オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セカンドチャンス 11 火曜日(3) 

バン、という音と共にガラスドアが開かれた。

「青木ぃ~!」

事務所に入ってきたのは、成田山の不動明王。じゃなくて、阿部君。火を吐くような勢いで、青木に怒鳴った。

「何やってんだ、ここで! 学校サボってんじゃねえぞ!」
「先生!」
「策、連絡サンキュ。青木、学校に帰るぞ。五時間目に間に合う」

青木にオレンジジュースを出したときのタイミングで、俺は阿部君にメールを送っていた。

「阿部君、こいつ今日、高校の創立記念日で休みだ、って言ってたけど? 筑波大付属だって」
「筑波? 全然ちげーよ。ったく青木、策にでたらめ言ってんじゃねえ」

阿部の不動明王は、炎を浮かべたその目を吊り上げて青木を睨んだ。

「策、こいつは筑波でもなければ、高校生でもない。中三。これでも一応受験生。高校行く気あんのかお前は」

阿部君は青木の頭を軽くパコンとはたいて、「帰るぞ」と腕を引っ張り上げた。何だ、中坊だったのか。しぶしぶ立ち上がる青木は、阿部君よりも背が高いくせに、言動は幼かったことに納得する。

「策、迷惑かけたな。青木、策にきちんとあやまれ」
「策君、ありがと。またね」

俺に向かって笑顔で手を振る青木の頭を、即阿部君が「コラ」と叩く。俺は無言で「また」はない、の視線を返す。

それを察した阿部君が、青木の背中を押し「じゃ」と足早に事務所から出て行った。俺は、阿部君の背中には「また」の視線を送った。

「・・・ったく」

大きく息を吐く。二人が去ったあとの事務所に、静けさと平和が戻る。時計に目をやると、昼に近い。朝やるはずだった諸々が、ほとんど出来ていなかった。

「やべー」

机上のラップトップをチェックすると、永田町から山のような仕事メールが届いていた。昨日の分と、先週からの継続分を合わせると・・・。考えている暇はない。早速取り掛かった。



ググー。

腹が鳴る。昼抜き晩抜き、コーヒーと冷蔵庫にあったチョコレートの残りで仕事をしたけれども、結局終わらなかった。けれども、いい加減、切りの良いところでやめる。とりあえず、明日に向けてめどが立つところまではやった。

「まーだ、仕事してるのか、鍵鳥」

佐々倉先生が帰ってきた。先生だって、この時間の帰宅は十分に遅い。

「はい、終わらなくて。でも、もう帰ります」
「そうか。上田も向こうに残って、お前用の仕事を作成しているぞ。明日からお前の仕事、もっと増えるらしい。あ、俺のせいじゃないからね」

いえ、先生と上田たぬきとバイタリティー中島が、三つ巴を組んでいるせいです。と言わせていただきたい。かごめかごめでもやったら、俺は常にかごの中の鳥。後ろの正面は先生、お前だろ。とは指差せずに、小声でたずねる。

「先生、明日の予定は?」
「知らないの、鍵鳥?」
「あ、あ、知ってます。これから、いえ、知ってます」
「変更ないから。じゃ、お疲れ」

冷や汗を抑え、「お疲れ様です」と先生を送る。いや、焦った。スケジュール管理は基本のき。上田さんからきっちりと教わったはずなのに。まだまだ一人前になるまでの道のりは長い。給料は現状でも我慢しよう。

タブレットにある先生の予定を確認してから、帰り支度をする。事務所の電気を消し、ドアの鍵を閉めた。

ブルル・・・

『来る?』

阿部君だ。

「行く」

帰路に向かった。



「ハーイ」

俺は目をそらした。今日は久しぶりに、阿部君と差しで飲めると思って来たのに。外じゃなくて、阿部君家でのんびりとリラックスできると思って来たのに。阿部君に聞いてもらいたいことが、たくさんあるのに。

