オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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セカンドチャンス 39 月曜日2(1) 

鍵鳥策20140806170554e27[1]
鍵鳥 策 by limeさん http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-836.html

秋から冬へ。季節の変わり目。長期の休暇明けのような気分を抑えて、いつもの時間に家を出る。地下鉄がきっちりと時間通りに来ると、それだけで今日一日、調子良く行くように思える。

車窓の景色を眺めることもなく、ゴーという濁音だけを耳にする。乗客は携帯をいじっているか、本を読んでいるか、寝ているか。ふと目に入る、電車の中つり広告曰く。

『一味違う、今年のクリスマス』

クリスマス・クッキングのことかと思いきや、サプライズ・ビデオコンテストの募集キャンペーン。いいんだけど、もうクリスマスって、早くね? つーかそういうの、別にクリスマスに当てなくても? などと、どうでも良いことを考える。

地下鉄内の中つり広告鑑賞は、下車と共に終了。少しだけ気を引き締めて、駅から十分ほど歩いた商店街の終わり辺りにある、白く小綺麗なビルに向かう。

小さな「あ」の口になる。

事務所の鍵が開いているから。ドアの向こうには上田さんが。そうか。俺がいなかった間、上田さんがこの事務所を管理していたんだよね。ご迷惑をおかけしました。今日から復帰しますよ。

「上田さん、おはようございます」
「おう、鍵鳥。殴られてあごの骨砕かれた、って聞いたんだけど。本当に今日からの出勤で、大丈夫なのか」

ちょちょっ、ちょーと待って、上田さん? いきなり何でしょう? 説明説明。

「そんな話になっていたんですか。いや、もう、聞いてくださいよ」
「中島から聞いてるよ」

「は」の口になる。

何なの、この朝っぱらからのくそタヌキっぷり。じゃあ、あご砕かれたなんて、変に振らないでくださいよ。ったく、お前のケツ拭いてやんねえぞ。

なんて、朝からニヤけているこの人に面と向かって言えるはずもなく、瞬きを忘れた振りをしてただ固まるしかない。中島さんから一体どんな風に聞いているのだろうか。

おとといの土曜日。結局は土曜日になってしまったのだけれど、俺はまず中島さんと連絡を取った。ミヒロが俺のことで話しをしたのが、中島さんだと言ったからだ。

「具合はどうだ」とまず聞かれた。だから、怪我をした云々についてきちんと話さなければならなかった。

俺の携帯から中島さんに連絡をしたのは、俺の小学校のときの同級のヤツだった、ということ、久しぶりに会ったそいつに誘拐されるように連れられて、しばらく家を留守にしていた、ということなどを端折って説明した。

電話の一本も入れられなかったのか、と怒られるかと思い、携帯は電池が切れ、行った先からも、上手くタイミングが取れなくて連絡ができなかったと、きっちり言い訳もした。

「いいから、いいから」と、中島さんが妙に機嫌良さそうに言う。何がいいのだろう、と考えて黙る俺に、中島さんは、とにかく仕事のほうは全く心配ないと、とりあえずその件については安心させてくれた。

そして午後から急きょ、家族の事情で、札幌に住むご兄弟の修二さんのところへ行くことになって慌しくしているから、と電話を急いだ。

俺は、月曜日からまたきっちりと出勤することだけをとにかく伝えると、上田さんと佐々倉先生には中島さんの方から話を通しておくから、俺からは連絡しなくて良いと念を押され、電話が切られた。

その辺の業務連絡関係は、この人たちの間ではきっちりとしている。みんな忙しいから、俺が変に連絡を入れると邪魔をすることにもなる。だから、軽くメールを送るにとどめた。

けれども、中島さんが上田さんにどう伝えたのだろうかと気になると、メールではなく、自分でちゃんと連絡をするべきだったかもしれないと、今になって反省する。

「おお、鍵鳥君、戻ったか」
「佐々倉先生、今朝は早いん・・・」

背後からの先生の声に、くるりと振りむきざまに返事をしようとして、俺は我を失った。

「でえええ!!!」
「おはようございます、鍵鳥さん」

紅茶色の目が俺に視線を合わせると、俺の心臓は飛び上がった。体から頭のてっぺんまでカッと熱くなり、佐々倉先生の横にいるそいつを弓で射るように指差す。

「うぉまえーー、髪、どうした、髪ぃ」

季節は秋なのに、俺の立つスポットだけ一気に真夏に戻った。喉が水分不足となり、声がかすれる。そんな俺があいつの紅茶色の目にどう映っているのか。ニカニカとヤツが目を細めているから、分からないじゃないか。

