オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セカンドチャンス 15 水曜日(2) 

「策、策。おい、起きろ。策!」

体が揺らされるのを感じ、薄く目を開く。

「黒皮のドライビング・グローブ・・・ロン毛ボサ頭」

きりっとした切れ長の目が、鋭く俺を睨んでいる。

「ミヒロ? お前の目・・・」

そんな色だったんだ。うんと濃くて、渋い紅茶のような色。その深いこげ茶色の目に、俺の視線が吸い込まれる。

「策、一緒に灯台に来てくれ。女の子と猫を助ける」
「女の子? と猫?」
「寝ぼけてないで」

「早く」とせかされて、俺はやっと眠りから覚めた。体に巻きついていた毛布はいつの間にかはがされ、ミヒロが抱えている。体を起こし、ふらふらと立ち上がった俺は、先を行くミヒロの後をぼやっとついていった。

駐車場、とは思えない、道路わきにただ広く幅を取ったスペースに車が止めてある。入り口というか、藪の間に少しだけある空間というか、とにかくそこにミヒロが入っていく。

ミヒロについて、藪や小枝をよけながらけもの道を数分下っていくと、波の音が聞こえると同時に、海に向かう岩場に出た。その岩場の先に、それほど大きくはない白と赤の縞々に色塗られた灯台が見える。

思ったよりも背が高く足も長いミヒロは、その灯台に向かって大またでひょいひょいと岩の間を飛ぶように進む。遅ればせながら俺も岩場に進むと、ザブーンという大きな波の音の合間に、ミーミーとせわしないネコの鳴き声が聞こえてきた。

白と赤の縞々の灯台は、遠くからだとそうでもないように思えたけれども、近づくと結構大きい。裏手に回ったミヒロが、灯台から降りたところで岩と岩の間にしゃがんでいるのに追いつく。

「はい、猫ちゃん。ちょっと見てて」

ひょいと子猫を渡される。胸元に抱えるその子は、バスタオルに包まれブルブルと小刻みに震えている。ザザーと間近に聞こえる波のうねりの音と、何かを訴えるようなミーミーという子猫の鳴き声が全くかみ合っていない。それよりもだ。

「女の子!」

気を失っている。岩の間に横たわる女の子は小学校4、5年生くらいだろうか。やはり海水に濡れていて、素足が岩の間に埋まっているのが見える。良く見ると足は岩につぶされているのではなく、幸いなことに挟まっているだけの様子。

「俺が岩を持ち上げるから、策は女の子を引っ張り出して」

ミヒロに言われて、胸元に抱いていた子猫を、そばの大きめの平らな岩の上に置く。ひときわミーミーと叫ぶけれども、ここは女の子の救助。一、二、三、の掛け声に合わせて素早く女の子を引き上げた。

俺が女の子を支えている間、ミヒロは岩の間に挟まれていた女の子の足をチェックする。多少の擦り傷やあざはあるものの、深刻な状況ではなさそうだ。それを確認すると、ミヒロはさっきまで俺を包んでいた毛布で今度は女の子を包み、抱き上げた。

「策、猫ちゃん、忘れないでね」

おっと。俺は忘れそうになっていた。子猫は、いまだに震えながらミーと鳴いていた。

「策、ビーサンが転がってる。拾っといて」

きっと女の子のだろう。片方が見当たらなくてきょろきょろと探している間に、女の子を抱えたミヒロは灯台から離れていく。

やっとビーサンを両方そろえて、子猫と一緒に車に戻ると、ミヒロは女の子を後部座席に横にして、運転席でコンビニのおにぎりをほおばっていた。

「おにぎり。どれでも好きなの食って」

子猫を抱っこして助手席に腰掛けた俺に、ミヒロがコンビニの袋を差し出した。袋に手を入れて取り出したツナマヨにかぶりつくと、胸元の猫がまた騒ぎ出した。

「俺だって腹減ってるんだ」

呟く俺の横からミヒロが自分のしゃけを猫の口元にやると、こいつは静かになった。このびしょぬれの猫が引っ付いているお陰で俺の胸元は海水でどろどろになっていた。

ふと気づくと、ミヒロも服が全体的に濡れている。俺のことを起こす前から、女の子を助けながら波のしぶきを浴びていたのだろうか。海風に乱された長い髪は、レゲエとまで行かないまでも、とかしてやりたいくらいに絡まっていた。

