オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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セカンドチャンス 16 水曜日(3) 

ミヒロの運転で、車はくねくねの坂道を登って行く。いつの間にか雲の色が濃くなり、ぽつぽつと雨が降り出した。

「天気がこうなる前に、女の子を見つけて良かった」

ミヒロが言うのに「うん」と頷く。

道の両脇には木立が並び、雨の降る中でも始まったばかりの紅葉を見せている。ミヒロはいつの間にか黒皮製のドライビング・グローブを外していた。海水で濡れてしまったのだろう。

「その猫、かなりかわいいね」

運転しながらミヒロが目を細める。女の子と一緒に拾ってきた子猫は、俺のひざの上でいつの間にか眠っていた。海水に濡れていた毛は、俺が抱っこしている間に乾き、白と黒のまだら模様がバスタオルのお包みから垣間見える。

女の子を救助していたときは、猫の毛並みなど気にするどころではなかった。そういえば、この子は目も金色のような綺麗な黄色なのだ。かなりの美人かもしれない。

「はい到着。『岬岩みさきいわの温泉宿・いこい』」

太平洋を望む小高い丘の上に、その純和風な宿はあった。

「ちょっと車で待ってて。チェックインできるか、伯母さんと話してくるから」
「おばさん?」

入り口の手前でミヒロは車を止め、俺の疑問には答えずにバタンと出て行くと、そのドアの音に反応して「ん・・・」と女の子が目を覚ました。

「寒くない? 大丈夫?」

助手席から首を伸ばして後ろに振り返る。目を開いた女の子と視線が合うと、その子は俺を見て固まった。眉間を寄せ、「誰だお前」という警戒の目を向けてくる。

「俺は策。名まえは?」

反応がない。ま、そうだろう。この子にとって、俺は知らない兄ちゃん。知らない人について行ってはいけないのだ。いや、ついて来たのではなく、連れてこられたのか、この場合は。無理やりではないはずなのだけれど。

「やべ」

ロン毛レゲエ似頭のミヒロを見たらこの子、怖くて泣くかもしれない。いや、その前に、今もうすでに泣きそうだ。どうしよう。

ひざの上の猫が、モソモソと動き出して思い出した。

「ほら、ネコちゃんもここにいるから」

猫を抱え上げて見せると、女の子の顔がぱっと明るくなった。包まれていた元俺の毛布から、猫に手を差し出す。猫もまたミイミイとうるさくなったので、タオルごと女の子に渡してやった。

「どうして灯台にいたの? 今日、学校は? 何年生のクラス?」

全く答えない。聞き過ぎかな、とこっちが遠慮してしまう。「なんでお前、ここにいるんだよ。今日仕事は?」 とでも聞かれたら、答えられない立場でもある。いや、女の子の視線はすでに俺にはなく、猫だけに注がれていた。

「チェック・イン、完了」

ガチャリとドアを開けて、ミヒロが車に戻ってきた。

「あ、目覚ましたんだ」

そしてミヒロは、これでもかというほどに優しい顔で、「大丈夫?」と女の子に微笑みかけた。ミヒロのその笑顔に、女の子は安心したような表情を返す。なんかちょっと、俺のときと反応違うんじゃね? なんてことは、ふん、思わないさ。

「荷物後ろにあるから、策、持ってきて」

車を宿の敷地内の駐車場に移動してから、ミヒロはトランクを開けた。それからさっと車から降り、後ろのドアを開けると、「行くよ」と女の子と猫を一緒に軽々と抱き上げた。

先ほどからぽつぽつと降っている雨を避けるように、ミヒロはさっさと宿に向かって歩いて行く。髪型・背格好から、どこかのか弱いお姫様を守る、通りすがりのニヒルな浪人侍のようだ。

後ろのトランクを上げると、中にはバックパックが一つと、中くらいの手提げバッグが一つ。バックパックを背に、バッグを手にして、少し遅れて俺も先を行くミヒロを追った。姫のお供として? 浪人の相棒として? いや、そのどちらでもない。

