オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

秘密の花園 4 火曜日・カフェ(1) 

 火曜日。

「おい、『秘密の花園』。お前さあ」
「どうした田島、今日も朝はサボりか。どうせ夕べまた、カラオケまでフルコースだったんだろう」
「そんなことはどうでも良い。お前の秘密を吐け」

 見た目、華奢でひ弱な印象を与える細身の俺とは違って、田島は明るく快活な男だ。背が高く、身長は180センチ以上あるだろう。

 運動をしていたという話は特に聞いていないが、酒には強く、実はこいつと飲みに行くと飲みっぷりが豪快で楽しい。

 カラオケ好きの田島は、飲んだ後は必ずと言って良いほど歌いに行く。好きなだけあって、歌は結構上手い。みんなでおだてると、マイクを離さずにずっと歌い続けるタイプ。

 一年浪人した田島と一年休学した俺は、年が同じでそのせいかどうかは分からないが、何かと気が合う。『秘密』の何とか、と連呼するのだけは気に食わないが。

「お前に吐くような秘密なんて無い。つーか、その呼び方、いいかげんにやめろ」
「じゃあ、三条さんのこと教えろよ。すっげーかわいい子じゃんか」

 そう来ると思った。ま、予想はしていた。てか、お前には関係ないんじゃね?

「去年、オーストラリアで会ったんだよ。それだけ」
「それだけ? のはずないだろう。『徹さん』、『奈美さん』、なんて呼び合ってるのにさぁ」
「え? それは聞き捨てならない話だね」

 田島の言うことを耳にしたマスターが、ささっと近寄ってきた。

 田島とは、俺がバイトをしているカフェで、カウンターを挟んで話をしていた。このカフェは大学の近くにあり、俺は週に一度、火曜日だけバイトに入っている。

 ここは、カウンターに五、六名、フロアに四名掛けのテーブル席が八つほどの小さなカフェだ。俺がいないときはマスターが独りで切り盛りしている。

 カフェは、俺がバイトに来る火曜日だけナイトタイムを延長して、俺はバーテンをやっていた。夜はカフェではなく、パブとなり、東京から会社帰りの地元の常連もやって来る。

 俺は火曜日は大学の時間割に空きが多く、カフェには夕方からのディナータイムとそれから、ランチタイムにも仕事に来ていた。

 店に来てバイトをするのは火曜日だけだが、俺はコンピュータの苦手なマスターのために、店のホームページを作っていた。

 大学で講義の空いているときなどにチェックをして、何かの時にはマスターにメールで知らせるなどしている。

「田島君、もっと詳しく教えてよ、花園君、彼女できたの?」

 田島はここへはランチに来ていた。今日も朝の講義はサボったらしい。起きられないなら選択しなきゃ良いのに。

「マスター、お客さん来ますよ」

 とは言ったものの、今日のランチはなぜか客が少なく、店はとても静かだ。いや、正確に言うと、ランチにはまだ少し早い時間だった。田島はランチに来たというよりも、ブランチに来たぐらいの時間だった。

「マスター、こいつ去年行ったオーストラリアで、彼女見つけてたらしいんですよね」
「え、オージーの子か?」

 まるでここに俺がいないかのように、田島とマスターとで話しを進める。

「日本人の女の子なんですけど、すっごくかわいいんですよ。こいつ今までうまく隠してたんですよ、ひどくないですか? だからお前は『秘密の花園』なんだよ」

 ―――ここでそう俺に振るのか。

「隠してなんかいない。それに奈美さんは彼女じゃないし。昨日、本当に偶然に会ったんだよ」
「マスター、聞きました? こいつは彼女のことを『奈美さん』って呼んでいて、彼女はこいつのことを『徹さん』なんて呼ぶんですよ。怪しいし」

 ―――は? 怪しくないし。

「彼女じゃないにしても、仲は良さそうだね」
「もう、マスターまで。勘弁してください。マスターだったら分かるでしょ。外国ではお互いのこと苗字じゃなくて名まえで呼ぶんだよ、田島。常識だろ」
「花園、ここ、日本。神奈川県、横浜市。俺、常識ある日本人」

