オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 161 

“夢は叶うではなく叶える”

このキャッチフレーズと共に、看板やポスターが街中にあふれる。シーンを出し惜しみするテレビのCMにも、話題が集中する。

大々的に宣伝されるこのお正月映画は、公開前から前評判が非常に高い。演技派女優の鈴木未来と、こちらも人気のみならず実力も評価される俳優のリョウが、四年振りに共演する。期待の高まるダブル主演に、メディアの注目が殺到していた。

原作は、直木賞作家・半沢直也による書き下ろし「夢追い」。監督・脚本は、巨匠・二谷幸喜。主題歌は、スクランプシャスの新曲「夢叶(ゆめかのう)」。



「それではご紹介いたしましょう。スクランプシャスの皆さんです」

十一月後半、スクランプシャスは映画の公開と同時に、映画主題歌を含む二枚目のアルバム「夢叶」をリリースした。同時に、ニューアルバムのプロモーションで各地を回る。今夜は、人気上昇中のラジオ番組を訪れていた。

「二枚目のシングル『Eternity Blue』がスマッシュヒットして、ランペイジで大ブレイク。ニューアルバムをリリースされて勢いに乗っているところ、お越しいただきましたあ。イエーイ」

テンション高めに、番組のパーソナリティーが、メンバーを紹介していく。「どうも」と「よろしくお願いします」を交互に言って、なんとなく落ち着かないその場をしのぐ。

ライブと違って、このようなトーク系の番組は、やはりアウェイ感がする。それでも、ステージとはまた違ったコミュニケーションの場だと思って、積極的に参加している。

「はい。今回、話題のお正月映画『夢追い』の主題歌を、スクランプシャスの皆さんが演奏されているわけですが、まずはこの新曲のタイトル、何とお読みするのでしょうか」

どこに行ってもまず聞かれるこの質問から、話題が始まる。

「『ゆめかのう』です」

何度聞かれても、初めて聞かれたときと同じように田島が答える。

「へえ、おもしろいですねえ。教わらないと、‘ゆめかなう’とか、‘ゆめかなえ’とか読みませんか。‘むと’とか読んじゃったら、意味わかんなくなっちゃいますね。僕、初めてこの字を目にしたときは、‘ゆめかな’で、固まりました」

漢字二文字のタイトルに、こうしてたくさん反応してもらえる。それがありがたくて、実はどう読んでもらっても良いと思っている。

「送り仮名がないので、結構自由に読めますよね。‘夢が叶う’とも、‘叶わない’ともどちらとも取れるし」
「なるほど。その辺の含みを持たせた、というわけですね。でも、『ゆめかのう』と読むということは、なんだか可能性が高いような、ポジティブに捉えて良いような響きがしますが」
「‘叶(かのう)’と‘可能(性)’ですか。それは考えませんでした」

初めて耳にするコメントに、他のメンバーからも笑みがもれる。ゲストがリラックスできるように、サービスを惜しまないこのラジオのパーソナリティーへ、親近感を持ち始めた。

「映画『夢追い』は、主人公の二人が夢に向かってひたむきに頑張る、というストーリーですね。スクランプシャスの皆さんの夢は?」
「スクランプシャスも、夢に向かって頑張っていますよ」

「夢叶」をリリースしてから、行く先々で映画とも絡んで、夢のことについて聞かれることが多くなった。

「スクランプシャスはバンドですから、バンドのみんなで夢を見ているんですよね。一人で見る夢は夢でしかないかもしれないけれど、誰かと見る夢は現実となる、と思っていますから」
「うわ、素敵ですね」
「って、オノ・ヨーコさんが言っています」
「なーんだ、祥吾さーん」
「受け売りですみません」
「いーっす、ぜーんぜん、いーっす」

