オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 159 

割れるような拍手。天空に響き渡る歓声。熱い。玉のような汗が体中から吹き出る。滴(したた)る。それを拭いもせずに、田島は声を限りに歌い続ける。

瞬きをする一時(いっとき)も惜しいほどに、この時間を大切にしたい。まだ伝え切れていない。まだ前を向いて、この場に立つ。

「まだまだランペイジ、行けますよね!」

田島の声に無数の声が応える。すごく大切なプレゼントが贈り返されているように感じる。

このステージ・ブルーに、どれだけの人数が集まっているのか、いまや計り知れない。その膨大なオーディエンスとステージが、エナジーを共有して一体化する。

「スクランプシャスはまだまだ走り出したばかりで、皆さんと同じ、夢を追いかけている途中です」

オーディエンスのうねりが、さらに高みを増して来る。纏わりつくほどにムンムンとした熱気の中で、バンドの方も、ここから最後まで一気に駆け抜ける準備を整える。

「自分たちの音楽を信じて、こうしてステージに立ち続けていれば、きっと何かが起こる。そんな自分たちの今の想いを、聴いてください。今日、このステージで初めて演る新曲です。『夢叶(ゆめかのう)』」

今までに無い歓声がどっとステージに向かい、挙げられっぱなしのこぶしが期待に突き動く。策のギターから小気味良いイントロが流れると、それに大きな手拍子が加わった。

瞬が見せてくれた夢。それを紡いでいく。今度は自分の夢を見せる番。目の前のオーディエンスが輝きを増す。その光を取り込んでいったら、目の中があふれるほどに眩しくなった。



「玲、何だこいつら。ランペイジのほかの会場の観客も、全員集めてるみたいだな。一つの会場でこの集客は記録だ」

会場モニターをチェックする杉浦が、隣で画像編集で忙しくしている葦埜御堂玲に向かって、驚くようなあきれるような声をかけた。

「スクランプシャスの時代が始まったな」
「僕は何もしていませんから」
「お前とやつらが夢をどう叶えるのか、見せてもらうよ」

杉浦は知っている。田島たちの「バンド甲子園」の優勝曲「Our Generation(俺たちの時代)」の占有権を、テレビ局からスクランプシャスに移すのに、玲はかなりの時間と力を尽くした。

あれから年数が経っていたのと、当時、実際のリリースには至らなかったことは、手続き上少しだけ助けとなった。とはいえ、局側が少しだけ感情的に渋ったのと、やけに複雑な法的書類の審査と処理に少々手間取った。

「大事に育てろよ」
「そんなこと言われると、オッサン臭くなるじゃないですか」
「これは業界からの望みでもある」
「大丈夫ですよ、放任でも。あいつらは」
「また表向きのことを」

玲の秘密主義を「ふん」と杉浦は鼻であしらう。玲がついているのなら、スクランプシャスは大丈夫だろう。自分の手の内ではなくて、案外良かったのかもしれない。杉浦は、業界の宝となるであろうバンドを前に、眼鏡の奥の目を細めた。



「ラスト、一緒に歌ってください。『Eternity Blue』!」

今日の青空にぴったりのラストナンバー。会場からは、歌詞の最初の一言から大合唱が湧き上がった。田島も、スカイブルーの声色を彩り、どこまでも高く、澄み渡る空に向かって歌い上げる。

これを作ったとき、どこまでも続く青い空の向こうへ、自分の想いを届けようとした。今、その時と同じようにこの空は、空間は、果てしなく広がり、この声は、想いは、このステージからどこにだって届くと実感できる。