 それを聞いて、マスターがとうとうクスクスと笑い出した。

 カフェのマスターは、この店を出す前は世界中を旅行していて、店の中にはマスターが旅の間に集めたという珍しい置物などがたくさん飾ってある。

 マスターのコレクションを眺めていると、ちょっとした世界博物館の中にでもいるような気分になる。そんな雰囲気がカフェの魅力となり常連客を呼び込んでいた。

 店の一角に、オーストラリアのアボリジニ(原住民)が、祭りなどのときに使う、音楽楽器の‘ディジュリドゥ’が置いてある。

 他所ではなかなか目にすることのできない、そのオーストラリアン・アイテムに俺は引かれて、この店に通うようになった。

 マスターはよく来る俺の顔をすぐに覚えてくれて、話をするようになり、俺の方からバイトをさせて欲しいと頼んだのだった。

「じゃあさ、俺も外国に行ったら、金髪のお姉さんから『ショーゴ』とか呼ばれるんだ」
「お前、どこの国に行くつもりだ。食い終わったんならさっさと大学に行って勉強してこい。1480円だ」
「え、ドリンクはサービスじゃないの?」
「さっさと金払って行け。遅刻するな」

 二人を見るマスターは笑いが止まらず、クックと肩を振るわせている。

「花園君と田島君は、ホント良いコンビだよね」

 レジでマスターは、田島のドリンクをサービスしてやったようだ。

「サンキュー、マスター。俺この話の秘密を暴かなくちゃいけないんで、夕方また来ます。おい、『秘密の花園』、ちゃんと仕事して待ってろ」

 田島は最後に俺の事を指差し、捨て台詞まがいの間抜けな言葉を残して、店から出て行った。

 ため息をつく間もなく、出て行った田島と入れ替わるようにランチの客が入ってきて、俺は急に忙しくなった。



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   徹さんと田島祥吾君は、良いお友達^^

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『秘密の花園』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - あかね  

Title - 真面目にお勉強してるのですね

こんばんは。
今夜はここまで読ませていただきました。

うちのフォレストシンガーズの大学生たちは、合唱部室にばっかり入り浸ってますが、花園くんたちはちゃんとお勉強してますね。
えらい、ってか、こっちが当たり前なんでしょうね。

「秘密の花園」ってイギリスの児童文学だったと思います。
私は遠い昔に読んだので、うろ覚えですが。
少年と少女が秘密の花園で友情をはぐくむといった、真面目なお話だったはずです。

花園くんも田島くんも楽しいですね。
いいなぁ、「青春」は。トオイメ(^^

2012.05.26 Sat 01:00
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Name - けい  

Title - Re: 真面目にお勉強してるのですね

あかねさん、お越しくださり、コメントもありがとうございます。嬉しいです^^

あかねさんのところの皆さんは活動に燃えていらっしゃいますからね。
こちらは、徹さんはバイトを頑張っています。
田島祥吾くんは・・・勉強はいまひとつ・・・(^^;)

> 「秘密の花園」ってイギリスの児童文学だったと思います。
> 私は遠い昔に読んだので、うろ覚えですが。
> 少年と少女が秘密の花園で友情をはぐくむといった、真面目なお話だったはずです。

情報ありがとうございます。
翻訳されているということは、有名なお話なんですね^^

「青春」カテゴリーは、めっちゃくさいのが好きなんですよ。
夕日に向かって、なんでだー、と号泣、そして、
お姉さんが慰めてあげよう、みたいな^^
2012.05.26 Sat 12:20
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

男は秘密があるこそカッコいいのさ。
(゚∀゚)

ちょっとミステリアスなぐらいが女性を惹きつけるし。
カッコよくみえる。。。年頃なんでしょうね。
2015.09.19 Sat 11:53
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

はは。徹さんは秘密があるわけでも、秘密にしているわけでもないのに、どうなのよと思われてしまう?
人当たりはかなり良いのですけれど、それがかえってミステリアスとつながっているかもね?
2015.09.20 Sun 21:14
Edit | Reply |  

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