「ネコはだめ」
「いいじゃん、一晩くらい」

ミヒロがいきなり宿の入り口で足止めを食らっていた。話している相手は、先ほどミヒロがちらりと言った伯母さんという人物なのだろうか。きちんとした和装の身なりから、この宿の女将のようにも見える。

「思い出した。この子、岬岩みさきいわじゃなくて丘元おかもとの子だよ。なんか見覚えがあるって思ったんだよね。綾ちゃんって言ったかな」
「さすが田舎。綾ちゃんかあ。伯母さんだったら顔広いから知ってるかなって思ったんだ。家、わかる?」
「家まではわからないけど、丘元の小学校に連絡してみるよ。早く部屋に行って、休ませてあげな」
「ありがと、伯母さん。あ、こいつは友だちの策」

そばに立って会話を聞いていたら、不意にミヒロから紹介されて、あわてて「どうも」と会釈をした。友だち、なのかな、俺たち。という疑問は、今は消しておこう。

間もなくどこからかダンボール箱が持ってこられ、金色の目をしたまだら猫は女の子の手から簡単に離されると、箱の中に収められた。

「帰るときに返してあげるからね」

ミヒロの伯母さんが声をかけると、女の子は返事をする代わりに一つ大きく瞬きをした。

「じゃ、丘元と連絡がついたら知らせるから」
「うん。ありがと」
「ねえ、ミヒロ?」

それでは部屋に行こうという前に、伯母さんは少しだけ眉間を寄せ、ミヒロを見上げると、静かにたずねた。

「お父さんたちは、ミヒロがここに来るって、知ってるの?」
「心配しないで」

ミヒロは優しい笑顔を見せ、伯母さんの言葉をさらりと交わす。

「さあ、綾ちゃん。部屋に行こう」

まだもの言いた気な伯母さんの視線に背を向けて、ミヒロは女の子を抱いたまま歩き始めた。先を行くミヒロの後を、荷物を持った俺は黙ってついて行く。

ミヒロの伯母さんが心配していたのは、女の子のことよりもむしろ、ミヒロのことの方ではないか。ミヒロの背を追いながら、だんだんとそんな気がしてきた。



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お話の続きを楽しんでいただけたなら幸いです。

策、誘拐(のバイト?)のまま2ヶ月、ミヒロとともに放置。一応、無事だった模様。

さて、策とミヒロの珍道中(?)再開です。

この二人、友だちだったのか・・・えっと、まだ水曜日(^^;)


ご訪問、ありがとうございます^^
『セカンドチャンス』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。
Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - お!

続きだ^^ 誘拐されて、その途中で子供拾って、そのままでしたもんね。
ミヒロっていったい何者??・・・の続きですね。

おお、温泉宿・憩。いったい日本にどんだけチェーンがあるのだ。
リクたちも行ったよね、きっと。草津の老舗旅館・憩。(玉ちゃんとリク、温泉^^)
いや、それはいいとして。

伯母さんの旅館? ミヒロ、ここへきてとっても素直そうないい笑顔。
悪のレゲエにいちゃんじゃないじゃん。
うーーん、ますます正体がわからない。
良い子だってことだけは、分かる。
綾ちゃんと猫は、ぐうぜん出会っただけなのか、それともなにかつながりがあるのか・・・。

まだまだ水曜日。このあとけいさんペースで、じわじわ・・・ですね。
楽しみにしてます!
(私のほうはすっかり金曜日の夜ですよ><)

2014.10.27 Mon 18:49
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Name - けい  

Title - Re: お!

limeさん、コメントありがとうございます。

やっと、続きです^^ 
誘拐(のバイト?)されて、その途中で子供拾って、純和風・温泉宿です。

おお。リクと玉ちゃんの草津温泉旅行、二泊三日の旅ログ、リクと玉ちゃんの語りで聞きたいなあ。
旅のお宿・憩は今のところ、草津(limeさんのRIKU番外「冬の犬」より)と、南房総(ここ)と、箱根(日本旅行旅ログより)がお目見え。あとはどちらに^^

