オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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秘密の花園 5 火曜日・カフェ(2) 

 ランチが一段落すると、俺は大学へ戻った。一コマだけ選択のビジネス科目が入っていて、それに出なくてはならない。

 田島はこれを選択していなかったから、顔を合わせることは無いけれど、夕方また来るのか、と思うと少し気が重かった。来ても、陽気にしゃべって帰る、だけだったら良いのだが。

 ―――奈美さんのことを、根掘り葉掘り聞かれるのは面倒くさい。

 確かに奈美さんは、とても綺麗でかわいらしい人だ。オーストラリアで出会わなければ、俺とは縁の無い人だっただろう。

 大学は都立女子で女子大だし、高校は学習院なんだぞ。三条っていう苗字は、歴史上由緒ある名前じゃないのか。

 世が世ならとんでもないお姫様か、いや、今だって、どこかのお嬢様なのかもしれない。昨日の服装だって、服から靴からカバンまですべて、俺の知らない高そうなブランド物だったぞ。

 田島はそのこと分かっているのか。俺だって、旅行の途中で出会って別れて、それで終わりと思っていたのに。

 そんなことを考えていたら、講義が全く頭に入らなかった。終わってから早々にカフェに戻り、マスターとディナーの準備を始めた。

「花園君。さっきアレ届いたよ」
「本当ですか。ラッキー」

 アレとはラム肉のことだ。俺はここのバイトの賄いで昼御飯と晩御飯をもらっていて、マスターはラム肉が好きな俺のために時々それを発注してくれる。

 ラムが入るときは、それがメニューの『本日のおすすめディナー』になる。今日の賄いはそのおすそ分けだ。

「そうそう、花園君。今日の夜、何とかっていう取材が来て店を撮るらしいんだけど」
「『何とか』って、何ですか? 雑誌か何かですか? すごいじゃないですか」
「いつも夜に来る三宅さん、分かる?」

 その人なら毎週のように来るから覚えている。いつも遅い時間に来てカウンターに座る。気さくに話のできる、感じの良い常連客の一人だ。

「彼、カメラマンをやっているらしいんだけど、花園君のことを撮りたいんだって」
「え、俺ですか? 何で?」
「さあね。ビジュアル的におやじのマスターを撮るより、若いバーテンの方が良いからじゃないかな」
「まあ、写真ぐらいは良いですけど、店の話はマスターしてくださいよ」

 雑誌の『お勧めの店』的な取材はよくある話だ。以前、店は横浜のローカルタウン紙の取材を受けた事があったので、少しは要領も分かっている。そのときは当然、マスターの写真が載った。

「それにしてもマスター、それ、もっと早く教えてくださいよ」

 俺は店を少しでも綺麗に撮ってもらうために、ディナーに来ている客に気遣いながら店の掃除を始めた。

 忙しく拭き掃除をしているところで、田島がゼミの仲間を連れて店にやってきた。

「花園ぉ。こいつらも話聞きたいって」
「悪い。今日すっごく忙しいから、お前らの相手は出来ない」

 ―――何だよ田島。みんな連れてきやがって。良かった、今日忙しくて。

「とりあえず、その辺の空いてるテーブルに座って、マスターに何でも注文してくれ」

 そう言って、俺は掃除に戻った。

「マスター、花園、どうしたんですか?」
「いや、今日これから店にカメラマンが来て、花園君、取材を受けるんだよ」
「へえ、俺ら、おもしろい時に来たかも」

 ディナーの時間が過ぎ、店をパブモードに変える頃までには、何とか拭き掃除も片付けも終える事が出来た。

 時間が十時を過ぎる。けれども、取材は来ない。マスターと首をかしげているところで、店の外がガヤガヤと騒々しくなるのに気づいた。

 マスターが外の様子を見に出ようとするのと同時に、カラカラとドアベルが鳴り店のドアが開き、スーツ姿のサラリーマン風の男性が颯爽と入ってきた。

 ―――えっ!? 人気若手イケメン俳優のリョウ?

 その有名人だとすぐにわかった。男の俺から見ても背が高くて、テレビや映画で見るよりナマはずっとカッコ良い。

 ―――でも、何で? 

 リョウはすたすたと店に入り、カウンター越しに俺の目の前に来て、なぜか俺を上から目線で睨みつけてきた。

 ―――怒ってるのかこの人。てか、何?

 その眼力に圧倒され、俺は捕らわれの小動物のように固まった。

「花園徹さん、ですね」
「え? あ、はい??」



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   イケメン俳優が、徹さんと・・・?

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徹さん、捕らわれの小動物化?


『秘密の花園』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - ヒロハル  

Title - No title

けい さん、ご無沙汰しております。
ヒロハルです。

本日退院いたしました! 
ご心配をお掛けいたしました。
お見舞いコメントどうもありがとうございました。

これからまた作品を読みに寄らせて貰います。
改めてまたよろしくお願いしますね。
2011.11.02 Wed 22:04
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ヒロハルさん

わ~っ、ヒロハルさん!

退院おめでとうございます!
とりあえずは自宅療養ですか?
ご無理をなさらず、養生されてくださいね。

体調のよろしい時に、いつでもいらしてください。
順調に快復されますよう、お祈りしていますね。
お大事に。。。
2011.11.03 Thu 15:18
Edit | Reply |  

Name - -  

Title - 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013.11.03 Sun 18:08
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 鍵コメさん

コメントありがとうございます。

いきなり有名人がカフェに登場です。なんで? 
この俳優、なぜか徹さんのことを知っているのです。なんで?
展開をお楽しみいただけますように^^

おお、篠原ともえさん。近くで見たらかわいい?
私はコンサートに行ったり、空港で見かけたり、というのはありますが、会う、というのはないですねぇ。
できれば、お話とか、させていただきたいなぁ。なんちて。

短編も良いですね。
「怒涛の一週間」と「秘密の花園」は、はじめは中編くらいかな、って思っていましたが、短編ですね。
さらりと読んでいただけると良いなあと思います^^
2013.11.03 Sun 19:53
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

ビジネス学科。。。
私には縁がないものですが。
元手からどれだけ稼ぐかの戦略を練るのもやはりこの世界で生きていくうえで必要ですからね。
・・・私は面倒なのでしないですが。
(・´з`・)

海外の授業でもあるらしいですね。
5ドルの元手で1日でどれだけ稼ぐか。
そういう授業もあるから面白いですよね。
2015.09.26 Sat 09:14
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

徹さんは経営学部なので、いわゆるビジネスの科目も取っているんです。
とりあえずの就職先は→「怒涛の一週間」の職となりましたけれど、将来どうなったでしょうね(^^;)
マスターは、起業でもすれば? とか訊いたらしい・・・?

海外の大学の授業は結構実務的ですよ。
バーチャルけどリアル、らしい・・・?
2015.09.26 Sat 12:49
Edit | Reply |  

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