オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 137 

「派手だねえ、そのブレスレット。ジャラジャラって音が聞こえてきそう。でも、格好良いよ。今日はよろしく。俺、湊人」
「成太郎さん、新メンバー、入れたんだ」

純は湊人をジロッと一瞥しただけで、相変わらず表情を変えずに鏡に向かう。

「うん、最近ね。湊人はベース」

純からほぼ無視された湊人は、眉間を寄せ少しふてくされる。田島が「こっち手伝うよ」と素早く湊人の腕を引っ張って、その場から離した。

「祥吾、あいつ何なの?」
「瞬の弟。俺もDJやってるとは知らなかった」

それを聞いて、湊人は息を飲み込むように黙った。ライブハウスの裏口で、やはり機材の搬入を手伝っていたイリュージョニストと挨拶をしてすれ違う。

「純、俺たちがバンド始めたの知ってたんだ」

鏡と話しながら、純は再び自分のDJ機材のセットアップを始めた。

「成太郎さんは和太鼓やってたのに、何で辞めちゃったの?」
「祥吾が戻ってきたからだよ」
「ふーん」

鏡は、純が京都にいた自分の事も気にかけてくれていたとわかると、少し目尻を下げた。

「純はいつからDJやってるの?」
「大学に入ってから。DJは仕事じゃなくて、バイト」
「純、あんたバイトは、六本木じゃなかったっけ?」

先ほどから純に気付いていたさやかが、丈之助とライブハウスをいくらか写真に収めた後、ステージ横にやってきた。取材の方は、まだ続いているようだ。

「さやかちゃん。何でここにいるの?」
「それはこっちのセリフ。あたしは撮影の仕事」
「撮影? ああ、雑誌の」
「純は丈之助さんと知り合いだったの?」
「今日が初対面。俺はクラブのオーナーから、今日はライブハウスに行けって言われただけ」

DJ機材の全てを運び入れた田島と湊人も、話の輪に加わる。

「純はDJやってたんだ。おばさんとおじさんは知ってるの?」
「去年、大学辞めたいって相談したときに言った」
「え、大学辞めたのか?」
「ううん。結局辞めなかった。今年卒業するよ」
「だってさ、湊人」
「俺の卒業は来年なの。それか再来年」

ステージ横、五人で輪になっている後ろから、「あの」と声がかけられた。黒ずくめの衣装を身につけたイリュージョニストが小さな機材を手に遠慮がちに立っていた。

「これ、どこに置けば」
「あ、それ、探してたんだ。こっちっす。搬入助かりました」
「あと、始める前に、DJさんと軽く話ししたいんだけど」
「もちろんですよ。今日使うCD全部持って来てください」

