オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 147 

その六本木のクラブには、初めて足を踏み入れる。エントランスを過ぎると中はレインボー・カラーの照明が煌き、ノリノリのダンスミュージックが響いていた。

その一角で、太陽のように明るいオレンジ色の髪が、リズムを取りながら揺れているのが見えた。

DJライブの最中であるにもかかわらず、純は連絡のとおり店に来た田島に気づく。「よっ」と片手を振りカウンターに着く田島に、機材からは手を離さず、視線だけを流して反応を見せた。

「成太郎さんと一緒に来るかと思ってたんだけど」

ライブが終わって程なく、純がカウンターにやってきた。ライトが当たっていなくても、そのオレンジ色の髪はひときわ目立つ。DjJunといえば、六本木では少しは名が通っている。

「うん、その予定だったんだけど、成ちゃん、急に京都に行かなくちゃならなくなってさ」
「ふーん」

ドリンクを持つ手には、相変わらず重たくないのかと思うほどにジャラジャラとブレスレットをつけていた。ライブではその手でこぶしを振り、客を乗らせる。

「この店、友だちとか彼女とかと一緒じゃないと、ちょっと浮くね」
「そんなことないよ。シングルで出会い目的系の人もいっぱい来るよ。祥吾さんは誰にでもモテそうだから、準備しておいたほうが良いんじゃない」

田島は目を丸くして「え、何の準備?」と挙動不審となり、きょろきょろと店を見渡す。

「祥吾さん、冗談、冗談」

純が田島の肩をポンポンと軽くたたくと、「ったくもう」と田島は安心したように息を吐いた。軽くケラケラと笑う純に、早速、持ってきたものを見せる。

「純、これ」

田島がずっと使っていた、瞬のアコースティックギターだ。純がほんのちらりとだけ目を向ける。

「瞬に返して」
「なんで?」

純は、少しだけ怪訝な表情を見せた。

「バンドに良いギターリストが入った。策っていうやつ。凄く良い音を出すんだ」
「兄さんの代わり?」

田島はゆっくりと首を横に振った。純から視線を落として、小声で答える。

「瞬の代わりなんていない。瞬は瞬」

少しだけ間を置いてから、純に誤解されないように説明しようと、田島は再び視線を上げた。

「策は新しいバンドのギターリストで、俺はバンドではボーカルをやる。だから・・・」
「そのギターは祥吾さんが持っててよ」

即座に話をさえぎられ、田島は言葉に詰まった。

―――似てる。

心臓がドクンと一瞬跳ねる。自分に向けられた純の目がやはり瞬とそっくりで、その視線に釘付けになる。

「それはもう、祥吾さんのだし」

純は田島の目をまっすぐに見つめてくる。それに田島は少しだけ困惑する。

「それで、時々はライブでも使ってあげてよ。あの名まえの歌を歌うときとかさ」

純は田島から視線をそらさずに、穏やかな声と表情で続ける。純の目の色に迷いもきつさもないことを読み取ると、田島は現実に戻った。

「そうしたら、兄さんも祥吾さんのそばで一緒にステージにあがれるってことにもなるでしょう。それは兄さんが望んでいたことだと思うから」

そう言ってニッコリと笑顔を見せる純は、少しだけ田島の覚えている中学の頃の面影を見せた。

「だからさ、それ祥吾さんが持ってて。あと、手入れもね」

田島は、軽く笑い声を上げてから「わかった」と小さく頷いた。「良かった」と純は肩を降ろすと、ドリンクを口にした。

「祥吾さん、俺、就職決まった」
「へえ、どこ?」
「カビーでPA。最初は丈さんのアシスタントだけど、慣れてきたら任せてくれるって」
「え、DJはどうするの?」
「DJはバイトって言ったじゃん」

そうそう、そう言って少しだけつっぱねてくるところ。やっぱりこいつは、瞬のかわいい弟だ。昔と少しも変わっていない。

「ライブハウスのPAって、金になるの? DJやってた方が良いんじゃね?」
「大丈夫。カビーはスクランプシャスを抱えているから。祥吾さん、俺に良い給料が入るように、客呼んでよね」
「なんだそれ」

純は瞬と顔は似ていても、性格はまるで違うのだ。純のことを再発見したようで、田島は何だか嬉しくなった。

その夜、純のバイトが終わった後、田島は湊人と策を夜中の六本木に呼び出すと、純を交えて久しぶりに朝まで羽目を外した。



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羽目外しちゃったよ、田島。成ちゃんがいないとこれだから。
夜中に呼び出された湊人と策もいい迷惑(^^;)


