オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

旅人たちの一コマ (scriviamo! 2015) 

 ブログで親しくさせていただいています「scribo ergo sum」八少女 夕さんの企画「scriviamo! 2015」に参加しました。

 「scriviamo!」というのはイタリア語で「一緒に書きましょう」という意味だそうで、私は今年初参加です。

 企画期間中、夕さんのブログ上で参加者の書かれる作品または記事と夕さんとの楽しい交流が見られます。

 詳しくはこちらへ → scriviamo.png 「scriviamo! 2015」

 それから!
 
 夕さんはつい先日、なんと、ブログアクセス55555Hitのゾロ目を達成されました。おめでとうございます。
 
 そこでついでにと言っては何ですが、5ゾロのお祝いも兼ねまして、このお話を勝手に贈らせていただきたいなと。夕さん、‘兼’で申し訳ないっす・・・(-_-;)

 さて。

 「scriviamo! 2015」は初参加なので、私が夕さんのところで初めて拝読させていただいたあの完結作品をお借りし、とある一コマを綴らせていただきました。

 その作品をお読みでなくても、お話は分かると思います。よろしくお願いします。

 それでは、↓「scriviamo! 2015」参加 兼 55555Hitお祝い ↓


 *** ***

 旅人たちの一コマ

 *** ***


 今年の秋も穏やかに始まる。日差しが弱まっても、昼はまだそこそこ暖かい。

 偶然にもその時に逢ってしまったのは、町はずれにある小さな鉄道の駅。そのシーンはこっそりと目撃され、秘密の宝物を収めるように保存された。二人はもちろん、そんなことには気づいていない。

 フランス南東の山間部にある、この小さな町の主な産業は、オリーブやハーブなどの樹木栽培。オリーブ園でなくても、町のそこここにオリーブの木が見かけられる。

 町の公園や教会、商店街や住宅街でも当たり前のように目にすることができる。もちろんこの駅にも。

 オリーブという木は、植えてから六年で実をつけるようになり、二十年で完全な成木になった後は、何世紀にもわたってその葉を茂らせる長命な植物である。

 オリーブの実の採集は、十一月から一月にかけて手作業で行なわれる。粒の大きな実は食用に、粒の小さなものはオリーブオイル用にと選別される。

 オリーブの木は、美しい木目、堅くどっしりとした質感、つや感のある滑らかな手触りを生かして、木工品に加工される。

 飾り柱、テーブルや椅子などの家具、サラダボウルやチーズ用カットボードなどの長く愛用できるキッチン用品にもオリーブ材が好まれる。

 町のはずれにあるこの駅も、石造りの駅舎のなかの調度品はすべてオリーブ材でまかなわれている。

 駅の重厚なエントランスドア、切符を買うための窓口のカウンター、待合室にある椅子などはちょっとしたアンティークのようだ。

 その待合室に、三人はいた。アジア人二人と、ヨーロッパ人一人。アジア人の一人は髪の短い男で、見たことのない楽器を持っている。もう一人のアジア人は黒のストレートヘアの美しい女で、やはりそれほど大きくない楽器のケースを持っている。

 連れのヨーロッパ人はめがねをかけていて、なにやら秘密の道具でも入っていそうなケースを足元に置いていた。三人は、とても親しげな割に会話は少ない。

 やがて時間となり、ゆっくりとホームに入ってきた電車のドアが開くと、三人は少しばかりお互いの視線を合わせただけで、やはり会話なく乗り込む。

 ホームに客は少なかった。その少ない客が乗り込んでから、電車が出発するまでのほんの刹那。一度は電車に乗り込んだはずのアジア人の女が、黒髪をしなやかになびかせ、素早く電車から降りてきた。

 無常にも電車は時間を守り、ドアが閉まる。けれども、ドアの閉められた電車のことなど、女にとってはもうどうでも良いことのようだった。

 ホームに一人、電車に乗り遅れたわけではなさそうな男がいる。電車の動き出す音を背に、女は足早にホームに立ち尽くすその男へと向かっていった。

 ゆっくりとホームを発つ電車の窓から、女の仲間の一人が身を乗り出して何かを叫んだが、異国の言葉でわからない。けれども、その表情が何かほっとしているようにも見えた。

 電車から降りた女は、一人ホームに残るその長身で金髪碧眼の男に近づくなり、眉間を寄せ、鬼のようにひとつ強烈な文句を言ったようだ。

 けれども、男は何一つ表情を変えずに、女の美しい顔を見つめている。電車が完全に過ぎ去ると、男は風に踊る女の髪をすり抜けるように、片手でその頬に触れた。そして、女だけに聞こえる、けれどもしっかりとした声で何か答えた。

