オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

セカンドチャンス 番外1 

セカンドチャンス 番外1 再会・ミヒロ視点

*

誰? まさか、死んでる?

玄関で知らない人が棒のように倒れている。どうして駅前のコンビニに、ビールの一本を買いに行って帰ってくるだけで、こんなことが起こるのか。とにかく、何かしなくては。

「大丈夫ですか?」

全然大丈夫じゃない。無駄な質問だった。何の反応もないし。とりあえず、怪我がないかをまず確認。腹から血を流している、なんてことなら救急車だ。

「いや」

軽く頭を振る。落ち着け。こっちがパニックになることはない。これは映画でもドラマでも小説でもないんだ。見る・聞く・触れる。ずっと以前に教わった、ファーストエイドの基本を実践する。

この人、体も小さいし、見た感じはすごく若い。大学生か。それとも、こんな夜中に高校生? まさか、塾帰りの中学生じゃないよね。

顔に耳を近づけると、呼吸音が聞こえた。十秒待つ。息は浅いが、乱れてはいない。とりあえず、生きてる。血を流すような怪我もしていない。

「起きてください」

軽く肩を揺するが、起きる気配は全くない。酒臭くはないから、酔っ払いではなさそう。とにかく、ベッドに運ぼうと、横になっていたこの人の体を起こした。

脱力した人の体というのは、操り人形よりも扱いづらく、意外に重い。なんとか抱き上げ、自分の部屋に運ぶ。なるべく丁寧にベッドに降ろし、ダメもとでもう一度、声をかける。

「お名まえは?」

どうしてここに? よりによって、こんなタイミングで・・・

顔色だけは、血が引いているようでかなり悪い。ジーンズを探り、ポケットから財布と携帯を引き抜く。悪いと思ったけれども、今は緊急事態。これで身元の確認をさせてもらう。ご家族と連絡が取れるかもしれない。

『佐々倉志郎後援会・上野事務所、秘書・鍵鳥策』

財布で見つけたその名刺に、目が釘付けになった。この人、親父の事務所の秘書。上野の方だ。

「けん・どり・・・」

声に出した瞬間、川魚が水から飛び上がるようにドクンと心臓が跳ね、俺は息を呑んだ。こんな夜中に、アメリカン・リメイクのホラー映画よりもゾクっと来るこの事実。何のリメイク? それとも誰かのいたずら?

「さっくん?」

小さく呼んでみる。何年ぶりに口にするこの呼び名。

マジか。大きくなったなあ。って、それはお互いなのだろうけれど。でも、本当にさっくんなのか。実年齢よりもずっと若く見えるが。

俺はマジマジとこの人の顔を見つめた。目を開いてくれれば、一発でわかるはずなのに。でもこの顔の感じに、面影が残る。一緒に遊んだ遠い昔が、懐メロのように流れ出す。

それに、『鍵鳥策』なんて名まえは、そうそうにないだろうし、可能性はかなり高い。いや、絶対にそうだ。俺は確信して、財布にあった免許証の写真を見る。

「さっくん、上の階に住んでたのか」

全然かち合わなかったな。さっくんの方が忙しかったからだろう。今日だって、今が帰りだったのか。親父にこき使われているのか。それとも、上野事務所なら上田さんにかな。部屋の階を間違えるほど、疲れているのかもな。

免許証にあった誕生日を入れると、携帯のロックが外れた。本当に久しぶりにその番号に電話をかける。夜中だけど、良いよね。これは緊急の連絡だから。

「もしもし」
『どうした鍵鳥。こんな夜中に』
「アニキ、元気?」
『え・・・三広!! どうして』

アニキが電話口で叫ぶから、俺は携帯を耳から遠ざけなければならなかった。アニキは相変わらず、誰にでもエネルギーを分けてあげられるくらいに元気だ。

俺が子どもの頃そうだったように、さっくんも仕事で、アニキの後ろを追いかけているだろう姿が簡単に想像できる。

「積もる話はあるけど」

話の立つアニキから色々と訊かれる前に、俺から話を始める。

「ちょっと緊急なんだ」

再会の言葉よりも先に、まずは今の状況。つまり、ちょっと外に出て帰ってきたら、気を失った人が家で倒れていた、ということについて話し出すと、アニキも驚いた。

その人の持ち物から、仕事が親父の秘書であるというのがわかったこと、それでこうしてアニキに連絡をしたということ、さらにその人物が、俺の小学校時代の友人であったということ。それらを、なるべく落ち着いて説明した。