「バイトの中島です。今日からよろしくお願いします」
「中島あぁ? バイトォ?」
「鍵鳥、三十秒で支度しろ」

タヌキの一声に反応する俺の声が、「は? え?」と裏返る。

「今日は千葉県庁。コードG。今日はお前一人だから」

秋風に翻弄される落ち葉のように、俺はますます行く道を失う。

「事務所の留守番は、三広がする」

ちょっと、マジで待ってよ。俺にも考える時間をくれ。

「鈴木じゃねえのか、ミヒロ」

中島、とかいうこいつに目を向ける。もしかして、お前のアニキって? 親父って? こんなところで即興に目ぢからを発揮する。

「そ。俺、弟、三男、末っ子」
「単語並べるなああ」

両親は離婚。絵のうまい上のアニキ。字のうまさは恐らく父親譲りの、今は北海道に住む二番目のアニキ。頭が良く、行動の早いミヒロ。なんとなく、話が合うじゃねえかオイ。

「上田さんも佐々倉先生も、みんな知ってたんですかあ」

佐々倉先生が、妙にニヤニヤとした顔で俺を見る。政治家お得意のタヌキの笑みだ。その横で上田さんも、俺に視線を向け口角を上げる。タヌキの微笑がダブルで来る。これほどモヤモヤと居心地の悪いものはない。

「これ、コードで言ったらなんですか。あ、もういいです。コードODSN、俺・だけ・知ら・ない」
「勝手にコード作るな。コードはG」

上田タヌキに、そこはばっさりと切られる。

「早く行け、鍵鳥。今日は中島が家の事情で休みなんだ。札幌から次男の修二が来ている。夕方ここにも顔を出しに来る予定だ」

佐々倉・中島両家の予定を握る、上田タヌキ。この親密さ、実はどんな関係なのだろう。

「遅刻するなよ。鍵鳥、お前は佐々倉先生の代理なんだ。辞令もとっくに出してある。先生になったつもりで、しっかり自覚して行け」

タヌキが場を仕切り、「早く」とせかす。あんなにいろいろあった先週が一気に遠ざかり、新しい週が容赦なくやって来る。今週も怒涛か。怒涛度、きっと阿部君レベル。いやこれも、仕事してる、っていう充実感につながるのだろうか。

それから俺は、ミヒロとしゃべる時間などほとんど与えられず、追い出されるように上野の事務所を出て、千葉市にある千葉県庁に向かった。

佐々倉ミロくん。

県庁に向かう途中、電車の中ではっきりと意識したとき、声を上げそうになった。



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みなさんは、このミヒロとアニキたちとの人物関係、お気づきでしたよね(?)
お話の途中、どのあたりで分かったのか教えてください^^
次回、最終話です。


ご訪問、ありがとうございます^^
『セカンドチャンス』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。
Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

ああ~~~、そうかそうか、そう言う風につながるんですね。
佐々倉さんが、あの時の!
そこまでは気が付きませんでした。
この事務所とミヒロが、何か関係性あるんじゃないかとは思っていたんですが、こんなにど真ん中だったとは。
けいさんもタヌキですねえ^^

ミヒロが最初、事務所に連絡を入れたからって策に言った時、あ、知り合いなのかなとチラッと思ったんだけど、そのあと忘れていました。
いろんなところでこの二人は繋がっていたんですね。
策は今、いろいろ頭の中がパニクってるけど、これはほんとうに運命の人ですよね^^もう結ばれてしまいなさい(笑)
さあ、みんなが知ってて策だけが知らないコードODSNですが!
策がオーディション受かったって言ったら、みんな驚くかなあ。
策の気持ちになって、その瞬間を楽しみにしてるんだけど。
佐々倉・中島組は、なかなかみんなたぬきだからなあ^^
2015.03.15 Sun 09:56
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

はっ。タヌキは自分だったのか・・・
ここにこうつなげてみました(-_-;)

limeさんの問いが毎回ニアピンで、はい正に、というのもあって、滝汗りました。
スルーしまくりですみませんでしたぁ m(__)m
大体の答えは本編に出せたかなと思っているのですが・・・
この運命の二人、仲良くなりますが、結ばれる、となると、怪しい~~(赤面)

そうそう。ここのみんながまだ知らない件ですが(^^;)
早めに知らせないとね。ライブがすぐに始まるし、先に色々あるし。
どうかその策の気持ちのまま、ニマニマとその瞬間をご想像いただければと。
タヌキ揃いの職場ですが、みんな仲良いので。

策は近い将来、タヌキの応援が得られるのかな。タヌキの追っかけとか(?)
策のマスコットは、カルガモとタヌキ?(^^;)
あと一話でENDマークです・・・
2015.03.15 Sun 16:56
Edit | Reply |  

Name - 八少女 夕  

Title - 超まぬけ

こんばんは。

まったく何も疑っていなかった、寝耳に水の私でございます。
え〜、だからミステリー読みじゃないから、伏線とか考えないんですよ〜。
(言い訳するな〜、というけいさんのお声が)
職場の人と小学校の同級生が知り合いなんて、普通ないし〜、とか。
でも、スイスならそんなのあたり前にあるんですけれど。だって本当に世間狭い村社会なんで。

あ、でも、ミヒロの復活が何より嬉しい家族の職場で、新しいバイトとしてミヒロが来てくれるならば、長期欠勤の直後に「オーディション受かったんで、じゃっ!」と消えても許されますね。これはいい解決策!