「何でこいつがいるの、阿部君?」
「色々あってな」
「策君、久しぶり」

お前とは今朝、会ったばっかりだろ。まず、君はやめろ。あと、潤んだ瞳で俺を見るのもやめろ。眉間を寄せ、空気の読める阿部君に視線を流す。

「青木。十時半過ぎた。中三受験生は、明日の英気を養うために寝る時間」
「要、ここに泊まっていくの?」
「今日はそうなった。ま、初めてではないんだ」

「へえ」と相槌を打つしかない俺を横目に、阿部君が青木を部屋に追いやろうとする。

「無理、先生。策君見たら、寝ちゃうなんてもったいない」
「寝ろ」

阿部君が、低い声で威圧的に告げる。

「うーん。邪魔ならちょっと外、走ってくる。今日まだ、走ってないから」

青木が尻尾を振ってお願いするワンコのように言うと、「そういえば」と阿部君もため息をつく。

「しょうがないなあ。じゃあ良いけど、時間遅いから、三十分以内には帰って来いよ。明日は遅刻できないからな」

阿部君の言葉に青木は嬉しそうに立ち上がると、上着も羽織らずにバタンと外に飛び出して行った。俺はあっけにとられて青木を見送ったが、もちろん阿部君は慣れている様子。

「阿部君、大変そうだね」
「そうでもないよ。あいつのこと、策に少し教えてやるよ。飲むか」

「うん」と頷き、俺は阿部君の向かいに腰をおろした。



< 前話  TOP  次話 >

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
にほんブログ村   ワンクリックの応援ありがとうございます。 Thanks in advance!

人気ブログランキングへ  Thanks again for the click!




阿部君は、やんちゃ犬の扱いには慣れている(?)


ご訪問、ありがとうございます^^
『セカンドチャンス』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。
Have a nice day!
関連記事
スポンサーサイト

Comment

Name - lime  

Title - No title

これはまた大変な一日でしたね、策くん><
相変わらずパワフルでマイペースで子犬のような要くん。
なんと、中学生でしたか!
うーーーん、この簡単に嘘をついてしまうあたり、なんだか危険な感じも・・・。
ちょっと要くんは裏事情がありそうですね。
この際だからしっかり阿部くんに聞いてしまいましょう。

この1週間の中で、要くんはどんなポジションなのかな・・・。気になります~。
2014.07.17 Thu 02:00
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

少し怒涛っぽくなってきたでしょうか。
要は、そんな目で見つめちゃいや系子犬、だと良いな。
図体と態度はでかい子犬・・・(どんな犬 -_-;)

中三となると、大きいですからね。
ちょい事情ありですが、中坊の事情ですからそれほどでも。
阿部君と、ご本人も戻ってきて途中乱入です(次回予告)

要のポジションですか。limeさん、また難しいお題を・・・(滝汗)
2014.07.17 Thu 18:08
Edit | Reply |  

Name - 八少女 夕  

Title - なんかかわいいなあ

こんばんは。

要かあ。その名前なのに「必要とされている」って実感がこれまでなかったんでしょうかね。阿部君への懐きっぷりが可愛いです。それに策にもすっかりお友だち。距離感がうまくつかめていない所が危なっかしいですが、魅力的なキャラでもありますよね。

さて、策は危なっかしい中学生の何を知ることになるのでしょうか。
続きが楽しみです。
2014.07.18 Fri 01:03
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

策、そりゃないよ、先生に「明日の予定は?」て(苦笑)。
大器なのか、天然なのか(笑)。
どっちが先生だよ、と横にいれば策に突っ込みたかったです。
でも、そういうところが、
先生が策を安心して傍に置いておきたくなる所以でしょうね。

そして、要。わんこかい!(爆笑) 中坊かい!(笑)
それなりに訳ありわんこのようで、今後楽しみです。
今夜は阿部くんとこれからしっぽり……違った、
がっつり飲みで、策、明日遅刻しないようにね!
2014.07.18 Fri 17:03
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: なんかかわいいなあ

八少女 夕さん、コメントありがとうございます。

> 要かあ。その名前なのに「必要とされている」って実感がこれまでなかったんでしょうかね。阿部君への懐きっぷりが可愛いです。それに策にもすっかりお友だち。距離感がうまくつかめていない所が危なっかしいですが、魅力的なキャラでもありますよね。

要のキャラに注目してくださってありがとうございます。
策が真面目で地味な分、周りをちと濃い目に(?)
そのお陰で色々と巻き込まれてしまうわけなのですけれども・・・