「ここどこ?」
岬岩みさきいわ。岬岩の灯台」
「聞いたことない」
「穴場の名所。ほとんど人来ないんだけど、良いとこだったでしよ。岩場の先に立つ白と赤の縞々模様の灯台が、絵になるんだよね」

いや、俺は灯台見学どころではなかったのだけれども。

「千葉、南房総」

そうそう。俺が聞きたかったのはそこ。いや待て。千葉の房総半島? どうして? いや、それよりも。

「ミヒロ、この子どうする?」
「家に届けなきゃ」
「病院とか警察とか?」
「この辺は田舎だから病院も警察も遠い。怪我もたいしたことなさそうだし、歩いて来られるところに家ありそうじゃない? この子が起きたら、名まえと住所を聞こう」

とりあえず、ミヒロに同意する。

「コーヒー、飲む?」

ミヒロが差し出す缶コーヒーに口をつけた。暖かくも冷たくもないのだけれど、なぜかその味にほっとひと安心する。

「策は」
「ミヒロは」

二人同時に話し出す。

「あ、ごめん。いつの間にか君付けでなくなってた」
「いいよ別に。策で」
「ちょっと緊急だったから」
「いいって。わかってる」

ミヒロ。良い奴なんだか、変な奴なんだか、わからない。悪い奴なのかどうかも。歳は同じくらいに見える。学生なのか、働いているのか。髪型からはフリーターという印象も受けるけれども。誘拐のバイト、これはジョークだろう。

それなら、どうして今俺は仕事にも行けず、こいつとこんな状況にいるのだろうか。ふとジーンズのポケットを探る。ない。財布も携帯もない。誘拐のバイト、マジか。



にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
にほんブログ村   ワンクリックの応援ありがとうございます。 Thanks in advance!

人気ブログランキングへ  Thanks again for the click!




ご訪問、ありがとうございます^^
『セカンドチャンス』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。
Have a nice day!
関連記事
スポンサーサイト

Comment

Name - lime  

Title - No title

うわあ、ミヒロって、いったい何者。
ますます分からなくなりました(笑)
悪の秘密結社じゃなくて、なんかのヒーローなのか。
その地域のスーパーマンとか。
『危険があったら、この笛を吹いて』的な笛をみんなに配ってて。

・・・発想が貧困だ><
けいさんのお話は本当に予測がつきませんね。
女の子は大丈夫?
策の財布と携帯は?
猫は?

次回を待ちますw
2014.08.24 Sun 08:42
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

ミヒロは・・・
ぷぷ。諸説をあげていただき、嬉しいです。
これでも普通の奴のつもりで描いています(作者談 -_-;)
ええ、普通です。うーん。普通って何? (←聞くかっ><)

> 女の子は大丈夫?
> 策の財布と携帯は?
> 猫は?

↑みんな無事ですよ^^
水曜日のうちにわかります。水曜日、長いんですけど(汗 -_-;)
ミヒロについては引き伸ばします。耐えてね(何を?)
2014.08.24 Sun 09:57
Edit | Reply |  

Name - ポール・ブリッツ  

Title - No title

スキャンダルは怖くないのか議員……こんなところをスクープされたら秘書の策くんが詰め腹切らされるだけでなく政治生命にも(汗)
2014.08.24 Sun 13:42
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - ふむ