終始和やかに、番組が進んでいく。この番組は、ラジオの電波放送と共に、ネット配信も同時にされていて、それが番組の人気上昇にもつながっていた。

また、パーソナリティーの好感度も高く、最近のどうしようもなくつまらないテレビ番組から離れつつある人々を呼び寄せている。

「映画のキャッチフレーズ『夢は叶うではなく叶える』、これについては?」
「これ実は、大学の友人から、同じことを言われたことがあるんです」
「へえ、そうなんですか。素敵な友人さんですね」
「あいつ、この映画のことを予見していたのかなあ。まさか。もしかして、監督があいつのことをパクったのか。それとも、原作者の半沢さん? いやどう考えても、絶対にそんなことありえねえだろ。つながりないし」
「祥吾さーん、戻ってきてくださーい」
「あ、すみません」

悪意はないのだが、田島はインタビューの途中などにも、話題とずれることがよくある。隣で鏡が「またやらかした」というように、田島に軽く肘打ちをして笑っている。

「僕は夢って、頭の中だけのものじゃないと思うんです。考えるものじゃなくて、実行していくものだと思うんですよ。田島さん、どう思われます?」
「良いこと言うじゃないですか。この番組にかける夢とか、やっていることとか、あるんですか?」

田島は質問に答えるばかりではなく、こうして質問返しをよくする。答えてばかりはかったるい、というのが理由なのだけれども。

「そうですね。月並みかもしれないんですけど、この番組を、日本中のみんなが耳を傾けるぐらいの人気プログラムにしたいですね。とりあえず、続けることかな」
「俺たちもそうです。スクランプシャスっていうバンドを結成してから、ずっと自分たちの音楽を演奏して発信してきたんですけど、これからもずっとそうしていくことで、この先何かすごいことが起こるんじゃないか、ってそんなふうに思っています」
「うわ。なんか、スクランプシャスの皆さんと想いが同じような気がして、すごく嬉しいです」

とても良い笑顔を見せる。ラジオ番組ではなく、テレビに出たとしても、きっと人気のキャスターにでもなりそうだ。田島よりも若く、年下に見えるが、気持ち的に合いそうな気がする。

「知ってます? 夢を誰かに語ると、その夢はきっと叶うんですよ。あ、これも大学の友人の受け売りなんですけどね。だから、この番組、きっと日本中のみんなが聴く、人気プログラムになりますよ。信じて」
「いやなんか、祥吾さんにそう言われると、本当にそんな気がしてくるじゃないですか。おっと」

ガラスの向こうのスタジオ・ディレクターから、合図が入った。

「はい。ライブの時間です。今日は、この番組のために、特別にアコースティックバージョンを披露してくださるんですよね」

策と湊人にギターが渡され、鏡はカホン(Cajon:全体が木で出来ている箱型のラテン系パーカッション)に腰掛ける。マイクに向かう田島の準備もOKだ。

「それでは、スクランプシャスで『夢叶』、アコースティック・バージョンです」

トークをしていたのとは雰囲気が打って変わり、スタジオ内でスクランプシャスの世界が繰り広げられる。リスナーからの反響もすぐに来たらしい。ディレクターが、モニターに目を向けたままニコニコしている。

「うわー、アルバムとはまた違った感じのアレンジで、こちらもカッコ良いですねー。すごく応援されているような感じで、元気が出ますよ」
「そう言っていただけると、アレンジした湊人と策が喜びます」

「よね」と視線を送ると、二人はうんうんと頭を縦に振った。

「いや、ホントに。スクランプシャスの皆さんも夢に向かっているのでしょうけれど、皆さんを見るファンの方にも夢を与えていますよ。こんな風にかっこよくなりたいって」
「スクランプシャスのステージを見て、それが誰かに夢を与えるのだとしたら、それは嬉しいですね。夢は叶うではなく、叶える。自分たちのやっていることが、そのお役に立てればもっと嬉しいですね」
「うわ、うまく映画の宣伝もされて、さすがですねえ」

番組としての傾向なのか、この彼の本来のパーソナリティーなのか、さきほどから本当に褒め上手で、ゲストをヨイショとうまく持ち上げる。何かお返しを、と思うほどだ。

「映画の招待券とか、持って来ましょうか」
「え、いただけるんですか。えっと、スクランプシャスものとか、ありますかね」
「じゃあ、バックステージ・パスはどうですか?」
「わあ、それ、本当ですか。嬉しいです。リスナーの皆さん、聴きましたよね。スクランプシャスから皆さんへ、思わぬ特別プレゼントですよ」

