オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

セカンドチャンス 10 火曜日(2) 

「創立記念日」

すなわち、サボリね。お約束の反応。

「どうしてここに?」
「阿部先生の携帯から、住所をググッったんだ」

そうじゃなくて、理由だよ。しかも。

「どうして青木君が、阿部君の携帯をいじるわけ?」
「阿部先生の友だちって、どんな人かなあって思って」
「何で俺が友だちって分かるんだよ」
「声聞いたから。凄く親しそうに、俺のこと先生だと思って、『話し聞いて』って言ったでしょ。阿部先生みたいに良さそうな人だなあって思った」

あのとき、最初から相手はこいつだったのか。やはり、間違いだと言われたあの電話は、間違いではなかった。

「あの時、塾にいたんだけど、阿部先生、資料探しに行ってちょうどいなかったんだ。そこにかかってきたから、出ちゃった」

出ちゃった、かよ。普通、出ないでしょう。電話鳴ってましたよ、って知らせないのか、お前は。俺とは常識が違うようだ。

「俺さ、阿部先生のことが大好きなんだ。だから、俺も先生の友だちになりたい。生徒じゃなくて」
「で、阿部君の友人の俺を見に来たわけ」
「そう。阿部先生の友だちを研究して、俺も先生の友だちになる。で、先生のこともっと知りたい」

何だこいつは。ちょっとキモくないか。先生にあこがれる、というのなら分かるけれども。それで学校サボってここに? わけわからん。俺だったら、こいつと友達なんて、絶対になりたくない。

「青木君は、どうしてそんなに阿部君のことが好きなの?」
「先生は、セカンドチャンスをくれるから」

セカンドチャンス。聞き覚えのあるその単語に、ピクリと聞き耳を立てる。

「俺さ、すっげー頭悪いんだよ。数学の問題なんか、絶対に一発で解けない。途中で間違えるキング」

キングか。ヤング・プリンスとか言い直さないでよ。

「阿部先生は、何でこんなのが出来ないのか、とか一度も言ったことがない。ただバツにして突っ返すだけでもない。もう一回やれ、って言うんだ。ヒントいっぱいくれて、考え直す時間に付き合ってくれる」

さすが阿部君じゃないか。教育してるんだな、こいつを。

「英語なんかもっとひどくて。先生に、ドル(dollar)って何? って聞いたら、そんなの教科書にあったか? って話になって、良く見たらそれ、ドア(door)だった」

一体俺に、どうリアクションして欲しいのだろうか。顔が引きつる。

「あ、策君も笑ってくれる? 先生もそうだったんだよ。ばっかじゃね、って見捨てられるところさ。策君も、やっぱり先生とマインド一緒なんだね」

笑っちゃいねえよ。が、のどから出そうになる。けれども俺は大人。こいつはクソガキ。ぐっとこらえる。

「オープン・ザ・ドル、って、金庫破りみたいでかっこ良くね? もう先生とそのネタで笑いっぱなし」

いや、別に。いや、ちょっと待て。オープン・ザ・ドア、って、中一レベルじゃないか? はい。筑波大付属、完全に消えた。って、さっきからこれ何の話? 

「青木君、名まえ何ていうの?」
「要(よう)。必要のよう。必要とされる人間になるように、だって」
「必要とされる人間にか。良い名前じゃないか。要ね」

俺もこいつを名まえで呼んでやる。

「でも俺、家では全然必要とされていないんだ。学校でも。バカだから」

青木が急に黙ったかと思ったら、何かを思い出したように涙をポロポロと流しながら泣き出した。何の泣きなのか、俺には全く分からない。

ま、青春真っ只中で、色々あるのだろう。俺とは関係ない。とりあえず、「ほらほら」とティッシュを箱ごと渡す。

青木が「ブー」っと威勢よく鼻をかんでいる間に、冷蔵庫から果汁100%のオレンジジュースを出してやり、自分にコーヒーを入れた。

「俺んちさ、コンビニやってんだ。駅前で場所良くて、すっごく繁盛してるの。でもその代わり親忙しくてさ。うめー、これ。策君、サンキュー」

出してやったオレンジジュースをドクドクと飲んでから、青木は再び話しを始めた。

「へえ。青木くんは、親御さんの手伝いもするの?」
「うん。時々ね。でも、店よりも勉強しろって追い出される。家で一人で勉強なんかできないから、塾に行って阿部先生に勉強教わるんだけどね。策君、ジュースおかわり、良い?」

