オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夕景色の出逢いの一コマ (scriviamo! 2016) 

scriviamo.png

 ブログで親しくさせていただいています「scribo ergo sum」八少女 夕さんの企画「scriviamo! 2016」に参加しました。

 「scriviamo!」というのはイタリア語で「一緒に書きましょう」という意味だそうです。私は今年二度目の参加です。企画期間中、夕さんのブログ上で参加者の書かれる作品または記事と夕さんとの楽しい交流が見られます。

 詳しくはこちらへ → 「scriviamo! 2016」

 それから!

 夕さんは今年2016年のお正月元旦、なんと、ブログアクセス70000Hitの大台を達成されました。二重のおめでた^^

 そこでついでにと言っては何ですが、70000Hitのお祝いも兼ねまして、このお話を勝手に贈らせていただきたいなと。夕さん、‘兼’で申し訳ない。二つはできないの(-_-;)。でも1月中にできて良かった(^^;)

 さて。

 今年の「scriviamo! 2016」、まだ連載中のあの作品をお借りし、とある一コマを綴らせていただきました。その作品をお読みでなくても、お話は分かると思います。

 それでは、「scriviamo! 2016」参加 兼 70000Hitお祝い で、 昨年に引き続き、↓のぞき見(?)シリーズ!^^

*** ***

 夕景色の出逢いの一コマ

*** ***

 海からの穏やかな風が街に流れ込み、人々の頬に触れて通り過ぎる。坂道の入り口に停まっていたカモメがさっと飛び立つと、どこまでも続く赤茶けた屋根の上を悠々と飛んでいく。

 十歳くらいの女の子が、息を切らしてその坂道を上っていく。高く鳴きながら飛んでいくカモメなど、その女の子の目には入らないようだ。空の青が薄くなり、街を流れる河と街並みに、美しい夕日の差し込む時間が近づいていた。

 坂の上にあるのは、門構えに大きな竜の紋章を称える大きな館。今日もその奥にある裏庭に行くのだろう。館を訪ねると言っても、その重厚で立派な門から中に入るわけでもなければ、知り合いがいて裏口から通してくれるわけでもない。

 女の子は坂を上り切ると、館の門には目もくれず、脇に回って生け垣の間を探る。おそらく、この子が秘密に見つけたのであろうそのポイントから、するりと身をねじ込んだ。

 身をひそめて生け垣のトンネルを進み、館の裏庭に侵入する。大きく豪華なその建物の側を通る時は、見つからないように慎重に通り抜けた。館の関係者に見つかりでもしたら、二度とあの光景を独り占めすることができなくなるからだ。

 空がオレンジ色に暮れだしてきた。カモメたちの鳴き声も騒がしくなっている。きっと今日も目にすることができるだろう美しい夕陽に思いを馳せながらも、歩みには細心の注意を払った。

 しばらく行くと、見覚えのある石造りの小屋が現れた。きっと昔は使用人の住居だったのだろう。けれども今は廃屋のように荒れている。

 その小屋の石の壁に沿って進み裏側に出ると、そこには女の子の思った通り、真っ赤な空が広がっていた。そこから見える河の水も、夕陽に反射してキラキラと輝いていた。

 女の子は、嬉しそうに目を見開く。すぐそこに放置されている大理石の一つに腰かけると、ここは自分の特等席とばかりに足をぶらぶらさせた。

 自分だけの景色、自分だけの時間。そんな女の子の秘密のひとときが、背後からの突然の声によって蹴散らされた。女の子は驚いて飛び上がり、おそるおそる後ろを振り返った。

  暗くて冷えた石造りの建物の下の方に、明かり取り用にある小さな窓があるのに気づく。錆びた鉄格子が嵌まっている。誰もいないと思っていたのに、薄暗い地下室のようなそこに誰かいる。

 女の子はそっと目を凝らして中を覗き込み、それから顔をしかめた。黒いボサボサの髪、薄汚れた服。そこにいたのはまるで浮浪者のように汚い少年だった。女の子よりも何歳か年上のようだ。

 はじめ女の子は、少年から立ち去ろうとした。けれども、この少年も河の向こうを目指してゆっくりと沈んでいく太陽が、この街を美しく照らすことを知っていた。それがわかると気が変わり、その場に止まる。

 錆臭い格子を挟んで、二人は一緒に夕陽を眺めた。河ではカモメが何羽も連なって、水面に近づいたり高く舞ったりしていた。

 樽を運ぶ小舟ラベロが、決まった水路をゆっくりと行き来しているのも見えた。河を渡る大きな鉄橋は、夕陽に照らされ燃えるように美しい。

 ふとした少年の言葉に、女の子は再び鉄格子に向かって振り向いた。そのとき、女の子の目についたのは、錆臭い格子をつかむ少年の痩せこけた手と、その左手首にぴったりと嵌った黄金の腕輪。

 女の子の視線に、少年は格子から自分の左手首をさっと隠した。女の子は立ち上がると、そっと少年の方に近づいていく。少年に自分の左手を差し出して、自分も持つ全く同じ腕輪を見せた。少年の目が見開く。

 二人の左手首にしっかりと巻き付いた金の腕輪。女の子の腕輪には赤い透き通った石が一つ、少年の方には青い石が四つついている。

 星のある子供たち。そこには口にしなくとも気持ちに通じるものがある。二人はやっとお互いに名前を名乗った。

 空の色がオレンジから紫へと変わろうとしていた。夕景色がきれいだった時間は過ぎ、女の子はそろそろ帰らなくてはいけない。

 女の子が帰る素振りを見せると、少年はとても悲しそうな目をした。女の子は少年の左手首の腕輪が目に入ると、思い直したように少年に向かって小さく頷いた。

 それで約束ができたとわかった少年は嬉しそうにほほ笑む。女の子も笑顔を返して小さく手を振ると、くるりと背を向けた。

 来た時同様、建物の角を曲がって慎重に、けれども急いで出口のある生け垣へと向かった。辺りはどんどん暗くなってくる。カモメの声も、いつの間にか聞こえなくなっていた。早く帰らないと、家の人に心配されてしまう。