大きく息を吸い込み、声にして、言葉にして、音に込めて解き放つ。

「もっと声出せ、ランペイジ!」

オーディエンスからの声を浴びながら、ステージの端から端まで駆ける。一歩を踏み出すたびに、一言を発するたびに、とめど無く汗が流れ、砕け、飛び散る。

少しでも近づくために、つかむために、先の先まで手を伸ばす。伝えるために、届けるために、これでもかというほどに声を上げる。

自分たちの音楽と、オーディエンスからの熱気が、この場に渦巻く。今この時間と空間を共有して、自分の声と歓声が地を揺らすほどに呼応する。

「もっと、もっと!」

しっかり歌え。歌っているさ。聞こえないのか。だったらもっと声を出す。腹の底から、心の底から。そうしたら聞こえるだろう。届くだろう。

何だろう。さっきから涙が止まらない。胸の奥からは地鳴りのように鼓動が上がってくる。どくんとやってくるその響きは、自分だけの中から湧き上がってくるのではない。

ステージからも、目の前のみんなからも、聞こえてくる。感じる。体全体で、心で、その鼓動の高まりを受け入れたとき、すべてが一つになった。

もう、息を吐いているのか、吸っているのか、分からない。汗を流しているのか、涙を流しているのか、どっちでも良い。空が青いのか白いのか、ただ輝きが眩しくて。

「ランペイーージ!!」

体中のすべての酸素を使いきり、体中のすべての水分を流しきり、息が底を突き果てるまで歌いきった。

目の中の残像がちらちらして、何だか良く分からない。気がつくと、田島の横に鏡がぴったりと肩を組んで寄り添っていた。

「前を向け。ぶっ倒れんな」

鏡は田島の目の色を確認すると、抱きかかえていた腕を緩めた。滝の水でも浴びたように汗でぬれた髪を、くしゃくしゃとなでてから背中を押す。

一歩前に押し出された田島は、ぎゅっとマイクを握りなおし、光の海に向かって最後の声を張り上げた。

「Love you all!  ありがとう!」



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フェスなので、アンコールはありません^^
というか、これ以上は無理(作者が><)


PS: 次話(160話)の前に、是非『「夢叶」番外 コラボレーションズ』にお立ち寄りください。
ランペイジのステージを、もう少しお楽しみいただけますように。こちらから。


ご訪問、ありがとうございます^^

『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - わ~><

何だか胸が熱くなりますよけいさん。
田島くんの腕を支える鏡君が、あったかいよーー。

会場の興奮のうねりが聞こえて来るようです。
アンコールほしい~。もうあと10曲くらい歌ってほしいです。

そしてそして、ここで出してきましたね!新曲。
これも鳥肌モノじゃないですか。にくいなあ~、この演出!
『夢叶』 そうきたか!
聴きたいです。田島君が、観客や仲間や、瞬くんに向けて歌う『夢叶』。なんか、本当に世界の寵児ですね、田島君。
カッコいいよお。中身も外身も、もっともっとこれから輝くんだろうなあ。

おい、田島君を見ろよ、お前ら、・・・って、うちの不甲斐ない子たちに言っておきます。 
2014.04.09 Wed 19:13
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Name - -  

Title - 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014.04.09 Wed 19:24
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Name - けい  

Title - Re: わ~><

limeさん、コメントありがとうございます。

熱くなっていただけましたか。嬉しいです^^
最後、へたれてしまいそうになったところで、やっぱり成ちゃんです。
アンコールは・・・後のバンドが控えていますから(^^;)
フェスでは時間厳守。でないと、杉浦さんに、玲がど突かれる。

ここで出しました。新曲ですぅ~。よろしくぅ~。
鳥肌来ましたか。良かったです。こうきてみました。お試し^^
えっと、私も聴きたいですねえ。なんとかならないものでしょうかね。このお話の世界って。
世界の寵児。すごい称号です! ありがとうございます。
嬉しいでしょ、田島。←うんFrom 祥吾。

いえいえ、田島も不甲斐ない時期、長かったですから。
いまだに、泣いてばかりいるへたれなうさぎですよ~。
ほらさっきも、成ちゃんに「立て」ってどやされたし。
それなんで、まだまだ応援をお願いしますね^^ 
2014.04.09 Wed 20:42
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Name - けい  

Title - 鍵コメさん

コメントありがとうございます。
メッセージを贈らせていただきますね^^
2014.04.09 Wed 20:46
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - おぉ~

熱い、熱い、熱い~~~!!!
熱気がすごいですね。そして、短いフェスの出番の中で、何かが昇華されたような気がします。特に、瞬くんへの想いは、これまでいろんな人に言われても、田島くん自身は納得できていなかった部分もあったと思うのです。でも、このランペイジの中で体中で感じたのではないでしょうか。傍にいる鏡君の中にも、策くんや湊人くんの中にも、そして目の前の聴衆、さらに青い空。全ての中に瞬くんがいたね。
ここからが出発だな~
頑張れ、田島くん。
そして、そうか『ゆめかのう』だったのね~(*^_^*)
2014.04.09 Wed 23:21
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: おぉ~

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

熱気だけのような気も。自己満の熱さです(^^;)
大海さんにも熱くなっていただけて良かったです。

昇華ですか。そうですね。
田島は、感じることで納得いったのかも。本人のみぞ知るの心と感覚の世界です。描けなくて・・・(沈)
成ちゃんも同じ事を感じていたようですよ。だからさっと手を差し伸べた。さすがな友。瞬は・・・
素敵な感想をありがとうございます。
何度でも出発します^^

> そして、そうか『ゆめかのう』だったのね~(*^_^*)

やっとここで解答だせましたあ。
解説は・・・むむ。後ほど。たぶん・・・
お気楽にお待ちいただけると嬉しいです^^
2014.04.10 Thu 09:48
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

ゆめかのうだった!
解説があるの? わくわく!