お宿は、伯母さんと伯父さんとで経営です。
あとでミヒロが家系図的説明をしてくれます。の予定。

> 悪のレゲエにいちゃんじゃないじゃん。

ぷぷ。ナイスlimeさん。
ミヒロは髪をとかしたら普通の兄ちゃんになるはず。

そのうち策に事情を話してくれますので、もう少しお待ちを~
綾ちゃんと猫ちゃんは・・・こちらも拾わねば(違う意味で・汗)

はい。まだ週の半ば。お話も半ば。金曜日(の夜)はまだ遥かです~(-_-;) 
ミヒロのかっぽのようにすいすい・・・とは行かないのですが、(作者を)見守っていただけると嬉しいです(^^;)
2014.10.27 Mon 20:35
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - う~む

まだ謎は謎のまま放置?されていましたね。
でも、ちょっとブランクがあったので、こうして状況を思いださせてくれる回は必要ですね!
それにしてもミヒロ、実はいいとこのぼん、なのか?と思わせるものがありますね。まだまだ謎が小出しにされているので、わくわくしながら続きを待ちまする。
策くんのセカンドチャンスはいつ来るのか??でも1週間以内なんだよね? 女の子とねこちゃんは清涼剤、でしょうか。にしても、策くん、早く練習した方が……(と、急に現実に還る^^;)
2014.11.01 Sat 09:23
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Name - けい  

Title - Re: う~む

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

厳密に言うとまだ前半戦なので(まだかい><)、謎というか、まだ落し物中なのです。
ミヒロについて明記するのは最後のほうまで引っ張りますが、途中でなんとなくわかってくるように描く予定です。(←意外にもうすぐかも。予告)

策のセカンドチャンスは日曜日です。
でもこんなんじゃ、ギターの練習ができません。
策のギタースキルは練習の上に成り立っているのに。
(ところで、日曜日、つまりは来年・・・汗がっ、汗がぁ ><)

女の子とねこちゃんは清涼剤。大海さん、またうまいこと言いますね。
小さなきっかけ、とだけ。
またお越しください^^
2014.11.01 Sat 11:37
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

おお~~久々の策だあ(*´▽`*)。
お帰りなさいとあえてコメントします。
この日をお待ちしておりました~~。


2014.11.02 Sun 16:11
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

ただいまです^^
二ヶ月ぶりです。
待っていただけたなんて嬉しいです~~^^
2014.11.02 Sun 17:09
Edit | Reply |  

Name - 八少女 夕  

Title - お帰りなさい

ネコは綾ちゃんのものに、そして策はミヒロのお友だちに昇格。ブランクはあってもちゃんと進みましたね。少なくとも策が綾ちゃん誘拐の共犯にはされずに済みそうですし。

そして、温泉旅館「憩」いいですね。私も行ってみたいです。伯母さん心配され可愛がられているということは、ミヒロは実はとてもいいやつかも。っていうか、策ももう逃げようともしていないし。

このほのぼののまま一週間経っちゃうのかな。あ〜、やっぱり戻った方がいいですよね。ほら、オーディションの続きがありましたし。
2014.11.02 Sun 19:12
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: お帰りなさい

八少女 夕さん、ただいまです。コメントありがとうございます。

ネコと綾ちゃんは、無事ミヒロと策に救助されました。一応、二人で協力した(?)
ぷぷ。お友だちに昇格、ですか。良かった。誘拐されっぱなしじゃお荷物ですからね。(←カネ持ってないし)
助けたのに誘拐犯とかにされたらしょんぼりですよね。

私も純和風・温泉旅館「憩」、行ってみたいですねえ。
ミヒロ、連れて行ってくれないかな。いつかね。よろしく。
ミヒロがどんなやつなのかは、ちょい引っ張りますが(汗)、だんだんとわかってきます。(だといいなあ。あれ -_-;)
策はカネがないから逃げようとしても逃げられないかも。

土曜日までには戻らないと。日曜日、策にとっては大事な日ですから。
けどその前に、水の残りと木金、このまま行ったら土も危ういかも(><)
大丈夫か、作者(←ってポイントここっす -_-;)
2014.11.02 Sun 20:23
Edit | Reply |  

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