないかなあ。凄く良いビジネスになると思いますね。
やろうかな・・・^^
2013.10.08 Tue 16:29
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

> 後で絶対に聴けることはわかってるんだけれど、
> なかなか彼らの音に辿りつけないこのじりじり感を、
> なんとコメントしようか。

うわ、ドキドキ。えっとえっと・・・なんとコメ返しすれば・・・
新宿という喧騒の村に潜む、村人からカビーと指差され呼ばれるその場所で
秘かに行われるライブにお越しください。駅で村人に道を尋ねてくだされ。
ファンタジーは(も)描けん(><) 
城村さんは、どなたを連れてきてくださるのかなあ^^

> 湊人、絶妙キャラクターですね。

ぷぷぷ。湊人、褒められたょ^^

はい。どんどん集まってきました。まだ来ます。
イリュージョン君は、将来有望かも?(ネタバレではない)

じりじりとお待ちいただければと。(どんだけ、ですよね・汗)
2013.10.08 Tue 16:58
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Name - rurubu1001  

Title - No title

純くん、待ってましたー!

きっと彼もバンドに参加してくれるはずだと初登場時は思ったものですが、さてどうなるでしょうか…?^^

鏡くんともずいぶん会ってなかったんですよね。再会できて良かったなあ。
派手になっちゃって、びっくりしちゃってましたね。

そうそう。
前回のコメ返で名前を色々考えて下さり、ありがとうございました^^

rururuになった時点で、私の中でなぜか「徹子の部屋」の「ル~ルル♪」というあの音楽が流れました(笑)。
2013.10.08 Tue 20:36
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Name - けい  

Title - rurubu1001さん

コメントありがとうございます。

純、来ましたー!
うん、どうなるでしょうかね。まだ言えない(^^;)

田島は純とは旅行前に一度会えましたが、成ちゃんはずっと京都でしたから。
中学生のイメージからオレンジ頭はびっくりですね。

ははは。rururuから「徹子の部屋」の「ル~ルル♪」ですか。じゃあ、ついでに「ラ~ララ♪」も、
と言っているのは、湊人ですっ。
2013.10.08 Tue 21:57
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Name - -  

Title - 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014.07.11 Fri 20:46
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Name - けい  

Title - 鍵コメさん

コメントありがとうございます。

はい、あかねさんには、こちらでご登場をお願いしました^^
ご本人様ですから、結構緊張しました(^^;)
「夢叶」は長いので、お時間のあるときに^^

ブラジル・ドイツのあの試合はショッキングでした。
国民感情に同情もしますが、これもスポーツ。
ネイマール選手の回復を祈り、代表選手をねぎらってあげたいですね。

豪州のその後は・・・(沈黙)
豪州のサッカーファンは、豪州の試合を見るのと同時に、世界のサッカー見ることも楽しんでいると思います。
基本AUSはスポーツ大国なので、それぞれのスポーツの件で大荒れに荒れることはないのでは。
勝ってむちゃくちゃに喜ぶ、の方が大きいですかね。
お国が違うと事情も大きく変わりますね。

「サッカールー」をご存知とは、さすがです。オ-ジーは応援にも気合が入っていますよ。
W杯開催は、やはりお金が大きく絡むと思います。
それぞれの都市が潤むように計画されるのではないかと。
AUSはどこも観光地で、気候もどこも快適で、どこでも歓迎されるはずですから、安心してAUS巡りができると思います。
いつかなあ、W杯in Aus・・・
2014.07.12 Sat 12:23
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