オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夢叶 12 第一章・友人の訪問(6) 

「それで、田島は高校時代、本当は何をしていたんだ? ただバンドでチャラチャラしてたわけじゃないんだろ?」

 田島の迷いが何なのか、心に何を溜めているのか、花園はまた探ろうとする。そこに触れなければ、今日わざわざ田島の住むユニットまで来た意味がない。

「田島、これから何をどうしたいのかわからない時は、自分が何かに夢中になっていた頃まで戻ってみるのも良いかもよ」
「何かに夢中? 夢中ねえ」

 田島は、首をひねりながらもすぐに答えた。

「やっぱり、歌かな。バンドで歌うこと」
「良いんじゃね。お前の歌のうまさはカラオケで証明済みだしな」

『バンド甲子園』では、確かにギターの長谷川も良かった。けれども、田島のパフォーマンスも花園は好きだった。

 ステージの中心に立つ田島は、その歌で聴く者をぐっと掴んで惹きつけていた。そのフロントマンとしての絶対的な存在は、やはりバンドの中心であった。

「作るのも夢中だった」
「作るって、曲作るの?」

 ボソッと続ける田島の言葉に、花園が目を丸くして「へえ」と声を上げた。

「バンドの曲は、俺が作ってたんだよ」
「お前が? マジ意外!」

 今にも飛び上がるのではないかというほどに驚く花園に、「そんな大げさに驚かなくても」と田島が薄い視線を送る。

「アレンジは瞬がやってたから、結局は二人でやっていたようなもんだけど」
「やっぱな」
「何だよ、その速攻リアクション」
「歌は元気一杯だったけど、イントロとか間奏とか、ギターソロとかも繊細な感じがしたから」
「お前さ、会社に勤めるの辞めて、音楽評論家にでもなれば?」
「それじゃ稼げないでしょ」

『バンド甲子園』のライブの後半では、与えられた既製の曲のコピーとオリジナルの曲の両方を演奏して審査が行われていた。田島たちのバンドは、コピーよりもオリジナルの方がいつも評価が高かった。

「高校時代に、何曲くらい作ったんだ?」
「んー、どのくらいかなあ、歌詞の付いてないのも数えるとして・・・500以上はあったと思う」
「500!? 高校生で500って」
「たぶんもっと。瞬とセッションしながら、どんどん録音していったから。全部消しちゃったけど。だから証拠はない。ほとんど忘れちゃったし」
「学校でも授業中頭ん中そればっかで、勉強なんてしてなかっただろ」
「そうだったかも。特に高三の時は、『バンド甲子園』の事もあったし」

 田島は『バンド甲子園』で毎週の予選に勝ち残り、デビューを目指してひたすらそれに向かっていたのだろう。番組からもその熱意が十分に伝わっていたのを思い出す。

「不良じゃねーか」
「ちょっと放課後に音出して、うるさかっただけだよ」
「いや、学校の焼却炉勝手に使って私物燃やすなんて、卒業生が普通、そんなことしないでしょ」
「どうしてその話に戻る?」

 ふと田島が遠い目をして、沈黙する。焼却炉の中で燃えてしまった自分のギターを思い出したのだろうか。そのとき、どんな思いでその炎を見ていたのだろう。

 何も言葉にしないところを見ると、まだ田島の思いは胸の奥にあり、表に出すのを躊躇しているのかもしれない。田島の胸につかえているものを、どうしたら外してやれるのか。花園はずっとそのことを考えていた。

「高校卒業で、俺は全部を捨ててきたけど、歌だけは残した。歌うことだけはやめられなかった」
「そうか。俺っていうオーディエンスがいて、良かったな」
「それ、マジ本当だよ。歌を残さなかったら、俺はきっと、どうにかなってしまっていたと思う」

 当時の田島は、本当に全てを忘れて消し去ろうとしたのだろう。けれども、自分の存在理由のようなものを、歌を続けるというところに無意識に残したのかもしれない。

「ってことは、お前の大学生生活は、歌を歌うことと、お前のカラオケライブに三時間も付き合ってくれる友達に支えられてきたわけだ」
「そう来るんだ」
「違うのか」
「違わないです」

 今日の田島は、こうして話を聞いてくれる花園には逆らえそうにない。

「じゃあ、そろそろその恩返しをしてもらわないとね」
「お前に? 何の?」
「そろそろ、好きなことをしても良いんじゃないか、っていうことだよ」
「好きなことを? 今からまたカラオケに行くのか?」
「何とぼけてんの。曲作れ、って言ってんだよ」

 いつまでもはっきりしない田島に対して、花園はストレートに言ってやった。

「死んだ友達がいなきゃ作れない、とか言うんじゃないよな」

 花園は、ようやく田島の琴線に触れようとしていた。



にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
にほんブログ村  ワンクリックの応援ありがとうございます。 Thanks in advance!

人気ブログランキングへ  Thanks again for the click!




 徹さん、突っ込め!


 ご訪問、ありがとうございます^^

 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 皆様が素敵な一日を過ごせますように。

 Have a nice day!
関連記事
スポンサーサイト

Comment

Name - 西幻響子  

Title - No title

花園くんの心遣いがにくいですね ^^
田島くんのこと心配して、こうやって話を聞いてくれるのは、田島くんにとってはとてもありがたいことでしょうから。

二人の、時にコミカルなリズムにのった会話も楽しいです。
2011.09.17 Sat 21:12
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: No title

> 西幻響子さん

コメントありがとうございます。

にくいでしょう~(笑)
徹さんは、めっちゃ良い人なんです。
田島くんも信頼していろんなことを話せます。

二人とも遠慮なしにバンバン言い合う時もありますが・・・
二人の友情がいつまでも続きますように。。。
2011.09.18 Sun 12:00
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

続く田島君の苦悩!!
果てしてどうなるのか!!??
・・・という感じで進んでいきそうですね。

まあ、実際問題。
葛藤ってそんなものですよね。
誰かに助言されたからといって、パ~~と解決することがないですからね。時間と友人からのアドバイスでちょっとずつ解消されていくものが多いですからね。
折り合いをつけてね、悩みをなくしていかないといけませんね。
2016.02.13 Sat 09:57
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

ああ・・・続きます。果たして・・・まだ続く・・・(-_-;)
このくだりを超えてくださる読者様にはもう、感謝です。

そうなんです。パ~~と解決することがないんです~(><)
高校卒業してからこうして徹さんと対峙するまでにだって3年以上かかっていて・・・
折り合いつく(つけさせられる)までまだ続くのですが、どうかよろしくお願いします。
2016.02.13 Sat 14:28
Edit | Reply |  

Add your comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。