オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 8 第一章・友人の訪問(2) 

 普段の田島は、酒を飲むと陽気になり、花園よりずっと饒舌にしゃべるのだけれども、今夜はいつもと全然違う。口数は少なく、ビールを飲んでばかりいる。

「ま、無理に就活しろとは言わないけど、最近お前、大学にも来ないし。これでもちょっとは心配してるんだぞ」
「わかってる。悪いな。わざわざ家まで来てくれたのに」

 あまり話さない分、田島のビールを飲むペースがいつもより早い。花園の話を聞きながら、一人で何本もあおっている。少々ハイペースなのではないかと思うほどだ。

「田島、お前、本当は何かやりたい事があるんじゃないのか?」

 田島はさらに花園の視線を避けるように、無言で飲み続ける。表情がなく、目の色もない。

「あるんだろ。やりたいことがさ。だったらそれを始めろよ」

 ガンガンに飲むだけの田島に構わず、花園は話し始めた。

「やりたいことがあっても何もしないんじゃ、何も起こらないでしょう。やりたいことがあるなら、何かを起こさなきゃ。まあ先ず、何をどう起こすのかってところだけど」

 田島は、飲んでばかりで何も答えない。視線も合わせない。けれども、話は一応、耳にしているはず。花園は続ける。

「どこかのビジネス本に書いてあった、アイデアをビジョン化するっていうの、良いぞ。俺のは、就職して、仕事しながら金貯めて、時期を見て退職して・・・どこか海外の大学でMBA(経営管理学修士課程)を勉強している自分をイメージする。とりあえず、俺のビジョンはそんな感じ」

 花園も一息ついて、ビールを口にする。

「結構クリアだと思う。だから、俺の留学の夢は叶わないはずが無い」
「へえ、すげえな」

 花園の話に、田島の視線が少しだけ戻る。それを逃さぬように捉える。

「もっとビッグな夢にしておけば良かったかなあ? 大きい方が叶えがいもありそうだし」
「いや、十分にビッグだよ。ビジョンってところが特にビッグ」
「ま、どっちにしても自分の夢を叶えるために色々考えているし、動いているし、見てもいるよ」
「さすがだ。参りました」

 田島が反応を示し始めたところで、花園は少し身を乗り出した。

「田島のビジョンは何だ」
「俺の?」
「それに向かってどう動く? 言ってみろ」

 田島のペースが止まった。花園に向かう瞳が、かすかに揺れている。頭の中にあるものを見ているのだと花園は確信する。

「田島、夢を夢見てるだけでは、何も起こらない。はじめの一歩は、簡単なんだ。簡単なのに、それをしない。なんだかんだ理由をつけて、できないとか言って、踏み出さないんだ」

 花園は、目の前の田島を自分の中に取り込むように、強く鋭く睨みつけた。

「俺はお前のことを言ってるんだぞ、田島。お前、たったの一歩を踏み出す、ちょっとの勇気が無いだけなんだろう。まさか、できないとか思ってるんじゃないよな。どうなんだ」

 缶を持つ田島の手が、小刻みに震える。もちろん、ビールで酔っているせいではない。

「夢は誰かに叶えてもらうものじゃないんだ、田島。自分で叶えるもんなんだよ。分かるか」
「分かるよ!!」

 急にムキになって強く言い返すと、田島は空になったビールの缶をバリバリと握りつぶした。

「分かってるよ。何で花園まで、同じこと言うんだよ」

 つぶした缶を握り締め、胸の中の何かを搾り出すような声で田島が呟く。花園は、田島の言ったことの意味が分からず、眉を下げてしばし沈黙した。

 バシン!!

「いってぇー! いきなり何すんだよ、花園!!」

 背中の痛みにのけぞり、田島は眉を吊り上げた。 

「始めの一歩だよ。いつまでもグズグズしているから、喝を入れてやった。俺が背中を押してやるんだからうまく行く」

 田島の背中を平手で叩いた花園は、涼しげに返す。

「お寺の和尚か、お前は。しかもそれ、『押す』じゃなくて『叩く』だろ。ってぇなあー」

 田島は後ろ手を突いて背中をのけぞり、大げさに痛がる。それを無視して花園は続ける。

「そんなことはどうでも良い。シケたこと言ってねえで、素直に友だちの言うことを信じろ。俺の言うことを信じとくと、とびっきりの良いことが起こることになっている」
「何だそれ?」
「ちなみに根拠はない」
「わけわかんねえ」

 眉間を寄せたまま田島は「飲みすぎた」とつぶやくと、ゆっくりと立ち上がった。

「俺に説教されたくらいで折れんなよ」
「折れちゃいねえよ」

 田島はキッチンに向かうと水道の水をコップに注ぎ、ゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。

「花園、お前も水飲むか?」
「いや、俺はまだアルコールでいける」

 花園は、勝手知ったようにキッチンの引き出しを探る。ワイン・オープナーを見つけると、持参したワインを開け始めた。

「お前、ギターなんか持ってたっけ? 中古でも買ったのか?」

 花園は、ワインボトルのコルクを引き抜きながら、ふと部屋にあるギターケースに気がついた。今まで何度も田島のアパートを訪れた事はあるけれども、ギターが置いてあるのなんて見たことがない。

 田島はそのギターケースを開けると、中から音楽雑誌の切抜きを取り出し、花園に見せた。

「花園、俺の夢はこれだった」
「お前の夢? だった?」



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 徹さん、田島に喝を入れました。


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - LandM  

Title - No title

私もアレですが、働き続けて数年で改めて自分の道というのを考えるときはありますね。自分が何に向いているか・・・というのは結局、働いてみて見つけるときもありますからね。働き続けて自分はコレに向いているな~~~と思って、貯金を集めて改めて大学に通う人もたくさんいますからね。よりスキルをもとめて。人生は長いですからね。
2011.10.26 Wed 08:04
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

そうですね。私は考えて、動いちゃったほうです。
大学も、、、学部で4年、パートタイムで2年、その後フルタイムでまた1年行って、もう勉強はいいっていうくらいして、今は全く勉強しない(汗)

って、なんでLandMさん、私の人生パターンがわかっちゃったんですかっ(笑)

長い人生、楽しんで行きたいですね^^
2011.10.26 Wed 18:40
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - いい友達だなぁ

長谷川くんが死んでしまったときには私もショックでしたが、そんな経験も乗り越えて、人は大人になっていくのだと。
そういう側面もあるんですよね。

そして、すこし大人になった田島くんには、友達のことを親身になって考えてくれる花園くんがいる。
いいなぁ。

まあ、おばさん、いえ、お姉さんもがんばります。
今さら、とは言わずに。。。
2012.09.28 Fri 17:26
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: いい友達だなぁ

あかねさん、コメントありがとうございます。
コメ返がおくれてすみません。

まだ大人になり切れなくて悶々としている田島です。
徹さんと話をすることで何かをつかんで欲しいところです。

お姉さま、今さら? 全然!
It's never too late!
2012.09.30 Sun 22:08
Edit | Reply |  

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