このお話は、物事が一直線に起こらないなぁ。まさに怒涛というのか、複数同時進行という感じなのですね。
策くん、あれこれ一気に引き寄せる何かを持っているのかも。
にしても、誘拐?の理由が猫と女の子? いや、これは誘拐の目的じゃなくて、単なる「ついでの出来事」?
しかもどこかその辺の人にヘルプを求めずに、わざわざ策くんを選んだってのはどういうことかしら?
財布? え~っと。

まだ水曜日かぁ。先はまだ長そうだし、まだ前半戦なのでこれからもあれこれ起こりそうな。まだまだ先が読めないので、楽しみに待っています。
それにしてもこの話、みんな結果的にいい人たちばかりなのかもしれないけれど、いささか世間的常識からずれたことをする人が多いような。それを引き寄せる策くん……いつになったら無事に田島くんの元へ??
2014.08.24 Sun 14:32
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ポール・ブリッツさん

コメントありがとうございます。

これがスキャンダル絡みだったら社会派サスペンスにでもなるのかな。
いやいやいや。ないないない。
議員さんの方に策をたてに身代金の請求とかないですから、その点は安心してご覧いただけるかと(汗)
もしあったとして、タヌキがどんな策を打つのか・・・そんなの描けないし(><)
描けたら良いなあ(願望)
2014.08.24 Sun 16:27
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: ふむ

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

はい。このお話は大海さんの気になる起承転結の展開にはならないかもなのです(汗)
策は日々を過ごすので精一杯(><)
作者も日々を描くので精一杯。あちゃー(><)

策、引き寄せ体質なのかなあ。どうなんですかね。
これでも一応、策の日常ってふれ込みで始まったはずなのですが、ずれてますよね(^^;)
日常がなんなんだか・・・

女の子の件は、ミヒロも想定外。
もともとは、灯台で昼ごはん、の予定だったのですが。

> しかもどこかその辺の人にヘルプを求めずに、わざわざ策くんを選んだってのはどういうことかしら?

えっと、平日の田舎町の穴場スポットで、人いなかったんですね(-_-;)

まだまだ水曜日なんです。申し訳ない(><)
あれこれも起こります。怒涛ですから。アクションとかではないのですが(^^;)

> それにしてもこの話、みんな結果的にいい人たちばかりなのかもしれないけれど、いささか世間的常識からずれたことをする人が多いような。それを引き寄せる策くん……いつになったら無事に田島くんの元へ??

大海さん、鋭いです。私が描くお話なので、悪ではないのですが、ちょっとね。
田島の元に行くのは日曜日です。ずーっと先だあー(><)
2014.08.24 Sun 16:53
Edit | Reply |  

Name - 八少女 夕  

Title - あ、ら。

誘拐のバイト中に、記憶のない女の子拾っちゃったら、二重誘拐になっちゃうのでは……。

策は被害者だったのが、なんか巻き込まれましたね。
お仕事くらい、休んでもどうってことないけれど、一日の遠出では済まなそうな予感。

先がどうなるのか、楽しみにしています。
2014.08.26 Tue 02:35
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: あ、ら。

八少女 夕さん、コメントありがとうございます。

猫ちゃんも拾っちゃったんで、三重? 
いや猫は・・・(^^;)

策は普通の真面目な社会人なんです。(何度も言ってすみません)
巻き込まれるのは明らかに周りのせい。てか、作者のせい(^^;)

はい。今回はお泊り行きます^^
どこに泊まらせてあげようかなあ(←まだ決めてないのか><)
夕さんがまたお越しくださいますように。
2014.08.26 Tue 18:30
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

誘拐じゃ~。
スキャンダルじゃ~~!!

・・・ってそういう作品ではないですね。
こっからどう行くかですね。。。
後が楽しみですね。
2014.08.26 Tue 21:07
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

サスペンス~。って、お話じゃないんですよ。
作者、ジャンル現代物で、普通のお話を描いているつもりなんですが・・・これでも。
やっぱ何か違うかなあ・・・(-_-;)

これからは(も)普通にドライブに行く予定です^^
普通はなんだ・・・
2014.08.27 Wed 18:56
Edit | Reply |  

Add your comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。