ODSNいいなあ。そのコード。

limeさん! 何を言っているんですか(笑)
本当に結ばれちゃったらどうするの?
2015.03.16 Mon 02:46
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 超まぬけ

八少女 夕さん、コメントありがとうございます。

わ。じゃあ、突然の登場でしたか。それもわけわからなかったですかね。
引っ張っていたのはこれが理由だったのです(-_-;)

普通ないことが普通に起こるAusのうちの地方も、相当な田舎です。
お呼ばれで出かけて、その人が普通にいて、それで、えー親戚なのぉ、というのが発覚します。
その人も私を見て、お前も招待されていたのかと。お互いにあれれ(^^;)

策、秘書の仕事はやめることになりますが、みんなとの良い知り合い関係は続くと思われます。
ODSNが夕さんに気に入ってもらえてよかったです。
夕さんの場合は、YDSN(夕・だけ・しら・ない)??

limeさ~ん。波紋呼んじゃってるみたいですよ~^^
考えようによっちゃ、もうこうなったからにはすでに結ばれちゃってるのかもね~^^
2015.03.16 Mon 19:44
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

千葉はたぬきの里であったか!(笑)

いやいやいやいやいや、そうきましたか。
あそこで終わらないと思っていましたが、血縁とは~。

字うまいとか、石だろうなとは思っていたんですが。
そもそも、かわいいカルガモ(笑)が野放しにされていいはずがない。
策はスクランプシャスがあるから、
クビになってもいいやと思ってんじゃないか、とか
誰かはグルだろう、と色々想像していたんですが、
大たぬきだったとは(笑)。

バンドだけがゴールじゃなくて、ここがゴールだったんですね。
ミヒロって、ほとんど「もうひとりの主人公」だったんですね。

このふたりの続きがもっと知りたい~、と思わされた物語でした……
って、あと1回あるんですよね。
萌え萌えなシーンあるかなぁ~(わくわく)。

2015.03.19 Thu 09:26
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

ぷぷ。たぬきの里は食べ盛り? 甘くはない(-_-;)
こうきてみました。最後まで引っ張ります(^^;)

色々と想像していただき、ありがとうございます。
ある意味、みんなグルでした。
カルガモもタヌキの手の内である程度野放しにされていたのかも(?)

バンドのゴールは前作をご存知の城村さんにはご承知のことでしたので、もう一つ違うものを持ってきました。
城村さんの中で、策とミヒロの二人がツートップでうまく関われたのなら嬉しいです。

> このふたりの続きがもっと知りたい~、と思わされた物語でした……

わ^^ そう言っていただけるのはとっても嬉しいです^^
残念ながら、次回でお話は終わりですが、その先を想像してもらえればと。

萌え萌えなシーン、ですか・・・えっと、えっと・・・(滝汗)
2015.03.19 Thu 20:00
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - にゃはは~

そうかそうか。ほんともろにど真ん中だったんですね。ミヒロは事務所の誰かの関係者と言うのはlimeさんと同じく感じていたのですが、誰かまでは具体的に思い描いていませんでした。
そうそう、策以外はタヌキ集団だという話だったということで。
あ、でもでもでも、策のデビューの話はタヌキたちの上を行くかも!
いや、それさえも誰かがどこかで絡んでいそうな……もうだんだん疑心暗鬼になってますよ^^;

でも、何はともあれ皆に守られている策。でも、これからは自分の足で歩いて行かなけりゃならないんですね。DIY?
2015.03.21 Sat 13:40
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: にゃはは~

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

やや。勘の良い大海さんには、すぐにでもばればれかと思っていたのですが。
具体化されずにいてくださったことにほっと安心しております(^^;)
はっ。ミヒロもタヌキ集団の一味だったのか。
ここにきて誘拐のバイトが本当っぽく響く(?)
策のデビュー話には、湊人ががっつりと絡んでいます^^
湊人は策サイド、のはず。いや、ミヒロサイド、かな。どっちだ??

DIY^^ そうですね! ここで切り開いた策です。
友だちも仲間も増えて、しっかりと、自分の足で歩いて行くことになるでしょう。
続きは別の方のお話で(?)(あ、でも策はあんまり出てこないか・・・汗)
2015.03.21 Sat 17:27
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

まあ、狸は狸でいいのですが。
化かし合いするのも仕事ですからね。
しかし、策も大変ですねえ。
この職場でやっていくのも。。。
2015.03.21 Sat 20:23
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

社内で化かし合いって、なんかドロドロのドラマにもなりませんよね(-_-;)
策はもうちょいこのこの職場でやっていかなくてはなりません(^^;)
策の行く末をLandMさんにも見ていただけますように。
2015.03.21 Sat 23:45
Edit | Reply |  

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