「いいよ」ともう一杯出してやると、青木は高校生には見えない子どもっぽい笑顔で「サンキュー、策君」と言う。「ありがとうございます、鍵鳥さん」だろ、と言うのはやめといた。

「策君、俺さあ、夏休みに他のところのコンビニで万引きして捕まったの」
「何で。どうせやるなら自分とこでやれよ」
「策君、阿部先生とおんなじこと言う。ますます気に入った」

急に何の話をするのかと思ったら。いや、お前に気に入ってもらわなくても良い。

「ちょうど塾の近くでさ。そのほうが早いから、連絡するの塾にしてくれって頼んだら、阿部先生が来てくれたんだ。一発殴られて、即、警察行き」
「そりゃ、早い対応だな」
「警察から戻った後、塾で数学の特訓。深夜まで。そっちの方が拷問だった」

阿部君らしい指導に、思わずクスリとする。学校ではなく塾だから、そんなこともできるのだろう。

「その時、阿部先生は、俺のこと『お前は必要なやつだ』って言ってくれた。こんなバカなことで生徒が一人減るとしたら、先生の給料が減るからだって」
「阿部君らしい言い草だよ。要のことが本心で必要だ、っていう意味だよそれ。そうじゃなきゃ、深夜まで数学やってなんかくれない」
「そうなんだよ、策君。やっぱり策君は阿部先生の友だちだから、分かるんだね。俺とも友だちになってよ」

それは俺の本心から遠慮しとく、の視線を青木に細く、そして意味を込めて向ける。けれども、やつには俺の思いなど、どうでも良いのだろう。ご機嫌で話を続ける。

「その時、阿部先生とたくさん話をしたんだ。その話も聞きたい?」
「いや、いいよ。後で阿部君から聞く。要、帰る時間だ」

青木の話を遮り、事務所のガラスドアを見ろ、とあごでしゃくる。ドアの方に振り返った青木が、目を丸くして「あ」の口で固まった。



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成田山のお不動さんが来ちゃいましたよ(次回予告)


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Comment

Name - 大海彩洋  

Title - やっと帰ってきました~

コメントを書きに(*^_^*)
と思ったら、10話がアップされていた~(*^_^*)
Gの謎が解けたあたりで、コメントを書くつもりが、あっという間に火曜日になっていた……いや、あっという間じゃなくて私が滞っていたんですね^^;
でも火曜日、楽しい!
なんだ、この面白い高校生は!
やっていることは無茶苦茶なのに憎めない……策くんって、本当に真面目なのに、あれこれ巻き込まれ型なのかしら。この巻き込まれ方が面白いけれど、まだまだこれがどこに繋がっていくのか、見えないなぁ。
風が吹いたら桶屋が儲かる、って話くらいなが~いチェーンがあって、それが1週間で怒涛のように起こるってことですよね。
まだまだ楽しみに待ちます。

しかし、一応筑波附属、なんだよね、要くん?
2014.07.12 Sat 09:58
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

ひや~、この要くん、なかなか大変そうな子ですね。
阿部くんが手を焼いてる姿が想像できるw
確かにめちゃくちゃだけど、憎めない。
精神年齢がまだ中2くらいなんだろうなと、ちょっと分析してみるw

きっと他の先生には不評で、扱いに戸惑われて、拗ねてたんでしょうね。
そこに登場した親身な阿部先生に惚れた。
分かる気がする。
でも、たいへんだ・・・阿部君^^

さて、策君はこの子とどう関わっていくのかな。
この1週間に、なにか重要な人物となるのか、要くん。

そして要くん、9割、かなめ君って読まれるだろうな…。最初…。
2014.07.12 Sat 12:08
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: やっと帰ってきました~

大海彩洋さ~ん、コメントありがとうございます。
おいそがしいところ~(*^_^*)

