オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 9 第一章・友人の訪問(3) 

 渡された雑誌の記事に目をやると、そこには花園にも覚えのある写真がいくつか載っていた。

「あ、これ知ってる。『バンド甲子園』だよね。お前もこれ見て、バンドでもやろうと思ったのか」

 何年か前のその写真を手に、花園は懐かしそうに目を細めた。

「このグループ、残念だったよな。せっかく優勝して、デビューするはずだったのに。これやってたの、何年前だっけ?」
「この番組、見てたのか?」
「見てたよ。すっげー人気番組だったじゃないか。このギターの奴だろ? 交通事故で亡くなったの。高校生だったのに、めちゃくちゃカッコ良かったよな。同じ年には見えなかった」
「こいつは長谷川瞬」

 写真を指差す田島の声が、少し明るくなる。

「『バンド甲子園』で優勝したのも、このギターが大きかったよな。こいつだったらプロでもやっていけるんじゃないか、って思いながら見ていたよ」
「瞬は才能もあったし、すっげー良い奴だった。他のメンバーは?」
「ドラムも良かった。基礎がしっかりしていて、良く練習していると思った。いつも楽しそうに叩いてる、って印象だったな」
「良く見てるな、花園。こいつは鏡成太郎。子どもの頃からずっと和太鼓をやってきたやつなんだ」
「へえ、お前も良く知ってるなあ。ファンだったのか?」

 田島は小さく笑って間を置いてから、もう一人のメンバーについて訊ねた。

「ボーカルは?」
「んー、ルックスはまあまあ。歌はうまかった。高校生のやんちゃな感じはあったけど、パフォーマンスは良かった」
「へえ」
「でもやっぱりこのバンドは、ギターのやつが一番良かったよ」

 田島は、花園の解説に苦笑しつつ、説明を続ける。

「瞬は、バンドでデビューするよりも、大学に行きたがっていたんだ」
「そうなんだ。デビューしていたら今頃、すっげービッグになってたんじゃないか?」
「さあ、どうかな」
「高校の卒業式の時、友だちに遺影を抱かれて卒業証書を受け取った、ってニュースも見たよ。悲劇のバンドだったよな。他のメンバーは、今どうしてるんだろうな」
「今は普通の大学生だよ」
「どうしてお前が知ってるの? まさかいまだに追っかけでもしてるのか」
「ったく、花園。お前ホント天然だな。ここの記事を読め」

 田島は、メンバーの名まえが紹介されている部分を、ポンポンと指差した。面倒くさそうにそのくだりに目を向けた花園が、とたんに田島に振り返った。

「田島、ショー・・・ゴ、ボーカルの・・・って、えっ!?」
「やんちゃかよ」
「マジ?」

 花園は、記事の写真と田島の顔とを、視線が突き抜けるほどに何度も見比べた。

「お前、ホントにこのバンドの? マジかよ。けどお前、なんか・・・顔、違くね?」
「顔? 顔は別に変わらないでしょう」
「いや、目つきとか、全然違うな」
「髪型は違うけど。この頃はずっとロン毛だった。染めてたし。あと、今より少し痩せてたかな。お前ほど細くはなかったけど」
「いや、そういうんじゃなくて。何かこう、写真なのに気が迫ってくるみたいな」

 記事には『バンド甲子園』のグランドファイナルの写真がいくつも載っていた。そこに写っている田島は、演奏している写真も、メンバー三人が並んでいる写真も、花園の知っている田島とは全くの別人のように見えた。

「ちなみに、高校の卒業式で瞬の遺影を抱いて卒業証書を受け取った級友、ってのは俺だ。その時は今より短髪」
「えー!? あのニュースの映像をテレビで見て俺も泣いたよ」
「お前が? 意外だな」
「日本中が泣いたよ」
「それは大げさでしょ」

 バンドは、テレビの人気オーディション番組で優勝して、デビューが約束されていた。マスコミからの注目度も非常に高く、番組終了後もずっと取材され続けていた。そんな中で起こったバンドの悲劇に、世間の好奇心が集まった。

「バンドデビューの話しは、どうなったんだよ」
「ん? 当時のニュースの通り、ギターの死により流れた」
「そんな簡単に? あんなに人気があって注目されていたのに?」
「お前も解説していた通り、バンドはギターの瞬が支えていたようなもんだったからさ。瞬がいなくなったバンドには、世間もマスコミも興味がなくなったって事かな」
「田島の歌とパフォーマンスだって、すごく良かったよ。ソロの話しとかもなかったのか?」
「それは、ありえない」

 田島は、空気を遮断するように即座に答えた。

「ま、いいじゃないか、そんなことはどうでも。昔のことだし」
「デビューの話がなくなってから、田島はどうしてたんだ?」

 田島は、これでこの話を終わりにしたかった。けれども、反対に花園は、田島からもっと色々と聞き出したくなった。



にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
にほんブログ村  ワンクリックの応援ありがとうございます。 Thanks in advance!

