オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 3 第一章・過去の記憶(3) 

「お、田島。珍しく遅刻しないで来たな。のど大丈夫か?」

 いつもはサボっている一限のゼミに、久しぶりに田島が顔を出す。

「ちゃんとお前の言いつけを守って、蜂蜜飲んで、十時半なんて信じられない時間に寝た。褒めろ」
「はいはい、よくできました」

 表向きは、いつもの元気で明るい田島に戻っているようだけれども、本当のところはどうなのか。田島を見つめる花園が目を凝らす。

「花園、就職のことでちょっと聞きたい事があるんだけど」
「お、やっとその気になったか。今日ゼミの後、午後から一つ説明会があるけど、一緒に行く?」
「じゃあ、今日はやめとく。時間があるときに声をかけてくれ。じゃ」
「え? どこ行くんだよ」
「まだのど痛いから、家に帰って休むんだよ。じゃあな」

 結局、田島は花園に姿を見せただけで、せっかく大学に来たにもかかわらず、講義にも出席せずに帰ってしまった。

「何しに来たんだ、あいつ?」

 就活のことなら電話でもメールでも相談できるのに。田島が何を考えているのか気になる花園だったが、自身の就活で忙しく身動きが取れなかった。

 田島は一人暮らしをするユニットに戻ると、部屋にある押入れの最奥に押し込めてあったものを引っ張り出した。自分の目の前に降ろし、しばし眺める。ゆっくりとその黒いケースを開けると、懐かしい匂いがした。

 中にはギブソンのアコースティック・ギターが収められていた。木目を残したナチュラルカラーのボディーも、ダークブラウンのべっ甲柄のピックガードも、以前と全く変わらない。

 マホガニー(材)のネックをつかんで、ギターをケースから取り出した。ベッドに腰掛け、両手で抱え、弦を調節する。田島がこのギターを手にするのは、高校卒業以来だった。

 大学進学のために実家を出るとき、持っていこうか置いていこうか、散々迷った。結局持ってはきたものの、今のこのときまで抱えることは無かった。

「いけるかな」

 田島は、準備運動をするように指を宙で動かすと、ピックをつまんだ。注意深くチューニングをしてから、クラッシック・ロックのイントロを軽く流してみる。

 田島の弾くギターの音が、以前と変わらず、歯切れ良く心地良く響いた。

「良いかも」

 大きく深呼吸をする。目を閉じ、頭の中にある旋律を思い出して、軽く演奏を始めた。その曲は、かつて自分が作り、何度も演奏していたオリジナル。弾きながらハミングで旋律を追う。

「瞬・・・」

 一曲弾き終わると、田島は涙を流していた。手の甲で涙をぬぐい、二曲目を始める。

 今度は歌おうと、イントロの終わりで息を吸う。ちょうどそこで突然弦が切れ、不協和音とともに演奏が途切れた。歌う代わりに小さくため息を吐く。

「これはまだ歌えねえ。お前にもそれが分かっているんだろう、瞬?」

 思わず声に出して聞いてみた。もちろん、返事はない。ふと現実に戻る。何年も弾いていなかったどころか、ギターのケースを開けることさえしなかったのだから、弦が痛むのは当然だ。

「今、何時」

 誰に向かうともなく呟く。まだ昼を少し過ぎたところ。

 田島はギターケースの内ポケットを探り、一枚の雑誌の切り抜きを取り出した。そこにある写真を見るのも、記事について思い出すのも、高校卒業以来だ。

 写真の中の高校生三人は、幸せそうなとびっきりの笑顔でこちらを見ている。一人一人と目を合わせると、田島の心の奥から、甘いような苦いような記憶が流れ出てきた。

 高校時代、田島は軽音楽部に所属し、部員で友人の二人と3ピースバンドを組んでいた。そのバンドで、田島はボーカルをしていた。

 高校三年。田島たちのバンドは、全国のアマチュア高校生バンドを集めて行われた某テレビ局の『バンド甲子園』というオーディション番組に応募した。

 地方予選から始まった審査は数ヶ月にわたり、好評を博した田島たちのバンドは最終的に他バンドを押さえて全国優勝し、番組からのデビューの話が決まっていた。



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 何か紐解かれていきそうな雰囲気?