アニキは本当は、俺が今までどこで何をしていたかを、まず訊きたかっただろう。けれども、今はそれどころではない。さすがアニキは、すぐにそのことを理解してくれた。

『三広、俺が明日の朝、鍵鳥を迎えに行ってやる。そこは、鍵鳥と同じマンションなのか』
「アニキ。俺は明日、もう今日だけど、出かけるところがあるんだ」
『どこに?』

アニキが探るような声で訊く。

「大事なところ。そこに鍵鳥くんを一緒に連れて行きたい。それを許して欲しい」

勘の良いアニキは、それだけでもしかしたら察してくれるかもしれない。アニキが言葉にする前に、俺は続けた。

「このドライブが終わったら、アニキのところに必ず顔を出す。約束する。そのときに全部話す。だから」

そこで携帯のバッテリーが切れた。アニキ、一方的でごめん。最後まできちんと話せなかったけれど、伝えたかったことは言えた。アニキの返事がイエスかノーかは、この際どうでも良い。俺の中では、もう決まっているから。

「さっくん、灯台まで一緒に来てよ。じーちゃんに紹介してやる」

俺はワクワクして、眠っているさっくんに話しかけた。まだ少し顔色は悪いが、先ほどではなくなっていた。まあ、命に関わるような怪我ということではなさそうだし。仕事で疲れているのなら、朝までゆっくり休むと良い。

クルクルとよく回る、あの懐かしい大きな目を早く見たい。俺のことを覚えているだろうか。

「俺のほうは見た目、子どもの頃とはかなり違うなあ」

思わずつぶやき、肩までボサボサに伸びた自分の髪を掻きあげた。

「そうだ」

さっくんの着替えを買いに、再びコンビニに行かなければ。そう思い立ち、鍵を手に取った。今度はきっちり、ドアの鍵を閉めて行くから。


番外1・おわり



にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
にほんブログ村   ワンクリックの応援ありがとうございます。 Thanks in advance!

人気ブログランキングへ  Thanks again for the click!




ミヒロ、この晩は、気持ちが色々と交錯して、ほとんど眠れなかった、らしい(^^;)
次回、番外2^^


ご訪問、ありがとうございます^^
『セカンドチャンス』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

皆様が素敵な一日を過ごせますように。
Have a nice day!
関連記事
スポンサーサイト

Comment

Name - 大海彩洋  

Title - そうかぁ

ミヒロ側からしたらしょっぱなからそういうことだよね~
話がひと段落ついてから振り返ると、あらびっくり、だけれど、ミヒロ視点では「こうなってこうなったから、こうなんだよ」ですよね(*^_^*)
これってつまり作者側の視点(神視点)なんだよね。「実はね~、いや、今は言わないよ~、いひひ^m^」って感じのけいさんの声が聞こえて来そうでした。
いや、でもやっぱりかなり強引な強制連行、だったことは間違いないですよね^^;

ひとつの問題は……私の脳内でミヒロがロン毛の綾野さんになっていました。
2015.04.15 Wed 21:57
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - おはようございます

ああそうなのか、ミヒロ視点で・・・って、最初のこのシーンからなのですね。
うん、策側から見たのとはまた別のドタバタが繰り広げられていたわけですもんね。
謎な人物だったミヒロも、こうやって見て見たら、年相応な純真青年なのだ。
た・・・たしかに、このまま策を連れて行こうとする辺りは、ミヒロならではの突飛さだけど^^
これは最後のシーンまで続きますか?
全部分かってて振り返るのも、なかなか楽しいです^^

2015.04.16 Thu 07:49
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: そうかぁ

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

そうなんです~。こうなってました。声、聞こえましたかあ(*^_^*)
それでなくても、大海さんには、言わないよんと実際に何回か言っていたような・・・
誘拐のバイトは伊達ではなかった、ということで^^

視点ですか。そうなんですか。
むずかし。精進します(-_-;)

