オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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秘密の花園 9 水曜日・居酒屋(2) 

「はい、どーぞっ」

 俺はまずビールを運び、それから注文を取ったりそれを運んだりでバタバタとしていた。団体の注文が一段落すると、ホールに呼ばれ、そちらのヘルプにまわった。しばらくして、奈美さんから言われていたことを思い出し、店長に相談に行った。

「店長、あの学生の団体に知り合いがいるんで、ちょっとサービスしたいんですけど」
「どいつだ?」
「あ、えっと・・・」

 俺は、座敷にいた何人かの男子学生を適当に指差した。

「仕方ないな。お新香ね。板長に断ってよ」
「サンキュー、店長!」

 俺は漬物の小皿をいくつか盆に載せ、座敷に戻った。

「人数入れてもらったんで、サービスです!」

 そう言って、お新香を配った。奈美さんがとても嬉しそうな顔で、俺の方を見ているのが分かった。

 俺は何だか気分が良くなって、その後店に流れる音楽に合わせて鼻歌を歌いながら仕事を続けた。

 ―――ん?

 しばらくホールと座敷を行ったり来たりしながら忙しくしていると、ふと奈美さんが男子学生の間で困った様子にしているのが目に入った。

 俺は去年、オーストラリアで奈美さんと初めて出会ったときのことを思い出した。その時の奈美さんは、着いたばかりのシドニーで、柄悪く酔っ払った男どもにとり囲まれて絡まれていた。

 俺がそこに割って入って奈美さんを連れ出さなければ、どうなっていたかわからない。その出来事は、彼女にとっても俺にとってもあまり良い思い出でではないのだ。
 
 奈美さんのいる方をよく見ると、ビールを抱える男子学生に囲まれて、彼女は肩をすくめて震えている。顔色が悪くなっているのが遠目にも分かった。

 ―――やばい。

 そう思ったら、俺は奈美さんのいる座敷のテーブルに直行していた。周りにいた客の学生をかきわけ、そこから彼女の肩を抱えて席から立とうとした。

 すぐ側にいた男子学生の一人が「何すんだ」と俺の腕を掴んできたが、俺はその腕をぶんと振り払い、

「奈美さんは、こういうのトラウマなんだよ!」

と怒鳴りつけた。

「すみません。このお客さん、具合が悪そうだから、ちょっと介抱してきます!」

 すぐにそう言い直して、彼女を座敷から連れ出した。

「何だあのバイト」という声が後ろから聞こえてきたが、追っては来なかった。その代わり、友達らしい女の子が奈美さんの靴を持って 付いてきた。

「あの・・・」
「あ、心配しないで。俺、奈美さんとは知り合いなんで、ちょっと連れて行きますね。外の空気に当たった方が良いと思うから」

 そう言って靴を受け取り、後を頼んだ。俺は奈美さんを連れて調理場を抜けて、従業員用のエレベーターの脇から、外の非常階段に出た。



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   奈美さん、大丈夫かな。

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読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

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Comment

Name - LandM  

Title - No title

そう言えば居酒屋でバイトしたことなかった!!
・・・振り返ってみても、他人に愛想を振りまく仕事嫌いなんだよなあ。。。( 一一)
いや、今の仕事の愛想が大切ですけど。
私はあまり表情を出さずに仕事しているなあ。。。
2015.10.10 Sat 11:45
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

大学生の時は、バイト色々やりましたねえ・・・^^
必死にやっていた時は表情とかわからなかったかも。
今の仕事は・・・?
職業となるとまた違うなあ(^^;)
2015.10.10 Sat 14:56
Edit | Reply |  

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