オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 158 

始まる。オーディエンスの手拍子が速度を増す。もう待ちに待った。いい加減、こっちは出来上がっている。手拍子と歓声が、早く出て来いとずっと催促をしていた。

鏡がまず姿を見せ、続いて湊人と策が出てくると、ステージ・ブルーの会場から大きな歓声あがった。ほんの間もとらず、空気を鋭角に割るようにイントロがスタートした。聞いたことのないようなクリアなサウンドが、ステージから流れ出す。

「Here we go ランペイーージ!」

そのサウンドを纏うように田島がステージに駆け込むと、さらに歓声が光を放つように何重にも波打ち、うねる。

とにかく眩しい。空からの陽、会場からの反射。人って、こんなに眩しく輝いて見えるものだろうか。田島は、目に映る光ごと空気を吸い込んだ。


先ほどまでの緊張感を一気に破り、ステージに息を吹き込む。旋律に言葉を乗せると、空間に突き放たれたそれは、ストレートにオーディエンスの心に向かった。

「スクランプシャスです!」

そんなこと、言われなくても分かっている、というくらいの反応が返ってくる。始まったばかりだというのにこの熱気。体感温度以上の気が一気に高まる。

最初から全力。スクランプシャスの全てをオーディエンスにぶつける。なんだろうこの空間。目の前にあるこの景色、この広がり。無数の腕が挙げられ、こっちを指している。なんとしてもそれに答える。

「まだ昼前だってのに、クソ暑いよねー。でもこれからもっと熱くなるよ。カモン・ランペイジ!」

鏡がいつも通りの正確なリズムで、テンポをつくる。和太鼓で鍛えられた、豪快さと繊細さを巧みに表現する、鏡のドラミング。それは、安定感という言葉だけでは収まりきらないほどに、腰が据わっている。

策は、ステージから出る音が気に入ったようだ。リフの流れが断然良い。ソロも完璧だ。策は練習に裏打ちされた、高いテクニックを持つ。けれども、曲の世界観を理解し、あくまでもそれに沿うように演奏をする。

表現豊かなステージングに、童顔のルックスも加わって、女の子のファンが多い。最近は、実は策の硬派なスタイルを知る、ギター好きの男性ファンも増えている。

湊人には、ランペイジが終わったらまた髪を切れって言おう。良い顔をしているのだから見せたほうが良い。ステージでアドリブを入れるときのいたずらっぽい表情が見えたら、きっとファンが増える。

「まだまだっ! ゴー・ランペイーージッ!」

田島は、心の底から湧き上がるものを音に乗せ、言葉を紡ぎ、歌い上げる。この時間、この瞬間、ありのままの全てを見せる。

自分たちが音楽をやる理由、ステージに立つ理由、難しい理論や言い分など無い。ただ、自分たちが自分たちであることを一心に伝える。それを信じるだけ。

「俺たちの音が、声が、みなさんの心に届いていますかあ」



届いている。だからずっと涙が止まらない。それを伝えたいために、奏は声をからしてでも一緒に歌う。同じ言葉を、同じメロディーを、同じ想いを同時に投げる。

奏も、ステージに向かって腕を振り上げる。手を広げ、音をつかむ。こぶしを振り、音に応える。感じて欲しい。この波を、リアクションを。

さっきから隣で叫んでいる男の人も、時々涙声を挟んでいる。スクランプシャスはきっと、すでに大勢から愛されている。愛される理由、それは彼らの精一杯をぶつけ、やり遂げようとしているこのステージを見れば明らかなのだ。

やっぱり涙が止まらない。きっと田島の声が、スクランプシャスの演ずる音が、耳の鼓膜から入ってくるのではなく、心に響き、脳天を打ち、体全体を震わせるからだ。

これはもうどうにもできない。誰にもコントロールできない。だから、どうもしなくて良いのだ。流れ出るものを受け入れ、自然に、素直になり、この音楽の振動に身を任せよう。

「イエス! 届いているよ、祥吾!」



「スクランプシャスは、デビューしてまだ半年しかたっていないけど、このランペイジで演れて最高にラッキーです」

この特別なフェスで、特別に与えられた時間に、特別な曲を演る。デビューアルバムには入っていない、『Our Generation(俺たちの時代)』。高校時代に瞬と作った曲で、「バンド甲子園」の優勝曲。リライト・セルフカバーだ。

「Put your hands up!」

イントロが空に突き上がる。最高にノリが良い。湊人と策とでアレンジをカッコ良くつけてくれた。もちろん、オリジナルのセンスは変わらない。湊人がこの曲のアレンジで卒論を書く、ぐらいに豪語したほどよく出来上がった。

「これを俺が泣かずに歌えたら、そのくだりも卒論に入れてくれ」
「そんなもん、書くわけねーだろ」

イントロの邪魔をしたら、湊人にど突かれた。策は自分のプレイに集中している。鏡が早く歌えとあごでしゃくった。

目をしっかりと開き、見据える。ステージから見える人の光、ゴールドなのか、プラチナなのか、表現できないほどにきらめいている。

瞬はきっとこの光景を知っていた。瞬は、田島と一緒にこれを見たかったのではない。田島にこれを見せたかったのだ。

「ずるいぞ、瞬。お前、これを」

ステージの隅に立て掛けてある、瞬のアコースティックギターをちらりと目に入れてから、田島は光の中にマイクを突き上げた。



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もうちょい、ライブ続きます。

お陰さまで、落ち着きましたー。
何とかやりきったよう(T^T)