人気ブログランキングへ  Thanks again for the click!




『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

Have a nice day!
関連記事
スポンサーサイト

Comment

Name - ヒロハル  

Title - No title

私も高校時代はバンドをやっていたので、懐かしく思います。
まあ、コピーバンドですけどね。

でもヴォーカルはなかなか歌が上手だったので、レコード会社に録音テープを送ったら、CDを出さないかって話が来たそうです。
ただその後は、輝かしいデビューを果たしたわけでもなく、何の音沙汰もなかったです。

先日、偶然彼のホームページを見つけ、メジャーではないけど、今は東京に行き(地元は大阪です)、音楽活動を続けていることを知りました。
こちらからメールを送ると、ちゃんと私のことを覚えていてくれて、
とても懐かしく、嬉しかったです。
でもそれ以上に嬉しかったのは、彼が今も音楽活動を続けていたことでした。

何か、そう考えると、「俺はしがないサラリーマンになったなあ」と悲しく思います。
あれから「プロの作家になる」という夢だけは見つけましたけどね。
(バンドは全く関係ない)
2011.11.19 Sat 13:18
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ヒロハルさん

コメントありがとうございます。

何と! ヒロハルさんも、バンド経験者ですかっ。
高校時代の貴重な思い出話をありがとうございます。
なかなかの実力派バンドにいらしたのですね。

ずっと音楽活動を続けていらっしゃるその方が
ヒロハルさんのことを覚えていらしたなんて、ちょっと感動です。

いやいや、リーマン万歳ですよ。
そういうベースがあるからこそ、ステップアップできるのだと思います。

ヒロハルさんの夢が叶いますように。
そのときは、えっと、サインと握手と記念撮影のほうを宜しくです^^
2011.11.19 Sat 17:07
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - 途中ご挨拶

ブックマーク代わりに、コメントを書いてしまう…という。
いえ、突然の交通事故はショックでしたが、なるほど、そんなことがあったんですね。
進路のことで友人とあれこれ会話を交わし、自分の中の何かを探っていく。その様子がいいですね。私は、もう学校自体がその先にはその職業しかない(大筋としては)という大学だったので、こんな風に自分はどうなるんだろう、どうするんろうという悩みの会話ってなかったんですよね…だから、ちょっと羨ましい感で拝読いたしました。
いや~、青春小説っていいなぁと。
会話の中であれこれ色んな要素が入っていて(これからどこへ行くのか分からない分、会話もあっちへこっちへいきつつ)、その中で自分の生き方を探っている感じが好きです。
2013.08.03 Sat 08:28
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 途中ご挨拶

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

私もよくやらせていただいています。
ブックマーク代わりに、コメントを書いてしまうこと(^^;)
『夢叶』の目次ページに各話のナンバーもふってありますので、そちらもよろしければご利用(?)ください。

そんなこんながあって、無駄に長いこの話(汗)
大海さんのご職業が気になりますねぇ。こっそり教えてください。
大学のときから見えていると、先が少しでも安心するのでしょうか。
ニュースで見かける就職の大変さなど、田島の悩みの比ではないと。

いや~、ホントに拙いお話をお読みいただき、申しわけない程に感謝です。
ジャンル青春で、クサ~く王道で進んでいきます。
あっちにもこっちにも、あちゃーが放置されておりますが、ぷ、と見守っていただければと。
2013.08.03 Sat 10:51
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

バンドで生きるっていうのは大変だな。。。
・・・と思います。
紅白に出たどこかの歌手が言っていましたが。
「音楽で食って行こうなんて、正気じゃない。」

・・・と言って、今は農業をされている方もいます。
そういう方がいるぐらい音楽で生きていくって苛烈なんでしょうね。
思い出もあるだろうし、色々と。
2016.01.16 Sat 20:33
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

音楽では食っていけないですよね。
Youtubeとかで素晴らしい演奏を見せるプロの方でも、食っているのは音楽ではなくバイトだと聞いて、もったいないと思ったことも何度か。
農業の方が生きていくにはよっぽど現実的ですね。

才能のある方はたくさんいらっしゃるのですけれど、才能があるだけで生きていけるかと言ったら難しいですね。
けど、元ネタ(?)になる才能がまず欲しいなあ、とか思う一般人のつぶやきでした(-_-;)
2016.01.17 Sun 08:15
Edit | Reply |  

Add your comment