パーソナリティーの彼にと思っていたのが、リスナーのためだなんて。やはりこの番組は、この先もっと人気が出て、彼の名まえも知られるようになるだろう。

「『夢追い』映画無料招待券、これ、ペアですよね。それと、スクランプシャス・ライブのバックステージ・パス、こちらもペアですね。はい。ふるってご応募ください」

ペアでも何でも良い。バックステージ・パスなんていくらでも出せる。いや、彼は顔パスでライブに招待しよう。それで自分たちも、彼のこの番組に再登場させてもらえると嬉しい。いや、そんな交換条件などなくても、きっとすぐにまた会える。そう思った。

「ああもう、時間いっぱいです。今日はありがとうございました。僕もファンの一人として、応援しています。これからも頑張ってください」
「こちらこそ、ありがとうございました。俺もファンになりました」
「え、マジすか。あ、スクランプシャスのみなさんでし・・・」



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ふるってご応募ください・・・(-_-;)
次回、最終話です(滝汗)

「一人で見る夢は夢でしかないかもしれない
誰かと見る夢は現実となる」
(オノ・ヨーコ)


ご訪問、ありがとうございます^^

『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - あかね  

Title - No title

うわー、もう最終回なんですね。
私はまだ追いついていませんので、読みたいのを我慢してさかのぼっていきます。

今回は珍しくリアルタイムで、ちょっとだけコメント。
失礼しました。

2014.04.18 Fri 18:35
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

お正月映画の主題歌ですか!
それはまた話題になりますね。さすが怜さん。
俳優のリョウくんが主演かあ~。(彼前にちらっと出てきましたよね??)

それにしても原作と脚本家(笑)けいさんの遊び心がちらりと。
この映画、見てみたいなあ。
そしてラジオ出演。
『夢は叶うではなく叶える』 これって花園君の言葉?
ラジオの向こうで赤面してるかな、花園君。

パーソナリティとも和気あいあいで楽しそう。
このパーソナリティ、かなり印象つけられてしまいましたが・・・。
もしかどこかでまた出てくるのかな。
でも、もう次回最終話だし・・・。ないかな?

ああ、もう次回最終話なんですね。寂しい・・・。
最終話には誰が出てきてくれるのでしょう。
出演者めちゃくちゃ多いから全員は無理なんでしょうけど。
最終話。楽しみ半分、寂しさ半分。

この後の感想は、最終話に取っておこう~っと。
楽しみに待っていますね^^

2014.04.18 Fri 19:22
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - あかねさん

リアルタイムコメントありがとうございます。
ホント珍し^^

はい、次が最終回です~
まあ、どこへでものんびりとお越しください。
お待ちしています^^
2014.04.18 Fri 20:02
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

お正月映画の主題歌です。はい、玲の仕業です^^
リョウは今や実力派イケメン。
航空会社のCMのときと、「秘密の花園」で徹さんにドッキリもかけています。
そのドッキリのときに手を組んだ、女優の鈴木未来とダブル主演です。
内輪でキャスティング(^^;)
私も映画見てみたいですねえ。スタッフがすごそうで(?)

はい。徹さんが言いました。覚えていてくださって嬉しいです^^
原作者・監督とどういう関係が。いや、何もないっす。
ラジオの向こうでうへとか言っていそうです。

ラジオのパーソナリティー君は・・・
会話、キャラバトンぽいような・・・
次回、最終話です・・・

最終話になんか緊張しますね。
ほら私、最終話、めったに書かないんで(三回目・笑)
え、誰が出てくるか、ですか。
う~ん、う~ん・・・大丈夫かな(-_-;)

あと一話。よろしくお願いします^^
2014.04.18 Fri 21:06
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

あら、時間切れ? TKどうした!?