 生け垣から外に出ると、そこは空気も時間も、来た時とは何もかもが違うように感じられた。ついさっきまでの秘密のひととき。あそこで逢った変わった名前の少年は、いったい誰なのだろう。

 今度逢うときは、家にある大きな香りの良い石鹸を持っていきてあげよう。少年とはきっといい友達になれる。そう思うと、女の子は館の門から下る坂道を玉が転がるように軽やかに降りて行った。


 おわり



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 見ちった(^^;)

 参照:

 八少女 夕さんの小説 ButtonInfante.jpg 「Infante 323 黄金の枷」より

 「Infante 323黄金の枷(2)腕輪をした子供たち」

 本編では・・・↓

 “マイアは自分の特等席と決めている放置されている大理石の一つに腰掛けると、足をぶらぶらさせた。

「お前、誰だ?」

 突然声がしたので、マイアは飛び上がった。” (前後略)

 是非、第一話から^^


 ご訪問、ありがとうございます^^
 ブログ『憩』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 皆様が素敵な一日を過ごせますように。
 Have a nice day!
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Comment

Name - 八少女 夕  

Title - うおっ

こんばんは〜。

元旦の7万、見つけてくださったのけいさんでしたものね。
お祝いしていただけてとても嬉しいです。

そして、な、なんと!
今年も覗かれていますね(笑)

ああ、よく読んでくださっているなあと感激しました。
うん。
自分の知っている景色が、けいさんの視点から描かれるの、なんかいいですねぇ。

二人を微笑ましく見守っていてくださる感じがします。

で、お返しですよね。ああ、どうしよう。
去年のような手は使えない。

ううむ、しばし考えますので少々お待ちください。

ご参加ありがとうございます!
2016.01.25 Mon 05:17
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: うおっ

八少女 夕さん、コメントありがとうございます。

元旦の7万は年明けに相応しく、感動モノでした。
重ね重ね、おめでとうございました^^

今年もウブい二人を覗いちゃいました^^
その後がちょっとあるので、描いた後にしんみりしちゃいました。

実は最初、ピコピコハンマーのあのお祭りの夜を覗ていたのですが変えました、という裏話が(二つは無理なの -_-;)
夕さんをミタ、が気に入っていただけたのなら嬉しいです。

今年は参加がたて込んでいらっしゃるようですから、夕さんのペースで^^
のんびりとお待ちしております。
2016.01.25 Mon 07:43
Edit | Reply |  

Name - かじぺた  

Title - こんにちは~(^0^*)ノ

いつも、ご訪問頂きどうもありがとうございますm(^^*)m
なかなかコメントが出来ずに申し訳ありませんでしたm(_ _)m

私はもともとの小説仲間のみなさんとは違って
新参者にも入れないアウトサイダーですが、
去年の夏、大海彩洋さんの策略(?)により
なんだか末席を汚すような状態になってしまい(^^;;;)

今回も、limeさんの参加イラストに感銘を受けて
お話を書いてしまったので
なし崩し的に
八乙女 夕さんのscriviamo!に参加する運びになってしまいました(^0^;)\

このお話の感想を書かせて頂くのにあたり
夕さんの「Infante 323 黄金の枷」現在までのお話を
全部読んできました\(^0^)/

すごいですね~~~!!!
あのお話が見事に俯瞰になってる・・・・・・
同じお話を、こうして違う視点で書くと
ものすごく同じお話だとわかるのに、また違った味が出るのですね。
素敵です!!!

あの珠玉の出逢いの情景が
また違ったテイストで読めて嬉しかったです(^^*)v-238
どうもありがとうございましたm(^v^*)m
2016.02.24 Wed 14:11
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こんにちは~(^0^*)ノ

かじぺたさん、コメントありがとうございます。

なななんと(@@)
夕さんの「Infante 323 黄金の枷」を全話読まれたとは!
すごいです~~~!!!

この覗き見のお話は、元のお話を知らなくても問題ないようにと思いながら書いたのですが、実は自分でも書いた後に、ちょっとわからないかも、と思ってしまったお話でした。すみません(><)
去年の方がもっと独立したストーリーとして描けたな。来年はそこのところ、もう少し工夫しよう(-_-;)
(というわけで来年もやる気満々なのですが・・・)

でも、もちろん夕さんのお話を読んでいただいた方がずっとずっとわかっていただけたようで良かったです^^
いやむしろ、夕さんからのお返事掌編との時間列の関係は本編をご覧の方がぐっと身近に感じられますよね。
それにしても、読破、凄いです~!

かじぺたさん、私、エッセー大好きなのですよ。
ブロともさんもエッセーの方が結構いらっしゃいます。
エッセーも小説も物書きとしてみたら同じ。
かじぺたさんのところは写真がたっくさんで、読者さんもたっくさんで、素敵だなあといつも思っております。
こちらこそ読み逃げばかりですみません(><)

ふふ。大海彩洋さんの策略^^ 存じております。
今年も策略を練っていらっしゃるようですから、またみんなで一緒に乗っちゃいましょう!

ご訪問ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします^^
2016.02.24 Wed 18:54
Edit | Reply |  

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