要はまだ中学生なので未発達なところが多くて。
阿部君がしっかりとリードして面倒を見ています。
さて、策は危なっかしいワンコ、もとい、中学生の事情を知って、見る目が変わるのか。
夕さんにまたお越しいただけますように^^
2014.07.18 Fri 17:43
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

ぷぷ。突っ込んでやってください。
策には三人も大先生がついているので(佐々倉、上田、中島)、ある意味要より大変かも。
あ、要の場合は、阿部君が大変なのでした(^^;)

その要は、見事に阿部君のわんこです。
いや、阿部君、ここまで手懐けるのに、大変だったのですから(^^;)

そうそう。城村さん、良いポイントついてくれてありがとうございます。
要は今日のことがあって、明日学校に遅刻できない。
策も今夜はまた遅くなりそうですが、明日仕事に遅刻できない(大人ですから。給料かかってますから)
(阿部君は夜のお仕事なので、出勤には余裕)
要と策は立場似ているかも?
2014.07.18 Fri 20:20
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

私も無礼を服着て歩いているような人なので。
あまり言えた話ではないのですが。

職場の上司に「これやってちょうだい。」
って言われて、
「え~~。」
と、言ったことが何度あることか。

2014.07.19 Sat 20:15
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

ぷぷ。無礼というか、何というか・・・
職場で感情を正直に表せるのは、むしろ良いことではないかと思います。
ストレスフリーがいいなあ・・・

私は職場の上司に「マジやれ」って言われて、
「マジ無理」と、言ったことがあります(^^;)
2014.07.19 Sat 21:03
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - ちゅうがくせい~

大人は大人で勝手に変な作戦立ててるし、中防はわけ分からんじゃれ犬で。
そんな中にいると、策くん、思い切り普通の人ですね。あ、普通でいいのか……
いやいや、これだけ色んな人が色んな形で出てきて、絡んできて、まだ火曜日なんだぁ。
先が思いやられるような、でも策くんの大転回があるには短いような期間ですよね。
どう転んでいくのか、実に楽しみです~
……で、朝あったのに、「おひさしぶり」ときましたか。
うふふ。
2014.07.23 Wed 01:00
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: ちゅうがくせい~

大海彩洋さん、お忙しいのと、色々あって大変なところ、コメントありがとうございます。

はい。まーだ、火曜日です。これでもまだ序盤なんです。
策は真面目な普通の人。けど、周りがやっぱりちょい濃い目かな。
案外策は何もしない、いや、できないかもです。
けど、火のないところに煙はたたないですから、火種となる可能性はありです。
水曜日ですら、どうなるのかな~。ふふ。策は普通です。

> ……で、朝あったのに、「おひさしぶり」ときましたか。

青木は策のこと超気に入っちゃったみたいです。
阿部君の友だちですから^^
2014.07.23 Wed 17:15
Edit | Reply |  

Name - rurubu1001  

Title - No title

>阿部君は、やんちゃ犬の扱いには慣れている(?)

なれてますよね、絶対。というか、本当にいい先生なんだなあ、阿部君。策くん、いい友人もちましたね。ちょっと巻き込まれてますが^^

青木くんもいい人たちに会えてよかった。どんなに成績がよくたって、やはりまわりの環境や人間ってとても大きいですよね。少し成績悪くても、そっちを手に入れる方が難しいと思います。

この出会いが彼の成長につながるといいな^^
2014.07.27 Sun 00:10
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - rurubu1001さん

コメントありがとうございます。

はい。策は巻き込まれていますが、犬使いの阿部君がきっちり押さえてくれます。

> 青木くんもいい人たちに会えてよかった。どんなに成績がよくたって、やはりまわりの環境や人間ってとても大きいですよね。少し成績悪くても、そっちを手に入れる方が難しいと思います。

そこなんです。読み取っていただけて嬉しいです^^
青木は阿部君と会えて良かった。
阿部君も青木と会えて良かったはず。
阿部君がきっちりと青木の成長を見守っていくのでしょう。
付き合い、長くなりそう(?)
2014.07.27 Sun 11:59
Edit | Reply |  

Add your comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。