ラジオ、楽しそうですね。
インタビュー中、自分の好きなダムの話に持ってっちゃう
ミュージシャン知ってますから、祥吾まだまだ大人しいほうですよ。
そのくらいぼよよんのほうが、好感度上がる~。
そして、脚本は二谷幸喜ですか!(笑)1本足りな~い!(笑)
この、けいさんらしい軽妙洒脱感、ほんと大好きです。

私も夢語って叶えなきゃな~、と思わせられる終盤ですね。
さて、ラスト、楽しみにしております。
2014.04.18 Fri 22:22
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - わぁ

盛り上がるなぁ。最終回のひとつ前って、なんて刺激的で、なんてワクワク感にあふれているんだろう!
そして、このラジオ聞いて、花園君、喜んでいるだろうなぁ(*^_^*)
スクランプシャスの上昇気流は、周囲をみんな巻き込んでいく、誰かの一人勝ちじゃなくて、みんなで上に向かっていこう、その気持ちがみんなを「もっと応援したい」ってムードにしていくんだろうなぁ。
田島くんの明るさって、これは天性のものですね。それが色んないい形で表に出てきています。明るさ、精神の天真爛漫さ、これは本当に財産です。
結果的に華々しい未来が拓けることは疑いようもないけれど、何よりも、この結果を導く心の芯にあるものが大事なのだとしみじみ思えました。
「誰かに言えば夢は叶う」これは本当ですね。
だから神社では、詔が上げられるんだろうな。
さ、あと1回、楽しみに待ちます(*^_^*)
2014.04.19 Sat 14:06
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

時間切れちゃいました(^^;)
ダム好きのミュージシャン、ってどなたでしょう。
マニアックですねえ。へえ、ってお話が聞けそうです。

あはは。ぼよよん祥吾は、こんなキャラでもこの先、一本足りない二谷監督にもかわいがっていただいて、業界で生きていけると良いのですが。

城村さんの夢は何かなぁ~。祥吾に語って叶えなきゃ~^^
さて、ラスト・・・えっと、少し描けてきました。(←まだなのか -_-;)
2014.04.19 Sat 15:19
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: わぁ

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

お話を締める、というのはどういうものかと思案中です。
結んだりほどいたりしています。経験少ないもので(^^;)
大海さんの中で少しでも盛り上がっていただいているのなら、それはとても嬉しいです。

> そして、このラジオ聞いて、花園君、喜んでいるだろうなぁ(*^_^*)

徹さんの事を想ってくださって、ありがとうございます。
limeさんからコメいただいたときも思ったのですが、こういう、きっと聴いている、とわかってくださるところ、表情を見ていただいているところが本当に嬉しいです。

> スクランプシャスの上昇気流は、周囲をみんな巻き込んでいく、誰かの一人勝ちじゃなくて、みんなで上に向かっていこう、その気持ちがみんなを「もっと応援したい」ってムードにしていくんだろうなぁ。

ありがとうございます。なんか、すごいムードかも。
カリスマの時代は終わり、一人ひとりの個性が生かされる時代ではないかなあ、何て勝手に思ったりしているのですが・・・どうなんんでしょね。

> 田島くんの明るさって、これは天性のものですね。それが色んないい形で表に出てきています。明るさ、精神の天真爛漫さ、これは本当に財産です。

嬉しいです~。田島は徹さんのことを散々天然と発言していますが、田島も人のことは言えない。
田島は結構KY寄りではないかと・・・
田島の泣きに慣れている成ちゃんに訊いてみたい。

> 結果的に華々しい未来が拓けることは疑いようもないけれど、何よりも、この結果を導く心の芯にあるものが大事なのだとしみじみ思えました。

ありがとうございます。まだまだ人生、何が起こるかわかりませんよ~。描きませんが(笑)
ま、大丈夫だろうなあと安心して見ていられる、だから筆を下ろすのですけれども(^^;)

なるほど。神社の詔にはそんな意味合いも含まれているのですか。
声に出すことは放たれることですから、それで何かが生まれるのではと思います。なんちて。

あと1回です。まだ描きあがっていないのですが(←まだなのか)(滝汗)
2014.04.19 Sat 16:31
Edit | Reply |  

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