オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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秘密の花園 17 金曜日・喧嘩(3) (第一章・最終話) 

 間もなく営業時間となり、社員の矢野さんが店をオープンする。いつもの金曜日同様、座敷は予約でいっぱいで、ホールもそれなりに混んだ。俺は店長から頼まれたとおり、座敷とホールの両エリアを行き来して、忙しく働いていた。

「花園さん、金曜日なのに、何で店長いないんですか?」

 まあ、バイトの文句も、この忙しさではわからないでもない。俺も同じバイトの立場では何とも言えず、「さあね」と交わすしかない。

「てめー、ふざけんな!!」
「うるせぇー!!」

 突然、座敷の方から大きな罵声と、ガタガタという物騒な音が聞こえてきた。

 ―――喧嘩だ!

 俺はホールから一番に座敷へと駆けつけた。今までも客同士の喧嘩は、何回か経験しているからすぐにわかった。

 座敷の一角で、ワイシャツにだらしなくネクタイを緩めたサラリーマンが組み合っていて、殴り合いが始まっていた。

 近くに連れらしい女性客がいて、オロオロしていたが、危ないのでホールのほうに移動してもらい、他のバイトに後を頼んだ。

「お客さん、やめてください」

 酔っ払いの喧嘩が、そんな言葉を聞くはずがない。いつもなら強面の店長が「困ります」とか言うだけで場が納まるのだが、今日はその店長がいない。

 とにかく止めなくてはと、一人を後ろから押さえ込もうと座敷に上がったところ、その客が相手をまさに殴ろうとして勢いよく肘を引いたのが俺の顔面にガツンと当たった。

 ―――イッテェ・・・

 誰かが自分の背後にいると気づいたその客は、素早く振り返り、「邪魔するな!」と俺の頬をバコンと思い切り殴った。

 俺はその二発目のパンチで、首が飛ぶのではないかと思うくらいの衝撃を受けた。先ほどの肘打ちの比ではなく、声も出なかった。

 目の前が真っ白になり、俺は座敷の畳の上に崩れかけた。目の前を星がちらつくというのが漫画の世界だけではないという、したくもない経験をこの身に受けた瞬間となった。

 とにかく壁に手を付き、足をガクガクさせながらも、俺はこの痛みに何とか耐えた。

「店長がいないときに!」

 調理場から板長が長靴を履いたまま跳んできた。相手のもう一人を押さえようとしたが、板長は長靴のままで座敷に上がったせいで足の動きが悪かったのか、あっさりと突き飛ばされてしまった。

 最初の肘打ちのせいか、それとも二発目のパンチのせいか、俺は大量の鼻血を出していた。口の中にまで血が流れ込んで鉄分のいやな味がする。こんなものは、今でなくとも味わいたくない。

 頭の中は、店でこの喧嘩はまずい、という思いで埋められる。とにかく殴り合う二人を引き離さなければと、俺は必死の攻防に参戦していた。

「花園! 大丈夫か!」

 社員の矢野さんもすぐに駆けつけ、一緒に止めに入ってくれた。けれども、周りのことなど全く見えていない二人の客は殴り合いを続け、一向に治まる気配がない。俺も矢野さんも、とばっちりでさらに何発か受けてしまっていた。

 そうこう揉み合っているうちに、喧嘩の客と俺たちは足がもつれ合い、部屋の境の襖を破って隣の座敷に倒れ込んでしまった。

 そのとき「ガチャーン」と、空のビール瓶を座卓でかち割る音と、居酒屋のフロア全体に聞こえるような凄まじい大声が鳴り響いた。

「お前らぁー、いい加減にしろーっ!!」

 喧嘩の客と共に、俺たちがなだれ込んだ隣の座敷に居た一人の客が、北海道の山脈にある原生森林の奥にいる、野生の巨大クマのような恐ろしい形相で怒鳴った。

 その声は、天井から下がっている照明をもプルプルと小刻みに震わせるほどの空気の振動を起こし、店全体に轟き渡った。
 
 仁王立ちしたその手には割れたビール瓶を持ち、それで今にも突き刺されるのではないかと思うほどの強大な迫力があった。

 誰もが全ての動きを止めた。喧嘩も止まった。

 俺は息が詰まるような思いで、喉の奥にたまっていた鼻血のよどみをドクンと飲み込んだ。

 ―――良かった。止まった・・・。

 それだけを確認すると、倒れた襖の上でへたばりかけていた俺の意識は、どこか知らないところへと墜ちていった。


 
 第一章、おわり 

 (第一章・あとがき、そして、第二章へ続く)



< 前話  TOP  第一章・あとがき >



   えぇ・・・?

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バッド・エンド?! あとがきにつづく・・・


『秘密の花園』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

Name - あかね  

Title - えーっと……

これでおしまいですか?
他のふたつの作品とか、サイドストーリィとかと関連してるってわけでしょうか?
次はどれを読ませていただくといいでしょうか?

花園くんは今どき珍しい凛々しい男の子で、田島くんも楽しくて、青春してるなぁって感じで、とても楽しく読ませていただきました。

だけどやっぱり、これからどうなるのかは気になります。
2012.06.12 Tue 10:13
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: えーっと……

あかねさん、コメントありがとうございます。

えーっと・・・穴はないか、穴、穴っ(^^;)
これでおしまいです。いや、でした。最初の設定は。

でも、これでおわりはちょっと・・・
と自分でも思い、『追記』を足しました。
本編あとがきからか、目次の『追記』から、もしよろしければ続きを・・・

うーん。この構成については他からもご指摘があり、
修正の対象なのですが、今だに放置で・・・(滝汗)

ホントに素人の拙作にお時間をいただき、ありがとうございました。
徹さんを「今どき珍しい凛々しい男の子」とは。
めっちゃ嬉しい褒め言葉です。

あかねさんのところはキャラの設定が半端なく深いですからね。
またお邪魔させてください。

色々と気付きをいただきありがとうございました。
まだまだ物書きとしてはぺーぺーの初心者ですが、
これからも宜しくお付き合いいただけると嬉しいです^^
2012.06.12 Tue 14:10
Edit | Reply |  

Name - -  

Title - 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014.12.25 Thu 23:56
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 鍵コメさん

コメントありがとうございます。

そうですね。酔ってわけのわからない喧嘩ってありますよね。
酒を飲むと、人が変わるのはなぜでしょう。どこがはずれるのですかね。
私はワインが好きで、週末はこれです。

最初の設定では、ここでお話は終わりでした。
あとがきも書いたのですが、これではちょっとなあ、と考え直し、すぐに続きを描きました。
その後があって、すっきりすると思うので、第二部のほうにも進んでいただけると嬉しいです。

シドニーの事件について、ありがとうございます。
私はシドニーとは別の州に住んでいるのですが、事件の起きたエリアには行ったことがあって、本当に他人事ではなかったです。

クリスマスはのんびりしました。いまだにのんびり(笑)
雪ですかあ。クリスマスに雪は似合うといえば似合うのでしょうか。

アジアカップはテレビ放映に期待です。
ジャパンも色々あるようですが、元気な姿を見せて欲しいですね。
サッカールーたちと両方を応援します^^
2014.12.26 Fri 10:21
Edit | Reply |  

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