ミヒロはロン毛の綾野さんでも、誰でも、どうでも、大海さんのお好みで^^
2015.04.16 Thu 10:45
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: おはようございます

limeさん、コメントありがとうございます。

はい。ミヒロ視点、これでした。
見る人物が違うと、ちょっと違いましたね。
こういうの、初めてやってみたのですが、なかなか面白かったです。
本編ではミヒロのことは小出しだったので、じれったかったかな。
年相応な純真青年、でしたか。良かった(なぜか安心 ^^;)
ミヒロは、普段は決めた後の行動が早いのです。割と臨機応変。
そこは中島さんと兄弟ならではの似ている点^^

いや~、最後までは~(汗) これで、ということで(^^;)
こういうのはホントこれだけ読んでもわけわからないですよね。
最後まで読んでいただいた皆様にはわかる、という感謝の番外でした^^

次回の番外2は、企画物に乗らせていただく予定です(予告)^^
2015.04.16 Thu 11:26
Edit | Reply |  

Name - 八少女 夕  

Title - ほう

こんにちは。

そうか、ミヒロ視点で見ると、まさに「策・だけ・知ら・ない」だなあ。
策、暗証番号、誕生日ってだめじゃん(笑)
まあ、どうしても憶えやすいものになっちゃっていますよね。

しかし。
夜中に帰って来たら誰かが行き倒れていたら困っただろうなあ。
連れて行くってのも、確かにすごいけれど(笑)

番外編その2も楽しみにしています。
2015.04.16 Thu 21:15
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

視点と言うのは大切ですよね。
私もグッゲンハイムは一人称なので、誰を主人公にするかで大分悩みます。・・・まあ、自分の書きやすい人を主人公にしちゃうのですが。こうして同じ場面でも別主人公だと面白いですね。(*'ω'*)
2015.04.18 Sat 11:30
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: ほう

八少女 夕さん、コメントありがとうございます。
コメ返遅れてすみません。
久々に泊まりで州都のメルボルンに行っていました。
えっと、仕事ですよぉ(-_-;)

ぷぷ。SDSN→「策・だけ・知ら・ない」ですね。
暗証番号、誕生日はないですよね(汗)

夜中に誰かがいるなんて、怖いですよぉ。
鍵は閉めましょう、とミヒロへ。
連れて行ったのは根拠のない確信?

番外編その2は、夕さんのところから、あの!企画をいただきます^^
2015.04.18 Sat 21:59
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

そうですよね。視点と言うのは大切なのですけれど、いま一つ使えなくて。
なるほど。グッゲンハイムのようなファンタジーでの一人称は、シーンの一つ一つが近くて臨場感ありますよね。
私も一人称は三作目だったので、少し慣れてきたかな(?)少しね(^^;)
ここでは、一人称同士を向かわせると、どうなるのかなと(*'ω'*)
まだまだ描ききれなくて(><) 精進します。
2015.04.18 Sat 22:16
Edit | Reply |  

Name - 城村優歌  

Title - No title

ぬふふ、ミヒロ視点楽しい^^
種あかしのような雰囲気ですね。

もうこれは確実に、20歳ちょい過ぎの長髪の綾野剛くんで
ミヒロが動いています、声が特に。

携帯に免許証の誕生日入力するのは、
ファーストエイドで教えてもらわなかったはずだろうけど(笑)
ミヒロらしい機転と、策らしい無防備さが相まって、
逆から見るとこれまたほほえましいですね。

こっち側からも、ふたりを追っかけてみたいなぁ~^^

2015.04.19 Sun 21:10
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 城村優歌さん

コメントありがとうございます。

ゆかさんにミヒロ視点を楽しん出いただけて良かったです^^
そうですね。種(本編)を読んでいないとわからないという。
ある意味特典かも(?)

綾野剛さん、画像検索していたときに声も聞きました^^
良い感じでミヒロかもですね。
現在の年齢的には、ショートの綾野剛さんがアニキの中島さんかもと、妄想広がる広がる(^^;)

> ミヒロらしい機転と、策らしい無防備さが相まって、
> 逆から見るとこれまたほほえましいですね。

ぷぷ。ゆかママさん、ありがとうございます。
策は血液型Aで、そういうところは細かいはずなのですが、誰を見習ったのでしょう・・・?
ゆかさん側からも、是非ふたりを追っかけてみてください。
一部長そうですけれど(^^;)
2015.04.20 Mon 18:12
Edit | Reply |  

Add your comment