今まで無愛想だった純が、突然パッと掌を返したように満面の笑顔となり、優しく人良さそうな視線をイリュージョニストに向けた。

その表情の違いを見て、湊人が目を丸くする。ミーティングを始めた純たち二人から残りの四人は離れた。

「祥吾、あいつ何なの?」
「純は、全然変わってない」

確信して目を細める田島の横で、湊人は「わからん」と首を振る。

「スクランプシャス、悪いけど、ホールに椅子、もう少し並べてくれる?」

丈之助がドリンクカウンターの方から指示を出した。取材がどうなったのか、少しだけ気になるが、ライブハウスオープンの時間が迫っていた。



イリュージョン・ショーは、ヒップホップやダンスミュージックなどの明るく軽快な音楽と共に、目の覚めるようなトリックが展開され、見る者の目を惹きつけていた。

イリュージョニストは、若そうに見えて実はずぶの素人ではなかった。芸歴があり、そこそこ人気もあるようで、若い女性客が結構来ている。

スクランプシャスとのインタビューはライブの後、と言われていた。一般客より後ろの端の方に座り、初めてライブで見るイリュージョンを楽しむ。

DJとのコラボで、丈之助はPAに入る必要が無く、フロアからみんなと一緒にショーを見ていた。

「ジョノ、店舗経営のビジネスは上手く行ってるか」
「シンちゃん」
「おう、湊人。久しぶり。お前、良いバンドに入ったよなあ。居心地はどうだ」

誰かが丈之助に話しかけてきたのに、なぜか端にいた湊人が反応した。丈之助が顔を上げる。

「シン。何の用?」
「取材」
「聞いてないけど」
「さっきメールした」

とたんに表情を曇らせた丈之助は、素早く席から立ち上がると、「こっちに来て」と、その人の肩を掴んで振り返らせ、どこかへ連行するように背中を押した。

目の前で展開された会話を、田島と鏡は食い入るように見つめていた。そこにいた‘シン’と呼ばれた男性は、あの某有名音楽事務所取締役の杉浦進之助だったからだ。さらに、杉浦と丈之助の二人を見て、「もしかして」と容易に気付く。

「茜さん、すみません。丈さんの名刺、ちょっと見せてもらえませんか?」

田島が気付いたことを確かめようとする間、鏡は湊人を突いて自分の方に向かせた。

「湊人、何でお前、杉浦さんと知り合いなんだよ」
「え、あ、親が知り合いで」

湊人の声が急に小さくなり、俯いて口ごもる。言いたくないのか、それとも、何かを隠しているのか。

「丈さんともそうなのか。もしかして、親戚?」
「違うよ。親戚とかじゃない」
「じゃあお前ら、どういう関係?」

顔を覗き込んでくる鏡に向かって、湊人はゆっくりと視線を上げ、目を見据えた。

「後で、話すよ。話長いから。今はライブ中だし。そのときはちゃんと話したいから」

ステージでは、相変わらずの派手な音楽と共に、まるでダンスを見ているようなマジック・パフォーマンスが繰り広げられている。それは、程よく集まっていた観客の注目と歓声を集めていた。



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純と湊人は同じ歳だった(^^;) 
てか、あの人、カビーにまで来ちゃいました。丈さんとはどゆ・・・

お陰であかねさんのところまで行き着かなかった(><)
すみません。次回こそ。約束(滝汗)


ご訪問、ありがとうございます^^

『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。

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Comment

Name - LandM  

Title - No title

和太鼓は体力もいりますし、リズムの練習にもなりますから兼業としてはいいですよね。・・・和太鼓自体他の仕事との兼業か。。。それはともかく合流するのは嬉しいことですね。互いの人生が交差するというのは。
2013.10.13 Sun 06:16
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

うん。和太鼓だけでは生きていけませんから、皆さん本業を持っていらっしゃいますね。
成ちゃんはその中で育ってきているので、忘れてしまうということは無いですね。

活動場所が京都と東京とに分かれてしまったので、両方をすることは難しく、
けれども、迷い無く田島を選んだわけです。交差しました^^
2013.10.13 Sun 08:34
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

カビーに、いろんな人が続々と集まってきますね。
これも田島君たちの引力か。

うーん、純くんに、軽く無視される湊くん(笑)
うん、仕方ないかも。テンションがちょっと・・ね^^;

でも、なにやら湊くん、意外な人物かも。
シン って・・・。??

いったいなにものでしょう、湊くん。怪しいぞ!
マジシャンの彼も、なにげに気になるし。
2013.10.13 Sun 19:02
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

誰が引力となり引き寄せているのでしょうかね。
みんながみんなを引き寄せているのでしょう。
人物相関図でも作ろうかと一瞬思い、やめました(-_-;)

純にとっては、湊人より成ちゃんとの付き合いのほうが深かったもので。ごめん。
湊人が話すと言ったことについては、本人からきっちりと話してもらいます。
けど、後でね(^^;)

進之助のシンちゃんと、丈之助のジョノ。
いえ、何かのコンビとかではなく・・・

マジシャン君は、実はこれで食っているプロだったりして。
今後もショー頑張ってくだされ。
2013.10.13 Sun 21:25
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

ん、なんかねー昔を思い出しちゃいましたよ。
ライブハウスって、業界関係者は、
行くと誰かいるだろうなーって感じで行っちゃいますね。
見に行くというより、会いに行くっていうか。