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - LandM  

Title - No title

こういう実写描写の話は好きですね。
就職活動していた頃を思い出しますね。
なかなか一つ一つの光景が馴染みがあって思い出されます。

どうも、初めましてです。場末でファンタジー小説を書いているLandMと申します。最近は自分の小説をゲームにしたりもしてます。

こういう話は好きなのでまた読ませて頂きますね。
2011.10.15 Sat 08:32
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

お越しくださり、ありがとうございます。

現代物のストーリーってことで頑張っています^^

LandMさんはファンタジーですか。
ファンタジーって、描く方は、
どうやってその世界観を広げられていらっしゃるのだろうかと
その想像力の深さにとても感心しています。
しかもゲームですか。すごいですね。

こちらには是非是非またお越しくださいね。
2011.10.15 Sat 13:21
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - つながっているんですね

花園くんがまた出てきて、なんだかなつかしくて嬉しいです。
ものすごーくリアリティのあるお話ですよね。

けいさんもロック好きでいらっしゃるんですよね?
ネットで知り合ったロック好きの方、特に男性は必ずといっていいほど、ディープパープルとその一派みたいなあたりがお好きで、ディープパープルを知らないと男性とはロックの話ができないなぁ、と。
昔、ディープパープルのカセットを送ってくれた男の子がいたけど、彼はどうしているかな、と。

次々に思い出してしまいます。
私もロック好きです。
ミーハーですので、メジャーどころしか知りませんけど、エレキギターを聴くと血が騒ぎます。

バンドをやっていた男の子、いいですねぇ。
その設定にも血が騒ぎます。
2012.09.19 Wed 11:04
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: つながっているんですね

あかねさん、コメントありがとうございます。

はい。つながっているような・・・
メインキャラを変えているので違うお話と見ていただけると嬉しいです。
徹さんは、今のところ全作品に登場中(^^;)

> ものすごーくリアリティのあるお話ですよね。

とっても嬉しい褒め言葉をありがとうございます^^
(↑褒められて伸びるタイプ)

ロック、好きですねぇ。ポップスも好きです。パンクも。ヘビメタも。カントリーも。
実は歌謡曲も大好き。てか、何でも好き^^

へえ、おもしろいお話をありがとうございます。
最近はどうなんですかね。

田島はかつてバンドをやっていた子。
その子がどうなる、ってお話です。
長いんですけど、宜しくお願いします^^
2012.09.19 Wed 21:15
Edit | Reply |  

Name - 想馬涼生  

Title - 学生時代に音楽やってる人多いですね。

私の周りにもいました。けどみんな遊びの範囲ですね。私もやりたいなって思いつつも、きっかけがなかったです。

田島は結局商社に入るようなので、最終的には就職活動するんでしょうが、これはどうやって就職活動するのか描かれると言う訳ですね。

私が最初読んだ作品から時系列が逆行してますが、こういった場合はそれにたどり着くために描くのが大変ですね。
映画で言えば「スターウォーズ」のアナキン三部作のようなものですね。

サッカーですが、なでしこはリオ五輪予選敗退となりました。そしてリオに進むのは豪州と中国です。
豪州は女子も強いですからね。

男子は最終戦でヨルダンに5-1のリベンジをして最終予選進出です。最終予選で日本と当たるかもしれないですね。
2016.04.02 Sat 15:12
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 学生時代に音楽やってる人多いですね。

想馬涼生さん、コメントありがとうございます。

私の周りにもいました。もっと仲良くしておけばよかったと今更思います(-_-;)
田島はこの先色々な活動をしますので、どうぞよろしくお願いします。

お。時系列。そうですね。「スターウォーズ」すか。
いえ、こちらはかの映画のような一貫した壮大なテーマはなく・・・(汗 -_-;)
お気楽に見ていただければと(^^;)

ああ、女子も激戦なのですね。きびしい・・・
じゃあ、Ausをよろしく(ってすみません><)
男子はプレッシャーもあって、相当大変かもしれませんが、是非頑張ってほしいです。
一言では語れない世界ですが、総合力を付けてチームでドカンといけると良いですね。
遠くからですが応援しています^^
2016.04.02 Sat 21:15
Edit | Reply |  

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