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皆様が素敵な一日を過ごせますように。

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Comment

Name - lime  

Title - No title

うお~~、かっこいい!
もう、客席からの声援と期待がバンバン聞こえてくるし、スクランプシャス一人一人の鼓動と興奮も聞こえて来るようです。
いいんですよね、この一体感。そして、まさしく光に包まれる感じ。
私はきっと野外ライブに行ったら30分で倒れてしまうと思うので(すいません、虚弱体質)プロのライブには行ったことないんですが、中継や動画に、食いついてみています。
ああ、田島君も興奮してるんだろうな。
泣くなよ~。
湊人、髪切れよ~(笑)(ハロスリの彼見るたびに思い出すww)
次回もガンガン聞かせてくださいね^^
待ってます。
2014.04.06 Sun 09:42
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - おぉ~

ライヴの熱が伝わってきますね!
この文章の切れ味、さすがけいさん。けいさんの小気味よい文章にライブのシーンはとても映えています。臨場感といい、それに時々挟まる田島くんの気持ちのかけらといい。どんどん上がっていく、その感覚が伝わってきます。
そして奏ちゃんの叫びに至るまでの感情の高揚も。
大きな観客の波の中に飲み込まれて、個人としても、大きな塊としても、田島くんたちを支えている、その奏ちゃんの姿にちょっとうるうる。
やっぱり、くっついちゃえ!(って、またそこか^^;)

limeさんのコメントで思い出しましたが、一度Zeppというスタンディングのホールでフミヤさんのライブに行ったとき、熱気で倒れた人がいました。うん、倒れるの、分かるわ……
そして、大昔、野外にやってたB'zのライブ(やっぱりスタンディング)、思い出しました。倒れた人はいなかったけれど、すごい熱気だった……
そうそう、こんな感じだった。
何かを乗り越えていく田島くん、そしてまた新しい世界に入っていく……今度は何を掴みとるんだろう。ライブのシーン、まだまだ続きますね。
次回も楽しみにしています。

少し落ち着かれたようで良かった!
また更新をおまちしています(*^_^*)
2014.04.06 Sun 10:15
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

limeさんのお耳に聞こえているようで、嬉しいです~。
ライブの一体感はたまらないっす。
あれれ? 虚弱? Sと、いえ、鋼鉄のチャリンコ通勤とつながらないなあ・・・?
いえいえ、倒れてはいけません。limeさんが倒れたら、田島が泣くよ。

> 湊人、髪切れよ~(笑)(ハロスリの彼見るたびに思い出すww)

いや、彼。マジで、ほんとにマジで、湊人じゃないすかね。(limeさんに聞いてどうするん?)
もうガン見。ベースラインも超好み。ステージングもやばいやばい・・・

次回も聞こえてもらえると良いなあ。
2014.04.06 Sun 13:48
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: おぉ~

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

ライブの熱さが大海さんに伝わって良かったです。
わ。文章を褒めてもらえるのは超嬉しいです~^^ 
音とか熱とか、実体のないものを表現するのは本当に難しいですね。センス(感覚)の世界だと思います。暑さの基準とか、小説の世界ではないように思うし、音もね。いや、大変です。もう少し続くので、そちらも見てもらえると嬉しいです^^

奏ちゃんは田島の一番のサポーターですね。
やっぱり、くっつけたい? 
ふふ。引き続き、応援をお願いしますね^^

野外ライブの熱気って、凄そうですよね。(はい。行ったことないっす^^;)
夏の昼間にやるから余計に。(これだけで妄想)
やっぱ、酸欠になるんだろうなあ。
ちなみに、B'zは、野外ではあらゆる天候を経験したって言ってました。雷も落ちたって。さすが。
いいなあ、大海さんは行かれたことあるんですよね。私は稲葉さんの肺活量についていけるかどうか(笑) 松本さんとは実はお話をさせていただきたい。

> 何かを乗り越えていく田島くん、そしてまた新しい世界に入っていく……今度は何を掴みとるんだろう。ライブのシーン、まだまだ続きますね。

またまた嬉しいことを。このライブからまた少しだけ先に進みます。の予定です。
その前に、もう少しライブにお付き合いいただければと。

お陰さまで、一段落しました。しばらくは描くことの時間がとれそうです。
とはいえ、マイペースは変わらずなのですが、よろしくお願いします(*^_^*)
2014.04.06 Sun 14:28
Edit | Reply |  

Name - ヒロハル  

Title - No title

ライブの臨場感がひしひしと伝わってきました。
熱気がムンムンです。

もうこれで<了>でも、作品として完成度が高く、誰にも文句を言われない気がしました。

まだまだ続くんですよね。
楽しみにしています。
2014.04.06 Sun 22:40
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ヒロハルさん

コメントありがとうございます。

熱気ムンムンがヒロハルさんに伝わって良かったです。(やはりあれはムンムン?)
ホントこのところ、一場面を描くごとに、これで<了>という気概を込めているかもです。
大分終盤に迫ってきてはいるのですが、もう少し。

え、作品としてですか。うわなんか、ドッキリしました。恐縮ですぅ。
とりあえず、ヒロハルさんからは文句を言われないってことですかね。ふ~^^
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
2014.04.07 Mon 10:46
Edit | Reply |  

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