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皆様が素敵な一日を過ごせますように。

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Comment

Name - lime  

Title - No title

おっ♪ 更新順調ですね。
純くん、クールなイメージだったけど、素直でいい子じゃないですか。
瞬くんの話が出ると、やっぱり田島くんは辛そうだけど、こうやって周りに一緒にハメを外してくれる仲間がいるから、大丈夫ですよね。
仲間っていいなあ。
友達は作れるけど、仲間って、なかなか作れないんですよね。
仲間、いいなあ。
仲間、募集しようかなあ(何仲間w)

そのギターは田島くんが持ってて、一緒にステージにあげて上げるのがいいですよね。
返さなきゃ、ってどこかで思ってるのかな。田島くん。
2014.01.08 Wed 07:59
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

はい♪ ほら、休んでいたときに描けなかったから、その反動ですかね^^

おお、純、クールなイメージでしたか。
何せ瞬の弟ですから(ん?ちと意味違った?)

ギターはやっぱり瞬が持って弾いていた頃の思い出があるので、
自分が持っているのにはいまだに違和感があったりして。
けど、純に返したからって、どうなるの。ねえ(ってだれに同意を求める?)

仲間っていいですよね~。
いやいや、limeさん、お仲間さんたくさんいらっしゃるでしょう。
ブログ仲間さんとか、コメ仲間さんとか、ツボ仲間とか(いやそれはない)
仲間募集には乗りますので、ぜひ募集かけてください!^^
2014.01.08 Wed 12:38
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - うん

やっぱり田島くんが持っているのがいいですね。
そうだ、純君に返したって、押し入れの肥やしになるに違いない。
田島くんは、策くんのためにも振り切らなきゃって思っているところもあるんだろうな。でも、策くんは気にしなさそう。
瞬くんのギター、やっぱり一緒にステージに挙げてやってほしいですよね。
そして、純君も、きっと自分の道を見つけていく過程なんだろうな。

仲間を夜中に呼び出す……これはいいですよね。
後輩なのでやむを得ずやって来たのかもしれませんが、来てみたら楽しいんでしょうね。
そうか、なんだか、このシーンは、『秘密の花園』の時の田島くんのイメージに近いなぁ。そうそう、成ちゃんがいないと破目外すんだ!
面白い発見でした。

更新がスムーズになって?嬉しいです。
忙しいのが少しましになったんですね。
楽しみに次の更新をお待ちいたします(*^_^*)

2014.01.08 Wed 19:56
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: うん

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

元々、瞬のお母さんから渡されたギターなのですが、
田島も4年ほど押入れの肥やしにしていました(^^;)
そうですね。純に返したら、一生押し入れの肥やしになるに違いない。
純はギター弾かないですから。
純の気持ちは家族なんで、また田島とは違うんだろうなあ(←設定ないのかここ?)
うん、策は全然気にしないでしょう(←これは明らか)

> 仲間を夜中に呼び出す……これはいいですよね。
> 後輩なのでやむを得ずやって来たのかもしれませんが、来てみたら楽しいんでしょうね。
> そうか、なんだか、このシーンは、『秘密の花園』の時の田島くんのイメージに近いなぁ。そうそう、成ちゃんがいないと破目外すんだ!
> 面白い発見でした。

はは。一応、同一人物なんですよねえ。
なんかちょっと違ってきちゃったところもあるのですが、
基本(スタート)はあのお話なので、常に念頭にはあるのです。
成ちゃんとか、徹さんとか、田島を良く理解できる人がついていないと、どっかに行っちゃう。
実はとんでもなく油断ならぬやつだったりして(^^;)

夏休みのうちに、と頑張って描いていますよ。
どこまで続くか(^^;)
またお越しください^^
2014.01.08 Wed 20:48
Edit | Reply |  

Name - ヒロハル  

Title - No title

純、就職おめでとう!

これから田島たちのバンドと絡んでいくんでしょうかね。

今の若い子は結構簡単に仕事を辞めたりするんですけど、純は大丈夫だといいのですが。

次は「純の会社員編」をお願いします。笑。
2014.01.08 Wed 21:36
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ヒロハルさん

> 純、就職おめでとう!

ヒロハルさん、ありがとうございます!

> これから田島たちのバンドと絡んでいくんでしょうかね。

はい。カビーでPAだから、祥吾さんたちのライブ、いい音にしますよ。

> 今の若い子は結構簡単に仕事を辞めたりするんですけど、純は大丈夫だといいのですが。

大丈夫です。信用してください(キリリ)

> 次は「純の会社員編」をお願いします。笑。

はは。ライブハウスなんで、夜間勤務ですかね^^

ありがとうございます! 長谷川純より
2014.01.09 Thu 09:33
Edit | Reply |  

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