大海さん、コメもコメ返もお気軽に^^
仕事しつつの執筆、私もですから^^

Gの謎(?)のところは、自分でもなんじゃと力が抜けました(汗苦笑)
そして火曜日になだれ込んでおります。なんじゃ、続行中(-_-;)
でも大海さんに楽しんでいただけるのなら超嬉しいです(^^;)

> やっていることは無茶苦茶なのに憎めない……策くんって、本当に真面目なのに、あれこれ巻き込まれ型なのかしら。この巻き込まれ方が面白いけれど、まだまだこれがどこに繋がっていくのか、見えないなぁ。

策より周りが無茶苦茶(?) この一週間だけ、策は巻き込まれまくります。
繋がっていくところは・・・そこが描けるように、策より作者が頑張ります。
いえ、策も頑張らなくてはこの一週間を超えられない(-_-;)

> 風が吹いたら桶屋が儲かる、って話くらいなが~いチェーンがあって、それが1週間で怒涛のように起こるってことですよね。

大海さん、上手いこと言いますね。三味線がらみ^^
チェーンが上手くつながると良いな。うまく怒涛に。ふふ。
ま、一週間ですから^^ (それが長くなるような気配もする -_-;)

> しかし、一応筑波附属、なんだよね、要くん?
↑策は疑っていますが・・・次回に(予告)
2014.07.12 Sat 13:40
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

青木要(よう)、ちょっとだけわけありです。どうぞよろしく。
憎めないと言っていただけて嬉しいです。
阿部君にとっては、かわいいかも。
策にとっては・・・ただの中二病男子?

> きっと他の先生には不評で、扱いに戸惑われて、拗ねてたんでしょうね。
> そこに登場した親身な阿部先生に惚れた。
> 分かる気がする。
> でも、たいへんだ・・・阿部君^^

そうなんです。策は今週大変なのですが、阿部君はこいつのお陰で一週間どころではなくずっと大変(笑)
学校の先生より、阿部君のほうが面倒を見てやっているかも。

策とは今日が初対面。でも、電話の件もあり、印象はどうなんですかね。
青木は策のことは気に入った様子。
いや、こいつに気に入られても。ねえ(-_-;)

> そして要くん、9割、かなめ君って読まれるだろうな…。最初…。

はは。そう思って、(かな)入れました。
(ここではルビ使わなかった ^^;)
2014.07.12 Sat 14:15
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

犯罪か。。。
私には無縁ですが。
それでも気にせず付き合うことが大切だと思っています。
まあ、もとからそういうのに気にせず付き合っていますが。
人間関係はいろいろ深いですよね。
2014.07.12 Sat 22:50
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

犯罪です。万引きは万引き。悪いことは悪い。
警察に行って説教してもらいました。

こんなんでも、付き合ってもらえますかね。
LandMさん、お心、広いです。
えっと、深いっす・・・(^^;)
2014.07.13 Sun 12:23
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

要、策以上におもしれぇwww
言ってること全部が策を落としこむ策略だったとしたら、
筑波大附くらい軽くいっちゃうでしょ、
という読みも入れつつ読みましたが、
策が手玉にとられているような気がしないでもない。
さて、ただのポンチキくんなのか、わくわく。

このスピード感、できたらぶっとおしで1週間読んで
丁度いい雰囲気ですね。
ギアをナチュラルに入れて、ぶんぶん吹かして
ご不動の登場待っておりまするよ。
2014.07.16 Wed 10:51
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

いろいろと大変なときに、コメントありがとうございます。

はは。要は考えていないんです。策略なく動くタイプ。
おもしろいヤツに見えたなら嬉しいです。
策にとってはただのポンチキ。
ジュースはやっても、手玉にはとられないようにね。
阿部君にとってはどうかな(^^;)

> このスピード感、できたらぶっとおしで1週間読んで
> 丁度いい雰囲気ですね。

うーん。スピードアップしたいです。城村さんに一気に読んでいただきたい(><)
内容に遅筆でつていけないよう(涙)
はじめは中編くらいでぱっと終わる予定でしたが、まだまだ策には色々と降りかかる模様です。
とりあえず、青木がお不動さんを呼んじゃいました(-_-;)
2014.07.16 Wed 18:08
Edit | Reply |  

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