 その言葉に、女の表情が柔らかくなる。男は自然と優しく女を抱き寄せた。腕の中にあるその存在を確かめるように、自分の胸にしっかりとその女を美しい黒髪ごと包み込む。女が目に涙していたからかもしれない。

 程なく、二人はぴったりと寄り添ったまま駅の外に出て行った。その先の野暮な想像はするまい。

 駅にあるその古いオリーブの木は、町にあるものと比べて、大きさも太さも格段に異なる。樹齢がどれほどのものなのか、誰も知らない。

 この町の駅が建つよりもずっと以前からその場所に立ち、今このときも、風景と共に樹木を纏う四季の政(まつりごと)の歴史を重ねていく。

 その樹は、いつものこの季節と何ら変わりなく枝を大きく伸びやかに広げ、葉の色を灰色がかった深い緑や乾いた黄色へと変えていで立つ。

 この時期、時折り強く吹く秋の季節風が、黄色の葉をさらって行き、電車も人も去った駅のホームに乾いた音を響かせていた。


 おわり



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見ちった (^^;)

参照:八少女 夕さん「大道芸人たち Artistas callejeros」

まだお読みでない方は、一話から最後まで、飛び越さないでちゃんと読んでくださいね~^^





追記:

さっそく八少女 夕さんが、このお話を元に「大道芸人たち Artistas callejeros」の番外編を書いてくださいました。
アツアツの二人を覗き見したのがうちの者だったなんて・・・
風がテーマの国際色豊かなお話です。

【小説】大道芸人たち Artistas callejeros 番外編 〜 風の音

舞台となった場所の動画も素敵です。
何とフランス語(ですよね?)と英語のバイリンガル~
夕さん、ありがとうございました^^


ご訪問、ありがとうございます^^
ブログ『憩』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。
Have a nice day!
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Comment

Name - 八少女 夕  

Title - わああ

ありがとうございます。

ご参加いただけたのも嬉しいけれど、お祝いまでいただいてしまって、それも嬉しい! 感謝です。

おや〜、目撃されちゃいましたね(笑)
まさか、あんなロマンもへったくれもない告白のセリフとは想像もしないだろうなあ。
あのシーン、実はかなりのお氣にいり。
こんなに綺麗に、けいさんらしく優しく再現していただけて嬉しいです。

オリーブ、南仏には欠かせない存在ですよね。
食べるのも美味しいけれど、木材としても素敵です。

お返し、数日考えさせてくださいね。

どうもありがとうございました!
2015.02.18 Wed 04:41
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: わああ

八少女 夕さん、コメントありがとうございます。

ご案内が出されてから、1ヶ月半以上もどしよと考えていました。
なんという遅さ。しかも短い(-_-;)
いあ、これでも早いのです。
夕さんから振られた半にゃライダーのときはもっと。
数ヶ月かかりましたから(-"-)

> あのシーン、実はかなりのお氣にいり。

そうですよね。とわかっていながら手を出してしまったことにお許しを~
私もお気に入りなのです~(^^;)

ちなみに、南仏になんか行ったことないですからね~
夕さんのオリジナルのシーンから妄想妄想(汗)

参加することに意義ありで、なかなかなチャレンジでしたあ。
とりあえず自分で参加賞を与えてニアニマしております^^
2015.02.18 Wed 16:46
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - おお~

けいさんが、「scriviamo!」に参加されてる。
うれしいなあ^^
これは彼らで、彼女は、彼女ですね^^
ああでも、実はここのシーンまではまだ読んでいなくて。
想像するしかないんだけど。
綺麗なシーンですね。
けいさんが思わず書きたくなるいいシーンなんでしょうね。
是非ともラストまで読まなきゃ。
ここ、けいさんは全くの神視点の3人称で書かれてるんですね。
そういえば、誰の目線でもない神視点って、ほとんど書いたことないんです。なんか新鮮でもありますよね。
けいさんのこういうSSもそうだし、とても新鮮な感じで読ませていただきました^^
2015.02.19 Thu 07:09
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: おお~

limeさん、コメントありがとうございます。

もう、「scriviamo!」に’参加’だけで息切れしてます。
あ、と思ってからアップまで、こんなに時間がかかりましたあ(苦笑)
来年の目標は時短だな。なんちて。
↑もう参加する気でいる。つーか、今から来年の準備(?)

