オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 7 第一章・友人の訪問(1) 

 夜、田島のユニットで“ピンポーン”と呼び鈴が鳴った。ドアを開けると、のど飴を手にした花園が満面の笑顔で立っていた。

「オレンジのが、のどに一番良いはずだ。それから新製品らしい柑橘系ミックス、とかいうのも買ってきたから試してみて」
「花園、どうして?」
「俺になんか話し、あるんでしょ」

 友人の突然の訪問に、田島は目を白黒させる。その田島の脇をするりと抜けると、花園は勝手分かったように部屋へ上がっていった。

 まあ、この友人が予告なく現れるのは、今に始まったことではない。田島も慣れたように玄関を閉めた。

「花園、話しって別に今日じゃなくても」
「俺は今日しか時間が無いの。お前と違って、色々と忙しいから俺は」

 花園はそう言いながら、缶ビールやらつまみやら、のど飴の他に買ってきたものを手早くテーブルの上に並べた。

「田島と一緒に飲むのも久々だな」
「お前が就活で忙しいとか言ってるからさ」
「そうかそうか。放っとかれて寂しかったか」
「なわけねえだろ」

 明るく笑い声を上げると、花園は「とりあえず、乾杯」と早速ビールの缶を開けた。最近元気の無かった田島のことを、花園はずっと気にしていた。今日は、その話を聞きに来たのだ。

「で、田島、話って何?」

 田島は上目遣いに花園を見ると、ビールを手にしたまま観念したように肩を落とした。大きな体に似合わない、ためらいがちな小さな声で「就職のこと」とボソッと告げる。

「花園、今日の会社説明会、どうだった?」
「良かったよ。人がいっぱい来てた」

「ふーん」と鼻で答えると、田島はさらにビールを一口喉に通してから、ボソボソと花園に聞き始めた。

「お前さあ、確か前に、海外で留学する夢がある、って言ってたよな」
「ああ、それね」

 花園はその夢を叶えるために、バイトを二つ掛け持ちして資金を貯めていた。

「その夢、どうなった? 就職するってことは、その夢をあきらめたのか?」
「いや、あきらめたわけじゃないよ。いつか留学する」
「いつかって、いつ?」
「分からないよ。俺、去年怪我して入院しただろ。あれで計画がかなり狂った」

 花園は、バイトをしていた居酒屋で、客同士の喧嘩に巻き込まれて大怪我を負った。長期入院を余儀なくされ、バイトは中断、大学もしばらく休学した。

 当時田島は、花園の見舞いに毎日病院を訪れていたので、そのことは自分のことのようによく覚えている。

「病院から退院した後も、バイトに復帰できるまでには結構時間がかかったからね。留学するだけの資金が貯まらなかった」
「そうか」
「留学はあきらめたんじゃなくて、延期かな。就職して、三年くらい働いて金貯めて・・・それできっと行けるよ」
「仕事を始めたとして、そんなに簡単にやめられるのか?」
「分からないけど。まあ、そのときになってやりたいことを選ぶよ。留学したければするし、仕事したければ続けるし」

 田島は軽く「ふーん」とだけ相槌を打つ。他人の夢などには興味がなさそうな素振りを見せる田島のことを、花園は探るようにじっと見つめた。

「田島、夢っていうのはな、叶えるためにあるもんなんだぞ」
「いやいや、夢っていうのは大抵叶わないものなんじゃないのか? だから夢なんだろう?」

 普段の田島は明るくポジティブなのに、やはりいつもと違う。まず、元気がない。田島を観察しながら、花園は続ける。

「俺的には違うな。叶わないものなど、始めから夢見ない。『叶う』というより、『叶える』という方が近いかな」
「夢なんて、俺にとっては儚く消えていくものだ」
「それは違うな。夢っていうのは、叶えたいって思えば必ず叶う。それを信じることで夢は叶う」
「ムズカシ・・・それこそ夢物語だな。俺にはわからねえ」

 田島の視線は花園にはなく、田島は空いたビールの缶をバリっとつぶした。

「俺の場合は、仕事を選んだからといって夢をあきらめる、ってわけじゃないんだよ。夢を叶えるために仕事をすると思えば、就職も夢につながるんだ」
「良いよなー、お前にはそんな熱く語れる夢があってさー」

 花園の話を聞いているのか、いないのか。田島は、ぶっきらぼうに言い返す。いまひとつ視線が合わないのだけれども、それは酔い始めているからではないはず。

「ま、海外留学なんて、そんなに大げさな夢でもないよ。誰にでもできることだ」
「いやいや、俺にはできないぞ。英語が。金も。だいたい、俺は外国で勉強する気なんかないな」

 だったら、お前は何をしたい。という言葉を用意し、花園は苦笑でごまかす。

「だからやっぱり、花園がやろうとしていることは、凄いことなんだよ」
「それはどうも。ま、今のところはそんな訳で保留だけどさ」

 田島は「そうか」と目を伏せ、表情なくまたビールを口にした。

「田島、お前はどうなんだ? 夢とか無いのか? やりたいこととか?」

 田島が、ちらりとだけ花園に目を向ける。その視線を捉え、花園は続ける。

「そのことで、何か話したいことでもあるんじゃないのか?」

 花園の言うことに、田島は何も答えない。缶に残るビールを飲み干すと、また新たな一本に手を伸ばした。



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 田島に探りを入れる徹さん・・・


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - LandM(才条 蓮)  

Title - No title

意外に夢っていうのは願い続ければ叶うものですよ。それに向けて何かをし続ければ。私も小学生の頃からずっと毎日小説書いてますしね。今ではその小説をゲーム販売したりしてますから・・・まあ、何かの形で叶うことは叶いますからね。
2011.10.21 Fri 08:34
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandM(才条 蓮)さん

コメントありがとうございます。

ホント、おっしゃる通りです。

小学生の時から小説書いている、って・・・すごいですね。
夢を叶えた上に、ビジネスにつなげているなんて、理想ですね。

ポイントは、願い続けて、なにがしか続けることでしょうかね。
2011.10.21 Fri 15:31
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

家飲み~~~。
一人暮らしをやっているときはよくやってましたね。
あの時はあの時で楽しかった。。。
(*´ω`)

くだらないことも大事なことも家で友達と馬鹿しながら話し合ったのを思い出す。。。
(´▽`*)
2016.01.09 Sat 13:30
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

家飲み~~~^^ 時間を気にしなくて良いのが良いですよね。
LandMさん、よくやっていたのですか。
私は自宅だったので、お邪魔する方だったのですけれど、楽しかったぁ~。
そうそう。くだらないことがすごく大事だったあの頃~。
良い思い出です^^
2016.01.09 Sat 18:23
Edit | Reply |  

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