オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 10 第一章・友人の訪問(4) 

「うーん、その後その高校生バンドは世間から無事忘れられ、俺は浪人後無事大学に合格し、友人の遺志をついで大学生となり、新しい秘密持ちの友人もでき、就職活動に悩む今に至る」

 田島が、面倒くさそうに答えた。

「田島は俺のことそうやって秘密秘密言うけどさあ、お前のほうがよっぽど凄い秘密、ずっと隠してたよな」
「隠していたわけじゃない。お前が気付かなかっただけでしょ」
「何で俺のせいになるんだよ、この秘密持ちがっ」
「やんちゃなもんで。ま、これが俺が浪人した本当の理由でもある」

 かつては時の人だった田島。花園にはいまだにそれが信じられない。

「やっぱ、田島、顔違う」
「そう?」
「今は全然さえねえな。ぶれてる」
「ライブでテレビに出てたときは、薄くメイクもされてたから」
「そういう意味じゃない」

 田島が顔を曇らせる。どういう意味か、なんとなく分かる。けれども、あえて気づかない振りをする。

「夢破れて浪人、か?」
「そういうのとは、ちょっと違うかも」
「あきらめたのか?」

 田島の持つ心のわだかまり。その核心を打つように花園が問う。田島は、言葉にして答えることができずに口ごもる。

「就職も浪人か」
「就職は考えていないから、浪人ではないかも」
「どうするんだ?」
「わからない。わからないから、こうしてお前に相談している」

 田島が眉間を寄せ、難しい表情を見せる。ふと花園は、以前に聞いた田島の高校時代の話を思い出した。

「そういえば田島、俺が去年怪我で入院してたときに、病院で友達が死んだっていう話をしたよな。それって・・・」
「瞬のことだ」
「そうだったのか。でも、確かお前のせいでそいつが死んだ、って言ってたよな。喧嘩した、って。でもニュースでは交通事故ってことじゃなかったか?」
「俺のせいなんだ」

 田島は、遠くを見るような目をして大きく息を吐き、花園に事故の話をした。



「らしくないな、田島。お前、いつまでもそれを背負っていくのか。俺的にはそれはやっぱり交通事故で、お前のせいではないと思う」

 花園は、正直な感想を述べた。

「瞬の家族も成太郎も、みんなそう言ってくれた。でも、俺の中では瞬が死んだのはやっぱり俺のせいなんだよ。俺が馬鹿な行動を取ったから瞬が俺をかばって・・・」
「ま、そうやって、引きずるのも良いけど、そうメソメソして先に進めないのも良くないと思う。引きずるのも、吹っ切るのも、お前次第だけどね。お前の夢だったんだろ?」

 花園は、ふとすぐそばに置いてあるギターに目をやった。

「そのギター、お前のか?」

 田島は一瞬ドキッとした表情をしてから、「瞬のだ」と答えた。

「高校の卒業式が終わってから、俺は自分が持っていたギター、アコギもエレキも全部、学校の焼却炉で燃やしたんだ」
「燃やした?」

 花園が首を傾げる。高校時代を共に歩んできたギター、思い出もたくさんあるだろう、それを燃やしてしまうなんて。

「ギターを燃やすことで、バンドのことは、全て忘れたかった」

 高校卒業時、田島は瞬のために浪人して大学に行くと決めていた。バンドを続けたかった田島にとって、進学は大きな決断だった。

「焼却炉でギターを燃やして、気持ちは吹っ切れたんだ。けど、そのすぐ後で瞬のお母さんが家に来て、このギターを置いていったんだ」
「形見か」
「俺は断ったんだけど、どうしても持っていて欲しいって言われてさ」

 田島がちらりとギターのほうに目を向ける。花園もその視線を追う。

「それは燃やさなかったんだな」
「うん、燃やせなかった。実は学校の焼却炉で自分のギターを燃やした後、すぐに学校の技術員さんに見つかって、卒業式の後高校に呼ばれて担任、いや、元担任に怒られた」
「なにそれ。その話、高校生っぽくて面白い」