はい。これは彼らで、彼女は、limeさんも描かれた彼女です^^
夕さんの本編では、このシーンはセリフがポイントなので、是非そこを。
電車に残された二人も良い味出しています。

ん? ちょとまてちょとまてlimeさん? 神視点の3人称てなんですのん?
・・・ググりました。へえ・・・(難しいっす -_-;)

「セカンドチャンス」で一人称について大分わかってきたかな、というところなのですが・・・(汗)
次の連載ではまた三人称にチャレンジしようと思っているので、そこで三人称についてもっと勉強します。

視点のブレが「夢叶」を描いていたときの後半、かなり乱れていたのが描きながら気になっていました。直せなかったのですけれど(泣)。「夢叶」は頑張って書き上げ、皆様にも愛されている大切なお話なのですが、その辺が修正の対象かな、と思っています。より皆様に納得していただけるよう、改稿したいなあと思っています。問題はいつするのそれ、なんだけど(滝汗 -_-;)

limeさんからいろいろとお言葉をいただき、とても嬉しいです。
新鮮さって、すごく大事だと思います。
limeさんのお話からも、そうくるのか、といつも新鮮な感動をいただいています。
これからも新鮮さを失わずに一話一話を綴っていきたいですね。
お読みいただき、ありがとうございました^^
2015.02.19 Thu 16:22
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

夕さんの企画はちょくちょく読ませていただいております。
けいさんらしさが出ていると思います。
旅人であるところや人が少なかったり。
それでいて夕さんの小説らしいところもあって、よくコラボされていると思います。
良かったですよ。
(*^-^*)
2015.02.21 Sat 09:59
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

夕さんの企画は楽しそうですよね。
去年のときは無理~と引っ込んでいました。
今年は魔が差して、やってしまった、感もあるような(-_-;)
でもやってみて自分としては良かったです^^

わ。何か素敵に言っていただいてありがとうございます。
らしさ、というのが自分ではいまひとつ分からないのですが、LandMさんに何か伝わるようなところでもあったならとても嬉しいです。

> 良かったですよ。

最高の褒め言葉です。感謝(*^-^*)
2015.02.21 Sat 11:13
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - こんにちは

これは何だか面白いscriviamo !のあり方でしたね。
こういう第三者の目から見たシーンって、本当は作者が書きたくなるものなんですよね。それを別の書き手さんが書いてくれた。これって、作者にとってはすごく嬉しいことかも。
一人称、もしくは三人称の形をとった一人称もどき、を書いていると、時々このシーン他者から見たらどうなるんだろってことに妙に興味を感じる時があります。あまりにも面白そうだったので、やっちゃったことがありますが(『雨』の中で…・・)、物語的には余計なことでした。でも他の人が書いてくれるのなら、別の視点が生かされてとてもいいなぁと思うのでした。
三人称と言っても、純粋な三人称では通常お話が進まないので(少なくとも私は)、基本的は三人称のふりをした一人称で書きますが、純粋な三人称には読者の想像の余地が生かされるものなんですね。
面白く拝読いたしました。
2015.02.22 Sun 12:55
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こんにちは

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

お。大海さんから面白いとは。嬉しいです^^
夕さんのために描いたので、夕さんに喜んでもらえるならとても嬉しいですし、大海さんをはじめ、皆様にも何か伝わることがあるならそれも本当に嬉しいです。

そうですね。シーン、どうだろうと思うことはしばしばです。
皆様と自分の見るところが同じなのと違うのと、興味深いです。
え、「雨」でですか。どこだろう。始章のような気もしますが(?)
どこだろう。まだ読んでいないところかな。あとでこっそり教えてください。

ここ、思わず人称話になっていますが、興味深いです。
「セカンドチャンス」で実は一人称を意図的に頑張っています。
三人称については「夢叶」が初チャレンジで、全く知らないところから始めたので、全編を通して私の知らないところで乱れまくっているでしょう(><)

> 三人称と言っても、純粋な三人称では通常お話が進まないので(少なくとも私は)、基本的は三人称のふりをした一人称で書きますが、純粋な三人称には読者の想像の余地が生かされるものなんですね。

なるほど。視点、というもののことですかね。
視点については「夢叶」を描いている途中で気付きました(途中かい~←声上げる自分)
そうですか。うむ。はい。これはあとで大海さんのところの本編にお邪魔しなくてはです。
最近ご無沙汰で申し訳ないっす(-_-;)

次作は勉強もかねて三人称でと思っています。
いろいろパターンがあって難しそう・・・
ちょっと怖気づく(-_-;) まだ先っす(^^;)

ちなみに、この旅人の一コマのお話は人称など全く意識せずに、ホント夕さんへ、で自由に描いたので、ほとんど語れず。すみません(-_-;)

大海さんをはじめ、皆様から興味深いお話をいただき、恐縮に思います。
勉強不足で、ちゃんと意識をしないといけないんだなあと反省。精進!
物書きは奥が深いですね。ますます面白くなりそうです。
お読みいただき、ありがとうございました^^
2015.02.22 Sun 15:06
Edit | Reply |  

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