オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

秘密の花園 第二章 3 見舞い(1) 

 次の日からは、検査検査だった。

 CTスキャンやMR検査、顔面のレントゲンと頚椎の検査、左目の検査と右目のチェック。上半身の打撲など、軽いほう扱いだった。

 幸いなことに、脳からの出血も異常も無く、頚椎と右目も検査はクリアだった。左目から多少の出血があり、白目の部分が鬱血していたが、視力には影響なさそうとのこと。手術をしないといけないのは鼻の骨折だけで、後は大きな問題は無かった。

 数日後、俺はICUから一般病棟に移り、ベッドから体を起こすこともできるようになった。

「お前のバイト、居酒屋じゃなかったのか?」
「は? なんで?」

 今日も田島が見舞いに来ていた。母が連絡を取ってから、毎日来てくれている。

「渋谷でボクシングしてたとは聞いてないぞ。その細っこい体を鍛えるつもりだったのか?」
「田島、面会時間終了。みんなによろしく」
「冗談だよー。わかるでしょう」

 ―――そのジョークは、はずれだ。

「それにしても、頭に異常がなくて良かったよな。でもまだ目が赤いのと、顔の青痣は凄いな。まだ痛いよな」
「俺は見えないからわかんないし、痛み止めで感覚も無いよ」

 田島は毎日病院に来てくれてはいたが、今までは検査の時間と当たってしまったりしてゆっくり話すことができなかった。でも、今日はできそうだ。

「鼻、骨折だもんな。それ聞くだけで、こっちが痛いよ。お前、どんだけ殴られたんだ?」
「さあ。知らねえ」

 田島は母から色々聞いているらしく、怪我については俺より詳しく知っているんじゃないかと思うほどだ。俺の方は気がついたら病院だったし、あの時の状況については、ほとんど覚えていない。

「最初の数日、ICUに入ってて面会謝絶だっただろ、お前どうなっちゃうんだろうって、すっげー心配してたんだぞ。カフェのマスターなんか、俺が知らせに行ったら即店閉めてここに飛んで来そうなくらいの勢いだったぞ」
「そんなに心配してくれたのか」
「当たり前だ。ったく」

 そう言うと、なぜか急に田島は目をそらして、下を向いてしまった。

「どうした田島? 具合でも悪いのか?」
「え? ああ、俺はこういうのはダメなんだ。お前のせいだ」

 顔を上げた田島は、今にも涙を零しそうな真っ赤な目をしていた。

「悪かったな。お前が血とか、青痣とかに弱いとは意外だな」
「いや。血、とかじゃないんだ」

 ズズッと鼻を鳴らす田島は、何だかいつもと様子が違う。

「大丈夫か?」
「花園、生きててくれて良かった。本当に生きててくれて」

 田島が目を押さえ、言葉を詰まらせる。いつもは明るく陽気なこの男が、泣くほど俺のことを心配してくれているのだろうか。なかなか良い奴じゃないか。

「お前も左手、大丈夫か? まだ痛むか? あの時もすごい痛がってたけど?」
「いや、こんなのはお前の痛みと比べたら、大したことじゃない。もうだいぶ治ってきているし」

 テニスサークルのドライブに行ったときに、鎌倉の海岸で怪我をした田島の左手は、もう包帯ではなく、絆創膏を押さえるためのサポーターをしているだけだ。

「花園、俺、高校の時に、友達が病院で亡くなっているんだ」
「高校の時?」

 ゴシゴシと目をこすってから、田島が話し始めた。こいつの高校時代のことなんて、初めて聞く。

「そう。だから、友達が病院に担ぎ込まれるのは、トラウマなんだ」

 そうなんだ。マメに見舞いに来てくれているのは、そんな経験があったからなのか。その高校の友人と俺とが、田島の中でシンクロでもしているのだろうか。

「へえ、お前、意外なところが弱いんだな。何でそいつは亡くなったんだ? 俺みたいに喧嘩に巻き込まれたとか?」
「うん・・・喧嘩した。でも殴ったわけじゃない」

 ―――はったりで言ったつもりが、当たりか?

「じゃあ、どうして?」
「いや・・・とにかくそいつが死んだのは、俺のせいだから」

 田島は、話しを塞ぎ込むように俺から目をそらして、暗く黙ってしまった。

「お前のせいで? ま、詳しいことは聞かないけど」

 田島のこんなに暗い表情は初めて見る。今までお互いに仲の良い友人のつもりでいたけれども、まだまだ俺の知らない田島がいる。そんなことを、今更ながら思う。

「俺がここに入院したのは、お前のせいじゃないぞ」
「え、そうだよな。昔のことだ。悪い」

 田島は「ふっ」と小さくため息をついて、窓の方を向いた。その目に外の景色は映っていないように思えた。

「とにかく、お前が死ぬようなことにならなくて、本当に良かったよ」

 ほんの少しの沈黙の後、田島は俺の方を向いて言った。

「だから、それ、大袈裟なんだよ。心配するな。俺は簡単には死なねえ」

 俺がそう言った途端、田島は大きく目を見開いた。

「花園! それ、本当だよな。本当だよな!」

 田島の声が急に荒くなり、俺に掴みかかるのではないかと思うほど近づいてきた。



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   どうした、田島・・・!?

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読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
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Comment

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2015.02.02 Mon 00:26
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Name - けい  

Title - 鍵コメさん

コメントありがとうございます。

そ~なんです。なんちて。
意外にこんなヤツほど暗かったり?
田島と徹さんの付き合いは今年からとまだ浅いのですが、これからぐっと仲良くなる模様・・・
田島の今後も気にしていただけると嬉しいです^^

アジアカップ終幕しましたねー。豪州の優勝で嬉しいです。
応援は、面白いですね。見てるのが^^
W杯はマジで考えているのではないでしょうかね。

サッカー人気は今一つですが、今回は決勝までいって、優勝したのでかなり盛り上がったのではないでしょうか。
実はオーストラリアンオープンの女子シングルスの決勝と時間がかぶったのですが、私はサッカーの方を見ました。Ausの決勝だったので^^
2015.02.02 Mon 17:31
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Name - LandM  

Title - No title

ちなみにこういう検査とか治療をしている医療関係者から見ると。

バカな事件に巻き込まれてお気の毒。。。
・・・と、心の中で思っているのは秘密です。

たまに働いているといるので、よく思ってます。
スイマセン。。。
2015.11.14 Sat 08:03
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

そうそう。外部のことに巻き込まれてしまうのって、リアルで普通にあるんじゃないかと思います。
LandMさんはお仕事でよく見かけられるのですかね。
医療関係はホント痛そうでお気の毒ですね(><)
LandMさんご自身もご自愛くださいね。
2015.11.14 Sat 09:18
Edit | Reply |  

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