 現実的なエピソードに、花園は目を細め軽やかに笑った。

「ギターの金属の部分が残っていたんだな」
「うん、弦とか。それを片付けさせられた」
「まあ、当然だよね」
「それで何か、全てが冷めた」

 そのお陰で、長谷川の形見のギターは燃やされずに済んだ。けれども、それ以来、そうして手元に残ったギターを、田島はどんな思いで持ち続けてきたのだろうか。花園には想像できなかった。

「俺も高校の卒業式の後、呼び出された」
「花園が? お前、真面目そうなのに? 何で?」
「俺だけじゃなくて、その年の卒業生全員が呼び出された。卒業式後に卒業生だけ集めて緊急集会。高校始まって以来」
「何したんだお前ら? 卒業式で暴れたりしたとか?」
「上履きだよ」
「上履き?」
「一時、はやっただろ。卒業の記念に上履きを放るっていうの。俺たちそれやって、校庭中上履きだらけにしたんだ。上から見た感じは校庭に雪が降ったみたいで見栄えのする景色がすごく良かったんだけどね」
「なんだそれ。そんなこと、はやんねえよ」

 田島が少し笑った。それを見て花園が、曲をリクエストしてみた。

「田島、ギターを弾いてくれ。『バンド甲子園』で優勝したときのあの曲が良い」



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 事故の時のエピソードはこちら → 「夢叶」(4話)  
 徹さんの入院中に、田島が語ったエピソードはこちら → 「秘密の花園」(第二章 3 見舞い(1))


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - あかね  

Title - 次々に明かされる

田島くんの真実、過去、といったところですね。
重い記憶を語っていて、「弦が切れてるから歌えない」っていうのはユーモラスにも受け取れれば、ものすごく深い意味があるのかとも受け取れますね。

小説の世界でくらいは夢をかなえた人を描きたいというのもありますが、こうしてひとつの夢が破れ、別の未来に向かって歩いている若者というのもいいなぁ。

若いっていいですね。
2012.10.10 Wed 23:44
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 次々に明かされる

あかねさん、コメントありがとうございます。

ここで徹さんに過去を語ることで、何か吹っ切れると良いのだけれども、の場面です。

> 重い記憶を語っていて、「弦が切れてるから歌えない」っていうのはユーモラスにも受け取れれば、ものすごく深い意味があるのかとも受け取れますね。

そう読み取っていただいてとても嬉しいです。
ここでは歌えないのですが・・・おっと、ネタバレは無しです(^^;)

田島の夢がかなうかどうかはまだまだわかりませんよ~。
だいたい、田島の夢が何かってこともうやむやにこのお話は進むのです(--;)
けど、未来には向かっていきます。

若いっていいねぇ~。
そしてそれは永遠・・・? (得意のイミフですみません。。。)
2012.10.11 Thu 08:46
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

まだ答えが見つかっていない田島くん。。。
というところですかね。

どういうところで受容していくかは大変ですからね。
逆に音楽に生きる!!って決心することもできるし。
音楽を辞める!!って決心もできるところ。。。

死を受け止めるっていうのは。
案外時間がかかるものですからね。
こういう物語も大好きですね。
(*^-^*)
2016.01.30 Sat 09:21
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

えっと、二人の会話は申し訳ないくらいに長いんです。(今から謝りたい -_-;)
瞬のことからは4年も経っているので、改めて受け入れてどうのこうのというところには時間がかかって・・・

徹さんの前で決心をすることになるのですが、どっちに行くのかはまだ先までお待ちください(-_-;)
というところです。
ああ、LandMさんのお好みに合うならば良かったです。
まだまだ先は長いのですが、どうぞよろしくお願いします。
2016.01.30 Sat 12:31
Edit | Reply |  

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