オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

怒涛の一週間 5 月曜日(3) 

 ワークショップではディスカッションとプレゼンテーションが展開され、時間があっという間に過ぎた。研修会など寝て過ごそうと思っていた俺の思惑を良い意味で覆す、実践的でとても良いセッションだった。

 マコのリーダーシップは社会人になってますますその力を伸ばしたらしい。セッションの最中、高校時代に実行委員会で全校行事をまとめたり、サッカー部でのごたごたをまとめたりしていたときの姿を彷彿させるようなすばらしい進行役を果たし、参加者はもちろん、ワークショップのプレゼンターからも絶賛された。帰りにはたくさんの名刺をもらってとても嬉しそうにしていた。

「すごい名刺だね、マコ。そのうちどこかの会社から引き抜きに来るんじゃない?」と俺が言うと、

「あたしは今の公務員の仕事が好きだから、企業には行かないと思う」

 マコは即答でしかもあっさりと答えた。そのうちマコがプレゼンターのセミナーにでも参加することがあるかもしれない、そんなことが容易に想像できる。

「こーじ、晩御飯一緒に食べに行かない? 久し振りだし」
「そうだな。俺、昼食べなかったから腹減ったかな」

 俺もマコともう少し話をしたいと思っていた。駅前の地下にレストラン街があるからそこに行こうと研修会場を後にした。

 マコの学歴は俺とは比べ物にならなかった。俺が知っているのは高校を卒業して、女子大に入ったところまで。

 そこから交換留学生としてオーストラリアの大学に1年、それからイギリスの大学に1年、日本の大学に戻り卒業してから別の大学の大学院に入り、省庁に勤めながら今も勉強中で、来年はアメリカの大学院に留学するのだという。

「本当はオーストラリアの大学院に行きたかったんだけど、上がアメリカに行けって言うからさー」
「それって、外務省の学歴じゃね?」
「そうなの? ま、仕事の参考になるなら何でも良いのよ。今日の研修会も良かったよねー。まだまだ学ぶことがたくさんあるって感じ」

 いや、今日のはむしろ俺も含めてセッション参加者の方がマコからいろいろと学んだように思うのだが。きっと彼女は官僚エリート候補なのだろう。高校時代からすでに只者ではない雰囲気はあった。

「こーじだって、あのリーダーシップの研修会に来てたって事は、会社から将来の会社幹部として期待されてるって事なんでしょう」
「そんなんじゃねぇよ」

 俺は会社ではただの平社員で営業以外の肩書きはない。後輩は出来たけど、先輩後輩というよりも、同僚だな。仲間かな。みんな仲が良いし、職場は明るい。

 マコにそう言われて改めて考えてみると、何で俺がこの研修会に行くように言われたのかわからない。ただ課長に行けと言われたから来た、それだけだった。

 思い出してみると、今日の研修会、特に午後のワークショップの参加者は、すでに役職についていそうな人たちばかりだった。まあ、マコは特別として、俺くらいに若いのはほとんどいなかったような・・・

 プルルル・・・

 食事も終わり、最後のコーヒーを飲んでいたら携帯が鳴った。

「ごめん、マコ」

 電話に出ると、部長だった。

 ―――何で部長から?

 課長には良くしてもらっていて、仕事を一緒にすることもよくあるが、部長とは・・・

「わかりました。明日は7時に出勤します」

 マコが心配そうに俺の顔を覗いている。

「マコ、ごめん。俺、仕事で急ぎの用事が出来ちゃった」

 もう少しマコと話をしたかったが、行かなくてはならない。

「今日は楽しかった。マコに会えて良かったよ。仕事と勉強がんばれよ」

 最後に急がせてしまったお詫びにと、食事代は俺が払った。そうでなくても俺が出すつもりではいたが。

「あたしも楽しかった。今日はありがとう。こーじも仕事がんばってね。行く前にメアド交換して」

 マコを駅まで送ってから俺は会社に向かった。



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   月曜日、タダでは終わらないのでしょうか。

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 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

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Comment

Name - fate  

Title - すごい女の子!

主人公の素朴さのようなものと、マコちゃんの人間的魅力と共にそのキャリア! 良いなぁ!

なんか、これ、テンポが良いですな~(^^)
世界に入り込み易くて、気持ちが良いです。
また来ま~す!!!

2011.11.10 Thu 19:37
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: すごい女の子!

fateさん、コメントありがとうございます。

マコには思いっきりキャリアになってもらいました(笑)

素朴な青年の晃次くんが、
とんでもない一週間を送るお話はまだ始まったばかりです。

fateさんに楽しんでいただけますように。
またお越しください^^
2011.11.10 Thu 20:52
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

まあ、確かに公務員は公務員で向いている人はいますからね。
堅実な仕事かつ社会のための仕事。
・・・というのが向いている人はいます。
マコさんはそういうのが向いてそうですね!!

・・・大昔は営業の仕事をやっていましたが、それは向かなかったな。。。やっぱり人を助ける仕事の方が性に合ってます。私は。
( 一一)
2015.07.04 Sat 09:23
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

再びのコメントありがとうございます。

マコは好きで仕事をしているので、公務員でなくても成功しているかもです。
でも、公務員が一番合う、というところでしょうか。キャリアです。

LandMさんの人助けのお仕事はどんなのかなあと想像するばかりです。
大昔に営業ですか。それは想像に難しいかも(笑)
2015.07.04 Sat 14:08
Edit | Reply |  

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