かの方の出方も、ちょっと期待して待ってました。
やっぱ来たか!っていう感じです。

事務所、そういうところちゃんとアンテナ張ってないと。
ジョノとシンちゃん、2ボスって感じww

ライブ終わりのインタビューて、
もしかして打ち上げで?(笑)
さやかちゃん、おいしすぎ~。

そして湊人は、いったい……わくわく^^
2013.10.13 Sun 22:40
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

そうか、城村さんは音楽関係のご経験があるのですよね。
誰かいるだろうなーって感じ、何となくわかります。
で、やっぱいた、みたいな。
実は意外と業界狭そう、とか思っているのですが、実際はどうなんですかね。

かの方(ちょいウケ)のフットワークはこのところ軽いですよ。
やっぱ自ら足を運んで来ました(^^;)
2ボス(超ウケ)の睨み合いは、どちらに軍配が・・・

湊人については、後でね。
取材については次回に^^
順番、順番・・・(汗)
2013.10.14 Mon 17:41
Edit | Reply |  

Name - rurubu1001  

Title - No title

続き、待ってましたー!^^

湊人くん、一体何を隠しているのー?
ちょっと嫌な予感が!!まさかここであの杉浦さんが出てくるなんて…!!

次回が気になる~><

個人的には純くんの態度の違いがなんか面白かったです。
湊人くんにはあーいう態度絶対しそうですよね^^
2013.10.16 Wed 00:52
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - rurubu1001さん

待ってていただいて、ありがとうございますー!^^

湊人は何を隠しているのでしょう。
やっぱ、この感じは隠している、かな。
本当はあまり人には言いたくない、知られたくない系です。

だったら、シンちゃんとかって反応するなよ、ですよね(^^;)
湊人はきっと「やべっ」って思ったでしょう。

杉浦さんにはちょいキーパーソン的になってもらうかも。
彼自身というより、彼がすることで(ネタバレだよ~ん^^)

> 個人的には純くんの態度の違いがなんか面白かったです。
> 湊人くんにはあーいう態度絶対しそうですよね^^

ありがとうございます。純は・・・ふふ、ここは言わない^^
純は瞬の弟、という確認だけで。
2013.10.16 Wed 11:20
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - No title

ああ、そうでした。
津々井茜というアヤしい女が登場すると聞きまして、この前のパートは読ませていただいていたのです。
そのときにはまだそこへ到達していなかったので、今、やっと流れがわかりました。

こんなところでこんな方々に囲まれて、津々井茜ちゃん、よかったねぇ。一生のいい思い出になったよね。
「わたしゃ若いときにねぇ……」とかって、老人ホームで若い子相手にこのときの想い出を語る茜ばあさんの図が浮かびました。

大槻ケンヂさんの「リンダリンダラバーソウル」という、バンドブームの真っただ中にいたころの彼の話を最近読んだのですよ。
対バンなんて言葉は、ロック用語ですよね。ロックに限らず音楽用語なのですかね?

じゃん、につきましては。
「俺は横須賀なんだからじゃんって言うんじゃん。稚内出身の章がじゃんって言うな」
と幸生が言ってましたが、北や東の地方の方は言いますよね? 西では言いませんから、私もあまり身近で聞いたことはありません。
大阪でだったら「大阪ではじゃんとは言わへんやんなぁ」です。

長々したコメントで、どうもすみません。。。
2015.02.01 Sun 01:13
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - あかねさん

コメントありがとうございます。

ここまで! なんかすごく嬉しいです。
そうそう。私は流れの真っ只中にいましたが、あかねさんには??だろうなあどうしよう、とおそるおそるのアップでした。
さやかとも相棒になっていただきまして。
その節はたいへんお世話になりました^^

おお。大槻ケンヂさんは、頭切れる方ですよね。
はきはきした物言いが何か良かったです。
言ってることがあってるかどうかは置いといて。
なるほど。そうなんだ。対バンについてはちょっとだけググったんですけどね(^^;)

方言は横浜は結局じゃんしかないのですが、これは広範囲で使われていて・・・
他地方はたくさんあって良いなあ。
大阪弁をお持ちのあかねさんがうらやましいです。
私は京都弁を習いたいです。

いえいえ、全然長くないですよ~
コメ欄で語り合いましょう^^
2015.02.01 Sun 09:58
Edit | Reply |  

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