しかし、ライヴ! もう、最高っす!
野外の(でした・スミマセン)あの、音が空に抜けていく感じ、
音の返りよりもモニターよりも自分の感覚が頼りな感じ、
オーディエンスのうねり、遠景に向けて叫ぶ感じ、
肌にひっしと感じて拝読しました!

あー、フェス、行きたい~と思ってしまいますが、
もうこの歳では体力なくて、やっぱホールで聴きたい。
じゃあ、スクランプシャス、次はホールで? ぐふふ。

それにしても、玲さんは、すごいですね。
任せておけば心配ないという手の打ち方。
事務所のやり方でコケるバンドも、ありますもんね。
こういう人がついていれば、怖いものなしですね。

もうこれで最終回か……の勢いでしたが、
まだまだ止まりませんね! 次回楽しみに待っております!
2014.04.10 Thu 16:50
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

> ゆめかのうだった!

でした。解説(のような?)をまた本編に組み込もうと企んでいるのですけれど・・・どしよ・・・

ライブ、ありがとうございます。
自己満の粋(すい)を集めてみましたあ(^^;)
たくさん、たくさん、感じていただけて嬉しいです^^
そうか。野外って、ある程度の音感がないと、きっと空間に負けてしまうのでしょうね。だからあんな爆音なのかなあ。たまに、うるさ、っていうのも・・・いえ、ないっす。

フェス、行きたいですね~ えっと、ホールですか。
ふふ。アリーナ行きます。準備しておいてくださいね~^^
(↑ネタバレサービス。ぐふふ。)

玲の凄腕に気づいてくださって嬉しいです。
そうですよね、って、実情は全く知りえませんが、コケるも残るも事務所のやり方や力のあるなしも影響あるんじゃないかなあと。素人の勝手な想像です。
それから、やはり業界でいまの自分らがあるのは、周りの色々にサポートされているお陰なんだよ、ということを気に留めていてほしくて。

> もうこれで最終回か……の勢いでしたが、

ホントですよね。もう、自己満を満喫しました(^^;)
ここで終わっても良かったかもね。
いい加減終わりましょうよって、自分でも思うこの頃(-_-;)

すぐには終わらないけど、もう少しです。9合目。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです^^
2014.04.10 Thu 21:34
Edit | Reply |  

Name - rurubu1001  

Title - ダメです。

ダメだ…、これは。

胸が詰まって、言葉にできません!!><


ただ、待ってたんです。本当にずっと待ってたんです、この日を!!

彼らを。その音楽を。広がる世界を。目の前の光景を!!

あー、もうタイトルが本領を発揮していて、カッコ良すぎる。

田島くんのこれまでの出来事は、ここに辿りつくのに全て必要なことだったんだよ。全然遠回りじゃなかったよ。それがあったから、ここにみんなで辿りつけたんだよ。

実際フェスにいった時と同じ感動が、いや、それ以上の感動がありました!!

私の涙もここで本領を発揮するとは…!

けいさんに、田島くんに、彼らに、感謝です!!

本当にお疲れさま!!(でも、まだ物語はつづきますよね…笑)
2014.04.11 Fri 00:24
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: ダメです。

rurubu1001さん、コメントありがとうございます。

なんかなんか、、言っていただいたことが、すっごくすっごく嬉しいです。

タイトルは、本編に入れようと、どうやって入れようかと、ずっと考えていたんですけど、rurubuさんに気に入っていただけたでしょうか。

> 田島くんのこれまでの出来事は、ここに辿りつくのに全て必要なことだったんだよ。全然遠回りじゃなかったよ。それがあったから、ここにみんなで辿りつけたんだよ。

そそそ。そうなんですよー。全ては必然。遠回りじゃなくて、プロセス。
一歩がなければ千里はないのですよね。よかったー。

そうか、rurubuさんはフェスに行ったことがあるんですよね。
ちいと教えてください。って、おそいし(><)

> 私の涙もここで本領を発揮するとは…!

お、これ、ツボに入りました。
私もrurubuさんに読んでいただけて大感謝です!!
このシーンはマジ疲れましたが、もう少し先の方までお付き合いいただけると嬉しいです^^
2014.04.11 Fri 11:06
Edit | Reply |  

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